自己資本比率とは|上場企業の中央値56.8%(金融除く)、キーエンス94.6%・トヨタ37.8%・三菱UFJ5.2%の違い

自己資本比率は「自己資本÷総資産×100」で計算し、会社が持つ資産のうち、返済のいらないお金でまかなっている割合を示します。高いほど借金に頼らない経営で、赤字や不況に耐える力が大きいと読めます。
上場企業(金融業を除く3,500社)の直近通期の自己資本比率は中央値56.8%で、4社に3社が40%以上です(2026年9月29日時点、KabuGraph算出)。30%を下回る会社は1割(10.6%)しかなく、低めかどうかを見るひとつの線になります。ただし不動産や電力のように30%台が普通の業種もあるので、最後は同業と比べます。
同じ有名企業でも、キーエンスは94.6%、任天堂は77.6%、トヨタ自動車は37.8%と、事業の形によって大きく違います。
ただし高ければ高いほど良いわけではなく、お金を使わずに抱え込むとROE(自己資本利益率)が下がります。また三菱UFJフィナンシャル・グループは5.2%で、銀行のニュースで目にする「自己資本比率8%」は規制上の別の比率です。
この記事では、計算式と決算短信での見方、上場企業の分布、代表的な企業の値、業種で水準が違う理由、銀行の比率との違い、投資判断での使い方を順に解説します。
この記事の内容(目次)
自己資本比率とは?返済不要のお金で資産の何割をまかなっているか
自己資本比率は、総資産のうち自己資本(株主のお金)が占める割合です。会社の資産は、借入金や買掛金などの「負債」と、株主が出したお金と利益の積み上げである「純資産」のどちらかでまかなわれています。このうち返済の必要がない自己資本の比重を表すのが自己資本比率です。
自己資本は純資産から新株予約権と非支配株主持分を引いたもの
決算短信に載る自己資本比率は、計算方法が取引所の作成要領で決まっています。自己資本は「純資産合計-株式引受権-新株予約権-非支配株主持分」です(日本取引所グループ「決算短信作成要領」p.7)。引く項目は、いまの株主のものではない部分です。
新株予約権・株式引受権:将来株主になる権利や、役員報酬として将来株式を受け取る権利。まだ株主になっていない人の分なので除く
非支配株主持分:子会社に親会社以外の株主がいるとき、その株主の持ち分。親会社の株主のものではないので除く
残る自己資本は、資本金・資本剰余金・利益剰余金からなる株主資本に、保有株式の含み益などの「その他の包括利益累計額」を足したものです。
IFRSの会社は「親会社所有者帰属持分比率」の欄を見る
国際会計基準(IFRS)の会社の決算短信では、連結の欄が「自己資本比率」ではなく同じ考え方の「親会社所有者帰属持分比率」(親会社の所有者に帰属する持分÷資産合計)になっています。米国会計基準の会社では「株主資本比率」(資本合計から非支配持分を除いた額÷総資産)という名前です。どれも総資産のうち親会社の株主に帰属する分の割合なので、並べて比べられます。
トヨタの決算短信で計算してみる
トヨタ自動車(IFRS)の数字で確かめます(トヨタ自動車 2026年3月期 決算短信〔IFRS〕(連結)サマリー)。
資産合計:105兆5,223億円
資本合計(日本基準の純資産にあたる):41兆201億円
うち非支配持分:1兆1,012億円
親会社の所有者に帰属する持分(自己資本にあたる):39兆9,189億円
39兆9,189億円÷105兆5,223億円×100=37.8%で、サマリーの「親会社所有者帰属持分比率」と一致します。自分で計算しなくても、決算短信の1ページ目(サマリー情報)の「連結財政状態」に載っている値をそのまま使えます。サマリーの読み方は決算短信とはで解説しています。
純資産比率・株主資本比率との違い
自己資本比率に似た指標に「純資産比率」と「株主資本比率」があり、違いは分子に何を入れるかだけです。
純資産比率:純資産÷総資産。新株予約権や非支配株主持分も含むので、ほとんどの会社で自己資本比率と同じか高い値になる
自己資本比率:(純資産-新株予約権-株式引受権-非支配株主持分)÷総資産。決算短信に載る標準の値
株主資本比率:株主資本÷総資産。保有株式の含み益などの「その他の包括利益累計額」を含まない。ただし米国会計基準の会社が決算短信に載せる「株主資本比率」は、自己資本比率と同じ考え方の値
時価ベースの自己資本比率:株式時価総額÷総資産。決算短信の「キャッシュ・フロー関連指標」の表に自己資本比率と並んで載る別の指標で、100%を超えることもある(キーエンス 2026年3月期 決算短信 p.5では390.3%)
多くの会社では差はわずかです。金融業を除く上場3,500社では、純資産比率と自己資本比率の差の中央値は0.1ポイントでした。差が5ポイント以上開くのは218社(6.2%)で、子会社に親会社以外の株主が多い会社です(KabuGraph算出)。
例えばソフトバンク(IFRS)は、資本合計4兆6,685億円のうち親会社の所有者に帰属する持分が2兆9,579億円です。資本合計で計算すると25.2%ですが、自己資本比率にあたる親会社所有者帰属持分比率は16.0%です(ソフトバンク 2026年3月期 決算短信〔IFRS〕(連結)サマリー)。銘柄を比べるときは、自己資本比率の欄の値にそろえます。
貸借対照表のどこが自己資本にあたるか、決算短信・有価証券報告書のどこで確認できるかは、次の記事で詳しく解説しています。

自己資本とは?貸借対照表と決算書のどこに載っているか|セコムの短信で自己資本比率58.9%を検算
自己資本は貸借対照表の純資産の部のうち株主資本とその他の包括利益累計額の合計で、自己資本比率は決算短信1ページ目の連結財政状態に載っています。セコムの短信で比率58.9%を検算し、純資産で割ると67.2%になる理由、有報・IFRSでの見方も解説。
自己資本比率で分かること——不況への耐性と増資のリスク
自己資本比率が高い会社ほど、赤字や資産価値の下落に耐えられます。損失は、利益剰余金を通じて自己資本を減らす形で吸収されるからです。
損失を吸収するクッション:自己資本比率50%の会社は、資産の価値が半分に減っても負債を全額返せる計算になる。10%の会社は、資産の1割にあたる損失で自己資本がなくなる
返済と利払いの負担:借入金や社債は期日に返済し、利息を払う必要がある。売上が落ちても返済は待ってくれないので、借入の比重が大きい会社ほど資金繰りが苦しくなりやすい
増資のリスク:自己資本が薄い会社が赤字を続けると、新株を発行して資本を補うことが多い。株数が増えると1株あたりの価値が薄まり(希薄化)、株価の下げ要因になる
純資産(資産から負債を引いた残り)がマイナスになった状態が債務超過です。東証は全市場で純資産の額が正であることを上場維持基準にしており、満たさない状態が1年以内に解消されないと、原則として上場廃止基準に該当します(日本取引所グループ「上場維持基準の詳細(純資産の額)」)。2026年9月29日までに開示された直近の決算短信で、純資産がマイナスだった上場企業は12社ありました。

自己資本比率がマイナスとは?|債務超過の上場企業は12社、1年で解消できなければ上場廃止
自己資本比率がマイナスなのは純資産がマイナスの債務超過のとき。すぐ倒産はしませんが、上場企業は期末に債務超過だと原則1年で解消しないと上場廃止です。債務超過の12社、改善期間の5社、増資・DES・減資の違い、決算短信での見つけ方まで解説します。
上場企業(金融業を除く)の自己資本比率は中央値56.8%——4社に3社が40%以上
金融業を除く上場3,500社の自己資本比率は、中央値56.8%、平均55.4%です。各社の直近通期(2025年8月期〜2026年7月期)の決算短信に載っている自己資本比率(IFRSは親会社所有者帰属持分比率)を、KabuGraphが集計しました。対象はプライム・スタンダード・グロースの上場企業です。
上場企業の自己資本比率の分布(金融業を除く3,500社)
真ん中の半分は40.7〜71.0%:下から4分の1の位置が40.7%、上から4分の1の位置が71.0%
40%以上が76.3%(2,670社)、50%以上が61.4%(2,150社)
30%未満は10.6%(371社)、20%未満は3.9%(135社)
市場区分による差は小さい:中央値はプライム57.0%・スタンダード56.8%・グロース55.7%。ただしグロースは散らばりが大きく、下から1割の位置が23.1%とほかの2市場(28〜33%)より低い
金融業(銀行・証券・保険・その他金融)を除いたのは、銀行業の中央値が4.9%と事業会社とかけ離れているためです。金融業を含めた3,668社では、中央値は55.7%です。
全社を合算すると35.7%——日本郵政1社で大きく下がる
3,500社の自己資本の合計を総資産の合計で割ると35.7%で、中央値より21ポイント低くなります。総資産の大きい会社ほど合計への効き方が大きいためです。
一番効いているのは、ゆうちょ銀行・かんぽ生命保険を連結する日本郵政です。東証の業種分類はサービス業なので金融業を除く集計にも残り、自己資本比率3.4%で3,500社の総資産の16.9%を占めます。日本郵政を除くと合算は42.3%です(KabuGraph算出)。
非上場企業を含む財務省「法人企業統計調査」(金融業・保険業を除く、各社の単体決算の合計)では、2025年度の自己資本比率は全産業41.8%(製造業50.4%・非製造業38.7%)でした(財務省「法人企業統計調査」令和7年度 報道発表 第12表)。集計の土台が違うので、上場企業の中央値とは直接比べません。
何%なら安心といえるのか、危険水域はどこかは、業種や規模で変わります。業種別・規模別の目安は次の記事にまとめています。

自己資本比率の目安と危険水域|上場企業(金融除く)の中央値56.8%、30%未満は下位1割
自己資本比率の目安と危険水域を上場3,500社(金融業を除く)のデータで解説。中央値56.8%、30%未満は下位1割で、前期末20%未満の会社は翌期に4割近くが赤字。法人企業統計の2025年度41.8%、業種別の下位10%ラインも。
代表的な企業の自己資本比率——キーエンス94.6%から三菱UFJ5.2%まで
有名企業でも、自己資本比率は5%台から90%台まで開きます。低い会社が危ないとは限らず、事業の形で説明がつくことが多いです。
キーエンス(94.6%):負債は買掛金や未払法人税などの1,992億円だけで、貸借対照表に借入金の科目がありません(キーエンス 2026年3月期 決算短信 連結貸借対照表)。総資産3兆6,707億円のほとんどを自己資本でまかなっています
任天堂・信越化学工業(77.6%・78.7%):どちらも中央値を20ポイント以上上回ります。任天堂は総資産3兆8,053億円のうち自己資本が2兆9,540億円です(任天堂 2026年3月期 決算短信)
トヨタ自動車(37.8%):自動車ローンやリースを手がける金融事業を抱えているためです。連結の有利子負債43.2兆円に対し、金融セグメントの有利子負債が40.9兆円あります(同社 決算短信 p.15〜16「自動車等セグメントと金融セグメントを区分した連結財務諸表」)。トヨタ単体(個別)の自己資本比率は74.8%です
東日本旅客鉄道(28.2%):総資産10兆8,207億円のうち線路・駅・車両などの有形固定資産が8兆2,408億円を占め、社債と借入金でまかなっています。ネット有利子負債は4兆9,001億円です(東日本旅客鉄道 2026年3月期 決算短信)
ソフトバンク(16.0%):資本合計の3分の1以上が非支配持分で、親会社の株主に帰属する分に絞ると比率が下がります(前の節を参照)
三菱UFJフィナンシャル・グループ(5.2%):預金239兆4,392億円を負債として預かり、それを貸出などで運用するので総資産が431兆7,315億円に膨らみます(三菱UFJ 2026年3月期 決算短信 連結貸借対照表)
このほか、ファーストリテイリングは58.9%(2025年8月期)、三菱商事は39.1%でした。数値は各社の決算短信サマリーの値です。
業種で自己資本比率の水準が違う理由
自己資本比率の中央値は、業種によって60ポイント以上違います。事業にどれだけ大きな資産が要るか、その資金を借入でまかなえるかが業種ごとに違うからです(中央値は金融業を含む上場3,668社をKabuGraphが業種別に集計)。
高い業種:医薬品69.9%、精密機器67.5%、機械66.2%、情報・通信業62.9%。大きな設備を借入で整える必要が比較的小さく、利益の積み上げで自己資本を厚くしてきた会社が多い。医薬品は、赤字でも株式で研究資金を集める創薬ベンチャーが中央値を押し上げている(グロース市場の39社は36社が最終赤字で中央値81.7%、プライム市場の31社は65.4%。KabuGraph算出)
低い業種:不動産業33.2%、空運業37.7%、電気・ガス業39.1%、陸運業40.3%。ビル・航空機・発電所・線路などの大きな資産を、長期の借入や社債で手当てする。賃料・運賃・電気料金のように長く続く収入があるので、借入を返していける
銀行業4.9%:預金を負債として受け入れ、貸出や国債で運用する。借りたお金で商売をする業種なので、事業会社と同じ物差しでは比べられない
だから自己資本比率は、同じ業種の会社どうしで比べるのが基本です。電力会社や鉄道会社を、キーエンスのような製造業と同じ基準で「低い」と判断すると読み違えます。
設備の重い業種では、設備や不動産(固定資産)を自己資本と長期の借入でまかなえているかも大事です。これは固定比率・固定長期適合率で確かめます。

固定比率とは|目安は100%以下でも日本企業全体は133.8%、電力・鉄道・任天堂の実例で読む
固定比率は固定資産÷自己資本×100で、設備など長く使う資産を返済不要の資金でどこまで賄えているかを示します。目安は100%以下ですが、法人企業統計の2025年度は全産業133.8%、電気業378.6%。100%超の読み方と決算短信での計算手順を実例で解説します。
高い・低いは何を意味するか——高すぎると資本効率が下がる
自己資本比率は高いほど安全ですが、高ければ高いほど良いわけではありません。高い会社と低い会社には、それぞれ次のような面があります。
高い会社(例:70%以上)
良い面:不況でも倒れにくく、増資の必要が小さい。投資や買収に使える余力がある
気になる面:使い道の決まらない現金や有価証券を抱えていることがあり、ROE(自己資本利益率)が下がりやすい。配当や自社株買いを求められやすい
低い会社(例:30%未満)
良い面:借入をうまく使えば、少ない自己資本で大きな事業を回せ、ROEが高く出る
気になる面:赤字や金利上昇に弱く、業績が崩れると増資や資産売却に追い込まれやすい
データでも両方の面が出ています。金融業を除く上場企業のうち、自己資本比率80%以上の375社はROEの中央値が6.4%で、全体の中央値(8.0%)を下回ります。ROE8%以上の会社の割合も37.6%で、自己資本比率10〜80%の各区分(5割前後)より低めです。一方、10%未満の40社(債務超過を除く)は7割が最終赤字でした(KabuGraph算出、直近通期)。
理由は式の形にあります。ROEはROA(総資産利益率)に財務レバレッジ(総資産÷自己資本)を掛けたもので、財務レバレッジは自己資本比率の逆数です。
自己資本比率50%ならレバレッジは2倍、25%なら4倍で、同じROAでもROEは2倍違います。自己資本比率とROEの関係をデータで見た記事はこちらです。

自己資本比率とROEの関係|高いとROEは低い?上場3,492社ではROE中央値が8%前後で横ばい
自己資本比率とROEは「ROE=ROA÷自己資本比率」の関係。上場3,492社では自己資本比率10〜80%の帯でROE中央値が7.9〜9.4%とほぼ横ばい、80%以上は6.4%。ROA・PBRとの関係、実例5社、自社株買いと東証の要請まで。
自社株買いや増配で自己資本を株主に返すと、自己資本比率は下がり、ROEは上がります。財務に十分な余裕がある会社なら、自己資本比率の低下は悪いこととは限りません(自社株買いとは)。
自己資本比率は何をすれば上がる?下がる?——代表的な企業活動で見る
自己資本比率は「自己資本÷総資産」なので、分子と分母がどう動くかで決まります。利益を積み上げる・増資する・借入を返すと上がり、自社株買い・配当・借入での投資・赤字で下がります。
総資産1,000億円・自己資本400億円(自己資本比率40%)の会社が、次の取引を1つだけ行ったとすると、比率は次のように動きます。
企業活動 | 自己資本 | 総資産 | 自己資本 |
|---|---|---|---|
何もしない(基準) | 400 | 1,000 | 40.0% |
利益50を内部留保 | 450 | 1,050 | 42.9% |
増資で100を調達 | 500 | 1,100 | 45.5% |
借入200を返済 | 400 | 800 | 50.0% |
借入200で設備投資・買収 | 400 | 1,200 | 33.3% |
自社株買い100 | 300 | 900 | 33.3% |
配当30 | 370 | 970 | 38.1% |
赤字50 | 350 | 950 | 36.8% |
上がる企業活動
利益の内部留保:配当に回さなかった利益が利益剰余金として積み上がる。最も基本的な上がり方で、黒字が続く会社ほど比率は年々高くなる
増資(公募増資・第三者割当増資):自己資本が一度に増える。ただし株数が増えて1株当たりの価値が薄まる(希薄化)ので、既存の株主には負担もある
借入の返済:自己資本は変わらず、負債と一緒に総資産が縮むので比率が上がる
保有株の値上がり・円安:保有株式の評価差額や、海外子会社の円換算の差額(為替換算調整勘定)が増えると自己資本が増える。値下がり・円高なら逆に下がる
下がる企業活動
自社株買い・配当:現金と自己資本が同時に減る。株主還元を強める会社では、比率が下がるのは意図した結果であることが多い
借入での設備投資・買収:自己資本は変わらず総資産だけが増える。大型の買収を借入で賄った年は、比率が大きく下がる
赤字:利益剰余金が減る。赤字が続いて自己資本がマイナスになった状態が債務超過(自己資本比率がマイナスとは)
リースの会計基準の変更:2027年4月1日以後に始まる年度から、店舗や事務所の賃借なども原則として資産と負債に載せる新しい基準が適用される(企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」第58項。2025年4月以後に始まる年度から早めに適用することもできる)。自己資本は変わらず総資産が増えるので、店舗や拠点を多く借りている会社ほど比率が下がる。事業の中身が変わったわけではない
比率が下がったときは、赤字や借入の増加による下がり方か、還元・成長投資・会計基準の変更による意図した下がり方かを分けて見てください。前者は財務の余裕が減っているサインで、後者は資本効率を上げる動きのことがあります。危険のサインの見分け方は自己資本比率の目安と危険水域、比率を下げるとROEがどう変わるかは自己資本比率とROEの関係で扱っています。
銀行の「自己資本比率」は別物——バーゼル規制の比率
銀行の決算やニュースで出てくる「自己資本比率」は、銀行法にもとづく規制上の比率で、決算短信サマリーの自己資本比率とは計算方法が違います。分母が総資産ではなく、資産ごとに損失の出やすさ(リスク・ウェイト)を掛けて評価し直した「リスク・アセット」です。
三菱UFJフィナンシャル・グループの2026年3月末では、会計上の自己資本比率は5.2%ですが、規制上の総自己資本比率(国際統一基準)は16.85%、普通株式等Tier1比率は12.47%です(三菱UFJ 2026年3月期 決算短信「自己資本比率」(速報値))。分母のリスク・アセット120.3兆円は、総資産431.7兆円の3割弱です。例えば告示の標準的な計算方法では、円で調達した円建ての日本国債のリスク・ウェイトは0%で、分母に数えません(第56条第2項)。
最低水準は、海外に営業拠点があるかどうかで2つに分かれます(金融庁告示(平成18年金融庁告示第19号))。
国際統一基準(海外に営業拠点がある銀行):普通株式等Tier1比率4.5%以上、Tier1比率6%以上、総自己資本比率8%以上(第2条)
国内基準(海外に営業拠点がない銀行):コア資本で計算した自己資本比率4%以上(第25条)
2つの基準は算出方法が違うため、数値を単純には比べられません(日本銀行「銀行の自己資本に関する国際統一基準と国内基準の違いを教えてください」)。分子の自己資本にも、普通株式や利益の積み上げに加え、条件を満たす劣後債などが入ります。

【投資テーマ解説】銀行株|金利1.0%時代到来・メガバンク過去最高益と株主還元の全貌
31年ぶりの政策金利1.0%でメガバンク3行は過去最高益を更新。利ざや拡大・累進配当・地銀再編・ネット銀行の台頭まで、銀行セクターの投資テーマを網羅的に解説します。
投資判断で自己資本比率を見るときの4つのポイント
自己資本比率は、数字の高さより「同業と比べてどうか」「なぜその水準なのか」で読みます。
同業の中央値と比べる:業種で水準が大きく違う。医薬品で40%なら低め、不動産で40%なら高めと読める
推移を見る:自己資本比率は四半期の決算短信のサマリーにも載る。急に下がったら、赤字・借入による大型買収・自社株買いのどれが原因かを確かめる
中身を見る:自己資本が厚くても、資産の多くが買収で生じたのれんなら、減損で自己資本が一気に減ることがある。負債側では、借入金・社債(有利子負債)がどれだけあるかを見る
ROEと並べる:自己資本比率が高くROEが低いなら、株主還元や投資に回す余地がないか。自己資本比率が低くROEが高いなら、借入頼みで数字がかさ上げされていないかを確かめる
連結と単体の違いにも注意します。決算短信には個別(単体)の自己資本比率が載ることもありますが、トヨタのように連結37.8%・単体74.8%と大きくずれる会社があります。投資判断には連結の値を使います。
まとめ
自己資本比率=自己資本÷総資産×100。自己資本は純資産から新株予約権・株式引受権・非支配株主持分を引いたもの。IFRSの会社は親会社所有者帰属持分比率
上場企業(金融業を除く3,500社)の中央値は56.8%、4社に3社が40%以上。30%未満は1割
高いほど不況に強いが、高すぎるとROEが下がりやすい。80%以上の会社のROE中央値は6.4%で、全体(8.0%)を下回る
業種で中央値が60ポイント以上違うので、同業どうしで比べる。トヨタの37.8%は金融事業、JR東日本の28.2%は鉄道設備による
銀行の規制上の自己資本比率は別物。分母がリスク・アセットで、三菱UFJは会計上5.2%・規制上16.85%
自己資本比率は「倒れにくさ」の指標です。割安さ(PER・PBR)や稼ぐ力(ROE)と組み合わせて見ると、銘柄の姿がはっきりします。主な投資指標の一覧はこちらです。

株式投資指標の一覧|5分類20指標の式と目安(プライム中央値PER16倍・ROE8.6%)
株式投資指標を割安性・収益性・成長性・安全性・株主還元の5分類で一覧に。PER・ROE・自己資本比率・配当利回りなど20指標の計算式と、東証プライムの中央値(PER16.0倍・PBR1.36倍・ROE8.6%、2026年9月28日時点)、見る順番を解説します。









