PERとPBRはどちらが重要?|赤字・景気敏感株・銀行はPBR、日本株51年の成績でも比較

PERとPBRのどちらが重要かは、会社のタイプで決まります。利益が安定して出ている会社はPER、赤字や利益が急に減った会社・景気で利益が大きく上下する会社・銀行はPBRを主役にします。
PERは株価を「1年の利益」と、PBRは株価を「積み上げた純資産」と比べる物差しです。利益が崩れるとPERは使えなくなりますが、純資産は1年で消えることはまれなので、PBRは測り続けられます。2つはPBR=PER×ROEでつながっているため、主役を決めたらもう一方で裏を取るのが基本です。
多数の銘柄をまとめた平均で見ると、日本株では1975〜2025年の51年間、PBRの低い株(年12.6%)がPERの低い株(年10.7%)をやや上回ってきました。この記事では、リーマン・ショック後の東証一部のデータと、KDDI・東京エレクトロン・三菱UFJ・三菱ケミカルグループの実数(2026年9月28日終値時点)で、2つが食い違ったときにどちらを信じるかを解説します。
この記事の内容(目次)
結論:主役の指標は「会社のタイプ」で決まる
PERとPBRは、どちらかが常に上というものではありません。その会社の利益がどれだけ当てになるかで、主役が入れ替わります。上から順に当てはまるかを確かめると、迷わずに選べます。
赤字・利益がごくわずか → PBR:利益がマイナスならPERは計算できず、ごく小さいと100倍・1,000倍に跳ねます(PERが異常に高くなる理由)。ただし、純資産の小さい成長企業(ソフトウェア・創薬など)の赤字では、PBRも高く出て当てになりません。売上高で測るPSRや、黒字化した後の予想利益が軸になります(PERがマイナスのとき)
景気で利益が大きく動く → PBR:鉄鋼・化学・海運などは、利益が最も多い年にPERが最も低く見え、利益が落ち込んだ年に高く見えます。PERを使うなら、数年分の平均利益で計算し直します
銀行・保険 → PBR(ROEとセット):資産の大半が貸出金や有価証券などの金融資産で、純資産が商売の元手そのものです。純資産に対して何%稼げているか(ROE)とPBRを並べて見ます
利益が安定・成長 → PER:毎年の利益がほぼ読めるなら、「利益の何年分の値段か」がそのまま物差しになります。成長が速い会社は、PERを利益の伸び率と比べます(PEGレシオ)
PERとPBRの違い:利益で測るか、純資産で測るか
PERは株価を1株当たり利益(EPS)で、PBRは株価を1株当たり純資産(BPS)で割った数字です。分母が損益計算書の「1年の利益」か、貸借対照表の「積み上げた純資産」かの違いが、得意・不得意の差を生みます。
何と比べるか
PER:その年の利益。「利益の何年分の値段か」を表します
PBR:会社が持つ正味の財産(純資産)。「純資産の何倍の値段か」を表します
数字の動き方
PER:利益は毎年変わるため、決算のたびに大きく動きます。利益がゼロに近づくと跳ね上がります
PBR:純資産は毎年の利益が少しずつ積み上がったものなので、1年で大きくは変わりません
目安
PER:一般に15倍前後が目安とされ、東証プライムの中央値(16.0倍)も近い水準です。ただし業種で大きく違い、業種別の平均では電気・ガス業の10.6倍と電気機器の29.8倍で約3倍の開きがあります
PBR:株価が1株純資産と同じになる「1倍」という節目があります。プライムの中央値は1.36倍で、1倍割れは1,538社中425社(27.6%)です
苦手な場面
PER:赤字の年、利益が一時的に急減・急増した年、景気の山と谷
PBR:人材やソフトウェアなど帳簿に載りにくい資産で稼ぐ会社。純資産が小さいので、PBRが10倍を超えても割高とは限りません
利益が崩れると、PERは使えなくなる
2つの違いがいちばんはっきり出るのは、景気が急に悪くなったときです。リーマン・ショック後の東証一部では、平均PER(単純平均)が1年間算出されなくなった一方、PBRは0.8〜1.0倍で出続けました。
東証一部のPERとPBR(2007〜2011年、四半期末)
2009年3月末:PER13.6倍・PBR0.7倍。PERは割安に見えましたが、計算のもとはまだ前年度(多くの会社は2008年3月期)の利益で、その利益は次の決算でマイナスに転じました
2009年6月〜2010年5月:PERは「-」。2009年3月期の決算が出そろうと、東証一部の1株当たり利益(単純平均)は−1.85円とマイナスになり、12か月にわたってPERが算出されませんでした
2010年6月〜2011年3月:PERは29〜34倍。利益は黒字に戻ったものの水準が低く、PBR0.8〜0.9倍の安値圏だったのに、PERだけを見ると危機前の2008年初め(16〜18倍)の2倍近い「割高」に見えました
この間、1株当たり純資産は2009年3月末の316.57円から6月末の285.38円へ、約1割減っただけでした(JPX「規模別・業種別PER・PBR」の長期データ)。利益が一時的に大きく崩れると、PERは「割安」も「割高」も誤って示しますが、純資産は急には消えないため、PBRが株価の水準を映し続けます。
同じことは個別の会社でも起きます。景気敏感株や特別損益でPERがぶれる実例は、PERが当てにならないのはどんなとき?で詳しく扱っています。

PERが当てにならない7つの場面|三菱倉庫10倍→本業36倍・日本郵船1.5倍の実例と補い方
PERが当てにならないのは、分母の利益がふだんの稼ぐ力とずれる時です。売却益で実績PERが10.0倍、会社予想では22.9倍になる三菱倉庫、利益の山でPER1.5倍だった日本郵船など実例で、PERが外れる7つの場面と補い方を解説します。
実例:4社でPERとPBRが言っていることを比べる
実在の会社で、PERとPBRの読み方を比べます。株価は2026年9月28日の終値、EPSとBPSは各社の2026年3月期決算短信(KDDI・東京エレクトロン・三菱UFJ・三菱ケミカルグループ)の数字です。
銘柄 | PER(倍) | PBR(倍) | ROE(%) |
|---|---|---|---|
KDDI | 16.2 | 2.24 | 13.8 |
東京エレクトロン | 44.9 | 12.52 | 27.9 |
三菱UFJ | 17.5 | 1.89 | 10.8 |
三菱ケミカルグループ | 134.5 | 0.90 | 0.7 |
KDDI:利益が読める会社はPERが主役
KDDIの純利益は、2021年3月期から6期続けて6,379億〜7,071億円の範囲に収まっています。利益が毎年ほぼ読めるので、PER16.2倍はプライムの中央値(16.0倍)並みと素直に読めます。PBR2.24倍は、ROE13.8%と純資産に対してよく稼いでいることの表れです。
東京エレクトロン:PBRの高さだけで判断しない
東京エレクトロンのPBR12.52倍は、1倍の節目から遠く見えます。しかしROEが27.9%と高く、12.52倍≒PER44.9倍×ROE27.9%です。純資産に対して利益が大きい会社では、PBRが高く出るのは当然なので、PERを利益の伸びと比べて判断します。
半導体製造装置は景気の波を受ける業種ですが、直近5期(2022年3月期〜2026年3月期)の純利益は3,640億〜5,745億円で、最も少ない年でも最も多い年の6割強を保っています(各期の決算短信)。利益が半分以下に落ちた年は無いので、フローの②には当たらずPERが主役です。ただし2026年3月期の利益は5期で最も多く、これが波の山に近いなら、PER44.9倍は見た目以上に高いことになります。
三菱UFJ:銀行はPBRとROEで見る
銀行は純資産に対してどれだけ稼げるかが値段を決めやすい業種です。PERとPBRがそろう東証プライムの銀行68行では、PBRとROEの相関係数が0.78と、PBRはおおむねROEの高さに沿って並んでいます(ROEは表と同じくEPS÷BPS、2026年9月28日時点、KabuGraph算出)。
68行の中央値はPBR1.17倍・ROE6.3%・PER18.9倍です。三菱UFJのPBR1.89倍は中央値を大きく上回りますが、ROEも10.8%と高く、PERは17.5倍と中央値をやや下回ります。高いPBRは期待の上乗せではなく、稼ぐ力の差でおおむね説明できるということです。
三菱ケミカルグループ:PERが当てにならない年
三菱ケミカルグループの2026年3月期は、本業のもうけを示すコア営業利益が2,250億円と前期並みだったのに、一時的な損益(非経常項目)で営業利益が301億円、純利益が118億円に落ちました(2026年3月期決算短信 p.1)。
PER134.5倍は「割高」ではなく、利益が一時的に小さいだけです。PBRは0.90倍と純資産を下回っています。こうした年はPBRを主役にし、PERは予想利益や数年平均の利益で計算し直します。会社予想の2027年3月期EPS(93.48円)で計算した予想PERは約12.4倍、直近5期(2022年3月期〜2026年3月期)のEPSの平均(63.3円)で計算すると約18.3倍で、実績の134.5倍とは大きく違う水準に収まります。
データで見る:低PBR株と低PER株、報われたのはどちらか
個別の会社ではなく、多数の銘柄をまとめた平均ではどうだったのでしょうか。ダートマス大学のケネス・フレンチ教授が公開している日本株のデータで、毎年末にPBRの低い順・PERの低い順に銘柄を並べ、上位30%に入った株の翌年の成績を比べます。
期間 | 低PBR群(年率%) | 低PER群(年率%) | 市場全体(年率%) |
|---|---|---|---|
1975〜2025年 | 12.6 | 10.7 | 7.0 |
1975〜1989年 | 23.7 | 21.4 | 18.3 |
1990〜2009年 | 4.4 | 1.3 | −3.8 |
2010〜2025年 | 13.2 | 13.5 | 11.2 |
2016〜2020年 | 0.0 | 3.3 | 5.9 |
51年通算では、低PBR群の年12.6%が低PER群の10.7%を上回りました。反対側の高PBR群は年3.0%、高PER群は2.9%です。低PBR群が高PBR群に勝った年は51年中41年、低PER群が高PER群に勝った年は37年でした
差が開いたのはバブル崩壊後の1990〜2009年です。市場全体が年−3.8%だった20年間に、低PBR群は4.4%とプラスを保ちました。利益が崩れた局面で、純資産の物差しが効いたことになります
2010年以降はほぼ互角(13.2%と13.5%)です。2016〜2020年はPBR・PERの高い株が買われ(高PBR群は年11.0%)、低PBR群は年0.0%、低PER群も3.3%と、どちらも市場全体に負けました
日本株の1971〜1988年を調べた研究でも、益回り・規模・簿価時価比率・キャッシュフロー利回りの4つのうち、その後のリターンとの結びつきが最も強かったのは簿価時価比率とキャッシュフロー利回りでした(Chan, Hamao & Lakonishok 1991)。
PERとPBRはROEでつながる:組み合わせの読み方
PBRはPERとROEの掛け算です。裏返すと、ROEはPBRをPERで割れば出るので、2つの数字を並べると、市場がその会社をどう見ているかを読む手がかりになります。式の成り立ちは次の記事で説明しています。

PER・PBR・ROEをわかりやすく|PBR約1倍のトヨタと約3倍の任天堂は何が違う?
PER・PBR・ROEをわかりやすく解説。PERは利益の何年分、PBRは純資産の何倍、ROEは元手で年何%稼ぐか。お店のたとえでつかみ、トヨタ(PBR0.98倍)と任天堂(3.12倍)の実数でPBR=PER×ROEを確かめます。
PERもPBRも低い:利益に対しても純資産に対しても安く評価されている状態です(例:PER10倍・PBR0.8倍ならROE8%)。割安の候補ですが、利益が伸びないと見られている可能性もあります(下のチェックへ)
PERは高いのにPBRは低い:ROEがごく低い状態です。利益が一時的に落ちているのか、もともと稼ぐ力が弱いのかは、会社予想と過去のROEで見分けます。三菱ケミカルグループ(134.5倍・0.90倍→ROE0.7%)は、会社予想では利益が戻る見込みです
PERは低いのにPBRは高い:ROEが高く、よく稼いでいるのに、その利益が続くかを疑われている状態です。高い利益率の理由と持続性を確かめます
PERもPBRも高い:ROEが高いか、利益が大きく伸びると期待されている状態です。PER50倍・PBR2倍ならROEは4%にすぎないので、どちらなのかは割り算で確かめます。東京エレクトロン(44.9倍・12.52倍→ROE27.9%)は、高いROEに成長への期待が重なっています。期待が外れると利益とPERの両方が縮みやすくなります(PERが高いとどうなる?・PBRが高いとどうなる?)
4つの組み合わせを図で見たい場合は、次の記事が参考になります。

PER・PBR・ROEを図解|決算書の出どころ、4象限マップと大型株10社の実数
PER・PBR・ROEを6枚の図解で整理。3つは株価・純利益・純資産の割り算で、PBR=PER×ROEは約分で成り立ちます。PER×PBRの4象限マップと、中外製薬(PBR5.17倍)・日本郵政(0.75倍)など大型株10社の実数(2026年9月28日時点)で読み方を確かめます。
PERもPBRも低い株は買いか:バリュートラップの見分け方
PERもPBRも低いのに株価が上がらない状態は、バリュートラップ(割安のわな)と呼ばれます。「安い」ことより「安い理由が解消に向かっているか」を次の4点で確かめます。
ROEは上向いているか:数年続けてROEが8%前後を下回ったままなら、低PBRは妥当な評価かもしれません
利益は一時的に膨らんでいないか:土地の売却益や景気の山の利益でPERが低く見えていないかを、決算短信の特別利益で確かめます
純資産に実際の価値があるか:売れ残りの在庫、含み損のある土地や投資が純資産を膨らませていないかを見ます
会社が手を打っているか:事業の入れ替えや株主還元の方針を、「資本コストや株価を意識した経営」の開示で示しているかを見ます
よくある質問
東証がPBRを重視しているのはなぜ?
東京証券取引所は2023年3月31日、プライム・スタンダードの全上場会社に「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」を要請しました。背景には、プライムの約半数がROE8%未満・PBR1倍割れという状況がありました。
資料はPBR1倍割れを、資本コストを上回る収益を上げられていないか、成長性が評価されていないことを示す「1つの目安」と位置づけています(p.4)。一方で市場評価の指標としてPERも並べ、時系列や同業との比較で分析するよう求めています(p.3)。PBRだけを見ればよいという意味ではありません。2026年9月28日時点で、プライムのPBR1倍割れは1,538社中425社です。制度の詳しい経緯はPBRとはで解説しています。
予想PERと実績PBRを並べてもいい?
並べて構いませんが、PERがどの利益で計算されているかは確かめます。PERには前期の実績利益で計算するものと、今期の会社予想などで計算するものがあり、表示する場所によって違います。PBRはふつう直近の決算期末の純資産で計算します。
利益が大きく変わる年ほど両者の差は開きます。三菱ケミカルグループは実績PER134.5倍に対し、会社予想のEPSで計算すると約12.4倍です。KabuGraphの銘柄ページのPER・PBRは、直近の通期実績で計算しています。
PBR1倍割れなら、株価はそれ以上下がらない?
下がります。純資産は帳簿上の金額で、赤字が続いたり資産に含み損があったりすれば減っていきます。東証一部の平均でも、2009年3月末にPBRは0.7倍まで下がりました。1倍割れの読み方は次の記事で詳しく解説しています。

PBRの目安|33業種の中央値は0.54〜2.25倍、1倍割れの正しい読み方
PBRの目安を東証33業種の中央値データ(パルプ・紙0.54倍〜情報・通信業2.25倍、2026年9月時点)で解説。1倍割れ=割安とは限らない理由、ROEとの関係式(PBR=ROE×PER)、東証の改善要請と企業の対応状況まで、PBRを投資判断に活かす基準がわかります。
初心者は、まずどちらを見ればいい?
直近の利益が黒字で安定しているなら、まずPERで「利益の何年分か」をつかみ、PBRで「純資産の何倍か」を確かめる順番がわかりやすいでしょう。赤字や利益の急減がある会社では、順番を逆にしてPBRから見ます。
まとめ:主役を決めて、もう一方で裏を取る
PERとPBRのどちらが重要かは、会社の利益がどれだけ当てになるかで決まります。銘柄を見るときは、次の順番で2つを使います。
会社のタイプで主役を決める:赤字・景気敏感・金融はPBR、利益が安定・成長ならPER。純資産の小さい成長企業の赤字はPSRや黒字化後の予想利益で
主役の指標を比べる:同じ業種の平均(東証の業種別PER・PBR)と、その会社の過去の水準
もう一方で裏を取る:ROE=PBR÷PERで、稼ぐ力と市場の期待を分けて読む
両方低ければ理由を確かめる:ROEの推移、一時的な利益、純資産の中身、会社の打ち手
多数の銘柄をまとめた平均では、日本株の51年間で低PBR株が低PER株をやや上回りましたが、2010年以降はほぼ互角です。どちらか一方に決め打ちせず、利益が崩れた局面ではPBR、利益が読める局面ではPERと使い分けるのが実践的です。








