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PERの目安|16倍は割高?業種平均9〜30倍のデータで読む適正ライン

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PER(株価収益率)は一般的に15倍前後が目安とされますが、業種によって9倍から30倍まで開きがあるため、「PER16倍は割高か」という問いに一律の答えはありません。東証プライム市場の業種別PERは、空運業の9.2倍から電気機器の29.8倍まで広がっています(2026年8月末、実績・単純平均)。

本記事では、市場全体のPERの目安を起点に、日本取引所グループ(JPX)が公表する業種別PERデータを使って「自分の見ている銘柄のPERは高いのか低いのか」を判断する方法を解説します。PERの計算式や基本的な意味はPER(株価収益率)とはの記事をご覧ください。

出典:日本経済新聞社「日経平均プロフィル」(2026年9月11日)・日本経済新聞「国内株式指標」(2026年9月14日)・日本取引所グループ「規模別・業種別PER・PBR(連結)」(2026年8月末、プライム市場、単純平均)・株式マーケットデータ・multpl.com(米国指数、2026年9月11日)よりKabuGraph作成。ゾーン区分は一般的な目安

PER15倍が「目安」とされる根拠

日本の株式市場でPER15倍が目安とされる根拠は、日経平均の予想PER(加重平均)が2013年以降おおむね14〜16倍を中心に動いてきたことにあります。2013〜2025年の日次平均は15.3倍、中央値は14.8倍です(日経平均プロフィルよりKabuGraph算出)。

ただし「市場全体のPER」は、利益の基準(予想か実績か)と対象範囲で数値が変わります。2026年9月時点の主な値を並べると次のとおりです。

指標

PER

利益の基準

時点

日経平均(加重平均)

17.0倍

今期予想

2026年9月11日

東証プライム全銘柄(日経)

16.6倍

今期予想

2026年9月14日

東証プライム市場 単純平均(JPX)

19.3倍

直近本決算の実績

2026年8月末

東証プライム市場 加重平均(JPX)

20.8倍

直近本決算の実績

2026年8月末

出典:日本経済新聞社「日経平均プロフィル」、日本経済新聞「国内株式指標」、日本取引所グループ「規模別・業種別PER・PBR(連結)」よりKabuGraph作成

市場全体の目安として使うのは予想PERで、約16〜17倍です。一方、JPXが公表する市場別・業種別のPERは直近本決算の実績ベースです。利益が増えている局面では分母の実績利益が予想利益より小さいため、いまは予想PERより高く出ています(東証プライム 実績19.3倍に対し予想16.6倍)。本記事では、後述の業種別比較にこのJPXの実績PERを使います。

益回りと長期金利の関係

PERの逆数は「益回り」です。PER15倍なら益回りは約6.7%(= 1 ÷ 15)となり、長期金利に対して十分なリスクプレミアムを確保できる水準とされてきました。日本の長期金利(10年国債利回り)は2.98%(2026年9月11日時点)まで上昇し、益回りとのスプレッドは縮小していますが、PER15倍の益回り約6.7%はなお長期金利を約3.7ポイント上回ります。

日経平均PERの推移

ニッセイ基礎研究所の井出真吾氏は2018年12月のレポート「なぜ、日経平均のPERは"15倍が適正"なのか」で、アベノミクス以降の日経平均PERが概ね14〜16倍で推移したことを示し、PER14〜16倍に相当する益回り(6〜7%程度)が「日本株のリスクを負担する対価として投資家が求める利回り」だと説明しています。野村證券の小髙貴久氏も、日経平均の予想PER(同社アナリスト予想ベース)は15倍前後での推移が続いてきたが、2025年7月末には16.6倍と「14〜16倍で推移していた過去と比べて上振れ」していると指摘しています(野村證券 ウェルスタイル、2025年8月)。

ただし、常にこのレンジに収まっていたわけではありません。日経平均プロフィルの実データでは、次のようにレンジを外れた局面があります。

  • 2018年末:11.2倍。米中貿易摩擦で先行き不透明感が高まり、14倍割れが続きました

  • 2020年5月:36.9倍。コロナ禍で予想利益が急減し、株価が戻る中でPERが跳ね上がりました(2020年末も25.3倍)

  • 2025年末:19.0倍。株価の上昇がEPSの伸びを上回り、レンジ上限を超えました

日経平均PER(加重平均)の年末推移

出典:日本経済新聞社「日経平均プロフィル」よりKabuGraph作成。各年末の加重平均PER(2026年は9月11日時点)

2026年9月11日時点の日経平均PERは加重平均ベースで17.0倍と、過去5年平均の約15.5倍(日次平均、KabuGraph算出)をやや上回る水準にあります。

PER16倍は高いのか?低いのか?

結論:PER16倍が高いか低いかは業種によって決まる。市場全体の予想PERは約16〜17倍(日経平均17.0倍、東証プライム全銘柄16.6倍)なので、市場全体との比較では「ほぼ平均的」です。しかし業種別の平均PER(JPX、2026年8月末、実績・単純平均)は、空運業の9.2倍から電気機器の29.8倍まで大きく異なります。

業種による判断の違い

たとえば、実績PER16倍の銘柄があった場合(業種平均はJPX 2026年8月末・東証プライム・単純平均):

  • 電気機器(業種平均PER 29.8倍)なら → 割安。業種平均を46%下回っており、割安に放置される理由がないか深掘りする価値があります

  • 情報・通信業(業種平均PER 19.3倍)なら → ほぼ業種並み。業種平均を17%下回りますが、差は20%以内です。利益成長率や財務など、PER以外の指標で優劣を判断する領域です

  • 建設業(業種平均PER 13.1倍)なら → やや割高。業種平均を22%上回っています。極端ではないため、利益成長でその差を正当化できるかを確認します

このように、PERの高低は「同業他社の平均PER」と比べて初めて意味を持ちます。市場全体の15倍を一律の基準にすると、成長産業を常に「割高」、成熟産業を常に「割安」と誤判断することになります。

東証プライム業種別PER一覧

日本取引所グループ(JPX)は毎月、規模別・業種別のPER・PBRデータを公表しています。以下は2026年8月末時点の東証プライム市場の業種別PER(連結、直近本決算の実績ベース)です。単純平均(時価総額で重み付けしない平均)と加重平均(時価総額合計÷純利益合計)の2種類があり、個別銘柄を業種平均と比べるには単純平均が向いています

PERが高い業種トップ5

順位

業種

単純平均PER(倍)

加重平均PER(倍)

会社数

1

電気機器

29.8

44.2

121

2

精密機器

26.6

34.3

27

3

小売業

23.5

29.2

126

4

繊維製品

23.0

38.3

17

4

機械

23.0

25.5

109

出典:日本取引所グループ「規模別・業種別PER・PBR(連結)」(2026年8月末、プライム市場)よりKabuGraph作成。順位は単純平均による。繊維製品と機械は同率4位

PERが低い業種トップ5

順位

業種

単純平均PER(倍)

加重平均PER(倍)

会社数

1

空運業

9.2

9.2

2

2

電気・ガス業

10.6

13.4

22

3

水産・農林業

11.1

12.2

6

4

石油・石炭製品

11.8

12.3

5

5

海運業

12.0

13.3

5

5

不動産業

12.0

13.8

47

出典:日本取引所グループ「規模別・業種別PER・PBR(連結)」(2026年8月末、プライム市場)よりKabuGraph作成。順位は単純平均による。海運業と不動産業は同率5位

上位には電気機器・精密機器・機械などの製造業が並び、下位には空運・電気・ガス・石油・海運など、公益・エネルギー・運輸系が並びます。ただし空運業(2社)・水産・農林業(6社)・石油・石炭製品(5社)・海運業(5社)は会社数が少なく、1社の業績で平均が大きく動きます。目安としては幅を持って見てください。

加重平均は時価総額の大きい銘柄の利益水準に引きずられます。情報・通信業は単純平均19.3倍に対し加重平均12.5倍で、時価総額上位の銘柄の利益が大きいために低く出ています。逆に電気機器は単純平均29.8倍・加重平均44.2倍で、大型株ほど高く評価されています。

東証プライム 業種別PER比較(単純平均、2026年8月末)

出典:日本取引所グループ「規模別・業種別PER・PBR(連結)」(2026年8月末、プライム市場、単純平均)よりKabuGraph作成。33業種から主要14業種を抜粋

上のグラフを見ると、プライム全体の単純平均19.3倍を境に、電気機器・精密機器・小売・機械などの上側と、空運・電気・ガス・海運・鉄鋼・建設などの下側に分かれることがわかります。実績PER16倍は市場全体(19.3倍)に対しては低めですが、建設業や海運業の平均と比べれば高い水準です。

PERが高くなる業種・低くなる業種の理由

業種間でPERに9倍〜30倍もの差が生まれるのは、主に「将来の利益成長への期待」と「利益の安定性」の2つの要因によります(業種別PERは2026年8月末、東証プライム、実績・単純平均)。

PERが高くなりやすい業種

  • 高成長期待のセクター(電気機器29.8倍・精密機器26.6倍・機械23.0倍):半導体・AI関連のように利益の伸びが続くと見込まれる企業が多く、現在の利益に対して高い株価がつきます

  • ディフェンシブ銘柄(食料品20.7倍・医薬品19.3倍):景気に左右されにくい安定した利益が評価され、市場全体(19.3倍)と同等以上の水準で取引されます

  • 一時的に利益が落ち込んだ業種:株価が回復を織り込んでいてもEPSが低いため、PERが跳ね上がります。この場合の高PERは成長期待ではなく利益の谷を映しています

PERが低くなりやすい業種

  • 景気循環セクター(海運業12.0倍・鉄鋼12.7倍・石油・石炭製品11.8倍):好況時の高い利益が持続しないとみなされ、利益のピークでPERが最も低くなる逆転現象が起きます

  • 規制産業(電気・ガス業10.6倍):収益構造が料金規制に依存し、大幅な利益成長が見込みにくいため、低いPERに落ち着きます

  • 成熟産業(建設業13.1倍・不動産業12.0倍・卸売業15.1倍):市場が成熟しており成長余地が限られるとみなされ、低PERで取引されます

PERだけで判断できない5つのケース

PERは便利な指標ですが、以下のケースではPER単独での判断が難しくなります。

1. 赤字企業(PERが計算できない)

EPSがマイナスの企業ではPERが計算できません。赤字のスタートアップや業績回復途上の企業を評価するには、PSR(株価売上高倍率)やEV/EBITDAなど売上高ベースの指標を使います。

2. 一時的な特別損益でEPSが歪むケース

大規模な資産売却益や減損損失があった期は、EPSが通常の事業収益力を反映しません。特別利益でEPSが膨らんだ期はPERが異常に低く見え、減損でEPSが縮んだ期はPERが異常に高く見えます。営業利益ベースのPERや、過去3年の平均EPSで計算した調整PERも参考になります。

3. 高成長企業のPERが割高に見えるケース

年率30%で利益が成長する企業は、株価が変わらなければPER40倍でも2年後には約24倍(40 ÷ 1.3²)、3年後には約18倍(40 ÷ 1.3³)まで下がります。成長率を加味した割安・割高判断にはPEGレシオ(PER ÷ 利益成長率)が有効です。PEGレシオが1倍以下なら成長率対比で割安と判断されます。

4. 低PER=「バリュートラップ」の可能性

PERが同業他社より明らかに低い銘柄が、長期間にわたって低いままのケースがあります。ガバナンスの問題、構造的な低成長、不透明な資本政策などが市場から嫌気されている場合、PERが低くても株価は上がりません。PBRROEと組み合わせて、資本効率に問題がないか確認しましょう。

5. 会計基準の違い(日本基準 vs IFRS)

日本基準の企業はのれんを毎期償却するためEPSが小さくなりやすく、PERが高く出る傾向があります。IFRS適用企業はのれんを償却しないため、同業種でも会計基準が違えばPERの直接比較はできません

PERの目安を実践で使うための3ステップ

PERの目安を投資判断に活かすには、以下の3ステップで考えるのが実践的です。

ステップ1:業種平均PERと比較する

まず、対象銘柄が属する業種の平均PERをJPXの月次データで確認します。業種平均より20%以上高ければ「やや割高」、20%以上低ければ「やや割安」と判断するのがひとつの目安です。

ステップ2:同業他社と横並びで比較する

業種平均に加えて、直接の競合企業のPERと並べます。たとえば同じ情報・通信業でも、安定収益型のNTT(実績PER13.9倍、2026年9月11日終値、KabuGraph算出)と高成長のSaaS企業ではPERの適正水準が大きく異なります。利益成長率・配当性向・財務リスクが近い企業同士で比較するのがポイントです。

ステップ3:その銘柄自身の過去PERと比較する

同業比較に加えて、その銘柄自身の過去3〜5年の平均PERと比較することで、「この銘柄としては」割高なのか割安なのかがわかります。過去の平均PERから大きく乖離している場合、何がその変化を引き起こしているかを確認しましょう。

比較の軸

何がわかるか

データソース

業種平均との比較

業種内での相対的な割安・割高

JPX月次統計

同業他社との比較

競合との成長期待の差

各社の決算データ

自社の過去との比較

「この銘柄としての」割安・割高

過去の株価・決算データ

KabuGraph作成

PERと組み合わせるべき指標

PERだけで投資判断を完結させるのはリスクがあります。以下の指標と組み合わせることで、より立体的な評価ができます。

指標

PERを補完する視点

使い方

PBR

資産面からの割安度

PERが低くPBRも1倍割れなら資産面でも割安。ただしROEが低い可能性も

PEGレシオ

利益成長率を加味した割安度

PEGレシオ1倍以下なら成長率対比で割安。高PER銘柄の判断に有効

ROE

資本効率

低PER・低ROEの銘柄は「安いなりの理由がある」可能性。PER × ROE = PBRの関係も重要

配当性向

株主還元の持続性

低PER・高配当でも配当性向が100%超なら持続不可能。EPS成長力とセットで確認

KabuGraph作成

とくにPER × ROE = PBRの関係は重要です(PBR = PER × ROE ÷ 100)。PERだけが低くてもROEが低ければPBRも低く、「安い」のではなく「稼げていない」だけかもしれません。

まとめ:PERの目安は「同業種の平均」から始める

PER16倍は市場全体では平均的だが、業種によって割安にも割高にもなるというのが本記事の結論です。

  • 市場全体のPERの目安は予想ベースで約16〜17倍(日経平均17.0倍・東証プライム全銘柄16.6倍、2026年9月)。JPX公表の実績ベースでは東証プライム単純平均19.3倍(2026年8月末)

  • 業種別PER(実績・単純平均)は空運業9.2倍〜電気機器29.8倍と幅広い

  • PERの高低は「同業種の平均PER」と比較して判断する

  • 景気循環株の低PERは「割安」ではなく「利益のピーク」サインの場合がある

  • PBR・PEGレシオ・ROEと組み合わせて立体的に判断する

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コラム著者・編集者

K

KabuGraph編集部

KabuGraph編集部は、投資情報の発信と株式分析ツールの開発に携わるチームです。日本株・米国株の事業分析から、投資に役立つ情報をわかりやすくお届けします。

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