PER・PBR・ROEを図解|決算書の出どころ、4象限マップと大型株10社の実数

PER・PBR・ROEは、株価(時価総額)・純利益・純資産という3つの数字の割り算です。株価は市場で毎日決まり、純利益は損益計算書、純資産は貸借対照表から来ます。
3つはPBR=PER×ROEでつながっています。PERを横軸、PBRを縦軸にした地図に会社を置くと、左上ほどROEが高く、右下ほど低いことが一目で分かります。
この記事では6枚の図で、数字の出どころから、実在の大型株10社が地図のどこにいるかまでを順に見ていきます。
この記事の内容(目次)
3つの数字は株価・損益計算書・貸借対照表から来る
図の上段が3つの材料、下段がその組み合わせです。材料はそれぞれ次のところにあります。
株価 → 時価総額:株価に発行済株式数を掛けたものが時価総額です。会社全体に市場が付けている値段にあたります。
損益計算書 → 当期純利益:売上高から費用や税金を引いた、1年間の最終的な稼ぎです。連結決算では「親会社株主に帰属する当期純利益」を使います。
貸借対照表 → 純資産:資産から負債を引いた残りで、株主の持ち分にあたります。ROEの分母は正式には、純資産から非支配株主持分などを除いた「自己資本」です(東京証券取引所「決算短信・四半期決算短信 作成要領等」p.7)。
実際の画面では1株あたりの数字で計算することが多く、株価÷EPS(1株あたり利益)がPER、株価÷BPS(1株あたり純資産)がPBR、EPS÷BPSがROEです。分子と分母をほぼ同じ株数で割るので、会社全体で計算しても値はほぼ同じになります。
ずれるのは株数の数え方が違うときです。EPSは期中平均の株数(決算短信の作成要領 p.11)、BPSは期末の株数で割り、どちらも会社が持つ自社の株(自己株式)を除きます。時価総額を自己株式込みの発行済株式数で出すと自己株式の多い会社ではずれ、トヨタ自動車(2026年3月期、2026年9月28日終値)のPERは株価÷EPSの10.1倍に対して12.3倍になります。
それぞれの指標の目安や詳しい使い方は、次の各記事で扱っています。

PER(株価収益率)とは|計算式・15倍の目安と東証プライム業種別データで読む割安判断
PER(Price Earnings Ratio・株価収益率)の計算式・15倍の目安・業種別の水準差を解説。JPXの東証プライムPER・PBR推移データと業種別比較チャートで、割安・割高の判断方法がわかります。

PBR(株価純資産倍率)とは|1倍割れ問題と東証改革の核心
PBR(Price Book-value Ratio)の計算式・目安・1倍割れ問題を解説。東証が改善を要請した背景と、PERやROEとの関係から投資判断に活かす方法がわかります。

ROE(自己資本利益率)とは|8%基準の根拠とデュポン3分解の読み方
ROE(自己資本利益率)の計算式・8%の目安(伊藤レポート)・デュポン分析による3要素分解を解説。ROAとの違い、レバレッジによる嵩上げの見抜き方がわかります。
箱の大きさで見る:PERは「何年分」、PBRは「何倍」、ROEは「何%」
割り算の意味は、箱を積んだ図にするとつかみやすくなります。モデル会社として、純利益100億円・純資産1,000億円・時価総額1,500億円の会社を考えます。
PER 15倍:時価総額は、1年分の純利益の箱を15個積んだ高さです。利益がこのまま続くなら、会社全体を利益15年分の値段で買うことになります。
ROE 10%:純資産は純利益の箱10個分です。1年で純資産の1割にあたる利益を稼いでいます。
PBR 1.5倍:時価総額(15個)は純資産(10個)の1.5倍です。市場は、帳簿上の純資産より5割高い値段を付けています。
PBRが「15個÷10個」で出てくることに注目してください。15はPER、10はROE(10%)の逆数なので、PBRはPERとROEだけで計算できます。次の図で、この関係を式で確かめます。
PBR=PER×ROE:掛けると純利益が約分で消える
PERの分母とROEの分子には、どちらも純利益が入っています。2つを掛けると純利益が約分で消え、時価総額÷純資産=PBRが残ります。
図の中段のように、左から右へつなげて読むこともできます。
純資産×ROE=純利益:元手(純資産)にROEを掛けると、1年の利益になる
純利益×PER=時価総額:その利益に、市場がPER倍の値段を付ける
つまり時価総額=純資産×ROE×PER。両辺を純資産で割ると、PBR=ROE×PERになる
言いかえると、PBRの高さは「稼ぐ力(ROE)」と「利益への値付け(PER)」の掛け算です。PBRが低い会社は、ROEが低いか、PERが低いか、その両方です。
市場全体でも同じ式が成り立ちます。東証プライム市場の2026年8月末は、加重平均のPERが20.8倍、同じ資料の当期純利益の合計÷純資産の合計からKabuGraphが求めたROEが8.7%で、掛けると1.8倍になります。日本取引所グループ「規模別・業種別PER・PBR」が公表している加重平均のPBRも1.8倍です。
3つのうち2つが分かれば残りの1つを出せます。式の覚え方はPER・PBR・ROEの覚え方で三角形の図にまとめています。

PER・PBR・ROEをわかりやすく|PBR約1倍のトヨタと約3倍の任天堂は何が違う?
PER・PBR・ROEをわかりやすく解説。PERは利益の何年分、PBRは純資産の何倍、ROEは元手で年何%稼ぐか。お店のたとえでつかみ、トヨタ(PBR0.98倍)と任天堂(3.12倍)の実数でPBR=PER×ROEを確かめます。
PER×PBRの4象限マップ:どこにいるかで何が分かるか
PBR=PER×ROEを並べ替えると、ROE=PBR÷PERです。PERを横軸、PBRを縦軸にとると、左上に行くほどROEが高く、右下に行くほどROEが低い会社になります。平均を境に4つに分けたのが次の図です。
この記事では、境目に東証プライム全体の平均を使います。2026年8月末はPER20.8倍・PBR1.8倍で、ROEに直すと8.7%です(前の節と同じ値)。
ほかに、PBR1倍(時価総額と純資産が同じ)とROE8%(経済産業省の伊藤レポート p.8が最低ラインとした水準)も区切りとして使われます。目安の覚え方はPER・PBR・ROEの覚え方で「15・1・8」としてまとめています。
左上(低PER×高PBR)=ROEが高い:純資産に対してよく稼いでいるのに、利益に対する値段は控えめです。高いROEが続くと見込めるなら割安の候補になります。確かめるのは、ROEの高さが資産売却益のような一時的な利益によるものではないかです。
右上(高PER×高PBR)=成長への期待が大きい:利益の伸びが株価に先に織り込まれています。確かめるのは、会社予想の伸びが期待に見合っているかと、利益が一時的に落ち込んでPERが上がっただけではないかです。期待が外れると、利益の下方修正とPERの縮小が重なって下げやすくなります(PERが高いとどうなる?)。
左下(低PER×低PBR)=期待が小さい:数字の上では割安ですが、市場が利益の先細りを見込んでいることがあります。確かめるのは、今の利益が景気の山の一時的なものではなく、この先も続くかです。
右下(高PER×低PBR)=ROEが低い:PERが高いのは成長期待よりも、純資産に比べて利益が小さいことが原因のことが多い象限です。確かめるのは、利益の落ち込みが一時的か、構造的に稼げていないかです。
低PER・低PBRの株を割安と見てよいかは、PERとPBRのどちらを軸にするかで答えが変わります。会社のタイプ別の使い分けは次の記事で扱っています。

PERとPBRはどちらが重要?|赤字・景気敏感株・銀行はPBR、日本株51年の成績でも比較
PERとPBRはどちらが重要か。答えは会社のタイプ次第で、利益が安定した会社はPER、赤字・景気敏感株・銀行はPBRが軸です。PER134.5倍・PBR0.90倍の三菱ケミカルなど4社と、日本株51年で低PBR株が年12.6%だったデータで使い分けを解説。
実在の大型株10社を地図に置く
実際の会社を置くと、斜めの線(ROEが同じ点を結んだ線)のどこにいるかで稼ぐ力が読めます。時価総額の大きい会社の中から、ROEが高い会社から低い会社まで幅が出るように10社を選び、2026年9月28日の終値と、直近通期の決算短信のEPS・BPSで計算しました。
ROE20%の線より上:中外製薬(ROE21.4%)。PERは24.1倍と10社の中で突出していませんが、稼ぐ力の高さでPBRが5倍を超えています。
ROE10〜20%の間:任天堂・伊藤忠商事・キーエンス・日立製作所・信越化学工業。同じ帯でもキーエンスはPER42.8倍で右上に、伊藤忠商事は17.4倍で左寄りにいます。両社のPBRの差(5.48倍と2.36倍)は、ROEの差よりPERの差(利益への値付け)から来ています。
ROE10%の線上:トヨタ自動車(ROE9.6%)。ROEは市場全体(8.7%)を上回りますが、PERが10.1倍と低いため、PBRは1倍を割っています。
ROE5%の線より下:日本郵政とパナソニックHD。どちらもPERは20倍以上ありますが、ROEは4%に届きません。パナソニックHDは2026年3月期に構造改革費用を計上し、純利益が前年度比48%減の1,895億円になりました(パナソニック ホールディングス 2026年3月期決算短信 p.4)。PER55.0倍の高さには、この利益の落ち込みが含まれています。
灰色の破線(東証プライム全体の平均)で4つに区切ると、10社中7社が右上に入り、右下は0社です。純利益がほぼ半減したパナソニックHDも右上に入るので、象限だけで「成長への期待」と読むと見誤ります。4象限で当たりをつけ、斜めのROEの線で稼ぐ力を確かめるのが、この地図の読み方です。
日本郵政と中外製薬:PBR約7倍の差をROEとPERに分ける
地図の中で対照的な2社を、1株あたりの数字で分解します。日本郵政(2026年3月期)と中外製薬(2025年12月期)は、PERが20.0倍と24.1倍で2割しか違いませんが、PBRは0.75倍と5.17倍で約7倍の差があります。
日本郵政:BPS 3,461.65円 × ROE 3.73% ≒ EPS 129.14円。EPS × PER 20.02倍 ≒ 株価 2,585円で、PBR 0.75倍
中外製薬:BPS 1,230.91円 × ROE 21.43% ≒ EPS 263.73円。EPS × PER 24.12倍 ≒ 株価 6,362円で、PBR 5.17倍
EPSとBPSは日本郵政 2026年3月期決算短信 p.1と中外製薬 2025年12月期決算短信 p.1の値です。ROEとPERは小数第2位で丸めているため、掛け算の結果は「≒」で示しています。
PBRの差(6.9倍)を分けると、ROEの差が5.7倍、PERの差が1.2倍です。2社の値段の差は、ほとんどが稼ぐ力(ROE)の差から来ています。日本郵政のPERは東証プライム全体(20.8倍)とほぼ同じなので、PBRが1倍を割っている主な原因は、式の上ではROEの低さです。
中外製薬は2025年12月期の売上収益営業利益率が47.6%あり、純資産に対して大きな利益を上げています。ROEを売上高利益率・総資産回転率・財務レバレッジの3つに分けて稼ぐ力の中身を見る方法(デュポン分解)は、ROEとはで扱っています。
逆に、ROEの差よりPERの差が大きく効いている組み合わせもあり、トヨタ自動車と任天堂の比較はPER・PBR・ROEをわかりやすくで計算しています。
図を読むときの注意
ROEの値は計算方法で変わる:決算短信の「自己資本当期純利益率」は、期首と期末の自己資本の平均で割ります(東証の決算短信作成要領 p.7)。この記事のEPS÷BPSは、分母のBPSが期末の値です。日本郵政は短信のROEが4.0%、EPS÷BPSが3.7%です。PBR=PER×ROEをぴったり確かめたいときはEPS÷BPSを使います。手順はROEの計算方法で扱っています。
銘柄ページのROEは低めに出ることがある:KabuGraphの銘柄ページのROEは、期末の純資産(非支配株主持分を含む)で割っています。子会社の外部株主の持ち分が大きい会社ほど低く出て、イオンは表の6.1%に対して3.3%、日本郵政は3.7%に対して2.3%です(日本郵政は純資産16.5兆円のうち自己資本が9.7兆円)。銘柄ページのPBR÷PERなら、表とほぼ同じ値(EPS÷BPS)になります。
一時的な損益で点が動く:資産の売却益などで純利益が膨らむと、PERが下がって左へ動き、ROEの高い側に入ります。構造改革費用などで利益が減ると、右へ動いてROEの低い側に入ります。1年の利益だけで位置を決めず、数年分の利益を見ます(PERが当てにならない7つの場面)。
赤字の会社は地図に置けない:純利益がマイナスだとPERは計算できず(PERがマイナスとは)、ROEもマイナスになります。赤字の会社はPBRや売上高を使う指標で見ます。
業種で平均の位置が違う:4象限の「平均」は、市場全体より同じ業種の平均を使う方が比べやすくなります。業種ごとの平均は業種別PER・PBRで確かめられます。
まとめ
PER・PBR・ROEは時価総額(株価)・純利益・純資産の割り算。材料は株価、損益計算書、貸借対照表にある
PBR=PER×ROE:PERとROEを掛けると純利益が約分で消える。PBRの高さは稼ぐ力と利益への値付けの掛け算
PER×PBRの地図では左上ほどROEが高く、右下ほど低い。高PERは成長期待とは限らず、利益の小ささや落ち込みのこともある(右下の会社、右上に入ったパナソニックHD)。象限で当たりをつけ、ROEの線で確かめる
大型株10社では、中外製薬がROE21.4%でPBR5.17倍、日本郵政がROE3.7%でPBR0.75倍(2026年9月28日終値時点)。2社のPBRの差の大半はROEの差

PER・PBR・ROEの覚え方|PBR=PER×ROEはしりとり、目安は「15・1・8」
PER・PBR・ROEの覚え方を解説。3つは株価・利益・純資産の割り算で、英語名の前が分子。PER(株価÷利益)とROE(利益÷純資産)をしりとりでつなぐとPBRに。目安「15倍・1倍・8%」とダイキン工業の実数で解く練習問題つき。








