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ROEの計算式と計算方法|東京エレクトロンの短信で29.6%を再現する3ステップ

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ROEの計算式は「親会社株主に帰属する当期純利益 ÷ 自己資本(期首と期末の平均)× 100」です。分母の自己資本は純資産そのものではなく、純資産から新株予約権・株式引受権・非支配株主持分を引いた額で、決算短信の1ページ目に「(参考)自己資本」として載っています。

東京エレクトロンの2026年3月期なら、純利益5,745億円 ÷ 自己資本の平均1兆9,431億円 × 100 = 29.6%で、決算短信の「自己資本当期純利益率」と一致します(東京エレクトロン 2026年3月期 決算短信 p.1)。一方、分母を純資産にすると、イオンのように6.4%が3.3%へ半分近くに縮む会社もあります。

この記事では、決算短信から数字を拾う3ステップ、計算方法による値の違い、EPS÷BPSでの簡易計算、デュポン分解、Excelの式、よくある間違いを実例で解説します。ROEの意味や目安はROEとはとROEの目安をご覧ください。

ROEの計算式:純利益 ÷ 自己資本 × 100

決算短信の書き方を定めた東京証券取引所の「決算短信・四半期決算短信作成要領等」(2026年7月版)p.25〜26は、ROE(短信での名前は「自己資本当期純利益率」)を次の式で計算するよう定めています。

期末の自己資本だけで割る「当期純利益 ÷ 自己資本 × 100」も簡易式として使われます。どちらも誤りではありませんが、決算短信の値と比べるなら平均で割ります。

出典:東京証券取引所「決算短信・四半期決算短信作成要領等」(2026年7月)よりKabuGraph作成

分子は「親会社株主に帰属する当期純利益」

連結決算の損益計算書では、最終利益が「当期純利益」と「親会社株主に帰属する当期純利益」の2段に分かれます。子会社に外部の株主(非支配株主)がいると、子会社の利益の一部はその株主の取り分になるためです。

ROEは「親会社の株主が出したお金でいくら稼いだか」を測る指標なので、分子は親会社株主の取り分だけにします。決算短信の1ページ目で売上高・営業利益・経常利益と並んでいる利益がこれです。非支配株主の考え方は連結子会社の解説で扱っています。

連結する子会社が無く単体で決算を出す会社の短信(表題に「(非連結)」とあるもの)には、この行が無く「当期純利益」だけが載っています。その場合は当期純利益をそのまま分子に使います(非支配株主がいないので、同じ意味になります)。

分母の「自己資本」は純資産とも株主資本とも違う

貸借対照表の「純資産の部」には、親会社の株主以外の持ち分も入っています。似た3つの言葉は、次のように入れ子の関係です。

  • 株主資本:資本金・資本剰余金・利益剰余金から自己株式を引いたもの。株主が出したお金と、稼いで貯めた利益

  • 自己資本:株主資本+その他の包括利益累計額(保有株の評価差額や為替換算調整勘定など)。ROEの分母はこれ

  • 純資産:自己資本+新株予約権・株式引受権+非支配株主持分。貸借対照表の「純資産合計」

新株予約権と株式引受権は、将来株主になるかもしれない人の持ち分で、まだ株主のものではありません。非支配株主持分は子会社の外部株主の持ち分です。どちらも親会社の株主のものではないので、分母から外します。

期首と期末の平均をとる理由

純利益は1年かけて稼いだ「流れ(フロー)」、自己資本はある時点の「残高(ストック)」です。期末の残高だけで割ると、期中に増えた自己資本まで1年間使っていたことになります。

東京エレクトロンの自己資本は、2025年3月末の1兆8,399億円から2026年3月末の2兆463億円へ、1年で11%増えました。自己株式を1,430億円積み増しても、利益の積み上がりなどがそれを上回ったためです。期首で割ると31.2%、期末で割ると28.1%、平均で割ると29.6%です。平均は、期中の自己資本の水準を近似する値です。

決算短信からROEを計算する3ステップ(東京エレクトロン 2026年3月期)

実際に東京エレクトロン 2026年3月期 決算短信の1ページ目(サマリー情報)だけで計算してみます。単位は百万円です。

出典:東京エレクトロン 2026年3月期 決算短信 p.1よりKabuGraph作成。表の一部を抜き出して再構成
  1. 分子を拾う:「(1) 連結経営成績」の「親会社株主に帰属する当期純利益」574,454百万円

  2. 分母を2期分拾って平均する:「(2) 連結財政状態」の下にある「(参考)自己資本」から、当期末2,046,298百万円と前期末(=当期首)1,839,929百万円。平均は1,943,113.5百万円

  3. 割って100を掛ける:574,454 ÷ 1,943,113.5 × 100 = 29.56…%。小数第2位を四捨五入して29.6%

結果は短信の「自己資本当期純利益率」29.6%と一致します。短信の%は小数第1位未満を四捨五入するルールです(作成要領 p.24)。

念のため貸借対照表(短信 p.6)で確かめると、純資産合計2,069,996百万円から新株予約権23,697百万円を引いた額が自己資本です(百万円未満を切り捨てているため1百万円ずれます)。東京エレクトロンには非支配株主持分がないので、純資産と自己資本の差は新株予約権だけです。

計算方法でROEはどれだけ変わるか

同じ東京エレクトロンの2026年3月期でも、計算方法によって値は27.8%〜29.6%の幅で動きます。

計算方法

ROE

純利益 ÷ 平均自己資本(短信と同じ)

29.6%

純利益 ÷ 期末自己資本

28.1%

EPS ÷ BPS

27.9%

純利益 ÷ 期末純資産

27.8%

出典:東京エレクトロン 2026年3月期 決算短信よりKabuGraph算出。純利益は親会社株主に帰属する当期純利益。EPS 1,254.57円、BPS 4,498.85円

利益を積み上げて自己資本が増えている会社では、期末で割ると低めに出ます。他社や過去と比べるときは、同じ計算方法の値どうしで比べるのが原則です。

EPS÷BPSで手早く計算する

1株当たりの数字だけでもROEの近い値が出せます。東京エレクトロンは1,254.57円 ÷ 4,498.85円 × 100 = 27.9%です。

短信のBPSは、名前に反して自己資本を期末の株式数(自己株式を除く)で割った値です。東京エレクトロンは2,046,298百万円 ÷ 454,849,692株 = 4,498.8円で、短信のBPSと一致します。そのためEPS÷BPSは「期末自己資本で割ったROE」に近い値になり、純資産で割ったときのずれも入りません。

ぴったり一致しないのは、EPSの分母が期中平均の株式数(457,888,732株)、BPSの分母が期末の株式数だからです。自社株買いで株数が減った年は、EPS÷BPSのほうが少し低く出ます。PBR÷PERでROEを逆算するのも同じ計算で、3指標の関係はPER・PBR・ROEをわかりやすくで解説しています。

サイトやアプリのROEが短信と合わないとき

株価サイトやアプリのROEは、期末の値や会社予想の純利益を使って計算していることがあり、短信の値とずれます。比べるときは同じサイトの値どうしにするか、自分で同じ式にそろえて計算します。

KabuGraphの銘柄ページのROEも、全銘柄を同じ式で出すため「直近通期の親会社株主に帰属する当期純利益 ÷ 期末の純資産」で計算した簡易値です(東京エレクトロンは27.8%)。次のイオンのように非支配株主持分が大きい会社では、短信の値より低く出ます。

純資産で割るとROEが低く出る:イオンは6.4%が3.3%に

純資産と自己資本の差が小さい東京エレクトロンでは、どちらで割っても大差ありません。差が大きいのは、外部の株主がいる子会社を多く抱える会社です。上場子会社を持つ親子上場の親会社が典型です。

イオンは2026年2月期末の純資産2兆2,043億円のうち、45%にあたる9,841億円が非支配株主持分です(イオン 2026年2月期 決算短信 p.21)。

出典:イオン 2026年2月期 決算短信 p.1・p.21・p.23よりKabuGraph作成
  • 短信と同じ計算:親会社株主に帰属する当期純利益727億円 ÷ 平均自己資本1兆1,408億円 = 6.4%(短信の自己資本当期純利益率と一致)

  • 分母を純資産にした場合:727億円 ÷ 期末純資産2兆2,043億円 = 3.3%。非支配株主の持ち分まで分母に入り、半分近くに縮む

  • 分子を当期純利益にした場合:当期純利益1,245億円 ÷ 平均自己資本 = 10.9%。非支配株主に帰属する519億円まで分子に入り、1.7倍に膨らむ

デュポン分解でROEの中身を分ける

ROEは3つの比率の掛け算に分けられます(デュポン分解)。利益率・資産の回転・借入のどれがROEを押し上げているかが分かります。

東京エレクトロンの2026年3月期で計算すると次のとおりです(百万円)。

  • 売上高純利益率:574,454 ÷ 2,443,533 = 23.51%

  • 総資産回転率:2,443,533 ÷ 平均総資産2,743,489 = 0.891回

  • 財務レバレッジ:平均総資産2,743,489 ÷ 平均自己資本1,943,113.5 = 1.412倍

23.51% × 0.891 × 1.412 ≒ 29.6%です。東京エレクトロンの高いROEは、借入に頼らず(財務レバレッジ1.4倍)、売上高純利益率の高さで稼いだものだと分かります。

ただし3つを掛けると約分で「純利益 ÷ 自己資本」に戻る式なので、数字の拾い間違いの検算にはなりません。財務レバレッジの分母に期末の純資産を入れれば、分解しても純資産で割った27.8%がそのまま出ます。短信の値とそろえたいときは、財務レバレッジの分母を平均自己資本にします。

3つの比率の読み方はROEとはのデュポン分析の章、財務レバレッジがROAとの差を生む仕組みはROAとROEの違いで解説しています。

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ExcelでROEを計算する式

Excelでは、純利益と2期分の自己資本を入力し、AVERAGE関数で平均をとって割るだけです。

セル

入れるもの

値・式

B1

親会社株主に帰属する当期純利益

574454

B2

期首の自己資本(前期末)

1839929

B3

期末の自己資本

2046298

B4

ROE(短信と同じ)

=B1/AVERAGE(B2:B3)

B5

ROE(期末ベース)

=B1/B3

東京エレクトロン 2026年3月期の数字を入れた例(単位:百万円)。B4・B5の表示形式をパーセント(小数点以下1桁)にすると29.6%・28.1%と表示される。KabuGraph作成

表示形式を%にするなら100は掛けない。数値のまま小数第1位で出したいときは次の式にします。

=ROUND(B1/AVERAGE(B2:B3)*100,1)

複数年を横に並べるときは、上の表とは並べ方を変え、1行目に純利益、2行目に期末の自己資本を年ごとに列で並べます。隣の列(前期末)との平均で割るので、C列の年なら次の式です。

=C1/AVERAGE(B2:C2)

債務超過の会社に備えるなら、自己資本の平均がマイナスのときに「-」を返す式にします。短信も同じ扱いです。

=IF(AVERAGE(B2:B3)<=0,"-",B1/AVERAGE(B2:B3))

四半期決算・IFRS・会社予想で計算するとき

四半期決算は直近12か月の利益で計算する

四半期決算短信のサマリーにはROEの欄がありません。四半期の利益は3か月分・6か月分の累計なので、そのまま割ると通期の値と比べられません。東京エレクトロンの2027年3月期 第1四半期(2026年4〜6月)で比べます(第1四半期決算短信 p.1)。

  • そのまま割る:164,341 ÷ 平均自己資本2,082,177 = 7.9%。3か月分なので低すぎる

  • 4倍する(年率換算):7.9% × 4 ≒ 31.6%。季節で利益が偏る会社ではずれる

  • 直近12か月(TTM):前期の通期純利益574,454 − 前年の第1四半期117,801 + 今期の第1四半期164,341 = 620,994。これを1年前(2025年6月末1,857,686)と今(2026年6月末2,118,056)の自己資本の平均で割って31.2%

前年の第1四半期の数字は2026年3月期 第1四半期決算短信から拾います。TTMのつくり方はROAの計算方法で図解しています。

IFRS・米国基準の会社は欄の名前が違う

国際会計基準(IFRS)の会社の短信では、ROEは「親会社所有者帰属持分当期利益率」という欄になります。分子は「親会社の所有者に帰属する当期利益」、分母は「親会社の所有者に帰属する持分」(日本基準の自己資本に当たる)の期首・期末平均で、考え方は同じです。米国基準の会社は「株主資本当社株主に帰属する当期純利益率」です(作成要領 p.26)。

予想ROEは会社予想の純利益で計算する

今期の予想ROEは、会社予想の純利益を自己資本で割って見積もります。今期末の自己資本はまだ分からないので、直近の期末の値で割るのが手軽です。

ただし、通期の業績予想を出さない会社もあります。東京エレクトロンは2026年9月時点で、2027年3月期について中間期までの予想だけを出し、通期の予想は中間決算の発表時に開示するとしています(2027年3月期 第1四半期決算短信 p.1)。その間は、通期の予想ROEを計算できません。

ROEの計算でよくある間違い

計算した値が短信やサイトと合わないときは、次の点を確かめてください。

  • 純資産で割る:非支配株主持分の大きい会社では、短信の値より大きく下にずれる(イオン:6.4%→3.3%)

  • 株主資本で割る:その他の包括利益累計額が抜ける。東京エレクトロンは平均株主資本で割ると33.4%で、短信の29.6%より高く出る

  • 分子に「当期純利益」を使う:非支配株主の取り分まで入る(イオン:6.4%→10.9%)

  • 期末ベースと平均ベースの値を混ぜて比べる:同じ会社・同じ期でも1〜2ポイント違う(東京エレクトロン:28.1%と29.6%)

  • 四半期の累計利益をそのまま割る:第1四半期なら通期の4分の1程度の値になる

  • 自己資本がマイナスの会社で計算する:分母がマイナスだと、赤字でもROEがプラスに出てしまう。短信は「-」と表示する

  • 特別利益で膨らんだ年の値をそのまま使う:土地や保有株の売却益で一時的に上がったROEは続かない。数年分の推移で見る

計算したROEの目安として、日本企業では経済産業省の伊藤レポート(2014年)p.6が求めた「最低限8%を上回るROE」が一つの基準になります。

ただし水準は業種によって大きく違います。東証33業種の中央値はROEの目安で確認できます。この中央値は各社のROEを期末の純資産で割って出しているため、短信の値より低めに出やすく、非支配株主持分の大きい会社ほど差が開きます。

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コラム著者・編集者

K

KabuGraph編集部

KabuGraph編集部は、投資情報の発信と株式分析ツールの開発に携わるチームです。日本株・米国株の事業分析から、投資に役立つ情報をわかりやすくお届けします。

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