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PERが異常に高い理由|100倍超85社の8割は利益の急減・黒字化直後で分母が小さい

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PERが100倍、1,000倍と異常に高くなる理由の多くは、株価が高すぎることよりも、分母の利益が一時的に小さくなっていることです。

2026年9月28日終値時点で、PERが100倍を超える上場企業は85社。直近の決算を前の期と比べると、68社(8割)は純利益が前期の半分以下に減ったか、前期が赤字だった会社でした。成長への期待だけでPERが100倍を超えている会社は一部です。

たとえば日本製鉄の実績PERは208倍ですが、会社予想の利益で計算した予想PERは12倍、PBRは0.65倍です。この記事では、PERが異常に高くなる5つの理由を実例で示し、前期の利益・予想PER・PBRで見分ける手順を解説します。

PERが異常に高くなる仕組み:利益が0に近づくと跳ね上がる

PERは、株価を1株当たり利益(EPS)で割った値です。

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分母のEPSが小さくなるほど、PERは反比例で大きくなります。株価が1円も上がらなくても、利益が10分の1になればPERは元の10倍に跳ね上がります。

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PERが100倍を超えるルートは、次の2つしかありません。

  • 分子(株価)が高い:今の利益の100年分を超える値段がつくほど、将来の成長が期待されている

  • 分母(利益)が小さい:減損・特別損失・先行投資・赤字からの回復途上などで、その期の利益がゼロに近い

式のうえでは、分母がゼロに近づくほどPERはいくらでも大きくなります。2026年9月28日時点でPERが1,000倍を超えていた3社は、いずれもEPSが1円未満(0.36〜0.60円)でした。

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PER100倍超の85社を調べると、8割は利益が一時的に小さいことが原因

2026年9月28日終値時点で、PERを計算できる上場中の普通株は3,258社、実績PERの中央値は15倍です。このうち100倍を超えるのは85社(2.6%)でした。85社それぞれの直近の通期決算を前の期と比べ、次の①〜④の順に当てはめて分類しました。

出典:東証株価・決算短信よりKabuGraph算出(2026年9月28日終値時点)
  • ①純利益が前期の半分以下に減った:46社(54%)。減損・特別損失や、先行投資・業績悪化で利益が落ち込んだ会社

  • ②前期は赤字だった:22社(26%)。黒字に戻った1年目で、利益がまだ小さい

  • ③①②以外で売上高が20%以上伸びた成長企業:6社(7%)。利益の急減も前期の赤字もなく、成長への期待で株価が高い

  • ④それ以外:11社(13%)。利益は安定しているのに株価が高い。予想PERで見ても中央値は約80倍で、85社の中でいちばん株価の側に理由がある型(理由5)

売上高が20%以上伸びた会社は、85社全体では13社あります。残る7社は、マネーフォワードのように黒字化1年目の会社が②に、トライアルホールディングスのように売上高は伸びても純利益が前期の半分以下に減った会社が①に入っています。

会社予想のEPSで予想PERを計算し直すと、予想のある75社のうち59社は100倍を下回り、38社は50倍を下回ります。実績PERの100倍超は、多くが「その期だけ」の数字です。

ただし、75社の予想PERの中央値は50倍で、市場全体の実績PERの中央値(15倍)の3倍を超えます。利益の落ち込みだけでなく、回復や成長への期待も株価に上乗せされている会社が多いことも分かります。

市場別では、PER100倍超の割合はグロース市場が5.5%(419社中23社)で、スタンダード市場(2.9%)、プライム市場(1.6%)より高くなっています。利益の絶対額が小さい会社ほど、少しの利益の増減でPERが大きく動きます。

PERが異常に高くなる5つの理由【実例】

85社の決算から、PERが異常に高くなる理由を5つの型に分けます。実例の株価指標は2026年9月28日終値時点で、予想PERは最新の会社予想のEPSで計算しています。

銘柄

実績PER

予想PER

PBR

日本製鉄

208.2倍

12.4倍

0.65倍

野村総合研究所

188.1倍

23.9倍

6.63倍

さくらインターネット

690.7倍

99.6倍

4.96倍

フジ・メディアHD

124.7倍

22.4倍

1.07倍

フリー

198.9倍

—

10.19倍

出典:東証株価・各社の決算短信よりKabuGraph算出(2026年9月28日終値時点)。フリーは純利益の会社予想を開示していない

理由1:減損・特別損失で最終利益だけが一時的に減った

本業の稼ぐ力は変わらないのに、一度きりの大きな損失で最終利益(純利益)が消え、PERだけが跳ね上がる型です。純利益が前期の半分以下に減った46社の大半は、この理由1か次の理由2に当たります。

どちらも、損失が一度きりなら翌期の利益は元の水準に戻り、予想PERは普通の水準に収まります。野村総合研究所の減損の経緯は野村総合研究所の企業分析で詳しく扱っています。

理由2:先行投資や不況で本業の利益が谷にある

特別損失ではなく、本業の利益そのものが落ち込んでいる型です。設備投資の減価償却や人材採用などの先行投資が重い時期、景気の底で売上が落ちた時期に起きます。

予想で計算してもPERが100倍前後に残るのは、株価が来期の利益だけでなく、その先の成長まで織り込んでいるということです。利益の谷と成長への期待が重なった型で、期待が外れたときの値下がりも大きくなりやすいので注意が必要です。事業の中身はさくらインターネットの企業分析で解説しています。

理由3:赤字から黒字に戻った直後

前期が赤字で、今期ようやく黒字に戻った会社は、利益がゼロ近くから立ち上がるためPERが極端に高く出ます。85社のうち22社がこの型でした。

黒字化1年目の利益は、特別利益や税効果で上下しやすく、PERが本業の実力を映していないことがあります。営業利益の推移と来期の会社予想を合わせて見ることが大切です。

理由4:高い成長が期待されている

本業の利益が伸びているのにPERが100倍を超えるのは、売上が急成長していて、市場が数年先の利益まで先取りしている場合です。85社のうち売上高が20%以上伸びた会社は13社で、利益の急減も前期の赤字もない成長企業に絞ると6社でした。

  • フリー:2026年6月期の売上高は424億円(27.6%増)、営業利益は11億円(78.6%増)と本業の利益は伸びています。純利益は、前期に税効果で膨らんでいた反動で21.3%減の11億円。2024年6月期は101億円の最終赤字で、利益の水準がまだ小さいため、実績PERは199倍、PBRは10.2倍です。会社は2027年6月期の売上高を522億円と見込む一方、純利益の予想は開示していません(フリー 2026年6月期決算短信)

成長型の高PERは、利益が伸びれば自然に下がります。株価が変わらず利益が4倍になればPERは約50倍、10倍になれば約20倍です。問題はその成長がどれだけ確かかで、利益の成長率とPERを比べるPEGレシオで確かめます。フリーの収益構造はフリーの企業分析を参照してください。

理由5:利益以外の要因で株価が決まっている

利益とは別の理由で株価が支えられていると、利益が小さいままでもPERは高く出ます。この型のPERの高さは、利益の見通しではなく別の要因を映しています。

  • 保有資産の価値:不動産や有価証券を多く持つ会社は、利益が小さくても株価が資産価値から大きく離れにくい。PER100倍超の85社のうち14社はPBRが1倍を下回っています。うち12社は①②の型とも重なる、利益が急減した会社や黒字化直後の会社で、PERは高くても株価は1株当たり純資産より安い

  • TOB(株式公開買付け)・買収提案:買付価格が示されると、株価は利益と関係なくその価格の近くで動く(TOBとは)

  • 株主優待の人気:優待を目当てにした個人投資家の買いは利益の増減と関係なく入るため、利益が小さくても株価が下がりにくいことがある。85社のうち8社は外食チェーンで、④に入るトリドールホールディングス(実績PER196倍)とコロワイド(131倍)は、どちらもグループの店舗で使える株主優待を出している(トリドールHD「株主優待について」、コロワイド「株主様ご優待のご案内」)

  • テーマ・需給:話題のテーマに資金が集まると、利益の裏付けがないまま株価だけが上がることがある。売買の少ない小型株ほど起きやすい

市場全体でも起きる:東証1部の単純平均PERが100倍を超えた2003〜2004年

分母が縮んでPERが跳ね上がる現象は、個別株だけでなく市場全体でも起きます。日本取引所グループ「規模別・業種別PER・PBR」の長期データでは、東証1部の単純平均のPER(連結)が2003年8月から2004年6月まで100倍前後で推移していました。

東証1部のPERと1株当たり利益(2002〜2004年、連結・単純)

出典:日本取引所グループ「規模別・業種別PER・PBR」長期データ(連結総合・単純、市場第一部)よりKabuGraph作成。1株当たり利益がマイナスの月(2002年7月〜2003年6月)はPERが算出されていない。1株当たり利益は単元換算した単純平均で、個別企業のEPSとは水準が異なる
  • 2002年7月〜2003年6月:1株当たり利益がマイナスになり、PERは算出されていない

  • 2003年8月〜2004年6月:1株当たり利益は4円前後。PERは93〜116倍だったが、PBRは1.1〜1.4倍と純資産並み

  • 2004年7月:1株当たり利益が4.36円から15.84円に増え、PERは107.4倍から28.1倍へ1か月で下がった(PBRは1.4倍→1.2倍)

1株当たり利益がマイナスだった2002年7月〜2003年6月の統計に使われていたのは、3月決算企業の2002年3月期(2001年4月〜2002年3月)の実績です。この1年は、東証1部の合計で最終赤字になるほど利益が落ち込みました。

  • ITバブルの崩壊:世界的なIT不況で半導体や通信機器の価格が崩れ、日立製作所・富士通・NECなど電機大手が相次いで巨額の最終赤字を出した

  • 銀行の不良債権処理:貸倒引当金の積み増しに、株価低迷による保有株式の評価損が重なり、全国の銀行の当期損益は合計4兆1,989億円の赤字(全国銀行協会「2001年度(平成13年度)全国銀行決算」)

2004年7月に1株当たり利益が一気に増えたのは、統計に入る3月決算企業の利益が、2003年3月期から2004年3月期の実績に入れ替わったためです。JPXの計算要領では、財務数値は各社の決算期末の実績で、決算期の3か月後の月末に新しい期へ更新されます(3月決算なら6月末。当時の連結の系列は毎年7月に切り替わっている)。2003年8月〜2004年6月の100倍前後は、利益がまだ小さかった2003年3月期の実績で計算された数字でした。

実績PERは直近の決算期の利益で計算されるので、利益の小さい年の決算が使われている間は、業績が回復に向かってもPERだけが高く出ます。個別株で予想PERを確かめる(理由1〜3)のと同じ理屈です。

PERが100倍を超えていた時期は、株価が高かった時期ではなく利益が底だった時期です。2009年6月〜2010年5月にも1株当たり利益がマイナスでPERが算出されず、再開した2010年6月のPERは33.6倍と高めでしたが、PBRは0.8倍でした。いまの東証の水準は東証の業種別PER・PBRで確認できます。

異常に高いPERを見分ける4つのチェック

PERが100倍を超えていたら、次の順で原因を確かめます。

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  1. 前期の利益と比べる:純利益が前期から大きく減った、または前期が赤字なら、原因は分母です。KabuGraphの銘柄ページ(例:日本製鉄)の業績推移で、過去数年の純利益を並べて見ます

  2. 予想PERを計算する:株価を会社予想のEPSで割ります。予想PERが同業並みに戻るなら一時的な落ち込み、予想でも100倍前後なら期待が上乗せされています。予想EPSは決算短信の冒頭の表の業績予想欄(1株当たり当期純利益)にあります。株価サイトによって表示するのが実績PERか予想PERかが違うので、見ている数字がどちらかも確かめます(KabuGraphの銘柄ページは実績PER)

  3. 売上高の伸びを見る:利益が落ち込んでいないなら、売上高の成長率を確認します。年20%以上の成長が続くなら成長期待型で、PEGレシオで割高かどうかを判断します

  4. PBRを見る:PBRが1倍前後以下なら、PERが高くても資産から見て割高とは言えません。PBRも高いなら、株価は将来への期待で決まっています(PBRとは)

PERが異常に高い株を買う前に確かめること

見分けた型によって、確かめることが違います。

  • 一時的な落ち込み(理由1〜3):焦点は「会社予想どおり利益が戻るか」。予想が下方修正されれば、予想PERも跳ね上がります

  • 成長への期待(理由2の一部・理由4):焦点は「期待どおり成長が続くか」。成長が鈍ると、利益の伸び悩みとPERの縮小が重なり、株価が大きく下がりやすくなります

  • 利益以外の要因(理由5):PERでは判断できません。資産価値・買収の条件・株主優待・需給を別に確かめます

高PERの株を持ったときに株価がどう動きやすいかはPERが高いとどうなる、PERが実態とずれる場面と補い方はPERが当てにならない場面、PERは低い方がいいのかはPERは低い方がいい?高い方がいい?で解説しています。

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まとめ:異常に高いPERは「分母」から疑う

  • PERが異常に高くなるのは、株価(分子)が高いか、利益(分母)が小さいかのどちらか。実際に多いのは分母が小さい方

  • PER100倍超の85社のうち、68社(8割)は純利益が前期の半分以下に減ったか前期が赤字。利益の急減・黒字化直後のどちらにも当たらない成長企業は6社

  • 日本製鉄(実績208倍→予想12倍)、野村総合研究所(188倍→約24倍)のように、一度きりの損失なら予想PERは普通の水準に戻る

  • さくらインターネットのように予想PERでも100倍前後なら、利益の回復に加えて先の成長まで株価に織り込まれている

  • 見分け方は、前期の利益 → 予想PER → 売上高の伸び → PBRの順

コラム著者・編集者

K

KabuGraph編集部

KabuGraph編集部は、投資情報の発信と株式分析ツールの開発に携わるチームです。日本株・米国株の事業分析から、投資に役立つ情報をわかりやすくお届けします。

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