PER・PBR・ROEをわかりやすく|PBR約1倍のトヨタと約3倍の任天堂は何が違う?

PERは「株価が1株あたり利益の何年分か」、PBRは「株価が1株あたり純資産の何倍か」、ROEは「株主のお金(自己資本)で1年に何%の利益を出したか」を表す指標です。
PERとPBRは、株価が高いか安いかを測る「値札」の物差しです。ROEは株価を使わず、会社の「稼ぐ力」を測ります。そして3つはPBR=PER×ROEという1本の式でつながっています。
この記事では、お店を1軒買う場面にたとえて3つをつかみ、トヨタ自動車と任天堂の実際の数字(2026年9月28日終値時点)で計算します。PBR約1倍のトヨタと約3倍の任天堂の差がどこから生まれているのかも、この式で読み解きます。
この記事の内容(目次)
PER・PBR・ROEをひとことで言うと
3つの指標の計算式と意味を、1つの表にまとめます。
指標 | 計算式 | ひとことで |
|---|---|---|
PER(株価収益率) | 株価 ÷ 1株あたり利益(EPS) | 株価は利益の何年分か |
PBR(株価純資産倍率) | 株価 ÷ 1株あたり純資産(BPS) | 株価は純資産の何倍か |
ROE(自己資本利益率) | 純利益 ÷ 自己資本 | 元手で1年に何%稼いだか |
読み方の向きは、PERとPBRは「低いほど、利益や純資産に比べて株価が安い」、ROEは「高いほど、効率よく稼いでいる」です。
PERとPBRは株価を使う:株価が動けば毎日変わります。「いまの値段が高いか安いか」を見る物差しです
ROEは株価を使わない:次の決算が出るまで変わりません。「会社そのものがどれだけ稼げるか」を見る物差しです
1つずつの詳しい計算や注意点は、次の各記事にまとめています。

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お店を1軒買うと考えるとわかりやすい
株を買うことは、会社の持ち主の一人になることです。そこで、売りに出ているパン屋を1軒まるごと買う場面で考えてみます。
お店の値段:2,000万円
正味の財産(純資産):1,000万円(オーブン・店舗・現金などの持ち物から、借入金を引いた残り)
1年の利益:100万円(税金を払った後)
PER:値段は利益の何年分?
2,000万円 ÷ 100万円 = PER 20倍。利益がこのまま続けば、20年分の利益で買値を取り戻せる計算です(利益は配当として受け取るか、店に貯まって財産を増やします)。
PERが高いほど、元を取るまでに年数がかかります。ただ、利益が毎年増えそうな店なら20年より早く取り戻せるので、買い手は高い値段でも払います。PERの高さには「これから利益が伸びる」という期待が含まれるのです。低いPERと高いPERの見分け方はPERは低い方がいい?高い方がいい?で扱っています。
PBR:値段は正味の財産の何倍?
2,000万円 ÷ 1,000万円 = PBR 2倍。買ってすぐ店をたたみ、財産を帳簿どおりに売れたとしても、戻ってくるのは1,000万円です。残りの1,000万円は「この店がこれから稼ぐ力」に払った分といえます。
反対に、値段が純資産より安い(PBR1倍未満)なら、帳簿の上では「たたんだ方が得」な値段です。ただ、財産が帳簿どおりに売れるとは限らず、稼ぐ力が弱いから安く値付けされていることもあります。
ROE:元手でどれだけ稼いでいる?
100万円 ÷ 1,000万円 = ROE 10%。店の財産(元手)1,000万円が、1年で10%の利益を生んでいます。
同じ1,000万円の元手で年200万円を稼ぐ店なら、ROEは20%です。ROEは値段に関係なく、お店そのものの「稼ぐ力」を表す成績表です。
株では「1株あたり」で計算する
実際の株式は、会社を丸ごとではなく1株単位で売り買いします。そこで、利益と純資産を株式数で割った「1株あたり」の数字を使います。
EPS(1株あたり利益)=純利益 ÷ 株式数(EPSとは)
BPS(1株あたり純資産)=純資産 ÷ 株式数(正確には、非支配株主持分などを除いた自己資本 ÷ 自己株式を除いた株式数)
会社全体で計算しても(時価総額 ÷ 純利益)、1株あたりで計算しても(株価 ÷ EPS)、分子と分母を同じ株式数で割るだけなので、結果はほぼ同じです。
EPS・BPS・ROEは、通期の決算短信の1ページ目(サマリー情報)に載っています。IFRSの会社(トヨタなど)では、ROEは「親会社所有者帰属持分当期利益率」、BPSは「1株当たり親会社所有者帰属持分」という名前です。PERとPBRは株価とともに毎日動くので、証券会社のアプリやKabuGraphの銘柄ページで確かめるのが手早い方法です。
3つのつながり:PBR=PER×ROE
3つの指標は、株価・利益・純資産という3つの数字の割り算でできています。そのため、PBRはPERとROEの掛け算に分解できます。
パン屋の例でも、PER 20倍 × ROE 10% = PBR 2倍 と一致します。
この式を言葉にすると、PBR(純資産に対する値札の高さ)は、「稼ぐ力(ROE)」と「その利益に市場がいくら払うか(PER)」の掛け算です。
PBRが低い会社:ROEが低い(稼ぐ力が弱い)か、PERが低い(利益のわりに値段が付いていない)か、その両方
PBRが高い会社:ROEが高いか、利益の伸びを期待されてPERが高いか、その両方
市場全体でも同じ式が成り立ちます。東証プライム市場全体では、PER 20.8倍 × ROE 8.7% ≒ PBR 1.8倍です(2026年8月末、加重平均。日本取引所グループ「規模別・業種別PER・PBR」よりKabuGraph算出。ROEは当期純利益の合計÷純資産の合計。純資産に非支配株主持分を含むため、自己資本で割るROEよりやや低めに出ます)。

PER・PBR・ROEを図解|決算書の出どころ、4象限マップと大型株10社の実数
PER・PBR・ROEを6枚の図解で整理。3つは株価・純利益・純資産の割り算で、PBR=PER×ROEは約分で成り立ちます。PER×PBRの4象限マップと、中外製薬(PBR5.17倍)・日本郵政(0.75倍)など大型株10社の実数(2026年9月28日時点)で読み方を確かめます。
トヨタと任天堂の実数で計算してみる
実在の会社で確かめます。例にするのは、どちらも3月決算の大型株であるトヨタ自動車と任天堂です。株価は2026年9月28日の終値、EPSとBPSは2026年3月期の決算短信(トヨタ自動車・任天堂)の数字を使います。
項目 | トヨタ自動車 | 任天堂 |
|---|---|---|
株価(9月28日終値) | 2,986.5円 | 7,999円 |
EPS(2026年3月期) | 295.25円 | 364.51円 |
BPS(2026年3月期末) | 3,062.82円 | 2,562.41円 |
PER(株価÷EPS) | 10.1倍 | 21.9倍 |
ROE(EPS÷BPS) | 9.6% | 14.2% |
PBR(株価÷BPS) | 0.98倍 | 3.12倍 |
検算:PER×ROEがPBRになる
トヨタ自動車:PER 10.12倍 × ROE 9.64% = 0.975 → PBR 0.98倍と一致
任天堂:PER 21.94倍 × ROE 14.23% = 3.122 → PBR 3.12倍と一致
表の数字は四捨五入しているため、検算には1桁多い値を使っています。
PBRの差はどこから来ているか
任天堂のPBRはトヨタの約3.2倍です。これをROEとPERに分けると、次のようになります。
ROE(稼ぐ力)の差:約1.5倍(14.2% ÷ 9.6%)
PER(利益1円に払う値段)の差:約2.2倍(21.9倍 ÷ 10.1倍)
2つを掛けると1.48 × 2.17 ≒ 3.2倍で、PBRの差と一致します。PBRの差には、稼ぐ力(ROE)の差よりもPERの差、つまり市場が利益の先行きをどう見ているかの差の方が大きく効いています。トヨタのPBRが1倍を割っているのは、ROEが約10%ありながら、利益1円に対して約10円しか払われていないためです。
会社予想で見ると、PERの差はさらに開きます(約2.2倍→約2.7倍)。9月28日の終値を、会社が出している2027年3月期の予想EPSで割ると次のとおりです(第1四半期決算短信時点。トヨタ自動車・任天堂)。
トヨタ自動車:予想PER 約11.0倍(予想EPS 272.17円。純利益は15.5%減の予想)
任天堂:予想PER 約29.7倍(予想EPS 268.90円。純利益は26.9%減の予想)
任天堂は減益の予想でもPERが約30倍あり、市場が今期の減益より先の利益まで見込んで値段を付けていると読めます。
PERが低いのが「安く放置されている」からなのか、「利益が減ると見られている」からなのかは、PERの数字だけでは分かりません。最新の数字は銘柄ページ(トヨタ自動車・任天堂)で確かめられます。
目安はどれくらい?
3つとも「何倍・何%なら正解」という絶対の基準はありません。それでも、出発点になる数字はあります。
PER:東証プライムの平均は19〜21倍。2026年8月末の実績PERは単純平均19.3倍、加重平均20.8倍です(日本取引所グループ「規模別・業種別PER・PBR」)。昔から目安とされてきた「15倍前後」より高く、2023年の15〜17倍台(加重平均)から上がってきました。業種によっても大きく違うので、同じ業種の会社や、その会社の過去の水準と比べるのが基本です(PERの目安)
PBR:1倍が分かれ目。1倍を割ると、株価が帳簿上の1株あたり純資産を下回っている状態です。2026年3月時点で、東証プライムの27%がPBR1倍割れでした(東京証券取引所「資本コストや株価を意識した経営」に関する4年目の取組み)。業種別の水準はPBRの目安へ
ROE:8%が最低ライン。経済産業省の伊藤レポート(2014年)が、日本企業に「最低限8%を上回るROE」の達成を求めた数字です。2026年3月時点で、東証プライムの43%がROE8%未満でした(同じ東証資料)。業種別はROEの目安へ
業種ごとの最新のPER・PBRは、東証の業種別PER・PBRのページで毎月更新しています。

PERの目安|16倍は割高?業種平均9〜30倍のデータで読む適正ライン
PER16倍は高いのか低いのか。日経平均・東証プライムの予想PER(約16〜17倍)と、JPX公表の業種別PER(2026年8月末、空運業9.2倍〜電気機器29.8倍)を使い、業種ごとの適正水準と割安・割高の判断基準を解説します。
3つを組み合わせて見るコツ
3つは1つずつ見るより、PBR=PER×ROEの関係を使って組み合わせると、株価の意味を読み取りやすくなります。
ROEが高いのにPERが低い:稼ぐ力のわりに値段が安い、割安の候補です。ただし、土地の売却益のような一時的な利益でROEが膨らんでいないかを決算短信で確かめます
ROEが低く、PBRも1倍割れ:稼ぐ力が弱いから安い、という状態です。「PBRが低いから買い」ではなく、ROEを上げる計画(事業の入れ替え・株主還元など)が出ているかを見ます
ROEもPERも高い(PBRが高い):稼ぐ力と成長への期待の両方が値段に入っています。成長が鈍ると、利益の伸びが止まるうえにPERも縮み、株価が大きく下がりやすくなります(PERが高いとどうなる?)
よくある疑問
ROEは高ければ高いほどいい?
高いほど良いとは限りません。ROEの分母は自己資本なので、借りたお金で利息を上回る利益を稼いだり(財務レバレッジ)、自社株買いで自己資本を減らしたりしても上がります。赤字が続いて自己資本が小さくなった会社では、少しの利益でROEが跳ね上がることもあります。
ROEが高いときは、借入金への頼り具合を映す自己資本比率や、総資産に対する利益率(ROA)もあわせて確かめます(ROAとROEの違い)。
PERが「赤字」や「—」になるのはなぜ?
赤字の会社はEPSがマイナスになるため、PERを計算しません。KabuGraphの銘柄ページでは、直近の通期が最終赤字の会社はPERの欄に数字ではなく「赤字」と出します。赤字の会社の見方はPERがマイナスのときで解説しています。
PERとPBR、どちらを重視すればいい?
利益が安定して出ている会社はPER、利益が大きくぶれる会社や資産の多い会社はPBRが使いやすい、というのが大まかな使い分けです。どちらか一方で決めず、ROEをはさんで両方を見るのが基本です。

PERとPBRはどちらが重要?|赤字・景気敏感株・銀行はPBR、日本株51年の成績でも比較
PERとPBRはどちらが重要か。答えは会社のタイプ次第で、利益が安定した会社はPER、赤字・景気敏感株・銀行はPBRが軸です。PER134.5倍・PBR0.90倍の三菱ケミカルなど4社と、日本株51年で低PBR株が年12.6%だったデータで使い分けを解説。
まとめ
PER=株価が利益の何年分か。低いほど利益に比べて安いが、成長への期待が入ると高くなる
PBR=株価が純資産の何倍か。1倍が分かれ目で、1倍を割ると帳簿上の純資産より安い
ROE=元手(自己資本)で1年に何%稼いだか。株価を使わない「稼ぐ力」の成績表で、8%が最低ラインの目安
3つはPBR=PER×ROEでつながる。トヨタ(PBR0.98倍)と任天堂(3.12倍)の差は、ROEの差(約1.5倍)よりPERの差(約2.2倍)の方が大きい
3つの指標をまとめて覚えるコツはPER・PBR・ROEの覚え方で紹介しています。










