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ROAの計算式と計算方法|任天堂の短信で9.5〜15.1%に分かれる分子・分母の選び方

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ROA(総資産利益率)の計算式は「利益 ÷ 総資産 × 100」です。決算短信(日本基準)の1ページ目に載っている「総資産経常利益率」は、東京証券取引所の作成要領で「経常利益 ÷ 期首と期末の総資産の平均 × 100」と決められています。

一方、手早く計算するときは「当期純利益 ÷ 期末の総資産」を使うことが多く、同じ会社・同じ年でも値が変わります。任天堂の2026年3月期は、決算短信の総資産経常利益率が15.1%、当期純利益を期末の総資産で割ると11.1%でした。ROAは、計算方法をそろえてから比べるのが大前提です。

この記事では、分子(どの利益を使うか)と分母(期末か平均か)の選び方、決算短信のどの欄から数字を拾うか、Excelの式、四半期決算から計算する方法とよくある間違いを、任天堂とNTTの決算短信で確かめます。ROAの意味はROA(総資産利益率)とは、業種ごとの水準はROAの目安で解説しています。

ROAの計算式:利益 ÷ 総資産 × 100

分子は損益計算書に載る1年間の利益、分母は貸借対照表の総資産(資産合計)です。総資産は負債と純資産の合計と同じ額なので、「総資本利益率」と呼ばれる指標も中身は同じです(財務省 財務総合政策研究所「キーワードで見る法人企業統計『総資本利益率』」)。

KabuGraph作成

式は1本でも、分子に使える利益が4〜5種類、分母の取り方が2通りあり、組み合わせで値が変わります。迷ったら、目的に合わせて次のどちらかにそろえます。

  • 決算短信の値と比べたいとき:経常利益 ÷ 期首・期末平均の総資産。日本基準の決算短信と同じ定義です(IFRSの会社は税引前利益で同じ計算)

  • ROEと並べて見たいとき:親会社株主に帰属する当期純利益 ÷ 期首・期末平均の総資産。分子がROE(自己資本利益率)と同じになるので、ROEがROAの何倍かで借入の効き方(財務レバレッジ)が読めます

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分子の選び方:どの利益を使うかで何を測るかが変わる

分子の利益は、損益計算書の上から順に次の4つが使われます。下に行くほど、本業以外の損益や税金が混ざります。

  • 営業利益:本業の稼ぐ力だけを見ます。ただし分母の総資産には現預金や投資有価証券も入るので、金融資産を多く持つ会社ほどROAが低めに出ます

  • 経常利益:営業利益に受取利息・受取配当金・持分法による投資損益・為替差損益などを足し引きした利益。日本基準の決算短信のROA(総資産経常利益率)はこれを使います

  • 税引前利益:税金を引く前の利益。日本基準では経常利益に特別利益・特別損失を加えて求めます。IFRSの決算短信のROAはこれを使います(IFRSには経常利益・特別損益の区分がなく、税引前利益を直接出します)

  • 当期純利益:税金を引いた最終利益。ROEとそろえるなら、このうち「親会社株主に帰属する当期純利益」を使います。固定資産の売却益や減損損失などの一時的な損益で大きく振れます

このほか、営業利益に受取利息・受取配当金と持分法による投資損益を足した「事業利益」を分子にする方法もあります。総資産に含まれる金融資産や関連会社株式から得た収益も分子に数え、分母と中身をそろえる考え方です。決算短信には載らないので、損益計算書から自分で足し合わせます。

任天堂は営業利益と経常利益で約1,820億円違う

分子の違いが大きく出る例が任天堂です。2026年3月期の営業利益は約3,600億円でしたが、受取利息(約460億円)、持分法による投資利益(約830億円)、為替差益(約440億円)などが加わり、経常利益は約5,420億円になりました(任天堂 2026年3月期 決算短信 添付資料p.7)。

任天堂の総資産3兆8,053億円のうち、現金及び預金が1兆7,918億円、有価証券と投資有価証券が合わせて8,459億円で、総資産の約7割を現預金と有価証券が占めます(同 添付資料p.5)。こうした会社で営業利益を分子にすると、分母には金融資産が入っているのに運用益は分子に入らず、ROAが低く出ます。

IFRSの会社は税引前利益で計算する

IFRS(国際会計基準)で決算書を作る会社の損益計算書には、経常利益の区分がありません。決算短信のROAも「資産合計税引前利益率」(税引前利益 ÷ 期首・期末平均の資産合計 × 100)に置き換わります(東京証券取引所「決算短信・四半期決算短信作成要領等」2026年7月版 p.26)。NTTの決算短信では同じ指標が「総資産税引前利益率」という名前で載っています。米国基準で開示する会社では「総資産税引前当期純利益率」(税引前当期純利益 ÷ 期首・期末平均の総資産 × 100、同 作成要領 p.26)です。

分母の選び方:期末の総資産か、期首・期末の平均か

利益は1年間かけて積み上がる「流れ」の数字、総資産はある日時点の「残高」の数字です。1年間の利益に対応させるなら、期首(前期末)と期末の総資産を平均するのが理屈に合います。

決算短信の総資産経常利益率も、財務省の法人企業統計の総資本利益率も、分母は期首・期末の平均です。期首の総資産は、決算短信の「連結財政状態」の欄に前期末の値として並んでいるので、1冊でそろいます。

期末だけで割っても、総資産が毎年少しずつしか変わらない会社なら差は小さく済みます。差が大きくなるのは、期中の大型買収や増資で総資産が急に増えた年です。

NTTは期末で割ると2.22%、平均で割ると2.70%

NTTは2025年10月1日に住信SBIネット銀行を連結子会社にしました。取得時点で約12.9兆円の資産を持つ銀行が加わったことなどで、総資産は1年で30.1兆円から46.7兆円に増えています(NTT 2025年度 決算短信〔IFRS〕 p.10・p.23)。

出典:NTT 2025年度 決算短信〔IFRS〕よりKabuGraph算出

当社に帰属する当期利益1兆370億円を期末の総資産で割ると2.22%、平均で割ると2.70%です。銀行の利益は連結した10月以降の半年分しか入っていないのに、資産は期末に丸ごと入っているため、期末で割ると低く出ます。

前年度(2024年度)の同じ計算は、期末で割ると3.33%、平均で割ると3.35%でした。期末同士で比べると1.1ポイントの低下に見えますが、平均同士なら0.65ポイントです。平均で比べても残る低下には、総資産が大きく利益率の薄い銀行業が加わった影響が含まれます。

決算短信から計算する手順(任天堂 2026年3月期)

日本基準の会社なら、決算短信の1ページ目(サマリー)だけで計算できます。任天堂の2026年3月期 決算短信(2026年5月8日公表)で、決算短信と同じ総資産経常利益率を計算してみます。決算短信の全体の読み方は決算短信とはで解説しています。

出典:任天堂 2026年3月期 決算短信よりKabuGraph作成
  1. 「(1)連結経営成績」から経常利益を拾う:542,196百万円。当期純利益で計算するなら「親会社株主に帰属する当期純利益」の424,056百万円

  2. 「(2)連結財政状態」から総資産を2期分拾う:当期末3,805,312百万円と、前期末(=期首)3,398,515百万円

  3. 総資産を平均する:(3,398,515 + 3,805,312)÷ 2 = 3,601,913.5百万円

  4. 割って100を掛ける:542,196 ÷ 3,601,913.5 × 100 = 15.05…%。小数第2位を四捨五入して15.1%

  5. サマリーの「総資産経常利益率」と照合する:15.1%で一致。合わなければ、拾った欄か期を取り違えています

作成要領は%表示を原則として小数第1位未満四捨五入と定めているので、手順どおりに計算すれば、原則として決算短信の値と小数第1位まで一致します。KabuGraphの任天堂の銘柄ページでも、業績表に「総資産」の列を表示すると、通期ごとの経常利益・純利益・総資産を並べて確認できます。

分子と分母の組み合わせで9.5%〜15.1%まで変わる

同じ決算短信の数字でも、分子と分母の組み合わせを変えると次のようになります。

分子の利益(百万円)

期末で割る
3,805,312

平均で割る
3,601,914

営業利益
360,117

9.5%

10.0%

経常利益
542,196

14.2%

15.1%

当期純利益
424,056

11.1%

11.8%

出典:任天堂 2026年3月期 決算短信よりKabuGraph算出。当期純利益は親会社株主に帰属する当期純利益。平均は2025年3月末と2026年3月末の総資産の平均

最も低い9.5%と最も高い15.1%では5.6ポイントの差があります。他の会社と比べるときや、サイトに載っているROAと見比べるときは、どの利益をどの総資産で割ったかを先に確かめます。

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Excelで計算する式

決算短信の数字を表計算ソフトに入れておくと、複数年・複数社をまとめて計算できます。A列に項目名、B列に金額(百万円)を入れる場合の例です。

セル

入れるもの

入力例

B2

経常利益

542196

B3

期首の総資産(前期末)

3398515

B4

期末の総資産

3805312

B5

ROA(平均で割る)

=B2/AVERAGE(B3:B4)

B6

ROA(期末で割る)

=B2/B4

任天堂 2026年3月期の数字を入れた例。B5・B6はセルの表示形式をパーセント(小数点以下1桁)にすると15.1%・14.2%と表示される。KabuGraph作成
  • ×100は式に入れず、セルの表示形式でパーセントにする:桁の取り違えを防げます

  • 決算短信と同じ丸めにしたいとき:=ROUND(B2/AVERAGE(B3:B4)*100,1) で15.1(%の数値)になります

  • 複数年を横に並べるとき:上の表とは別のシートに、B列から右へ古い順に、2行目に各期の利益、3行目に各期末の総資産を入れます。4行目のC列に =C2/AVERAGE(B3:C3) と入れて右へコピーすると、前期末と当期末の組み合わせが1列ずつずれていきます(いちばん古いB列の期は前期末が無いので計算しません)。B列に2025年3月期、C列に2026年3月期の任天堂の数字を入れると、C4は15.1%になります

四半期決算から計算するときは直近12か月にそろえる

四半期決算短信のサマリーには、総資産経常利益率の欄がありません。第1四半期(3か月分)の利益をそのまま総資産で割ると、1年分の利益で割った通期のROAと比べられなくなります。

任天堂の2027年3月期第1四半期(2026年4〜6月)の経常利益は206,150百万円です。これを6月末の総資産3,815,896百万円で割ると5.4%で、通期の15.1%の3分の1ほどに見えます(任天堂 2027年3月期 第1四半期決算短信)。

4倍して年率にする方法もありますが、利益が季節で偏る会社では実態からずれます。任天堂の2026年3月期は、10〜12月の経常利益(219,802百万円)が4〜6月(95,822百万円)の2倍以上ありました。

四半期の途中でROAを出すときは、直近4四半期の利益の合計(直近12か月)を使います。直近12か月の利益は「前期の通期 − 前期の同じ四半期までの累計 + 今期の四半期までの累計」で求めます。分母は、1年前の四半期末と今の四半期末の総資産の平均です。

出典:任天堂 2026年3月期 決算短信・2026年3月期 第1四半期決算短信・2027年3月期 第1四半期決算短信よりKabuGraph算出

任天堂の直近12か月の経常利益は652,524百万円、総資産の平均は3,644,285百万円(2025年6月末の3,472,673百万円と2026年6月末の3,815,896百万円の平均)で、ROAは17.9%です(任天堂 2026年3月期 第1四半期決算短信)。通期の15.1%より高いのは、2026年4〜6月の経常利益が前年同期の2倍以上に増えたためです。

ROAの計算でよくある間違い

計算そのものは割り算1回ですが、次の取り違えで値が大きくずれます。

  • 3か月分・6か月分の利益で割る:四半期累計の利益をそのまま使うと低く出ます。直近12か月にそろえます

  • 定義の違うROAを並べる:任天堂の2026年3月期は、当期純利益 ÷ 期末総資産なら11.1%、決算短信の総資産経常利益率は15.1%です。比べる数字は、すべて同じ式で計算し直します

  • 総資産ではなく純資産で割る:任天堂の当期純利益を期末の純資産2兆9,552億円で割ると14.3%で、ROAではなくROE(決算短信の自己資本当期純利益率は14.9%)に近い値になります

  • 連結と個別の数字を混ぜる:決算短信のサマリーには、連結の後に「(参考)個別業績の概要」として親会社単体の経常利益や総資産も「(1)個別経営成績」「(2)個別財政状態」と同じ番号の見出しで載っています。任天堂の連結の経常利益542,196百万円を個別の総資産の平均2,274,612百万円で割ると23.8%になり、連結で計算した15.1%とかけ離れます。分子も分母も「連結」の欄から拾います

  • IFRSの会社で経常利益を探す:経常利益の区分はありません。税引前利益か営業利益で計算し、比べる相手も同じ利益にそろえます

  • 決算期を変えた年をそのまま使う:決算期変更の年は9か月や15か月などの変則決算になり、利益が12か月分ではありません。12か月に換算するか、その年を比較から外します

  • 業種の違う会社と水準を比べる:銀行のように預金を元手に資産が膨らむ業種は、ROAが1%を下回るのが普通です。水準の良し悪しは同じ業種の中で判断します

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まとめ

  • 計算式:ROA(%)= 利益 ÷ 総資産 × 100

  • 決算短信のROA:日本基準は経常利益 ÷ 期首・期末平均の総資産(総資産経常利益率)、IFRSは税引前利益で同じ計算

  • 分子:本業を見るなら営業利益、決算短信とそろえるなら経常利益、ROEと並べるなら親会社株主に帰属する当期純利益

  • 分母:期首・期末の平均が基本。買収や増資で総資産が急に増えた年は、期末で割ると低く出る

  • 四半期:直近12か月の利益を、1年前と今の総資産の平均で割る

  • 比べるとき:任天堂は組み合わせ次第で9.5%〜15.1%。比べる数字はすべて同じ式で計算し直す

コラム著者・編集者

K

KabuGraph編集部

KabuGraph編集部は、投資情報の発信と株式分析ツールの開発に携わるチームです。日本株・米国株の事業分析から、投資に役立つ情報をわかりやすくお届けします。

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