フィル・カンパニー(3267)の企業分析|駐車場の上に店舗を建てる「フィル・パーク」とガレージハウス、今期は営業益3.8億円へ下方修正

フィル・カンパニー(3267)は、コインパーキングなど駐車場の上の空間に店舗を建てる空中店舗「フィル・パーク」と、郊外の土地に建てるガレージ付き賃貸住宅「プレミアムガレージハウス」を企画・設計・施工する会社です。土地オーナーから建築を請け負うだけでなく、自社で土地を買って建物ごと投資家に売る開発販売も手がけます。
2025年11月期は売上高82.3億円(前期比+14.6%)、営業利益5.9億円(同+38.8%)と増収増益でした(2025年11月期 決算短信)。しかし2026年11月期は、金利と建築費の上昇で土地オーナーの投資判断が慎重になったことに加え、開発案件の売却が一部来期にずれ込むため、7月に営業利益予想を8.0億円から3.8億円へ引き下げました(通期連結業績予想の修正に関するお知らせ)。上期(2025年12月〜2026年5月)は1.2億円の営業赤字です。
一方で、将来の業績につながる請負の受注残高は50.6億円、開発中の案件の残高(原価ベース)は77.9億円(2026年5月末)あり、下期は開発した物件の売却が業績を左右します(2026年11月期 第2四半期決算短信)。株価は652円、時価総額は約37億円、予想PERは13.0倍、予想配当利回りは3.83%です(2026年10月1日終値)。この記事では、事業の仕組み、業績と下方修正の中身、財務、競合との違い、投資家が見るべき点を整理します。
会社概要 — 駐車場の上と郊外の土地で「土地活用」を提案
フィル・カンパニーは2005年6月に設立され、2006年3月に第1号の「フィル・パーク八重洲」を竣工させました。「Phil=共存共栄」を企業理念に掲げ、土地オーナー・入居者・地域の「三方良し」となる土地活用の企画を事業にしています(有価証券報告書(第21期) 沿革・経営方針)。
証券コード・市場:3267(東証スタンダード)
設立:2005年6月
本社:東京都中央区築地(フィル・パーク TOKYO GINZA Shintomi Lab.に入居)
経営陣:代表取締役社長 外山晋吾(2025年2月就任)、取締役会長 髙橋伸彰(2005年の共同設立者)
従業員:連結123名(2026年5月末。2024年11月末は84名)
決算期:11月(これまでの配当は期末のみ)
主要株主:髙橋伸彰氏 21.52%、合同会社NOB 6.55%、ONGAESHIキャピタル投資事業有限責任組合1号 3.39%、日本郵政キャピタル 3.35%(2026年5月31日。自己株式を除く発行済株式に対する割合で、信託銀行の信託口〈日本マスタートラスト信託銀行 9.07%など〉は除いて記載)
出典:有価証券報告書(第21期)・半期報告書(第22期) 大株主の状況・フィル・カンパニー 2026年11月期 第2四半期決算説明資料 p.2〜3・2026年11月期 第2四半期決算短信よりKabuGraph作成
会社は決算説明資料で、主要株主を「髙橋 伸彰(合同会社NOB含む)」とまとめて記載しています(フィル・カンパニー 2026年11月期 第2四半期決算説明資料 p.2)。合わせると約28%を創業者側が持つ株主構成です。外山社長は公認会計士で、エディオンの取締役やリクルートホールディングスなどを経て、資本提携先のONGAESHI Holdingsから2023年12月に副社長として加わり、2025年2月に社長に就きました(代表取締役の異動に関するお知らせ)。
沿革 — マザーズ上場から一部へ、そしてスタンダードへ
2005年6月:東京都世田谷区で設立
2006年3月:第1号「フィル・パーク八重洲」竣工
2016年11月:東証マザーズに上場
2017年11月:日本郵政キャピタル、いちごと資本業務提携
2019年1月:ガレージ付賃貸住宅の企画会社バリュープランニング(現プレミアムガレージハウス)を完全子会社化
2019年12月:東証一部に市場変更
2023年2月:ONGAESHI Holdings・Tryfunds、カヤックと資本業務提携
2023年10月:プライム市場からスタンダード市場へ移行(プライムの上場維持基準である流通株式時価総額100億円に対し、2022年11月末は36.6億円だった。スタンダード市場への選択申請に関するお知らせ)
2024年1月:中期経営計画「Leap to the Next Stage」を策定。10月に関西支店(京都市)を開設
2025年2月:外山晋吾氏が代表取締役社長に就任
2026年4月:中部支店(名古屋市)が営業を始める(フィル・カンパニー 2026年11月期 第2四半期決算説明資料 p.39)
2026年9月:木造住宅のロビンスジャパン(千葉県八千代市)の全株式を取得する契約を締結(株式取得に関するお知らせ)
出典:有価証券報告書(第21期) 沿革・フィル・カンパニー 2026年11月期 第2四半期決算説明資料・各開示よりKabuGraph作成
売上の6割は土地オーナーからの請負
事業セグメントは「空間ソリューション事業」の1つだけで、売上は売り方(スキーム)ごとに開示されています。2025年11月期は、土地オーナーから企画・設計・施工を請け負う「請負受注」が約6割、自社で土地を買って建物ごと投資家に売る「開発販売」が約3割、賃料収入などの「その他」が約7%でした。
スキーム別の売上高(2025年11月期)
会社予想の2026年11月期(7月の修正後)は、請負受注46億円・開発販売35億円・その他7億円の合計88億円を見込んでいます(フィル・カンパニー 2026年11月期 第2四半期決算説明資料 p.9・p.50)。期初計画は請負53億円・開発販売40億円・その他7億円でした。
事業を理解する — 2つの商品と2つの売り方
商品は、都市部の商業地に建てる「フィル・パーク」と、郊外の住宅地に建てる「プレミアムガレージハウス」の2つです。それぞれを、土地オーナーの土地に建てる「請負受注」と、自社で土地を買って開発し投資家に売る「開発販売」の2つの方法で提供しています(有価証券報告書(第21期) 事業の内容)。

空中店舗「フィル・パーク」— 駐車場を残したまま上に店舗をつくる

フィル・パークは、コインパーキングとして使われている土地などに、1階の駐車場を残したまま2階より上に店舗やオフィスを載せる建物です。駐車場の収益を最大限に残すことを前提に、柱の置き方を工夫して駐車台数を減らさず、原則としてエレベーターを付けずに階段で動線をつくります(有価証券報告書(第21期) 事業の特徴)。
対象の土地:駐車場の上部空間、大通りから一本裏手の通り沿い、狭小地など、通常の設計では活用しにくい都市部の商業地(フィル・カンパニー 2026年11月期 第2四半期決算説明資料 p.38)
テナントと投資額:飲食・美容・クリニック・オフィスなど。1棟あたりの投資額は1〜2億円(同 p.35)
実績:全国で累計285棟(竣工予定を含む、2026年5月末)。うち関東が239棟、関西が28棟(同 p.39の地域別の集計。上のスライドp.38の請負230棟+開発54棟=284棟に、p.44の「その他」1棟を加えた数)
提供範囲:企画・設計・施工からテナント誘致・管理までをまとめて担い、企画料と工事代金を受け取る(有価証券報告書 事業の特徴、フィル・カンパニー 2026年11月期 第2四半期決算説明資料 p.34)
例えば2024年7月竣工の「フィル・パーク大阪阿倍野」は、天王寺駅から徒歩約7分の路地裏にあり、以前はコインパーキングでした。既存の駐車場を維持したまま、2〜3階に美容室とネイルサロンが入っています(フィル・パーク公式サイト 実績紹介)。
ガレージ付賃貸住宅「プレミアムガレージハウス」— 駅から遠い土地で借り手を集める

プレミアムガレージハウスは、1階が車庫や趣味・SOHOに使えるガレージ、2階が住居の賃貸住宅です。駅から遠く、一般的なアパートやマンションでは借り手がつきにくい郊外の土地を主な対象にしています(有価証券報告書(第21期) 事業の内容、フィル・カンパニー 2026年11月期 第2四半期決算説明資料 p.37)。
入居者の集め方:入居を希望する人をあらかじめ登録しておく独自の「入居待ち登録」の仕組みを持つ。登録件数は10,575件以上、入居率は98.6%以上(いずれも2026年5月末、会社開示。フィル・カンパニー 2026年11月期 第2四半期決算説明資料 p.37)
投資額:1棟あたり5,000万〜1億円(同 p.37)
実績:全国で累計289棟(2019年の子会社化より前の竣工を含む、2026年5月末。同 p.39の地域別の集計で、p.38の請負274棟+開発14棟=288棟とは1棟違う)
受注の比重:2025年11月期の請負受注はガレージハウスが38件・29.2億円で、フィル・パーク(16件・28.9億円)を件数で大きく上回った(2025年11月期 決算短信)
2026年9月に買収契約を結んだロビンスジャパンは、木造の注文住宅とリフォームを手がけ、木造のガレージハウスの施工実績もあります。会社は、その施工ノウハウを使ってガレージハウスの提供エリアを広げるとしています(ロビンスジャパン株式会社の株式取得に関するお知らせ)。
2つの売り方 — 請負受注と開発販売で売上の出方が違う

請負受注:土地オーナーから企画・設計・施工を請け負う。売上は工事の進み具合に応じて計上し、受注から竣工まではおおむね1年〜1年半(フィル・カンパニー 2026年11月期 第2四半期決算説明資料 p.42〜43)。契約時に計上する企画・提案の売上は受注額の約5%で、原価がかからないため粗利率は100%。工事中から竣工にかけては売上が大きい分、利益率が下がる(有価証券報告書 事業等のリスク)
請負の代金:原則として契約時・着工時・竣工引渡時に、それぞれ総額の3分の1を受け取る。先にお金が入るため、受注が増えても資金負担は生じにくいと会社は説明している(IRサイト よくあるご質問)
開発販売:自社で土地を買い、建物を建ててテナントを付け、不動産投資家に売る。売上は引き渡し時に一括で計上するため、1件で四半期の業績が大きく動く(有価証券報告書 事業等のリスク)。売るまでは土地と建物が在庫(販売用不動産)として貸借対照表に載る
顧客の入口:問い合わせ・提案の8割強は金融機関からの紹介(フィル・カンパニー 2026年11月期 第2四半期決算説明資料 p.10)。銀行・信用金庫などとビジネスマッチング契約を結んで顧客を紹介してもらう
ストック収入とM&A — 「規模」から「利益率」へ

2026年7月、会社は既存事業の方針を「スケール(規模拡大)重視」から「骨太で利益率重視の事業」へ切り替えると表明しました(フィル・カンパニー 2026年11月期 第2四半期決算説明資料 p.11)。建てて売るフロー収入に加えて、賃料や管理料が続けて入るストック収入を増やすのが柱です。
管理とマスターリース:竣工後の建物管理(PM・BM)や一括借り上げ、定期修繕の受注を増やす(フィル・カンパニー 2026年11月期 第2四半期決算説明資料 p.13)
借地権スキーム:自治体や大企業の遊休地を借りて自社で建て、賃料を得る。日本郵政グループとの協業1号案件として、東京都小平市の社宅跡地(約244坪)を借り、環境配慮型の「Sustainable PGH」2棟を2027年夏頃に竣工させる計画(日本郵政グループとの協業1号案件成約に関するお知らせ)。2026年8月には、茨城県つくば市の商業施設の一画(約995㎡)に35年間の事業用定期借地権を設定し、「(仮称)フィル・パークつくば」を建てて運営する契約も結んだ。収益への寄与は2027年11月期以降(事業用定期借地権設定契約の締結に関するお知らせ)
テナントへの出資:ベーカリーのMerci(2026年5月)、公共施設などでカフェを運営するWAT(2026年10月)にマイノリティ出資し、フィル・パークへの出店につなげる(フィル・カンパニー 2026年11月期 第2四半期決算説明資料 p.30、Merciへのマイノリティ出資に関するお知らせ(2026年5月12日)、WATへのマイノリティ出資に関するお知らせ)
M&A:ロビンスジャパンの全株式を3.08億円(助言費用などを含め約3.38億円)で取得。2025年12月期の売上高は22.6億円、営業利益は100万円で、2026年11月期の第4四半期から連結する(株式取得に関するお知らせ)

日本郵政キャピタルは2017年からの資本提携先で、自己株式を除く発行済株式の3.35%を持つ株主です(2026年5月末、半期報告書)。小平市の案件では日本郵政キャピタルから土地を紹介され、フィル・カンパニーは入居者からの賃料を得ます(協業1号案件のお知らせ)。
業績推移と財務分析
通期業績 — 売上は5年で2倍、利益は2019年の水準に届かない
売上高はコロナ禍の2020年11月期に39.7億円まで落ちた後、2025年11月期には82.3億円と2倍強になりました。一方、営業利益はチャートの期間では2019年11月期の11.0億円が最も大きく、その後は2021年11月期の7.2億円を除いて1〜6億円台です。売上の伸びに比べて利益率の回復が遅いのがこの会社の課題で、会社自身も「売上高は増収傾向にあるが、利益面に課題」と認めています(フィル・カンパニー 2026年11月期 第2四半期決算説明資料 p.19)。
通期業績推移(売上高・営業利益・純利益・営業利益率・売上高成長率)
2020年11月期:新型コロナの感染拡大で4〜6月は原則在宅勤務となり、土地オーナーへの企画提案が難しくなった。営業活動の本格再開は10月で、売上高は43.5%減、営業利益は1.3億円(2020年11月期 決算短信)
2022年11月期:開発販売の売上が7.2億円と前期(31.5億円)から大きく減り、売上高は19.4%減、営業利益は1.7億円(2022年11月期 決算短信・2025年11月期 決算説明資料 p.54 ※PDFのページ番号。スライドの番号は53)
2023〜2025年11月期:売上高と営業利益が3期続けて増えた(2025年11月期 決算説明資料 p.14 ※PDFのページ番号。スライドの番号は13)。2025年11月期は請負の受注件数が54件と過去最高を更新し、開発販売では大型案件を含む4件を引き渡し、全四半期で営業黒字となった(2025年11月期 決算短信)。ただし期初の売上高計画100億円には届かず、2025年11月に82億円へ下方修正していた(利益は上方修正。業績予想の修正に関するお知らせ(2025年11月18日))
2026年11月期(予想):売上高は6.9%増の88.0億円を見込む一方、営業利益は35.5%減の3.8億円、営業利益率は4.3%に下がる計画(通期連結業績予想の修正に関するお知らせ)
2026年11月期の下方修正 — 営業利益は8.0億円から3.8億円へ
項目 | 期初予想 | 修正予想 | 前期実績 |
|---|---|---|---|
売上高(百万円) | 10,000 | 8,800 | 8,233 |
営業利益(百万円) | 800 | 380 | 588 |
経常利益(百万円) | 750 | 355 | 569 |
純利益(百万円) | 600 | 270 | 398 |
1株配当(円) | 25 | 25 | 20 |

会社が挙げた修正の理由は次のとおりです(業績予想の修正に関するお知らせ・フィル・カンパニー 2026年11月期 第2四半期決算説明資料 p.9)。
今期に受注する請負案件の売上:9億円の減少。金利上昇と中東情勢で一部の土地オーナーの投資姿勢が慎重になり、期待利回りの低下で成約率が悪化した
開発販売:5億円の減少。建築資材の納期遅延で一部案件の竣工が遅れたうえ、案件ごとの収益性を最大にするため売却の時期を見直し、一部が来期にずれる
前期までに受注した請負案件:2億円の増加。追加工事などによる
原価:0.7億円の悪化。建築資材・労務費の高止まりと、中東情勢を含む地政学リスクによる資材高騰
販管費:0.5億円の増加。下期に一時的な戦略費用を見込む
会社は、建築費の上昇は期初計画に織り込んでいたとしたうえで、想定外だったのは(1)前期第4四半期の受注増の反動で第1四半期が新規案件の組成・提案の「種まき期間」になったこと、(2)中東情勢の緊迫化や金利上昇懸念が重なり、土地オーナーの意思決定が想定以上に慎重になったことの2点だと説明しています(フィル・カンパニー 2026年11月期 第2四半期決算説明資料 p.50)。

利上げとは|政策金利が株価・為替・住宅ローンに波及するメカニズム
利上げ(政策金利の引き上げ)が株価・為替・住宅ローンに与える影響をわかりやすく解説。日銀の利上げ動向と業種別の株価への影響パターンがわかります。
上期(2025年12月〜2026年5月)— 営業赤字、受注は2Qに持ち直し
上期(6か月累計)は売上高32.5億円(前年同期比17.5%減)、営業損失1.2億円(前年同期は2.0億円の黒字)でした。第2四半期だけ(2026年3〜5月の3か月)では売上高12.1億円、営業損失1.5億円です(2026年11月期 第2四半期決算短信・第1四半期決算短信よりKabuGraph算出)。
請負受注の売上:23.6億円(9.9%減)。前期下期の受注高が前年同期を下回ったため(フィル・カンパニー 2026年11月期 第2四半期決算説明資料 p.17)
開発販売の売上:5.8億円(43.6%減)。引き渡しは1件で、案件ごとの利益を最大にするため売却・引き渡しの時期を見直した(同 p.17)
売上総利益率:22.7%(前年同期23.9%)。前期は収益性の高い大型案件の引き渡しがあったことに加え、建築価格の上昇で施工原価が上がった(同 p.17、第2四半期決算短信)
販管費:8.6億円(前年同期7.4億円)。採用の進んだ前期から人員が増え、人件費が4.65億円から5.65億円になった(フィル・カンパニー 2026年11月期 第2四半期決算説明資料 p.18)
純損益:0.2億円の赤字にとどまった。千代田区の賃貸物件の内装設備の譲渡とマスターリース解約による特別利益2.58億円(固定資産売却益0.84億円、受取補償金1.5億円など)と、株式給付信託の終了に伴う特別損失0.97億円を計上したため(第2四半期決算短信、固定資産の譲渡に関するお知らせ、株式給付信託の終了に関するお知らせ)
受注の面では、上期の請負受注は17件・18.2億円(前年同期23件・27.1億円)でした。フィル・パークは4件・6.9億円(同10件・18.3億円)と大きく減り、ガレージハウスは13件・11.3億円(同13件・8.8億円)と金額は増えています(第2四半期決算短信)。第1四半期(3か月)の受注高は3.0億円でしたが、第2四半期(3か月)は15.2億円に戻しました。
請負の受注高・受注残高と開発プロジェクト残高(四半期)
下期の焦点 — 開発案件6件の売却
修正後の通期予想を達成するには、下期(6〜11月)だけで売上高55.5億円・営業利益5.0億円が必要です。前年の下期(売上高42.9億円・営業利益3.9億円)を3割ほど上回る水準です(通期予想と上期実績からKabuGraph算出)。
請負受注:通期の売上計画46億円のうち42億円は前期までに受注した案件で、工事が予定どおり進めば計上できると会社は説明している(フィル・カンパニー 2026年11月期 第2四半期決算説明資料 p.50)
開発販売:通期の売上計画は35億円(期初40億円)。上期の5.8億円を除くと、下期に約29億円が必要。下期に売れる案件は6件(7月時点で小田原市・渋谷区が竣工済み、目黒区2件と港区が2026年7月、世田谷区が8月に竣工予定)で、テナント誘致は順調だという(同 p.10・p.50)。その後、目黒区の「フィル・パーク目黒通り」(7月15日)と「フィル・パーク中目黒II」(7月)、港区の「フィル・パーク東麻布II」(7月31日)が竣工したと会社が公表した(いずれも自社の開発物件)
売却の開示:7月31日に目黒区のフィル・パーク(土地・建物)の売買契約を結び、8月31日に引き渡す予定と開示した。売却額は前期売上高の10%以上で、業績予想に織り込み済み(販売用不動産の売却に関するお知らせ)。9月29日には川崎市の土地(建築条件付き)を売却したが、業績への影響は来期以降(同)
受注計画:今期の請負受注高の計画は、期初の95億円から52億円以上に引き下げた。上期は18億円で、下期に34億円以上(前年同期比9.7%増)を見込む。上期の金融機関経由の問い合わせは前年同期の120%、提案は164%に増えたという(フィル・カンパニー 2026年11月期 第2四半期決算説明資料 p.10)
財務 — 開発用地の仕入れで現金が減り、借入が増えた
開発販売を増やすと、土地の購入や建築費を売却前に払うため、販売用不動産(在庫)と借入が一緒に増えます。2025年11月期から開発用地の取得を増やしたことで、貸借対照表の形が変わってきました。
財務の推移(現金及び預金・販売用不動産・有利子負債・自己資本比率)
現金の減少:現金及び預金は2025年11月末の50.4億円から5月末に29.9億円へ減った。上期の営業キャッシュフローは26.8億円のマイナスで、棚卸資産(開発用の土地・建物)の増加12.5億円と、請負の顧客から先に受け取る前受金の減少8.1億円が主な要因(第2四半期決算短信 キャッシュ・フロー計算書)
借入:有利子負債は37.0億円(短期8.1億円、1年内返済予定の長期13.8億円、長期15.1億円)で、現金及び預金を上回った。上期の支払利息は0.30億円で、前年同期(0.11億円)の約2.6倍
6月以降の用地仕入:9月18日に、世田谷区の下北沢駅の徒歩圏にあるフィル・パーク用地(249.91㎡)の売買契約を結んだ。仕入価格は前期末の純資産(33.4億円)の30%以上、つまり10億円以上で、決済は10月23日の予定。収益への寄与は2027年11月期以降(開発用地の仕入に関するお知らせ(9月18日))。ほかに藤沢市(7月15日)と世田谷区の二子玉川(9月17日)でもフィル・パーク用地の購入契約を結んだ(いずれも純資産の30%未満)。7月31日・9月29日の売却と並行して、新しい用地の仕入れも続いている
自己資本比率:35.9%(2025年11月末は33.3%)。2023年11月末までの50%前後から下がった
株主還元 — 配当性向50%を上限に、今期は25円を据え置き
2026年11月期の配当は、7月の下方修正後も期初予想どおり年25円(前期比5円増)を据え置きました。同時に、利益成長とともに増配する従来の方針から、「配当性向50%を上限とし剰余金の配分として株主還元を強化」する方針に転換しています(フィル・カンパニー 2026年11月期 第2四半期決算説明資料 p.8)。
1株配当と配当性向の推移
減益でも据え置く理由:中長期の成長シナリオに揺らぎはなく、一時的な損益の変動で還元を減らすべきではないこと、手元流動性と財務の健全性を維持できていることの2点(フィル・カンパニー 2026年11月期 第2四半期決算説明資料 p.50)
予想配当性向:49.7%(25円÷修正後の予想EPS 50.26円)で、新しい方針の上限に近い
普通配当の推移:2023年11月期の5円、2024年11月期の10円、2025年11月期の15円と増え、2026年11月期は年25円を予定する。2019年と2021年の配当は記念配当・感謝配当だけだった
自己株式の消却:役員・従業員向けの株式給付信託を2026年3月に終了し、信託から戻った自己株式33,100株(発行済株式の0.57%)を4月30日に消却した(自己株式の消却に関するお知らせ)
株主優待:実施していない(IRサイト よくあるご質問)
株価指標(2026年10月1日終値)
株価:652円
時価総額:約37億円
PER:実績8.8倍(2025年11月期EPS 74.13円)/予想13.0倍(会社予想EPS 50.26円)
PBR:1.06倍(2025年11月末BPS 615.54円)
配当利回り:実績3.07%(年20円、うち記念配当5円)/予想3.83%(年25円)
ROE:12.7%(2025年11月期)
出典:東証株価・フィル・カンパニー 2025年11月期 決算短信・2026年11月期 第2四半期決算短信よりKabuGraph算出(2026年10月1日終値)
東証スタンダード市場の建設業(62社)の平均は、加重平均でPER8.4倍・PBR1.2倍です(2026年8月末、東証「規模別・業種別PER・PBR」、KabuGraphの業種別PER・PBR)。PERとPBRで比べると、フィル・カンパニーは実績PERが業種平均並み、予想PERは上回り、PBRは下回る水準です。
株価は2026年2月末の1,152円から、第1四半期決算(4月14日、営業利益は前年同期比81.0%減)を経て5月末に651円まで下がり、7月の下方修正の後も600円台で推移しています(7月末は612円。月末終値、東証株価)。
競合との比較
フィル・パークについて、会社は「現在明確な競合他社はない」と認識しつつ、ハウスメーカーや駐車場運営会社が似た事業を始めれば競争が激しくなることをリスクに挙げています(有価証券報告書(第21期) 事業等のリスク「競合の状況」)。実際の競争は、土地オーナーが「その土地を何に使うか」を選ぶ場面で起きます。
駐車場のまま貸す
パーク24(4666):時間貸駐車場「タイムズ」を運営し、遊休地を活用した駐車場や、土地オーナー向けに駐車場経営による土地活用を提案している(パーク24 駐車場サービス)
フィル・カンパニー:駐車場を1階に残したまま、上の空間から店舗の賃料を得る提案。駐車場と空中店舗を組み合わせた土地活用として、駐車場を維持しながら安定収益を得られる点を売りにする(フィル・パーク公式サイト 土地活用をご検討の方)
賃貸住宅などを建てる
大東建託(1878):土地の有効活用を提案して賃貸住宅の建築を請け負い、完成後は子会社が一括で借り上げて入居者に転貸する(大東建託 2026年3月期 決算短信 セグメント情報)
東建コーポレーション(1766):アパート・賃貸マンションの企画提案と施工を行い、多くを子会社が一括借り上げで運営する(東建コーポレーション 2026年4月期 決算短信 セグメント情報)
スターツコーポレーション(8850):地域密着の営業で、賃貸住宅をはじめ商業ビル・ホテル・高齢者施設・保育施設・物流倉庫などの土地活用を提案する(スターツコーポレーション 2026年3月期 決算短信)
フィル・カンパニーの立ち位置
駅から遠い郊外ではガレージ付き賃貸、商業地の駐車場や狭小地では空中店舗と、一般的なアパートが建てにくい土地に絞る
一方、建てた後の一括借り上げや管理による継続収入は小さく、「その他」の売上は2025年11月期で5.9億円(売上高の約7%)にとどまる
会社 | 売上高 | 営業 | 時価総額 |
|---|---|---|---|
フィル・カンパニー | 82.3 | 7.2% | 37 |
大東建託 | 19,847.4 | 6.8% | 10,844 |
スターツ | 2,519.1 | 14.4% | 2,506 |
東建 | 3,865.4 | 5.8% | 1,761 |

大東建託(1878)の企業分析|管理戸数135万戸の賃貸住宅大手、売上の5割超が一括借上の家賃収入でROE20.5%・配当性向50%
大東建託(1878)は土地オーナーに賃貸住宅を建て、35年一括借上で管理まで担う。管理戸数135万戸、2026年3月期は営業利益1,352.6億円で過去最高。受注減と借入増、新リース会計の影響、積水ハウスなど競合との違い、株価指標を解説。

スターツコーポレーション(8850)の企業分析|建設・ピタットハウス・賃貸管理の一貫体制で営業利益率14.4%、5期連続の営業増益
スターツコーポレーション(8850)は賃貸住宅の建設から入居募集(ピタットハウス)、管理までを一貫して担う。2026年3月期は営業利益362.7億円で5期連続増益、今期は売上高2,900億円を計画。大東建託との違い、配当、PER8.8倍の株価指標を解説。
投資家が注目すべきポイント
強み
1. 駐車場を残して上に建てる独自の商品
フィル・パークは駐車場の収入を残したまま上の空間から賃料を得る商品で、会社は「現在明確な競合他社はない」と認識しています(有価証券報告書)。全国の累計は285棟です(2026年5月末)。
2. 郊外の土地でも借り手を集めるガレージハウス
入居待ち登録の仕組みで入居率98.6%以上を保ち(2026年5月末、会社開示)、駅から遠い土地でも賃貸経営の提案ができます。上期の受注金額はフィル・パークが減る中でも増えました。
3. 前受金で回る請負と、厚い受注残
請負は代金を原則として契約時・着工時・竣工引渡時に3分の1ずつ受け取り、工事に先行して入金がある仕組みです。受注残高は50.6億円(2026年5月末)。今期の請負の売上計画46億円のうち42億円は前期までの受注分です。
4. 配当の強化と3%台後半の利回り
減益予想の中でも年25円を据え置き、配当性向50%を上限とする方針に転換しました。予想配当利回りは3.83%です(2026年10月1日終値)。
リスク
1. 金利と建築費の上昇で受注が落ちる
土地オーナーの投資判断が慎重になり、今期の請負受注高の計画は95億円から52億円以上に下がりました。上期のフィル・パークの受注は4件と前年同期の10件から減っています。
2. 開発案件の売却時期で業績が大きく振れる
開発販売は引き渡し時に売上を一括計上するため、1件の時期ずれで四半期の損益が変わります。修正後の予想の達成には、下期だけで約29億円の開発販売が必要です。
3. 在庫と借入の増加
販売用不動産は41.8億円、有利子負債は37.0億円に増え、現金及び預金(29.9億円)を上回りました(2026年5月末)。9月には下北沢で10億円以上の用地の購入契約も結んでいます(10月23日決済予定)。売れ残れば評価損や金利負担が重くなります。
4. 利益目標の後ずれ
中期経営計画の営業利益12億円は2027年11月期へ1年後ろ倒しされ、今期の予想も8.0億円から3.8億円に下がりました。来期の計画は2027年1月の決算で示される予定で、方針転換の成果はまだ数字に出ていません。
5. 小さい時価総額と集中した株主構成
時価総額は約37億円で、創業者の髙橋氏と合同会社NOBが合わせて約28%を持ちます(2026年5月末)。
まとめ
フィル・カンパニー(3267)は、駐車場の上の空間や駅から遠い郊外の土地など、一般的な建物が建てにくい土地に空中店舗とガレージハウスを提案する会社です。
事業:土地オーナーからの請負が売上の約6割、自社で土地を買って売る開発販売が約3割。フィル・パーク累計285棟、ガレージハウス累計289棟(2026年5月末)
業績:2025年11月期は売上高82.3億円・営業利益5.9億円。2026年11月期は金利と建築費の上昇で受注が落ち、営業利益予想を8.0億円から3.8億円へ下方修正。上期は1.2億円の営業赤字
財務:開発用地の仕入れで販売用不動産41.8億円・有利子負債37.0億円に増加、自己資本比率35.9%(2026年5月末)
株価:実績PER8.8倍・予想PER13.0倍・PBR1.06倍・予想配当利回り3.83%(2026年10月1日終値)
見るべき点:下期に予定する開発案件6件の売却が進むか、請負の受注が下期34億円以上の計画に戻るか、ストック収入を増やす方針が利益率の改善につながるか
駐車場の上に店舗を建てるという商品の独自性は明確ですが、利益はまだ2019年の水準に届いていません。まずは第3四半期以降の決算で、目黒区の物件の引き渡しなど開発販売の計上と、請負受注の回復を確かめたい銘柄です。
フィル・カンパニー
駐車場上空などの遊休スペースを活用した空間ソリューション企業。「まちのスキマを、創造で満たす」をパーパスに掲げ、駐車場の上部に商業施設を建設する空中店舗「フィル・パーク」と、ガレージ付き賃貸住宅「プレミアムガレージハウス」の2事業を展開する…
本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。投資の最終判断はご自身の責任でお願いいたします。記事中の株価指標は2026年10月1日終値、その他の数値は2026年10月1日時点で確認できた開示に基づいています。








