大和ハウス工業(1925)の企業分析|売上5.6兆円・16期連続増配の住宅総合メーカーが到達した海外売上1兆円

大和ハウス工業(1925)は、売上高5.6兆円を誇る日本最大級の住宅総合メーカーです。
2026年3月期は売上高5兆5,769億円(前期比+2.6%)、営業利益6,149億円(同+12.6%)と過去最高の業績を達成。ただしこの営業利益には退職給付数理差異等償却益1,157億円が含まれており、同要因を除いた営業利益は4,992億円(同+12.2%)です。
2027年3月期は営業利益4,600億円(前期比−25.2%)の減益予想ですが、これは前期に計上した数理差異等償却益が今期予想に含まれないことが主因で、会社開示の同一基準での比較では営業利益−7.9%・純利益−2.0%にとどまります。なお2027年3月期第1四半期(2026年4〜6月)は売上高1兆4,084億円(前年同期比+9.0%)・営業利益1,306億円(同+10.6%)と好調に滑り出し、会社は8月6日に通期予想を上方修正しています。
この記事では、大和ハウス工業の6つのセグメント構造、第7次中期経営計画の成果と海外1兆円戦略、FY2027減益予想の背景と投資判断のポイントを、個人投資家の視点からわかりやすく解説します。
会社概要 — 「建築の工業化」から生まれた住宅総合メーカー
大和ハウス工業は1955年、創業者・石橋信夫が「建築の工業化」を掲げてパイプハウスの製造から出発しました。戸建住宅「xevoΣ(ジーヴォシグマ)」で知られる住宅事業を軸に、商業施設、物流施設、マンション、環境エネルギーまで6セグメントに事業を多角化した日本最大級の総合建設企業です。

項目 | 内容 |
|---|---|
会社名 | 大和ハウス工業株式会社(DAIWA HOUSE INDUSTRY CO., LTD.) |
証券コード | 1925(東証プライム) |
創業 | 1955年4月5日 |
代表取締役社長 | 大友 浩嗣(2026年9月時点) |
従業員数 | 55,712名(連結、2026年3月31日時点) |
本社 | 大阪市北区梅田三丁目3番5号 |
主要グループ会社 | 大和リビング、大和リース、フジタ、大和物流、Stanley Martin Homes(米国) |
セグメント構成 — 6つの事業で利益を分散
大和ハウス工業は「賃貸住宅」「戸建住宅」「マンション」「商業施設」「事業施設」「環境エネルギー」の6セグメントで事業を展開しています。2026年3月期の営業利益構成は、商業施設27%、戸建住宅26%、賃貸住宅23%、事業施設21%と、上位4セグメントに分散されたバランス型のポートフォリオが特徴です。
セグメント別営業利益構成比(2026年3月期)
セグメント別売上高・営業利益(2026年3月期)
6つの事業を理解する
賃貸住宅事業 — 大和リビングが運営する約70万戸の管理ストック
賃貸住宅事業は、アパート・マンションなど賃貸住宅の建築請負と管理を担うセグメントです。建築後の管理はグループ会社・大和リビングが一括で行い、入居率管理からリフォームまで長期的な収益を生むストック型ビジネスモデルです。
2026年3月期の売上高は1兆4,293億円、営業利益は1,411億円(前期比+8.6%)。管理戸数は約70万戸(2026年3月末時点)に達し、入居率は業界トップクラスの水準を維持しています。建築請負の新規受注に加え、管理手数料やリフォーム収入が積み上がるストック型の構造が強みです。
戸建住宅事業 — xevoΣブランドと米国Stanley Martin
戸建住宅事業は、プレハブ住宅「xevoΣ(ジーヴォシグマ)」に代表される注文住宅の設計・施工と分譲住宅の販売を行います。2017年2月に米国のホームビルダー・Stanley Martin社の持分を取得し、海外戸建住宅事業にも進出しました。
2026年3月期は営業利益1,557億円(前期比123%増)と大幅増益でしたが、これは米国での大型土地売却(2025年10月)が含まれる一時的な要因です。国内も注文住宅・分譲住宅ともに販売戸数が前年を上回り、2027年3月期第1四半期(3ヶ月)も国内の受注・売上高は前年同期比で増加しています。ただし翌期は米国の土地売却益が剥落するため、戸建住宅の営業利益は反動減(2026年5月時点の会社予想は490億円)が見込まれます。
マンション事業 — 6セグメントで最も利益率が低い分譲事業
マンション事業は分譲マンションの開発・販売を手がけます。2026年3月期の売上高は2,796億円、営業利益は60億円と6セグメント中で最も利益率が低い事業です。マンション事業は案件ごとの利益変動が大きく、大型物件の引き渡しタイミングに業績が左右される特徴があります。なお中規模マンションを手がけるコスモスイニシアは、2024年2月に株式の一部を共立メンテナンスへ譲渡して連結子会社から持分法適用関連会社となっており、上記のセグメント業績には含まれません。
商業施設事業 — 利益最大のストック型事業
商業施設事業は、ショッピングセンターやロードサイド店舗などの商業施設の開発・賃貸・管理を行います。2026年3月期の売上高は1兆2,902億円、営業利益は1,625億円(前期比+11.4%)とセグメント中最大で、テナント賃料収入と開発利益の両方が収益基盤となっています。
大和ハウスはEC全盛の時代にも実店舗需要を取り込むため、テナントミックスの最適化やリニューアル投資を積極的に行っています。REIT(大和ハウスリート投資法人)への物件売却による回転型ビジネスモデルも収益に寄与しています。
事業施設事業 — 物流施設「DPL」とデータセンター

事業施設事業は、物流施設「DPL(ディープロジェクト・ロジスティクス)」、工場、データセンター、医療・介護施設などの法人向け施設を開発するセグメントです。EC拡大に伴う物流施設需要やデータセンター需要を取り込む一方、2026年3月期は開発物件売却の減少により売上高1兆1,898億円(前期比−13.1%)、営業利益1,276億円(同−20.0%)と減収減益でした。
物流施設は、特定企業向けにオーダーメイドで建てるBTS(Build to Suit)型の「Dプロジェクト」と、複数のテナントが入居するマルチテナント型の「DPL」(2013年にブランド化)の2本立てで全国に展開しています。開発した物件をREITへ売却して回転させるモデルも確立しています。また2026年3月には電気設備工事大手の住友電設を完全子会社化して当セグメントに連結し、データセンター関連工事の受注拡大につなげています。
環境エネルギー事業 — 再エネ発電と脱炭素
環境エネルギー事業は、太陽光発電・風力発電などの再生可能エネルギー発電事業を手がけます。2026年3月期の売上高は1,331億円(うち外部顧客への売上高870億円)、営業利益は138億円と規模は小さいものの、脱炭素社会への移行を見据えた中長期的な成長領域として位置づけられています。自社開発施設の屋根やグループ所有地を活用したPPA(電力購入契約)モデルの拡大が進んでいます。
海外事業 — 売上高1兆円を達成

大和ハウスは各セグメントを横断する形で海外事業を展開しています。米国ではStanley Martin Homesによる戸建住宅と賃貸住宅、豪州では戸建・賃貸住宅、ASEANでは物流施設・工業団地、中国では分譲マンションの開発を推進。海外売上高1兆円は第7次中期経営計画の目標でしたが、2026年3月期に海外売上高1兆284億円・営業利益1,370億円と1年前倒しで達成しました。創業100周年の2055年に「売上高10兆円企業」を目指す長期ビジョンを描いています。
業績推移と財務分析
売上高・営業利益・営業利益率の推移
大和ハウス工業は2021年3月期のコロナ禍による一時減収を除き、売上高を着実に拡大してきました。2026年3月期は営業利益率11.0%と過去最高を記録しましたが、営業利益6,149億円には退職給付数理差異等償却益1,157億円が含まれており、同要因を除くと営業利益4,992億円・営業利益率8.9%となります。2027年3月期は営業利益率7.8%に低下する見通しですが、これは前期の数理差異等償却益が今期予想に含まれないことが主因です。会社は同一基準の比較として営業利益−7.9%・経常利益−11.9%・純利益−2.0%を開示しています。
通期業績推移(売上高・営業利益・営業利益率)
2027年3月期 第1四半期 — 売上・営業利益は過去最高、通期予想を上方修正
2026年8月6日に開示された2027年3月期第1四半期(2026年4〜6月の3ヶ月)は、売上高1兆4,084億円(前年同期比+9.0%)・営業利益1,306億円(同+10.6%)の増収増益で、売上高・営業利益・経常利益はいずれも第1四半期として過去最高でした。国内の賃貸住宅・商業施設の伸びに加え、住友電設の連結効果と海外売上の増加が押し上げています。
項目 | 2027年3月期 1Q(3ヶ月) | 前年同期比 | 通期予想に対する進捗率 |
|---|---|---|---|
売上高 | 1兆4,084億円 | +9.0% | 23.9% |
営業利益 | 1,306億円(営業利益率9.3%) | +10.6% | 28.4% |
経常利益 | 1,230億円 | +9.9% | 30.6% |
親会社株主に帰属する四半期純利益 | 832億円 | +9.1% | 31.3% |
EPS | 134.33円(株式分割前基準) | +9.0% | — |
セグメント別(3ヶ月)では、引渡戸数が減ったマンションを除く5セグメントが増収増益でした。
戸建住宅:売上高2,693億円(+14.3%)・営業利益93億円(+29.2%)。国内の受注・売上高が前年同期比で増加
賃貸住宅:売上高3,866億円(+10.7%)・営業利益429億円(+12.6%)
マンション:売上高561億円(−13.6%)・営業利益19億円(−46.5%)
商業施設:売上高3,154億円(+9.1%)・営業利益357億円(+0.5%)
事業施設:売上高3,689億円(+6.9%)・営業利益544億円(+13.5%)。住友電設の連結に加え、データセンター関連工事の受注が増加
環境エネルギー:売上高320億円(+14.6%)・営業利益49億円(+12.9%)
会社は同日、第1四半期の堅調な業績と足元の事業進捗を踏まえて通期の業績予想と配当予想を上方修正しました。
2027年3月期 会社予想 | 期初予想(2026年5月13日) | 修正後(2026年8月6日) |
|---|---|---|
営業利益 | 4,000億円 | 4,600億円(前期比−25.2%) |
親会社株主に帰属する当期純利益 | 2,270億円 | 2,660億円(前期比−24.1%) |
年間配当(株式分割前換算) | 176円 | 178円(中間86円+期末92円。分割後基準では期末46円) |
一方で自己資本比率は33.8%と、前期末の34.4%(2025年3月末は37.1%)から低下が続いています。住友電設の買収を含む投資拡大が背景にあり、会社は海外事業を取り巻く環境や中東情勢の先行き不透明感をリスクとして予想に織り込んでいます。第2四半期以降は利益の進捗とあわせて財務規律も確認したいところです。
純利益・EPSの推移
純利益は2026年3月期に3,506億円と過去最高を更新。2027年3月期は2,660億円(前期比−24.1%)の予想ですが、退職給付数理差異等償却益の剥落を除いた同一基準では−2.0%にとどまります。EPSは2019年3月期の357円から2026年3月期の566円へ7年で約58%拡大しました(第7次中計の起点となる2022年3月期の344円からは約65%)。ただし2026年3月期には一時的な戸建事業の大型売却益も含まれる点には注意が必要です。
純利益・EPS推移
配当推移
大和ハウス工業は16期連続で増配を続けています。2026年3月期の配当は1株あたり175円(普通配当165円+創業70周年記念配当10円、前期比+25円)、配当性向は30.9%(退職給付会計の数理計算上の差異等の影響を除くと39.9%)です。第7次中期経営計画では配当性向35%以上を目安に業績連動の利益還元を行う方針を掲げています。2027年3月期の配当予想は年178円(株式分割前換算、中間86円+期末92円、前期比+3円)で、期初予想の176円から2026年8月6日に2円引き上げられ、増配の継続を見込んでいます。2026年10月1日の株式分割(1株→2株)後の基準では、期末配当は46円になります。
1株あたり配当金の推移
指標 | 数値(2026年9月15日時点) |
|---|---|
株価 | 4,587円(株式分割前) |
PER(実績) | 8.1倍(2026年3月期EPS 566.47円ベース) |
PBR | 0.98倍(2026年3月期BPS 4,677.09円ベース) |
配当利回り | 3.8%(2026年3月期実績175円ベース) |
ROE | 12.7%(2026年3月期、会社開示の自己資本当期純利益率) |
時価総額 | 約3兆266億円 |
なお大和ハウス工業は、2026年9月30日を基準日(権利落ち日は9月29日)、2026年10月1日を効力発生日として普通株式1株につき2株の株式分割を実施する予定です。上記の株価・EPS・配当金は、いずれも分割前の基準で記載しています(分割考慮後の2027年3月期予想EPSは214.74円、期末配当は46円)。分割後は株価も半分の水準になりますが、PER・PBR・配当利回りは変わりません。
出典:決算短信・有価証券報告書・IR資料よりKabuGraph作成、大和ハウス工業 IR情報
投資家が注目すべきポイント
成長ドライバー — 第7次中計達成と海外拡大
大和ハウスの第7次中期経営計画(2022年度〜2026年度の5ヵ年計画)は、目標の営業利益5,000億円を1年前倒しで達成し、2026年3月期は6,149億円で着地しました(会社発表ベース。中計の目標が定義する退職給付数理差異除きでは4,992億円と、目標にほぼ並ぶ水準)。計画は1年前倒しで終了し、建設・不動産業界におけるトップポジションを固めています。後継となる第8次中期経営計画は、中東情勢など事業環境の先行きを見極めたうえで公表するとして発表が延期されています。
今後の成長ドライバーとしては、特に以下の分野が挙げられます:
海外事業の拡大:米国Stanley Martinの戸建住宅、豪州の戸建・賃貸住宅、ASEANの物流施設・工業団地を軸に、2026年3月期の海外売上高は1兆284億円・営業利益1,370億円に到達しました。売上高に占める海外比率は18.4%まで上昇しています。
物流施設「DPL」の開発拡大:EC市場の拡大に伴い、大型マルチテナント型物流施設の需要は堅調です。開発した物件をREITに売却して資本を回転させるモデルが定着しており、安定した開発利益が見込めます。
データセンター・環境エネルギー:AI需要の急拡大に伴うデータセンター開発や、再エネ発電事業の拡大が中長期的な成長余地を提供します。自社の建築技術を活かした施設開発が競争優位性となっています。
リスク要因
FY2027の減益予想は投資家にとって最大の注目点です。表面上の営業利益は4,600億円(前期比−25.2%)ですが、これは前期に計上した退職給付数理差異等償却益1,157億円が今期予想に含まれないことが主因で、会社開示の同一基準比較では営業利益−7.9%・純利益−2.0%にとどまります。なおこの4,600億円は、期初(2026年5月13日)予想の営業利益4,000億円を、第1四半期の好調を受けて2026年8月6日に上方修正した後の数値です。さらなる上振れ余地は残るものの、すでに1回目の上方修正が入っている点には注意が必要です。
金利上昇リスクは住宅需要への直接的な影響があります。日銀の利上げ局面では住宅ローン金利の上昇が戸建・マンション需要を冷やし、賃貸住宅のオーナー投資意欲も減退する可能性があります。ただし、商業施設・事業施設のストック型収益がバッファーとなり、業績全体への影響は限定される構造です。
コングロマリットディスカウントの問題も顕在化しています。PBRは1倍前後で推移しており(2026年9月15日終値4,587円ベースで0.98倍。8月下旬には1倍をわずかに上回る場面もありました)、6セグメントにまたがる事業構造は「何の会社かわかりにくい」という市場評価につながっています。東証が要請するPBR 1倍超を安定的に維持するには、事業ポートフォリオの見直しや株主還元の強化が求められます。
まとめ
大和ハウス工業は、戸建住宅から商業施設・物流施設・環境エネルギーまで「建てるもの全般」を手がける日本最大級の住宅総合メーカーです。
売上高5.6兆円・営業利益6,149億円と過去最高を更新(2026年3月期実績。ただし営業利益には退職給付数理差異等償却益1,157億円を含み、同要因を除くと4,992億円)
6セグメントで利益を分散し、商業施設・事業施設のストック型収益が安定基盤
16期連続増配・配当利回り3.8%のインカム銘柄としての魅力(2026年9月15日時点)
海外売上1兆円と創業100周年の10兆円企業を目指す長期ビジョン
FY2027の営業利益は表面上−25.2%だが同一基準では−7.9%。会社予想4,600億円は2026年8月6日に上方修正済み
第1四半期(4〜6月)は売上高1兆4,084億円・営業利益1,306億円と増収増益で、営業利益の進捗率は28.4%
PER 8.1倍・PBR 0.98倍・配当利回り3.8%(2026年9月15日時点)は、減益予想を織り込んでもバリュエーション面での割安さが際立つ水準です。FY2027の進捗を確認しながら、中長期での成長シナリオと合わせて投資判断を行うのが有効でしょう。
大和ハウス工業
大和ハウス工業は、住宅・建設業界で国内最大手の総合企業。戸建住宅(xevoシリーズ)、賃貸住宅、マンション、商業施設、物流施設・工場等の事業施設、環境エネルギーの7事業を柱とし、住まいから物流・商業インフラまで生活基盤産業を総合的に展開する…
不動産・建設業界の他の銘柄分析もあわせてご覧ください:

三井不動産(8801)の企業分析|日本橋・ららぽーと・データセンターで描く不動産業界トップの成長戦略
三井不動産(8801)の賃貸・分譲・マネジメント・施設営業の4セグメント構造、&INNOVATION 2030の成長戦略、海外展開、データセンター投資、業績推移と投資リスクを個人投資家向けに解説します。

三菱地所(8802)の企業分析|丸の内空室率0.55%とTorch Towerが切り拓く「大丸有」の未来
三菱地所(8802)の丸の内・コマーシャル不動産・住宅・海外の4大セグメント構造、Torch Tower計画、長期経営計画2030の定量目標、業績推移と投資リスクを個人投資家向けに解説します。

積水ハウス(1928)の企業分析|MDC買収で売上4.2兆円突破、配当利回り4.2%の住宅メーカー首位の実力
積水ハウス(1928)の請負型・ストック型・開発型・国際の4セグメント構造、MDC Holdings買収の影響、累積建築274万戸の実績、配当利回り4.2%の株主還元、業績推移と投資リスクを個人投資家向けに解説します。










