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ディー・エヌ・エー(2432)の企業分析|ポケポケの反動で今期営業益150億円予想、GO株売却と500億円の自社株買いでROE8%を狙う

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ディー・エヌ・エー(DeNA、2432)は、スマホゲーム『Pokémon Trading Card Game Pocket』(ポケポケ)の開発・運営、ライブ配信アプリ「Pococha」、プロ野球の横浜DeNAベイスターズなどを手がける会社です。1999年にネットオークションの会社として創業し、携帯電話向けゲーム「モバゲー」で成長したあと、スポーツやヘルスケアへ事業を広げてきました。

2024年10月に配信を始めたポケポケが大ヒットし、2025年3月期の営業利益は289.7億円に回復しましたが、反動で2026年3月期は売上収益1,477.0億円(前期比−9.9%)、営業利益186.9億円(同−35.5%)に減りました。会社は2027年3月期を売上収益1,540億円・営業利益150億円と予想しています(2026年3月期 決算短信)。

お金の使い方も大きく変わりました。任天堂株の一部売却(492億円)、500億円の自社株買いと全株消却、DOE3%を目安とする配当方針への変更を相次いで決め、2026年6月には持分法適用会社だったGOの上場に伴う株式の売出しと残りの持分の時価評価で395億円の利益を計上しています。創業者の南場智子氏は2026年6月に社長兼CEOに就きました。株価は2,556.5円で、実績PER14.9倍・PBR1.10倍です(2026年10月1日終値)。この記事では、事業の稼ぎ方、業績と財務、競合との違い、投資家が見るべき点を整理します。

会社概要 — ネットオークションから始まり、ゲーム・球団・ヘルスケアへ

DeNAは1999年3月、インターネット上のオークションサイトの企画・運営を目的に設立されました。2006年に携帯電話向けゲームサイト「モバゲータウン」を始めてゲームで成長し、その後はプロ野球、ライブ配信、ヘルスケアへと事業を広げてきました(有価証券報告書(2026年3月期) 沿革)。

  • 証券コード・市場:2432(東証プライム)

  • 設立・本社:1999年3月、東京都渋谷区

  • 代表者:代表取締役社長兼CEO 南場智子、代表取締役会長 岡村信悟(2026年6月の定時株主総会後の体制)。10月1日付で斎藤巧氏が最高財務責任者(CFO)に就いた

  • 従業員:連結2,483名(2026年3月末、臨時従業員を除く)

  • 決算期・会計基準:3月決算、国際会計基準(IFRS)。売上高にあたる項目は「売上収益」で、経常利益の段階はない

  • 事業区分:ゲーム、ライブストリーミング、スポーツ・スマートシティ、ヘルスケア・メディカルの4つの報告セグメントと、新規事業・その他

出典:有価証券報告書(2026年3月期)・役員人事に関するお知らせ(2026年5月12日)・組織及び人事に関するお知らせ(2026年9月30日)よりKabuGraph作成

沿革 — ネットオークションからゲーム、球団、ヘルスケアへ

  • 1999年3月:ネットオークションサイトの運営会社として設立(同年11月に「ビッダーズ」を開始)

  • 2005年2月:東証マザーズに上場(2007年12月に東証一部へ)

  • 2006年2月:携帯電話向けゲームサイト「モバゲータウン」(のちの「Mobage」)を開始

  • 2011年12月:横浜ベイスターズ(現横浜DeNAベイスターズ)の株式を取得し、プロ野球に参入

  • 2012年12月:Cygames(現在の持分法適用関連会社)の株式を取得

  • 2015年3月:任天堂と業務・資本提携

  • 2016年1月:ベイスターズが公開買付け(TOB)で横浜スタジアムの株式を取得

  • 2017年1月:ライブ配信アプリ「Pococha」を開始

  • 2020年4月:タクシー配車アプリの事業をMobility Technologies(現GO)に承継

  • 2021年8月:キャラクターライブ配信アプリ「IRIAM」の運営会社を取得

  • 2022年10月:医療関係者間コミュニケーションアプリ「Join」を持つアルムを取得

  • 2024年10月:『Pokémon Trading Card Game Pocket』の提供を開始

  • 2026年3月:「BASEGATE横浜関内」のグランドオープンで直営施設2つを開業

  • 2026年6月:GOの東証グロース市場への上場に伴い保有株の大半を売り出す。南場智子氏が社長兼CEOに就任

出典:有価証券報告書(2026年3月期) 沿革・2027年3月期 第1四半期決算短信・GO株式の売出しに関するお知らせ(2026年6月16日)・役員人事に関するお知らせよりKabuGraph作成

大株主 — 創業者の南場氏が18%、任天堂が14%

2026年3月末の大株主は次のとおりです(割合は自己株式を除く発行済株式に対するもの)。南場氏は2004年に社長、2009年にCEOとなり、2011年に取締役へ退いたのち、2015年からはベイスターズのオーナーも務めています(有価証券報告書 役員の状況)。

  • 南場智子(創業者・社長兼CEO):18.47%

  • 任天堂:14.04%

  • 日本マスタートラスト信託銀行(信託口):10.17%

  • 株式会社ATRA:5.46%

  • 日本カストディ銀行(信託口):4.14%

出典:有価証券報告書(2026年3月期) 大株主の状況よりKabuGraph作成

任天堂とは2015年3月、スマートデバイス向けゲームの共同開発・運営などで業務・資本提携し、当時の金額で互いに同額の株式を持ち合いました。任天堂が展開するビジネスのデジタル部分に関するシステムの開発・運用を担う合弁会社「ニンテンドーシステムズ」(DeNAの議決権20.0%)も両社でつくっています(投資有価証券の売却に関するお知らせ(2026年2月27日)・有価証券報告書 関係会社の状況)。

一方でDeNAは、政策保有株式の見直しとして保有する任天堂株を2022年5月に半数相当、2026年3月に600万株(492億円)売却し、残りは279.7万株になりました((開示事項の経過)投資有価証券の売却に関するお知らせ(2026年3月9日))。

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売上の4割強がゲーム、利益の大半もゲーム

2026年3月期の外部顧客からの売上収益は、ゲームが43.5%、ライブストリーミングが26.9%、スポーツ・スマートシティが22.1%を占めます。

セグメント別売上収益構成比(2026年3月期)

出典:ディー・エヌ・エー 2026年3月期 決算短信 セグメント情報よりKabuGraph算出。外部顧客からの売上収益(合計1,477.0億円)に占める割合

利益の偏りはさらに大きく、ゲームのセグメント利益296.6億円は、全社費用を差し引いた後のセグメント利益の合計276.7億円を上回ります。ヘルスケア・メディカル(23.3億円の損失)と新規事業・その他(15.5億円の損失)の赤字を、ゲームが埋めている形です(2026年3月期 決算短信 セグメント情報)。

持分法の利益 — Cygamesと、上場したGO

DeNAの利益には、連結していない出資先の利益の持ち分(持分法による投資損益)も入ります。2026年3月期は88.1億円で、会社は主な持分法適用関連会社としてCygames(議決権21.0%、2026年3月末)とGOを挙げています(2026年3月期 決算短信 p.2・有価証券報告書)。

DeNAの新規事業から始まったタクシーアプリ事業がGOとして上場するまでの歩み(2015年〜2026年)
出典:ディー・エヌ・エー 個人投資家向け会社説明会資料(2026年9月)p.18

この売出しと残りの持分の時価評価で、2027年3月期第1四半期に395.17億円の利益を「持分法による投資損益」に計上しました(2027年3月期 第1四半期決算短信 p.14)。会社は、育てた事業を最適な持ち主に引き継いで得る「エクイティ収益」も、事業の成果の一つと位置づけています(第1四半期決算説明会 質疑応答)。

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5つの事業を理解する — ゲーム・ライブ配信・スポーツ・ヘルスケア・新規事業

DeNAの事業は、ゲームとライブ配信というアプリ内の課金で稼ぐエンターテインメント、球団・スタジアム・複合施設を持つスポーツ・街づくり、健康・医療のデータとITサービスの3つに大きく分かれます。ここに、AIを中心とした新規事業が加わります。

ゲーム — 『ポケポケ』が主力、IPを持つ会社との協業が強み

『Pokémon Trading Card Game Pocket』の公式サイトのトップページ
出典:『Pokémon Trading Card Game Pocket』公式サイト

主力は2024年10月30日に配信を始めた『Pokémon Trading Card Game Pocket』(ポケポケ)です。スマートフォンで『ポケモンカード』のコレクションを楽しめるアプリで、150の国と地域で配信され、全世界のダウンロード数は2026年5月に累計2億を超えました(個人投資家向け会社説明会資料(2026年9月)p.5)。

  • 役割分担:販売は株式会社ポケモン、開発はクリーチャーズとDeNA(2026年3月期 決算説明資料 p.14)。DeNAはポケモン社と、企画・開発・配信・運営に関する収益分配(レベニューシェア)契約を結んでいる(有価証券報告書 重要な契約等)

  • 売上の計上方法:ユーザーの課金額から他社の取り分や決済手数料を差し引いた、DeNAの受取額を売上収益にしている(2027年3月期 第1四半期決算説明資料 p.7)

  • 足元の規模:平均MAU(月間利用者数)は2026年1〜3月が2,400万人、4〜6月が約2,300万人。ユーザーの消費額に占める海外の割合は、1〜3月が約6割、4〜6月が約7割弱(同 p.7・2026年3月期 決算説明資料 p.14)

『Pokémon Trading Card Game Pocket』の2026年3月期第4四半期の実績(平均MAU2,400万人)と、配信地域・役割分担の表
出典:ディー・エヌ・エー 2026年3月期 決算説明資料 p.14

ゲーム事業の売上収益は、ポケポケの配信開始を含む2025年3月期の781.0億円から、2026年3月期は643.6億円(前期比−17.6%)に減りました。会社は減収減益の理由を、ポケポケの「配信当初の初速からの反動等」と説明しています(2026年3月期 決算短信)。

ほかにも、任天堂・ポケモンとの協業タイトルや集英社との合弁会社など、IP(キャラクターや作品の権利)を持つ会社との協業を重ねてきました(個人投資家向け会社説明会資料 p.6)。2025年9月に配信を始めた『ファイアーエムブレム シャドウズ』は任天堂が配信元で、DeNAは開発に協力しています(2026年3月期 第2四半期決算説明資料 p.12)。

新しいタイトルでは、小さく早く市場に出し、ユーザーの反応を見ながら開発を続けるかを判断する「ソフトローンチ戦略」を北米など英語圏で進めています。2027年3月期中に本格運用の段階のタイトルを1〜2本出す予定です(2026年3月期 決算説明資料 p.16・第1四半期決算説明会 質疑応答)。

ライブストリーミング — 「Pococha」と「IRIAM」

ライブ配信アプリ「Pococha」の公式サイトのトップページ
出典:Pococha公式サイト

Pococha(ポコチャ)は、配信者の「ライバー」と視聴者の「リスナー」が双方向のコミュニケーションを楽しむライブ配信アプリです。IRIAM(イリアム)は、スマホ1台とイラスト1枚でキャラクターの姿になって配信できる「キャラクターライブ配信」アプリです(DeNA公式サイト 事業紹介)。

  • Pococha:2017年1月に開始。国内のダウンロード数は754万(2026年3月末)で、6月末のダウンロード数は775万。月次課金ユニークユーザーは前四半期からおおむね横ばい(2026年3月期 決算説明資料 p.18・第1四半期決算説明資料 p.8)

  • IRIAM:2021年8月に運営会社を買収。国内外を合わせた総ダウンロード数は621万(2026年3月末、2026年3月期 決算説明資料 p.18)で、6月末のダウンロード数は640万。2027年3月期第1四半期に四半期として初めて黒字化した(同 p.8・第1四半期決算短信)

キャラクターライブ配信アプリ「IRIAM」の公式サイトのトップページ
出典:IRIAM公式サイト

セグメント全体では、Pocochaで2025年3月期の上期にテレビCMなどの販促を行ったあと、下期から収益性の改善を優先した運営に切り替えました。2026年3月期の売上収益は397.9億円(前期比−1.9%)でしたが、セグメント利益は39.8億円の黒字(前期は2.0億円の損失)に転じています(2026年3月期 決算短信)。

スポーツ・スマートシティ — ベイスターズとBASEGATE横浜関内

横浜DeNAベイスターズの公式サイトのトップページ
出典:横浜DeNAベイスターズ公式サイト

セ・リーグの横浜DeNAベイスターズを中心に、横浜スタジアムの運営、バスケットボールの川崎ブレイブサンダース(2026-27シーズンから「B.LEAGUE PREMIER」に参入)、J3のSC相模原を持ちます(川崎ブレイブサンダース「B.LEAGUE PREMIER参入決定のご報告」・DeNA公式サイト 事業紹介・2026年3月期 決算短信 セグメント情報)。ベイスターズは2016年に横浜スタジアムをTOBで取得し、球団と球場を一体で経営しています(2026年3月期 決算説明資料 p.20)。

  • 観客動員:2025年シーズンの主催試合の観客動員数は236万人で、2024年シーズンに続いて球団史上最多を更新(同 p.20)

  • 収入の伸び:チケット、グッズ・飲食、スポンサー収入などがそろって前期より伸びた(同 p.20)

  • 規模:ベイスターズの売上収益(連結会社間の取引を除く)は263.35億円で、連結売上収益の10%を超える(有価証券報告書 関係会社の状況)

横浜DeNAベイスターズの売上推移(2012〜2025年、スポンサー・グッズ飲食・チケット・その他の内訳)
出典:ディー・エヌ・エー 2026年3月期 決算説明資料 p.20

2026年3月19日には「BASEGATE横浜関内」がグランドオープンし、DeNAは日本最大級の常設型ライブビューイングアリーナ「THE LIVE Supported by 大和地所」と、没入型体験施設「ワンダリア横浜 Supported by Umios」を直営しています(第1四半期決算短信・DeNA公式サイト 事業紹介)。

BASEGATE横浜関内の公式サイトのトップページ(THE LIVEとワンダリア横浜の告知)
出典:BASEGATE横浜関内公式サイト

2026年3月期は開業に向けた費用が先行し、セグメント利益は18.0億円(前期比−2.8%)でした。会社は今後、スマートシティの貢献も合わせて事業全体で年間30億円水準の利益を見込んでいます(2026年3月期 決算説明資料 p.19)。2027年3月期第1四半期(3か月)のセグメント利益は45.5億円(前年同期比+24.4%)でした(第1四半期決算短信)。

ヘルスケア・メディカル — 健康データと医療DX、黒字化が課題

DeSCヘルスケアの公式サイトのトップページ(kencomの紹介)
出典:DeSCヘルスケア公式サイト

ヘルスケアでは、子会社のDeSCヘルスケアなどが、健康保険組合や自治体で導入される健康増進アプリ「kencom」を提供しています(DeNA公式サイト 事業紹介・DeSCヘルスケア公式サイト)。自治体(市町村国保)などから受注する「データヘルス」と、製薬会社などにデータを提供する「データ利活用」が収益の柱で、第1四半期の売上はそれぞれ8億円・1億円でした(第1四半期決算説明資料 p.10)。

メディカルでは、子会社のアルムが医療関係者間コミュニケーションアプリ「Join」と、ポータブル医療機器とJoinを組み合わせた遠隔医療支援の「Join Mobile Clinic」を展開しています。国内のJoin導入施設数は累計614(2026年6月末)です(DeNA公式サイト 事業紹介・第1四半期決算説明資料 p.10)。

Joinを提供するアルムの公式サイトのトップページ
出典:アルム公式サイト

課題は収益性です。2026年3月期のセグメント売上収益は87.3億円(前期比−19.0%)、セグメント損失は23.3億円で、別にアルムののれん96.14億円を減損しました(2026年3月期 決算短信)。会社は2027年3月期に事業全体での黒字化を最優先に掲げ、第1四半期(3か月)の損失は7.5億円(前年同期は13.5億円の損失)に縮まりました(第1四半期決算短信・第1四半期決算説明資料 p.10)。

新規事業・AI — 「AIオールイン」と事業創造

DeNAのAIの取り組みを紹介するサイト「DeNA×AI」のトップページ
出典:DeNA×AI公式サイト

「新規事業・その他」には、AI関連の新規事業などが入ります(2026年3月期は売上収益24.9億円、セグメント損失15.5億円。2026年3月期 決算短信)。DeNAは「AIオールイン」を掲げ、AIによる全社の生産性向上、既存事業の競争力強化、AI新規事業の創出を3つの柱にしています(有価証券報告書 AI技術に関する戦略)。

南場CEOのもとで掲げた重点施策は、事業創造エコシステムの実現、M&Aの積極活用、AIネイティブ組織の実現、マーケティング共通基盤の強化の4つです。社内の新規事業とデライト・ベンチャーズなどのスタートアップ投資で収益事業を連続して生み、GOのように育った事業を最適な持ち主に引き継ぐ「Exit」による収益も成果と定義しています(第1四半期決算説明資料 p.12〜14・21)。

業績推移と財務分析

通期業績 — 2度の大型減損と、ポケポケの山

売上収益は2017年3月期から2024年3月期まで1,200億〜1,450億円の間で推移し、ポケポケが加わった2025年3月期に1,640.0億円へ伸びました。営業利益はゲームのヒットと減損で大きく振れ、2020年3月期と2024年3月期は赤字です。

通期業績推移(売上収益・営業利益・純利益・営業利益率・売上収益成長率)

出典:ディー・エヌ・エー 決算短信(2017/3・2018/3・2019/3・2020/3・2021/3・2022/3・2023/3・2024/3・2025/3・2026/3・2027/3期 第1四半期)よりKabuGraph作成。IFRS。純利益は親会社の所有者に帰属する当期利益。2027/3は会社予想(2026年5月12日公表、8月5日の第1四半期決算時点で修正なし)で、親会社の所有者に帰属する当期利益の予想は非開示。売上収益成長率は前期比(2017/3は2016/3比)
  • 2020年3月期:ゲーム事業に係るのれんをはじめ511.65億円の減損損失を計上し、456.8億円の営業赤字(2020年3月期 決算短信)

  • 2024年3月期:ゲームのソフトウェア等やIRIAMなどののれんで287.64億円の減損損失を計上し、282.7億円の営業赤字(2024年3月期 決算短信)

  • 2025年3月期:ポケポケのヒットで売上収益+19.9%、営業利益は289.7億円(2025年3月期 決算短信)

  • 2026年3月期:ポケポケの初速からの反動に、アルムののれんの減損96.14億円が重なり営業利益は35.5%減。2026年2月5日に修正した予想(売上収益1,465億円・営業利益170億円。従来の営業利益の予想は200億〜250億円)は上回った(業績予想修正および減損損失計上のお知らせ)

  • 2027年3月期(予想):売上収益1,540億円(+4.3%)、営業利益150億円(−19.8%)。会社は、前期がポケポケの初動を上期中心に大きく含んでいたことと、将来の成長に向けた投資を前期より積極化することを挙げている(2026年3月期 決算短信 p.5)

セグメント別 — ゲームの減益をライブ配信の黒字化が一部補う

セグメント利益の比較(2025年3月期・2026年3月期)

出典:ディー・エヌ・エー 2026年3月期 決算短信 セグメント情報よりKabuGraph作成。セグメント利益は売上収益から売上原価と販売費及び一般管理費を引いた値で、減損損失などの「その他の収益・費用」と全社費用(2026/3は38.9億円)を含まない。2025/3は2026年3月期からの新区分(旧「新規事業・その他」のスマートシティを旧「スポーツ」と合算)に組み替えた値

2026年3月期は、ゲームのセグメント利益が前期より89.2億円減った一方、ライブストリーミングは赤字から39.8億円の黒字に戻りました。会社は2027年3月期について、ライブストリーミングは大きな変化を見込まず、スポーツ・スマートシティは年間30億円水準の利益、ヘルスケア・メディカルは黒字化を目指すとしています(2026年3月期 決算説明会 質疑応答)。

2027年3月期 第1四半期 — 本業はおおむね計画どおり、純利益はGO株で膨らむ

第1四半期(2026年4〜6月の3か月)の売上収益は371.7億円(前年同期比−10.9%)、営業利益は74.1億円(同−46.3%)でした。会社は、売上収益から営業利益までおおむね期初の予想どおりに進んでいるとしています(第1四半期決算説明資料 p.2)。

項目

1Q実績

通期予想

進捗率

売上収益

371.7億円

1,540億円

24.1%

営業利益

74.1億円

150億円

49.4%

純利益

334.4億円

非開示

—

出典:ディー・エヌ・エー 2027年3月期 第1四半期決算短信よりKabuGraph作成。1Q実績は2026年4〜6月の累計(3か月)。通期予想は2026年5月12日公表(8月5日時点で修正なし)。純利益は親会社の所有者に帰属する四半期利益で、通期予想は会社が開示していない
  • ゲーム:売上収益121.2億円(−33.2%)、セグメント利益38.3億円(−62.0%)。ポケポケの動向が主因で、会社は「期初の想定の範囲内」としている(第1四半期決算説明会 質疑応答)

  • スポーツ・スマートシティ:売上収益132.2億円(+16.0%)、セグメント利益45.5億円(+24.4%)。主催試合は前年同期より少なかったが、既存事業の伸びとBASEGATEの直営2施設が寄与

  • ライブストリーミング:売上収益97.3億円(−2.5%)、セグメント利益9.9億円(−0.8%)でほぼ横ばい

  • 純利益は334.4億円(+198.5%):GO株の売出しなどで395.17億円を持分法による投資損益に計上したため。営業利益には含まれない

出典:2027年3月期 第1四半期決算短信よりKabuGraph作成(増減率は前年同期比)

財務と株主還元 — 任天堂株・GO株を現金化し、500億円の自社株買い

2025年11月、会社は資本コストや株価を意識した経営の方針として、2027年3月期までの中期戦略期間をめどに「安定して8%以上のROEを出せる構造」を早期に確立すると掲げ、バランスシートの見直しを進めてきました(資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応について(2025年11月10日))。ROEは2019年3月期以降、単年度で−22.8%から13.2%まで振れています。

資本効率向上に向けた取り組み(政策保有株式の縮減・配当方針の見直し・自己株式の取得)とROEの推移(2019年3月期〜2026年3月期)
出典:ディー・エヌ・エー 2026年3月期 決算説明資料 p.10
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2026年6月末の現金及び現金同等物は844.3億円、借入金は9.6億円にとどまり、親会社所有者帰属持分比率は71.6%です(第1四半期決算短信)。会社は資金の使い道として成長投資・M&Aを最優先とし、M&Aでは国内外のスポーツ・スマートシティ、ライブエンターテインメント、IP・アニメ関連の事業を優先して検討するとしています(2026年3月期 決算説明資料 p.11)。

1株配当とDOE(親会社所有者帰属持分配当率)の推移

出典:ディー・エヌ・エー 決算短信(2017/3・2018/3・2019/3・2020/3・2021/3・2022/3・2023/3・2024/3・2025/3・2026/3)よりKabuGraph作成。DOEは会社算出の親会社所有者帰属持分配当率。2019/3は創業20周年記念配当20円、2025/3は特別配当32円を含む。株式分割はなし。2027/3の配当予想は未定(会社はDOE3%を目安に決める方針)のため載せていない

配当は期末の年1回です。2027年3月期の配当予想は「未定」で、DOE3%を目安に決めるとしています(第1四半期決算短信)。会社は、業績の振れが大きい事業の特性を踏まえても中長期で安定して配当するために、利益ではなく株主資本を基準にするDOEを目安にしたと説明しています(配当の基本方針の変更に関するお知らせ)。

株主優待もあります。2027年3月期は2026年9月30日時点で100株以上を持つ株主に、川崎ブレイブサンダースの観戦チケット引換証、ベイスターズのファンクラブ入会クーポン、ワンダリア横浜の入館チケット引換証、THE LIVEのドリンククーポンなどを贈り、枚数や割引額は保有株数(300株以上かどうか)で変わります(2027年3月期 株主優待の内容決定に関するお知らせ)。

株価指標(2026年10月1日終値)

株価(月末終値)は、ポケポケ配信前の2024年9月末の1,783円から、2025年2月末には3,985円まで上がりました。その後は下がり、2025年6月末以降は2,200円台〜2,700円台で推移しています(東証株価よりKabuGraph作成)。

  • 株価:2,556.5円

  • 時価総額:2,634億円(自己株式を含む発行済株式総数ベース)

  • PER:14.9倍(実績。2026年3月期のEPS 171.36円)。2027年3月期は純利益の予想が開示されていないため、予想PERは出せない

  • PBR:1.10倍(2026年6月末の1株当たり親会社所有者帰属持分2,330.95円で算出)

  • 配当利回り:2.58%(実績。2026年3月期の年66円)

  • ROE:8.0%(2026年3月期、会社算出の親会社所有者帰属持分当期利益率)

出典:東証株価・ディー・エヌ・エー 決算短信よりKabuGraph算出(2026年10月1日終値)。PBRは期中の自社株買いを反映するため、2026年6月末の親会社の所有者に帰属する持分(2,182.72億円)を自己株式を除く株式数(9,364.1万株)で割って計算

PER14.9倍は、プライムの情報・通信業の加重平均(12.5倍)をやや上回り、プライム全体の加重平均(20.8倍)は下回ります。PBR1.10倍は、情報・通信業(1.9倍)・プライム全体(1.8倍)のどちらも下回る水準です(いずれも2026年8月末、東証「規模別・業種別PER・PBR」、KabuGraphの業種別PER・PBR)。ただしDeNAの利益はゲームのヒット、減損、持分法の利益で大きく振れるため、1期のPERだけで割安かどうかは判断しにくい銘柄です。

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競合との比較

DeNAは事業ごとに競合が違います。ゲームではモバイルゲーム各社、ライブ配信では配信アプリ、スポーツでは球団・クラブを持つ会社、ヘルスケアでは健康・医療データの会社とぶつかります。会社自身も、事業領域はいずれも他社との強い競争にさらされているとしています(有価証券報告書 事業等のリスク)。

会社

売上高
(億円)

営業
利益率

時価総額
(億円)

ディー・エヌ・エー

1,477.0

12.7%

2,634

MIXI

1,713.7

13.0%

2,556

サイバー
エージェント

8,740.3

8.2%

6,281

ガンホー

932.4

5.4%

1,287

グリーHD

513.2

7.8%

759

出典:各社の決算短信(ディー・エヌ・エー・MIXI・サイバーエージェント・ガンホー・オンライン・エンターテイメント・グリーホールディングス)・東証株価よりKabuGraph算出。売上高・営業利益率は各社の直近の通期実績(ディー・エヌ・エーとMIXIは2026年3月期、サイバーエージェントは2025年9月期、ガンホーは2025年12月期、グリーホールディングスは2026年6月期)。ディー・エヌ・エーはIFRSの売上収益で、営業利益はアルムののれんの減損96.14億円を含む。時価総額は2026年10月1日終値ベース
  • ゲーム

  • ライブ配信

  • スポーツ

    • MIXI(2121):Bリーグの千葉ジェッツを運営し、前期に開業した「LaLa arena TOKYO-BAY」でチケットやスポンサー収入を伸ばしている(MIXI 2026年3月期 決算短信)

    • DeNA:Bリーグの川崎ブレイブサンダースに加え、プロ野球球団と本拠地の横浜スタジアム、関内の複合施設「BASEGATE横浜関内」の直営施設まで持つ

  • ヘルスケア

    • JMDC(4483):健康保険組合などの保険者が持つデータの分析サービスや、匿名加工した医療データの学術・産業利用を手がける。2026年3月期の売上収益は504.6億円、営業利益は105.2億円(IFRS、会社開示の売上収益営業利益率20.9%)(JMDC 2026年3月期 決算短信)

    • DeNA:ヘルスケア・メディカル事業は売上収益87.3億円・セグメント損失23.3億円(2026年3月期)で、規模も利益率もJMDCに大きく離されている

出典:各社の決算短信・公式サイトよりKabuGraph作成

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MIXI

MIXIは東京都渋谷区に本社を置くIT企業。SNS「mixi」の運営会社として創業し、現在はスマートフォン向けゲーム『モンスターストライク』を中心としたデジタルエンターテインメント事業が収益の柱となっている。ほかに、サッカーJ1のFC東京と…

投資家が注目すべきポイント

強み

1. IPを持つ会社と組んで大ヒットを生んだ協業力

ポケポケは150の国と地域で累計2億ダウンロードを超え、2025年3月期の営業利益を289.7億円に押し上げました。任天堂・ポケモンとの協業タイトルや集英社との合弁会社など、IPを持つ会社と組んできた実績が次の協業の土台になります。

2. ゲーム以外の柱:ベイスターズと横浜の街づくり

2025年シーズンの観客動員は236万人で球団史上最多。BASEGATE横浜関内の直営施設も加わり、会社はスポーツ・スマートシティ全体で年間30億円水準の利益を見込みます。

3. 厚い財務と、資本効率重視への転換

2026年6月末の現金は844億円、借入金は10億円弱。任天堂株・GO株の現金化と500億円の自社株買い、DOE3%の配当方針で、安定して8%以上のROEを出せる構造を目指しています。

4. 事業を育てて引き継ぐ「エクイティ収益」

GOのように、社内で始めた事業を育てて上場・売却で回収した実績があります。2027年3月期第1四半期には395億円の利益を計上しました。

リスク

1. ポケポケへの依存と反動減

ゲームのセグメント利益は2025年3月期の385.8億円から2026年3月期は296.6億円に減り、2027年3月期第1四半期(3か月)も38.3億円(前年同期比−62.0%)でした。会社は今期もゲームの減収減益を想定しています。

2. 繰り返される大型の減損

2020年3月期(511.65億円)、2024年3月期(287.64億円)、2026年3月期(アルムののれん96.14億円)と減損が続き、ROEは2019年3月期以降、単年度で−22.8%〜13.2%の幅で振れてきました。会社はM&Aで、ROE目標への貢献度を踏まえた判断を徹底するとしています(2026年3月期 決算説明会 質疑応答)。

3. 新作と新規事業の不確実性

ソフトローンチ戦略の本格タイトルは2027年3月期に1〜2本の予定で、事業として業績にしっかり貢献させる時期を会社は「再来期にかけて」としています(第1四半期決算説明会 質疑応答)。

4. ヘルスケア・メディカルの赤字

2026年3月期は23.3億円の損失でした。2027年3月期の黒字化を掲げていますが、当初の想定より時間がかかっていると会社も認めています(2026年3月期 決算説明会 質疑応答)。

5. 純利益予想の非開示と一時的な利益

2027年3月期の純利益予想は出ておらず、第1四半期の純利益334.4億円の大半はGO株の売出しによる利益です。本業の利益水準と分けて見る必要があります。

まとめ

ディー・エヌ・エー(2432)は、ポケポケを柱とするゲームに、ライブ配信、ベイスターズを中心とするスポーツ・街づくり、ヘルスケアを組み合わせたネット企業です。

  • 事業:売上収益の43.5%がゲーム(2026年3月期)。利益の大半もゲームで、ヘルスケア・メディカルと新規事業は赤字

  • 業績:2026年3月期は売上収益1,477.0億円・営業利益186.9億円。2027年3月期は売上収益1,540億円・営業利益150億円を予想し、第1四半期(3か月)の営業利益の進捗率は49.4%

  • 財務・還元:500億円の自社株買い(全株消却)とDOE3%の配当方針。2026年6月末の現金844億円、借入金10億円弱

  • 株価:PER14.9倍・PBR1.10倍・配当利回り2.58%(2026年10月1日終値)

  • 見るべき点:ポケポケの利用者数と課金の推移、ソフトローンチの新作が育つか、M&Aと新規事業に資金をどう振り向けるか、ROE8%以上が定着するか

資産の現金化と自社株買いで資本効率の改善は進みましたが、本業の利益はまだポケポケ1本の動向に大きく左右されます。四半期の数字よりも、ゲームの新作のパイプラインと、南場CEOのもとで打ち出す成長投資の中身を見ていきたい銘柄です。


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2432情報通信・サービスその他

ディー・エヌ・エー

ゲーム、ライブコミュニティ、スポーツを主軸とするインターネット企業。ゲーム事業ではスマートフォン向けゲームアプリの開発・運営を国内外で展開する。ライブコミュニティ事業ではライブ配信アプリ「Pococha」とバーチャルライブ配信「IRIAM」…

本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。投資の最終判断はご自身の責任でお願いいたします。記事中の株価指標は2026年10月1日終値、その他の数値は2026年10月1日時点で確認できた開示に基づいています。

コラム著者・編集者

K

KabuGraph編集部

KabuGraph編集部は、投資情報の発信と株式分析ツールの開発に携わるチームです。日本株・米国株の事業分析から、投資に役立つ情報をわかりやすくお届けします。

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