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野村総合研究所(4307)の企業分析|金融IT最大手・4セグメント体制でDX需要を取り込むコンサルSIer

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野村総合研究所(NRI・4307)は、経営コンサルティングとITソリューションを一気通貫で提供する日本最大級のコンサルティング・SIer企業です。

2026年3月期は売上収益8,147億円(前期比6.5%増)と6期連続で過去最高を更新。一方、海外子会社ののれん減損約969億円の計上により営業利益は583億円(同56.8%減)となりました。ただし減損影響を除いた恒常的事業利益は1,567億円(同16.3%増)と、本業の成長は堅調です(出典:NRI 2026年3月期決算短信)。

この記事では、NRIの4つの事業セグメント、業績推移、海外M&A減損の実態、DX・AI成長戦略と投資判断のポイントを、個人投資家の視点からわかりやすく解説します。

会社概要 — 野村證券のIT部門から始まった「未来創発」企業

野村総合研究所(NRI)公式サイト
出典:野村総合研究所(NRI)公式サイト

野村総合研究所は、1965年に設立された野村総合研究所(シンクタンク)と、野村コンピュータシステム(野村證券のIT部門)が1988年に合併して誕生しました。「Dream up the future. — 未来創発」を企業理念に掲げ、経営コンサルティングとITソリューションの両輪で顧客企業の成長を支援しています。

項目

内容

会社名

株式会社野村総合研究所

証券コード

4307(東証プライム)

設立

1965年(現NRIは1988年合併)

代表取締役社長

柳澤花芽

従業員数

16,894名(NRIグループ、2026年3月31日現在)

本社

東京都千代田区大手町

決算期

3月(IFRS適用)

主要顧客

野村グループ、大手金融機関、流通・製造業

4つの事業セグメントを理解する

NRI サービス・ソリューション
出典:NRI公式サイト サービス・ソリューション

NRIはコンサルティング、金融ITソリューション、産業ITソリューション、IT基盤サービスの4つのセグメントで事業を展開しています(出典:NRI セグメント情報)。

セグメント別売上構成比(2026年3月期)

出典:NRI 2026年3月期決算短信。内部売上収益を含むセグメント売上収益ベース(合計9,754億円、調整額▲1,607億円を除く)。金融ITが4割強を占める

コンサルティング — 経営課題の上流を担う

経営戦略、DX戦略、業務改革、制度・政策提言などのコンサルティングサービスを提供。売上687億円と規模は最小ながら、営業利益率28.0%と最も高い利益率を誇ります。AIやデジタル戦略関連の案件が急拡大しています。

金融ITソリューション — NRIの屋台骨

証券・銀行・保険など金融機関向けのITシステム開発・運用を手がける、NRIの中核セグメント。売上4,052億円は連結売上収益8,147億円の約50%に相当します。野村證券向けの「STAR」など業界標準となった共同利用型プラットフォームが安定収益を生み出しており、営業利益743億円(利益率18.3%)と高い収益性を維持しています。

産業ITソリューション — 非金融分野の成長エンジン

流通・製造・通信・サービス業など非金融分野向けのITソリューションを提供。売上2,800億円と金融に次ぐ規模で、DX需要の拡大に伴い成長が加速しています。セブン&アイHDや大手流通企業のシステム基盤を支えるほか、SaaS型サービスの拡充にも注力。ただし2026年3月期は海外子会社ののれん減損を計上したため、営業損益は746億円の損失(利益率▲26.6%)となりました。減損を除けば約230億円(同8.2%)の黒字です。

IT基盤サービス — ストック型のインフラ運用

データセンター運営、クラウドサービス、ネットワーク基盤の提供を行うセグメント。売上2,215億円と金融IT・産業ITに次ぐ規模で、営業利益386億円(利益率17.4%)を計上しています。一度構築したインフラの継続利用(ストック型収益)が安定収益の源泉です。

セグメント別営業利益と利益率(2026年3月期)

出典:NRI 2026年3月期決算短信。内部売上収益を含むセグメントベース。産業ITは海外子会社ののれん減損の計上により営業損失。KabuGraph作成

業績推移と財務分析

通期業績推移 — 本業成長は堅調、のれん減損で一時的に減益

NRIの売上収益は6期連続で過去最高を更新中です。2026年3月期は海外子会社(豪州ASGグループ、北米Core BTS)で合計約969億円ののれん減損を計上したため、見かけ上は大幅減益となりましたが、一時的要因を除いた恒常的事業利益は1,567億円(前期比16.3%増)と堅調に推移しています(出典:NRI 2026年3月期決算短信 p.1)。

決算期

売上収益

営業利益

純利益

備考

2021/3

5,505億円

865億円

681億円

2022/3

6,116億円

1,062億円

714億円

OP初の1,000億円超

2023/3

6,922億円

1,118億円

763億円

2024/3

7,366億円

1,204億円

796億円

2025/3

7,648億円

1,349億円

938億円

2026/3

8,147億円

583億円

153億円

のれん減損▲969億円

2027/3(会社予想)

8,500億円

1,750億円

1,190億円

減損の反動で大幅増益

売上収益と営業利益の推移

出典:NRI 決算短信各期、2027/3は会社予想。2026/3はのれん減損▲969億円を含む。KabuGraph作成

配当推移 — 連続増配を継続

NRIは業績連動型の配当方針を採用しつつ、連続増配を継続しています。2026年3月期はのれん減損で純利益が大幅減少したにもかかわらず、1株当たり配当金を前期の63円から77円へ増配(配当性向は一時的に289%に上昇)。本業の成長に対する自信を示す配当政策です。

1株当たり配当金と配当性向の推移

出典:決算短信・有価証券報告書・IR資料よりKabuGraph作成。配当性向は1株当たり年間配当÷EPSでKabuGraph算出。2026/3期の289.3%は、のれん減損969億円で純利益が15,257百万円まで落ち込んだことによる一時的な水準

株価指標(2026年8月31日時点)

指標

株価

5,266円

PER(株価収益率)

197.8倍(のれん減損の影響、予想ベースでは約25倍)

PBR(株価純資産倍率)

6.43倍

配当利回り

1.58%

ROE(自己資本利益率)

3.5%(一時的低下、前期は22.5%)

投資家が注目すべきポイント

3つの強み

① コンサルティング×ITの一気通貫モデル

経営戦略のコンサルティングからシステムの設計・開発・運用までをワンストップで提供できる点がNRI最大の強みです。顧客の経営課題を上流で把握し、ITソリューションとして実装・運用まで一貫して手がけることで、長期的な顧客リレーションと高いリピート率を実現。コンサルティングの利益率28.0%、金融ITソリューションの利益率18.3%という数字がその付加価値の高さを物語っています。

② 金融IT市場でのドミナントポジション

野村證券のIT部門を起源とするNRIは、証券・銀行・保険業界のIT基盤を深く理解した上でソリューションを提供しています。STAR(証券バックオフィスシステム)、T-STAR(信託銀行向け)、I-STAR(投信窓販)など、業界標準のプラットフォームを多数保有。これらは一度導入するとスイッチングコストが高く、ストック型の安定収益を生み出しています。

③ DX・AI需要の拡大による持続的成長

日本企業のDX投資拡大を追い風に、売上収益は6期連続で過去最高を更新中。特にAI活用に関するコンサルティング需要が急拡大しており、NRIは「NRI Solution AI」を軸にAI導入・活用支援サービスを展開しています。減損影響を除いたEBITDAマージンは25.6%(前期比1.1ポイント増)と、収益性の改善も進んでいます。

注意すべきリスク

① 海外M&Aの減損リスク

2026年3月期に豪州のNRI Australia(旧ASGグループ)と北米のCore BTSで合計約969億円ののれん減損を計上。海外市場でのPMI(買収後統合)の難しさが浮き彫りになりました。NRIは海外売上比率の拡大を中長期戦略に掲げていますが、今後の海外M&Aには市場からの厳しい目が向けられるでしょう。

② 金融業界への高い依存度

金融ITソリューションが売上の約50%を占めており、金融業界の規制変更やIT投資抑制の影響を受けやすい構造です。産業ITの成長でバランスは改善傾向にありますが、金融セクターの景気変動が業績に与えるインパクトは依然として大きいです。

③ IT人材の獲得競争

国内外でIT人材の争奪戦が激化しており、コンサルタント・エンジニアの採用・育成コストが上昇しています。特にAI・DX領域の高度人材は外資系コンサルやGAFAMとの獲得競争にさらされており、人件費の上昇が利益率に対する下押し圧力となる可能性があります。

④ 高いバリュエーションの持続性

PBR 6.43倍は日本株の中でも高水準です。2027年3月期の会社予想(営業利益1,750億円)をベースにした予想PERは約25倍と、IT・コンサル企業としては妥当な範囲ですが、減損前の成長トレンドへの回帰が前提となっています。海外事業や大型案件の動向次第で評価が変わり得ます。

まとめ

野村総合研究所は、コンサルティングからITソリューションまでを一気通貫で提供する日本最大級のコンサルSIer企業です。

  • 強み:コンサル×ITの一気通貫モデル、金融ITでのドミナントポジション、DX・AI需要の取り込み

  • 課題:海外M&Aの減損リスク、金融業界への依存、人材獲得競争

  • 注目点:2027/3の利益回復(OP 1,750億円)の達成度合い、海外事業の再建、AI事業の規模拡大

2026/3の大幅減損は一時的要因であり、本業の成長力は健在です。ただし、減損処理で顕在化した海外M&Aリスクと、PBR 6倍超の高バリュエーションを正当化するだけの成長持続性が、今後の投資判断の焦点となります。


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