銀行の自己資本比率の見方と計算方法|最低水準は8%と4%、決算短信の数%とは別物

銀行の自己資本比率は、決算短信の1ページ目ではなく、自己資本を「リスク・アセット」で割った規制上の比率で見ます。リスク・アセットは貸出や保有資産を損失の出やすさで評価し直した額で、それに対して損失を吸収できる資本がどれだけあるかを示します。銀行法にもとづいて最低水準が決められています。
最低水準は、海外に拠点がある銀行(国際統一基準)が8%、そのうち最も質の高い普通株式等Tier1(CET1)で4.5%、国内だけで営業する銀行(国内基準)が4%です。割り込むと、金融庁の早期是正措置の対象になります。
実際の水準は最低を大きく上回ります。2026年3月末で3メガバンクのCET1比率は12.41〜13.16%、全国地方銀行協会に加盟する地方銀行のうち国内基準の52行は平均10.21%でした。一方、決算短信の1ページ目に載る「自己資本比率」は三菱UFJで5.2%、みずほで3.7%と水準がまるで違います。こちらは貸借対照表の自己資本を総資産で割った会計上の比率で、規制の最低水準(8%・4%)と比べる数字ではありません。
投資家にとって大事なのは、各行が配当や自社株買いを決めるときに使う「会社基準のCET1比率」と、その目標水準です。この記事では、式の中身と2つの基準の違い、下回ったときの措置、メガバンク・地方銀行の実数、決算資料のどこに載っているか、株主還元や金利・株価との関係を順に解説します。
この記事の内容(目次)
銀行の自己資本比率の計算方法——自己資本をリスク・アセットで割る
銀行の自己資本比率は、損失を吸収できる自己資本が、損失の出やすさで重みづけした資産(リスク・アセット)の何%あるかを表します。銀行は預金を集めて貸し出す商売なので、貸出先の倒産などで損失が出ても預金を守れるだけの資本を持つよう求められています。
根拠は銀行法 第14条の2(e-Gov法令検索)で、計算方法は金融庁の告示が定めています。銀行は平成18年金融庁告示第19号、3メガのフィナンシャル・グループのような銀行持株会社は第20号(銀行法第52条の25にもとづく)で計算します。
分子:CET1・AT1・Tier2の3階建て
分子の自己資本は、損失を吸収する力の強い順にCET1・AT1・Tier2の3つに分かれます(金融庁「バーゼル規制の概要」(2026年8月)p.4)。
CET1(普通株式等Tier1):普通株と内部留保(利益の積み上げ)が中心。国際統一基準では、保有株や債券の含み損益(その他有価証券評価差額金)も入る
AT1(その他Tier1):優先株や永久劣後債(AT1債)。CET1比率が5.125%を下回るなどすると、元本の削減や株式への転換が起きる条件が付く
Tier2:期限付劣後債や一般貸倒引当金。破綻したときに、預金者を含む一般の債権者より先に損失を負う
のれん・無形資産・繰延税金資産や、他の金融機関への出資はCET1から差し引きます。資本の質を高め、金融機関どうしの出資でリスクが積み重なるのを防ぐためです(同)。劣後債やAT1債の商品としての仕組みとリスクは、劣後債の記事で詳しく扱っています。

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分母:資産を損失の出やすさで数え直す
分母のリスク・アセットは、信用リスク・マーケット・リスク・オペレーショナル・リスクの3つを合計した額です。中心は信用リスクで、貸出や債券の額に、相手ごとの「リスク・ウェイト」を掛けて求めます。
日本国債・日本銀行向け(円建て):0%。いくら持っても分母は増えない(平成18年金融庁告示第19号 第56条第2項)
企業向けの貸出:相手の格付に応じて20〜150%(金融庁「バーゼル規制の概要」p.12)
株式:250%(投機的な非上場株は400%、告示第19号 第76条)。バーゼルⅢの最終化で100%から引き上げられ、5年の経過措置で段階的に上がる(金融庁・日本銀行「バーゼルⅢの最終化について」(2018年2月)p.6)
金融庁の説明では、リスク・ウェイト100%の貸出1億円には、8%にあたる800万円の自己資本が必要です(国際統一基準の場合、同p.12。国内基準なら4%で400万円)。同じ1億円でも、日本国債なら0円、株式なら2,000万円になります。
バーゼルⅢの最終化は、日本では国際統一基準の銀行と内部モデルを使う国内基準の銀行に2024年3月31日から、それ以外の国内基準の銀行に2025年3月31日から適用されました。届け出れば早めに始めることもでき、2023年3月期から適用した銀行もあります(金融庁「バーゼル規制の概要」p.10)。
最終化では「資本フロア」も入りました。自前のモデル(内部格付手法)で分母を計算する銀行は、標準的な方法で計算した額の一定割合を下回れません。国際統一基準の銀行では、下限は2024年3月末の50%から毎年引き上げられ、2029年3月末に72.5%で完全実施されます(三井住友フィナンシャルグループ 2025年度決算 投資家説明会資料 p.77)。
実際の内訳の例として、りそなホールディングスが示す2026年3月末のリスク・アセット(最終化の完全実施ベース)は23.6兆円で、信用リスクが18.9兆円(約8割)、資本フロアによる上乗せが3.5兆円(約15%)、オペレーショナル・リスクが1.0兆円、マーケット・リスクが0.2兆円です(りそなホールディングス 2026年3月期決算ハイライト p.19)。
国際統一基準8%と国内基準4%の違い
どちらの基準で計算するかは、海外に営業拠点(海外支店・海外子会社)があるかどうかで決まります(日本銀行「銀行の自己資本に関する国際統一基準と国内基準の違いを教えてください」)。
国際統一基準:3メガのフィナンシャル・グループと傘下の銀行、三井住友トラストグループ、横浜フィナンシャルグループなど地方銀行の持株会社5社、千葉・群馬・静岡・八十二長野など地域銀行10行など(2026年5月時点。10行のうち第二地方銀行の名古屋銀行を除く9行が全国地方銀行協会の加盟行、金融庁「バーゼル規制の概要」p.16)
国内基準:上に含まれない銀行。りそなホールディングスや、多くの地方銀行はこちら
2つの基準は、最低水準だけでなく計算の中身も違います(同p.17)。
最低水準
国際統一基準:CET1比率4.5%・Tier1比率6%・総自己資本比率8%
国内基準:自己資本比率4%。自前のモデル(内部格付手法)を使う銀行は、国際統一基準で計算したCET1比率4.5%も満たす必要がある
分子(自己資本)
国際統一基準:CET1・AT1・Tier2
国内基準:「コア資本」。普通株・内部留保・強制転換条項付優先株・一般貸倒引当金など。劣後債は入らない
保有株・債券の含み損益(その他有価証券評価差額金)
国際統一基準:CET1に含める。株価や金利で比率が動く
国内基準:含み益も含み損も勘案しない
上乗せ(資本バッファー)とその他の規制
国際統一基準:資本バッファー、レバレッジ比率(3.15%以上)、流動性の規制が適用される
国内基準:資本バッファーは無い。レバレッジ比率と流動性は当局へのデータ提出だけ
国際統一基準には「上乗せ」がある:3メガの所要CET1比率は8.0〜8.5%
国際統一基準の銀行は、最低水準に加えて「資本バッファー」を積む必要があります。日本では2016年から段階的に導入されました(金融庁「バーゼル規制の概要」p.5)。
資本保全バッファー:2.5%。平時に積んでおき、ストレス時に取り崩す
カウンター・シクリカル・バッファー:貸出が過熱したときに各国が0〜2.5%で設定する。日本は0%
G-SIBバッファー:世界の金融システムで重要な銀行への上乗せ。三菱UFJは1.5%、みずほと三井住友は1.0%
D-SIBバッファー:国内で重要な金融機関への上乗せ。三井住友トラスト・農林中央金庫・野村ホールディングス・大和証券グループ本社は0.5%
この結果、実際に求められるCET1比率は、三井住友とみずほで8.0%(4.5%+2.5%+1.0%)、三菱UFJで8.5%になります(カウンター・シクリカル・バッファーを除く。海外向けの貸出には、その国が設定した分も上乗せされる)。三井住友フィナンシャルグループは決算資料で、所要水準をCET1比率8.0%・Tier1比率9.5%・総自己資本比率11.5%と示しています(三井住友フィナンシャルグループ「2025年度決算の概要」p.22)。
比率が下がるとどうなる?早期是正措置と配当の制限
自己資本比率が最低水準を割り込むと、金融庁は銀行法第26条第2項にもとづいて「早期是正措置」を命じることができます。1998年4月に導入された仕組みで、比率が低いほど命令が重くなります(金融庁「金融庁の1年(2024事務年度版)」早期是正措置・社外流出制限措置について)。
区分 | 国際統一基準の総自己資本比率 | 国内基準の自己資本比率 | 主な措置 |
|---|---|---|---|
第1区分 | 4%以上8%未満 | 2%以上4%未満 | 経営改善計画 |
第2区分 | 2%以上4%未満 | 1%以上2%未満 | 資本増強計画・総資産の圧縮 |
第2区分の2 | 0%以上2%未満 | 0%以上1%未満 | 大幅な業務縮小・合併など |
第3区分 | 0%未満 | 0%未満 | 業務の全部または一部の停止 |
国際統一基準の銀行は、総自己資本比率だけでなくCET1比率とTier1比率でも区分されます。CET1比率が4.5%、Tier1比率が6%を割り込めば、総自己資本比率が8%以上あっても第1区分です。レバレッジ比率にも別の区分があり、最低水準を下回ると経営改善計画を求められます(銀行法第二十六条第二項に規定する区分等を定める命令 第1条(e-Gov法令検索))。資本バッファーもCET1で積むため、3メガの目標や還元の判断はCET1比率を軸にしています。
国内基準の銀行は、第2区分で配当や役員賞与の禁止・抑制も命じられえます。国際統一基準の銀行の配当は、もう一段手前の仕組みで縛られます。
資本バッファーを満たせなくなると「社外流出制限措置」の対象になり、利益のうち配当・賞与・自社株買いに回せない割合が決まります。資本保全バッファー(2.5%)分での例では、バッファー部分の比率が2.5%を下回ると利益の40%、0.625%を下回ると100%を社外に出せません(金融庁「金融庁の1年(2024事務年度版)」)。
命令が出ることはまれです。早期是正措置の発動は導入以来、銀行等で累計14件で、2024事務年度は早期是正措置も社外流出制限措置も0件でした(同)。株主にとって現実的なリスクは、命令そのものより、比率が目標を割り込んだ銀行が自ら還元を絞ることや、増資で資本を補うことです。増資で1株の価値が薄まる仕組みは増資の記事で解説しています。

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メガバンク・地方銀行の自己資本比率はどれくらい?(2026年3月末)
2026年3月末の規制上の比率は、3メガ・りそなとも最低水準を大きく上回っています。決算短信サマリーの会計上の比率と並べると、差の大きさが分かります。
会計上と規制上の自己資本比率(2026年3月末、連結)
CET1比率で見ると、三菱UFJ 12.47%、三井住友 12.41%、みずほ 13.16%で、所要水準(8.0〜8.5%)を4〜5ポイント上回っています。
三菱UFJ:CET1比率12.47%、Tier1比率14.95%、総自己資本比率16.85%(三菱UFJフィナンシャル・グループ 2026年3月期決算短信 p.34)
三井住友:CET1比率12.41%、Tier1比率14.49%、総自己資本比率15.69%(三井住友フィナンシャルグループ「2025年度決算の概要」p.22)
みずほ:CET1比率13.16%、Tier1比率15.73%、総自己資本比率17.61%(みずほフィナンシャルグループ 2026年3月期決算短信 p.39)
三菱UFJのCET1比率は1年前の14.18%から1.71ポイント下がりました。分子のCET1資本はほぼ横ばい(15.2兆円→15.0兆円)で、分母のリスク・アセットが106.9兆円から120.3兆円へ13.4兆円増えたためです。比率は分子と分母の両方で動くので、下がったときはどちらが原因かを確かめます。
地方銀行:国内基準の52行は平均10.21%、最も低い銀行でも7.53%
全国地方銀行協会によると、加盟61行(単体)の2026年3月末の自己資本比率は、国際統一基準の9行が13.96%、国内基準の52行が10.21%でした(全国地方銀行協会「2025年度地方銀行決算の概要」p.8。値は加重平均で、同協会の各行別データの注記による)。国内基準の52行は2022年3月末の9.57%から上がり、2023年3月末以降は10%台で推移しています。
国内基準の地方銀行52行の自己資本比率の分布(2026年3月末、単体)
最も低いのは北國銀行の7.53%、次いで佐賀銀行の7.81%。それでも最低水準4%の2倍近くある
中央値は10.1%で、52行のうち27行が10%以上
最も高いのは常陽銀行の12.76%で、武蔵野銀行12.70%、南都銀行12.38%が続く
国際統一基準の9行は、中国銀行の11.88%から山口銀行の15.23%まで
会計上の比率(純資産÷総資産、単体)で見ると、国内基準の52行の中央値は4.6%で、規制上の比率(中央値10.1%)の半分以下です(全国地方銀行協会 各行別データよりKabuGraph算出)。持株会社の傘下にある銀行は、グループ全体(連結)の比率が単体と違うので、株を買うときは持株会社の開示を見ます。
決算短信の「自己資本比率」は別物:規制上の比率はどこに載っている?
決算短信の1ページ目(サマリー)にある「自己資本比率」は会計上の比率で、規制上の比率ではありません。計算は「(純資産−新株予約権−非支配株主持分)÷総資産」で、みずほの短信は「本「自己資本比率」は、自己資本比率告示に定める自己資本比率ではありません」と注記しています(みずほフィナンシャルグループ 2026年3月期決算短信 p.1)。
会計上の比率が数%にとどまるのは、銀行が預金という負債で資産の大半をまかなう業態だからです。2026年3月末の三菱UFJは、総資産431.7兆円に対して自己資本22.3兆円で5.2%でした(三菱UFJ 2026年3月期決算短信 p.1)。
規制上の比率がその3倍強になるのは、分母のリスク・アセット(120.3兆円)が総資産の28%しかないからです。日銀への預け金や日本国債のようにリスク・ウェイトが0%の資産を多く持つことなどが理由で、三井住友(31%)やみずほ(27%)も同じくらいです。
規制上の比率は、次の資料で確かめます。
決算短信の後半(補足資料):3メガは「自己資本比率」の表で、CET1比率・Tier1比率・総自己資本比率とリスク・アセットの額を示す
決算説明資料:会社基準のCET1比率と目標、増減の要因(次の章)
「自己資本比率について」の適時開示:地方銀行などが、決算短信とは別に四半期末の比率を開示することがある
ディスクロージャー誌・バーゼルⅢ関連の開示:自己資本の構成やリスク・アセットの内訳。国際統一基準の銀行は四半期ごとに開示する(金融庁「バーゼル規制の概要」p.20)
会計上の自己資本比率(計算式・事業会社の水準・業種差)は、自己資本比率の記事で解説しています。

自己資本比率とは|上場企業の中央値56.8%(金融除く)、キーエンス94.6%・トヨタ37.8%・三菱UFJ5.2%の違い
自己資本比率は自己資本÷総資産×100で、返済不要のお金で資産の何割をまかなっているかを示します。金融業を除く上場3,500社の中央値は56.8%。計算式、キーエンス・トヨタの読み方、業種差、ROEとの関係、銀行の規制上の比率との違いを解説。
株主還元との関係:各行はCET1比率の目標で配当・自社株買いを決める
3メガは、規制上のCET1比率とは別に「会社基準」のCET1比率に目標を置き、配当・自社株買い・成長投資への資本の配分を決めています。会社基準の比率は、次の2点で規制上の比率より低く出ます。
将来の規制で計算する:バーゼルⅢの最終化は段階適用の途中なので、資本フロアなどが上がり切る2029年3月末の規制で試算する
その他有価証券評価差額金を除く:政策保有株などの含み益は株価しだいで増減する。会社基準では分子から外している(三井住友は、分母からも株式の含み益に係る分を除く)
銀行 | 規制上のCET1比率 | 会社基準のCET1比率 | 会社の目標レンジ |
|---|---|---|---|
三菱UFJ | 12.47% | 9.2% | 9.5〜10.5% |
三井住友 | 12.41% | 10.3% | 10.5%程度 |
みずほ | 13.16% | 9.9% | 9%台半ば〜10%台半ば |
会社基準の比率が目標を上回る分が、還元や成長投資に回せる余地です。逆に目標を下回ると、還元は控えめになりやすくなります。
三菱UFJの会社基準のCET1比率は、2025年3月末の10.8%から2026年3月末に9.2%へ下がり、目標レンジ(9.5〜10.5%)を下回りました。1.6ポイントの低下のうち0.65ポイントは、インドのノンバンクShriram Financeへの出資によるものです。会社は2026年度内にレンジへ戻る想定です(三菱UFJ 2025年度決算ハイライト p.5)。
同じ決算で、年間配当は86円から96円への増配予想とした一方、自己株式取得は上期分1,000億円の決議にとどめ、下期分は「外部環境や利益の進捗等を踏まえ別途検討」としました。2025年度の取得は5,000億円でした(同p.4)。

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三井住友は、2026年3月末の会社基準のCET1比率が10.3%です。中期経営計画では2028年度末の運営目標を10.5%程度(10.0〜11.0%)とし、政策保有株式の含み益の減少などを踏まえて「従来比+0.5%で運営」するとしました。配当は配当性向40%とし、累進的配当の方針を「減配しない」から「毎期増配」へ進めています(三井住友フィナンシャルグループ 2025年度決算 投資家説明会資料 p.54)。

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みずほは、会社基準のCET1比率9.9%が「資本運営目線」の9%台半ば〜10%台半ばの中にあると示しています(みずほフィナンシャルグループ 2025年度決算 会社説明会資料 p.28)。これとは別に、9%台前半を「所要水準」、つまり下回らないようにする下限と位置付けています。還元は累進的な増配に加え、総還元性向50%以上を目安に自己株式取得を決める方針です(みずほフィナンシャルグループ 2026年3月期決算短信 p.4)。
りそなの例:利益で積み上がり、還元と貸出で使う
比率が何で動くかは、りそなホールディングスの開示が分かりやすい例です。国内基準の銀行ですが、国際統一基準に置き換えた会社基準のCET1比率(完全実施・評価差額金除き)も示しています(りそなホールディングス 2026年3月期決算ハイライト p.19)。2026年3月期の増減は次のとおりです。
当期純利益:+1.2ポイント。利益が内部留保として分子に積み上がる
配当・自己株式取得:▲0.6ポイント。還元した分だけ分子が減る
オーガニック(貸出の増加など):▲0.5ポイント。一般貸出が1.35兆円、住宅ローンが0.54兆円増え、分母が膨らんだ
インオーガニック(出資・買収):▲0.2ポイント
差し引きで10.18%から10.08%へ0.1ポイント下がりました。利益で増えた資本のおよそ半分を還元に、残りを貸出の拡大と出資に使った形です。
りそなホールディングス
首都圏・関西圏を地盤とするリテール特化型の金融グループ。中核の「りそな銀行」「埼玉りそな銀行」が個人・中小企業向け預金・貸出・為替業務を展開。銀行本体で信託業務(遺言信託・資産承継・不動産仲介)をワンストップで取り扱える点がメガバンクとの差…
株高・金利上昇で比率はどう動く?国内基準の銀行で見落としやすい点
保有株や債券の含み損益(その他有価証券評価差額金)の扱いが、2つの基準で違うことに注意が必要です(金融庁「バーゼル規制の概要」p.17)。
国際統一基準:含み損益がCET1に入る。株価が上がれば比率が上がり、金利が上がって債券に含み損が出れば比率が下がる。3メガの会社基準の比率は評価差額金を除いているので、この振れが入らない
国内基準:含み益も含み損も勘案しない。株価が上がっても比率は上がらず、債券に含み損が出ても比率は下がらない
国内基準の銀行では、金利上昇による債券の含み損が自己資本比率に表れません。比率が安定して見えても、決算短信の補足資料で有価証券の評価損益を確かめる必要があります。金利の変動による損失の大きさは、自己資本比率とは別に金融庁が監視していて、金利ショックで失われる経済価値が、国内基準の銀行では自己資本の20%、国際統一基準の銀行ではTier1資本の15%を超えないかを確かめています(同p.19)。

利上げとは|政策金利が株価・為替・住宅ローンに波及するメカニズム
利上げ(政策金利の引き上げ)が株価・為替・住宅ローンに与える影響をわかりやすく解説。日銀の利上げ動向と業種別の株価への影響パターンがわかります。
政策保有株を売ると、国内基準の銀行でも比率は上がります。売却益は当期純利益を通じて内部留保(分子)に入り、リスク・ウェイトの高い株式が減って分母も小さくなるからです。りそなは政策保有株式を2030年3月末までに簿価で2024年3月末比3分の2以上減らす計画で、CET1比率1.5%にあたる3,000億円の資本を生み出すと見込んでいます(りそなホールディングス 2026年3月期決算ハイライト p.18)。

株式の持ち合い・政策保有株とは|都銀・地銀の保有比率は15.7%→1.7%、トヨタ3.66兆円の解消事例と株価への影響
株式の持ち合いは、企業同士が互いの株を持って安定株主になる慣行です。都銀・地銀等の保有比率は1990年度15.7%から2025年度1.7%へ(JPX調査)。政策保有株式との違い、解消の売りが株価に与える影響、有報での調べ方をトヨタ・大林組の実例で解説します。
銀行株を見るときの6つのチェックポイント
規制上の自己資本比率は、高さそのものより「何と比べて、なぜその水準か」で読みます。
どちらの基準か:国際統一基準か国内基準かで、比べられる相手が変わる。比べるのは同じ基準の銀行どうし
所要水準との差:3メガならCET1比率の所要水準8.0〜8.5%、国内基準なら4%をどれだけ上回っているか
会社基準の比率と目標:決算説明資料で、還元の判断に使う比率が目標の上か下かを見る。下回ると追加の自社株買いは控えめになりやすい
増減の理由:利益の積み上げで上がったのか、貸出や出資で分母が膨らんで下がったのか。りそなのように変動要因を示す銀行もある
国内基準の銀行は含み損益を別に見る:比率に出ない債券の含み損と、売れば資本になる政策保有株の含み益を、有価証券の評価差額で確かめる
高すぎないか:目標を大きく超える資本を抱えたままだと、ROE(純利益÷自己資本)の分母が膨らんでROEが下がりやすい。PBRはPER×ROEなので株価の評価にも響く。裏返せば還元を増やす余地がある(仕組みは自己資本比率とROEの関係)
利ざや・与信費用・PBRなど、銀行株のそのほかの見方は銀行株のテーマ記事でまとめています。

【投資テーマ解説】銀行株|金利1.0%時代到来・メガバンク過去最高益と株主還元の全貌
31年ぶりの政策金利1.0%でメガバンク3行は過去最高益を更新。利ざや拡大・累進配当・地銀再編・ネット銀行の台頭まで、銀行セクターの投資テーマを網羅的に解説します。
まとめ
銀行の自己資本比率=自己資本÷リスク・アセット。分母は資産を損失の出やすさで数え直した額で、日本国債は0%、株式は250%で数える
最低水準は国際統一基準8%(CET1比率4.5%)、国内基準4%。国際統一基準には資本バッファーが上乗せされ、3メガの所要CET1比率は8.0〜8.5%
2026年3月末の規制上の比率は、3メガのCET1比率が12.41〜13.16%、国内基準の地方銀行52行の自己資本比率が平均10.21%(最低7.53%)
決算短信サマリーの「自己資本比率」は会計上の別の比率。3メガで3.7〜5.2%
還元の判断は会社基準のCET1比率と目標で見る。三菱UFJは9.2%で目標9.5〜10.5%を下回り、三井住友は10.3%、みずほは9.9%(目線の9%台半ば〜10%台半ばの中)
国内基準は含み損益を比率に入れないので、債券の含み損は有価証券の評価損益で別に確かめる









