第三者割当増資とは|時価90%・希薄化25%のルールと株価への影響、2026年9月の26件で見る提携型とMS型の違い

第三者割当増資は、会社が特定の相手(取引先・金融機関・投資ファンド・経営者など)を選んで、新しい株を引き受けてもらう増資です。会社が持つ自己株式を渡す「第三者割当による自己株式の処分」も同じ手続きで行われます。誰でも応募できる公募増資、既存株主が持株数に応じて引き受ける株主割当と並ぶ、増資の3つの方法の1つです。
上場会社が第三者割当をするときは、会社法・日本証券業協会・東京証券取引所がそれぞれ定めた、既存株主を守るためのルールに従います。払込金額は「決議の前日の終値×0.9以上」が目安です(日本証券業協会の指針)。これを下回ると会社法の「特に有利な金額」にあたるおそれが強く、その場合は株主総会の特別決議が要ります(有利発行かどうかは最終的に会社法の解釈で決まります)。希薄化率が25%以上になるか支配株主が変わるときは、独立した者の意見か株主の意思確認が必要で、300%を超えると原則として上場廃止です(東京証券取引所)。
株価の反応は、誰に・いくらで割り当てるかで大きく分かれます。2026年9月に第三者割当を発表した会社のうち、大和ハウス工業と資本業務提携した大和自動車交通は翌営業日にストップ高(+24.5%)となった一方、株価に合わせて行使価額が見直される新株予約権(MS型)を出した7社は、翌営業日にすべて下落しました(−2.0〜−21.2%)。この記事では、仕組みと公募・株主割当との違い、割当先の類型、価格と希薄化のルール、株価への影響、開示資料の読み方を、2026年の実例で解説します。
この記事の内容(目次)
第三者割当増資とは——特定の相手を選んで新株を渡す増資
会社法は、新しい株を発行することも、会社が持つ自己株式を渡すことも「募集株式の発行等」として同じ手続きで扱います(会社法第199条(e-Gov法令検索))。そのうち、株主全員に平等に引き受ける権利を与えるのではなく、特定の者に株式を割り当てる方法が第三者割当です。金融庁の開示府令も、株主割当などを除いて「株式又は新株予約権を特定の者に割り当てる方法」を第三者割当と定めています(企業内容等の開示に関する内閣府令 第19条第2項第1号ヲ(e-Gov法令検索))。
要点は次のとおりです。
割当先:会社が選ぶ。提携先の事業会社、銀行や政府系の金融機関、投資ファンド、証券会社、経営者、従業員持株会など。既存の株主である必要はない
払込金額:決議の前日の終値が基準で、原則はその0.9倍以上(日本証券業協会の指針)
決める機関:上場会社(公開会社)は取締役会。払込金額が「特に有利な金額」なら株主総会の特別決議
会社のお金:払い込まれた分だけ純資産が増える。借入と違って返済や利払いは要らない
既存株主への影響:株数が増え、1株あたりの利益や議決権の割合が下がる(希薄化)。割当先が大株主として経営に影響力を持つ
上場会社の追加ルール:希薄化率25%以上・支配株主の異動なら独立した者の意見か株主の意思確認、300%超は原則上場廃止(東証)
公募増資・株主割当との違い
増資の3つの方法を観点ごとに比べると次のとおりです。
誰が引き受けるか
第三者割当:会社が選んだ特定の相手
公募増資:広く一般の投資家(証券会社が引き受けて販売する)
株主割当:既存の株主(持株数に応じて)
払込金額
第三者割当:決議の前日の終値が基準。割引は原則10%まで
公募増資:投資家の需要を聞いたうえで、条件決定日の株価から割り引いて決める
株主割当:全株主が同じ条件で引き受けられるので、時価より大きく割り引いてもよい(有利発行の規制がかからない)
既存株主の持株比率
第三者割当:下がる(割当先の比率が上がる)
公募増資:応募しなければ下がる
株主割当:引き受ければ変わらない
向いている場面
第三者割当:提携先に株を持ってもらう、少額でも早く確実に集める、支援企業の傘下に入る
公募増資:多額の資金を幅広い投資家から集める
株主割当:既存株主の持分を保ったまま集める
3つの方法のうち、上場会社で最も件数が多いのが第三者割当です。東証の統計では、2025年に上場会社が払込みを受けた第三者割当は454件(株式報酬による新株の発行を含む)で、公募(新規上場時を含めて72件)を大きく上回り、株主割当は1件でした(日本取引所グループ「上場会社資金調達額」)。
企業から見たメリット・デメリット
会社が第三者割当を選ぶ理由と、その代わりに負うものは次のとおりです。
メリット
相手を選べる:提携先や支援先を株主に迎え、関係を資本で固められる
速く確実に集まる:相手と条件がまとまれば、投資家の需要を聞く手間が要らず、少額でも調達できる(大和自動車交通は決議から払込みまで16日)
相場の地合いに左右されにくい:株価が低迷していても、相手が合意すれば資金を得られる
デメリット
既存株主の持分と議決権の割合が下がり、割当先に支配権が移ることもある
価格を安くすると有利発行の問題になり、株主総会の特別決議が要るほか、株主から発行の差止めを求められるおそれもある
割当先が株を売れば株価の重しになる。売ることが前提の相手(MS型)を選ぶと、市場の評価が下がりやすい
会社だけでなく、割当先と既存株主にも得るものと負うものがあります。3者の利害と、既存株主を守る主なルールを1枚にまとめると次のとおりです。
株主から見た損得や、中小企業が増資するときの税金・費用、公募増資の実例は次の記事で扱っています。

増資のメリット・デメリット|企業は返済不要、株主は希薄化——大阪チタニウムの公募増資は株数21%増・翌日7%安
増資は返済不要の資金で自己資本比率を高める一方、既存株主には1株利益と持株比率の希薄化をもたらします。公募・第三者割当・ライツ・無償増資の違い、株価が下がる理由と希薄化が損にならない条件、中小企業の資本金の壁まで、大阪チタニウムの実例で解説。
誰に割り当てるか——2026年9月の26件で見る5つの類型
第三者割当は、誰に割り当てるかで性格がまったく違います。2026年9月の1か月に上場会社が開示した第三者割当の決議は26件でした(表題に「第三者割当」を含む新規の決議。KabuGraph調べ)。割当先で分けると次のとおりです。
2026年9月に開示された第三者割当の決議(26件)の割当先
資本提携・資本業務提携(7件):事業会社や金融機関が株主になり、事業でも協力する。大和自動車交通(大和ハウス工業)、萩原工業(日本政策投資銀行)、リンカーズ(SBIホールディングス)など。価格は前日の終値か直近の平均株価に近いことが多く、割当先は長期保有を表明するのが一般的
MS型の新株予約権(7件):証券会社や投資ファンドに新株予約権を渡し、株価に合わせて行使価額を見直しながら少しずつ株に換えてもらう。9月の7社のうち3社はバイオ企業。割当先は株を市場で売って資金を回収するのが前提
投資ファンド・その他の法人(6件):固定価格の株式や新株予約権、転換社債をファンドや法人に割り当てる。クオリプスは、産業革新投資機構(JIC)グループが運営するファンドに新株を割り当てた
従業員・株式報酬(4件):従業員持株会や、従業員に株を配るESOP信託に自己株式を渡す。資金調達というより報酬・福利厚生の仕組みで、規模は小さい
経営者(2件):代表取締役が自ら新株を引き受ける。エー・ピーホールディングスは会長兼社長に約2億円の新株を割り当てた
この1か月には無かった型として、経営が苦しい会社がスポンサーに過半数の株を渡す「救済・再建型」があります。2026年は日本板硝子が米投資会社アポロ側に約1,650億円の新株を割り当て、その後に上場廃止となりました(後述)。シャープや東芝のように、債務超過の解消に大型の第三者割当を使った例は次の記事で扱っています。

自己資本比率がマイナスとは?|債務超過の上場企業は12社、1年で解消できなければ上場廃止
自己資本比率がマイナスなのは純資産がマイナスの債務超過のとき。すぐ倒産はしませんが、上場企業は期末に債務超過だと原則1年で解消しないと上場廃止です。債務超過の12社、改善期間の5社、増資・DES・減資の違い、決算短信での見つけ方まで解説します。
MS型は「月初の行使状況の開示」で見分けられる
MS型は、行使価額が株価に合わせて見直されるため、株価が下がっても割当先は行使を進めやすく、受け取った株を市場で売って資金を回収します。交付される株数の上限は発行時に決まっていますが(2026年9月の7件は発行済株式数の11.80〜149.69%)、売りが続いて株価の重しになりやすく、株価が下がるほど会社が受け取るお金は減ります。株価が下がるほど交付される株数が増えるのは、転換価額が修正されるMSCB(転換社債型)の方です。
東証は、第三者割当で発行する新株予約権などのうち、行使価額が株価を基準に6か月に1回を超える頻度で修正されうるものを「MSCB等」と呼び、発行した会社に毎月初、前月の行使状況の開示を義務づけています(日本取引所グループ「MSCB等の発行に関する実務上の留意事項」)。
2026年9月の最初の5営業日だけで、51社がこの行使状況を開示しました(KabuGraph調べ)。保有株の会社がこの開示を出していれば、MS型の新株予約権などが残っているということです。MSCBの仕組みと東証の暦月10%の行使制限は、次の記事で解説しています。

転換社債(CB)とは|仕組みと株価への影響、2026年に1兆円超へ急増した発行の実例
転換社債(CB)は株式に転換できる権利付きの社債。転換価額・パリティ等の仕組み、普通社債との違い、メリット・デメリット、発行時の希薄化とヘッジ売りによる株価への影響、MSCB、個人が買えるかを、丸井グループ等2026年の事例と日証協の統計で解説。
払込金額のルール——有利発行と日証協の「90%ルール」
上場会社(公開会社)は、第三者割当を取締役会の決議だけで決められます(会社法第201条第1項(e-Gov法令検索))。ただし払込金額が引受人に「特に有利な金額」なら、取締役が株主総会で理由を説明したうえで、特別決議(出席した株主の議決権の3分の2以上の賛成)を得なければなりません(会社法第199条第3項・第309条第2項第5号)。株を安く渡せば、その分だけ既存株主の株の価値が割当先に移るからです。
「特に有利」かどうかの目安は前日の終値の90%
会社法は「特に有利な金額」を数字で決めていません。実務の目安になっているのが、日本証券業協会「第三者割当増資の取扱いに関する指針」(2010年4月1日)です。証券会社(協会員)は、上場会社が第三者割当をするとき、次の内容に沿うよう求めることになっています。
原則:払込金額は、取締役会決議の直前日の株価(売買がなければさかのぼった直近日)に0.9を掛けた額以上
例外:直前日までの株価や売買高の状況を考えて、最長6か月さかのぼった期間の平均株価に0.9を掛けた額以上にしてもよい。その場合は、直前日の株価を使わない理由と、その期間を選んだ理由を開示する
対象外:株主総会の特別決議を経て発行する場合
払込金額が基準の株価からどれだけ安いかを示すのがディスカウント率です。
前日の終値に対して10%以内なら指針の原則に収まりますが、指針は実務の目安で、有利発行にあたるかどうかは最終的に会社法の解釈で決まります。開示資料には、前日の終値のほか1か月・3か月・6か月の平均株価に対するディスカウント率(高ければプレミアム)が並ぶのが一般的です。2026年の実例は次のとおりです。
会社(割当先) | 払込金額 | 前日終値との差 | 希薄化率(議決権) |
|---|---|---|---|
大和自動車交通(大和ハウス工業) | 2,040円 | 0% | 10.85% |
萩原工業(日本政策投資銀行) | 1,863円 | −0.80% | 3.44% |
リンカーズ(SBIホールディングス) | 117円 | 0% | 15.37% |
日本板硝子(アポロ側の特別目的会社) | 450円 | +11.11% | 257.64% |
萩原工業:直前1か月の終値の平均(1,863円)を使い、前日の終値(1,878円)より0.80%安い。指針の範囲内
日本板硝子:前日の終値(405円)より11.11%高い一方、直前1か月の平均(521円)より13.63%安い450円
株価が大きく動いていた時期は、どの時点の株価を基準にするかで「割高」「割安」の評価が逆になります。前日の終値だけでなく、平均株価との差も確かめましょう。
希薄化率25%・300%と支配株主の異動——東証と会社法のルール
価格が時価どおりでも、大量の株を特定の相手に渡せば、会社の支配権が既存株主の知らないうちに移ってしまいます。これを防ぐ仕組みは、次の順で整えられました。
2009年8月24日:東証が、希薄化率25%以上の第三者割当に独立した者の意見か株主の意思確認を求め、300%超を原則上場廃止とする規則を施行(大和総研「東証、第三者割当規制を含む規則改正を決定」)
2010年4月1日:日本証券業協会が「第三者割当増資の取扱いに関する指針」を定める(前章)
2015年5月1日:改正会社法の施行。支配株主が変わる募集株式の発行に、株主が反対して株主総会にかけられる仕組み(第206条の2)ができた(法務省「会社法の一部を改正する法律案」)
上場会社が第三者割当で踏む手続きを、判断の順に図にすると次のとおりです。
希薄化率25%以上なら「独立した者の意見」か「株主の意思確認」
東証の上場規程第432条は、第三者割当で希薄化率が25%以上になるとき、または支配株主が変わるとき、次のどちらかを求めています(日本取引所グループ「第三者割当に係る上場制度の概要及び実務上の留意事項」)。
経営者から一定程度独立した者の意見:第三者委員会・社外取締役・社外監査役などが、資金調達の必要性、ほかの調達方法との比較、条件の妥当性について意見を述べる。取締役会の決議日までに入手する
株主の意思確認:株主総会の決議(正式な決議のほか、法的な効力を持たない勧告的決議でもよい)。払込期日までに行う
資金繰りが急速に悪化して時間がないなど「緊急性が極めて高い」と東証が認めた場合に限り、どちらも省けます。希薄化率は次の式で計算します。
新株予約権の分も入れる:将来交付されうる株数も分子に入れる。行使・転換の価格が修正されるものは、下限の価格で計算した株数で数える(MS型の新株予約権は株数が固定なのでその株数、MSCBは下限の転換価額で換算した株数)
分母に既存の潜在株式は入れない:発行済株式の議決権だけで割る
6か月以内の割当は合算する:小分けにして25%を下回らせることはできない
300%超は原則上場廃止、支配株主が変われば3年間の監視
希薄化率が300%を超える第三者割当は、原則として上場廃止になります(上場規程第601条第1項第15号)。例外は、公的資金の注入や、経営破綻のおそれがある中で株主の意思を確認したうえで民間スポンサーが救済する場合などに限られます。
第三者割当で支配株主(親会社や議決権の過半数を持つ者)が変わった会社は、その後3年間、支配株主との取引の健全性が著しく損なわれたと東証が認めれば上場廃止になり、原則として年1回の報告も求められます(同第6号)。非上場会社を主な割当先とする第三者割当は、裏口上場を防ぐ不適当合併等の審査の対象になることもあります。
会社法:過半数を握る引受人には、10%の株主が反対できる
会社法第206条の2は、第三者割当で引受人の議決権が総議決権の2分の1を超える場合、払込期日の2週間前までに引受人の名称などを株主に知らせるよう求めています(割当先がすでに親会社である場合などは対象外。有価証券届出書などで開示していれば通知は不要)。そのうえで、議決権の10分の1以上を持つ株主が反対を通知したら、株主総会の普通決議で承認を得なければなりません。財産の状況が著しく悪化し、事業を続けるために緊急の必要があるときは例外です(会社法第206条の2(e-Gov法令検索))。
事例:日本板硝子は希薄化率257.64%、株主総会の特別決議を経て非公開化
2026年3月24日:米投資会社アポロ・グローバル・マネジメント側の特別目的会社に、1株450円で3億6,666万株余り(約1,650億円)を割り当てると決議。アポロ側は議決権の72.04%を持つ親会社になり、その後の株式併合で、ほかの株主には1株500円の金銭を渡して非公開化する計画(日本板硝子 2026年3月24日の開示)
手続き:希薄化率が25%以上で支配株主も変わるため、定時株主総会の特別決議で株主の意思を確認すると開示。社外取締役3人と弁護士1人の特別委員会も設けた
2026年6月26日:定時株主総会で、第三者割当に必要な定款変更(発行できる株式の上限の引き上げ)と株式併合が承認された(同社 2026年6月26日の開示)
2026年8月31日:払込みが完了し、アポロ側が親会社・筆頭株主に。同日、整理銘柄に指定された(同社 2026年8月31日の開示)
2026年9月28日:上場廃止(売買最終日は9月25日)。1株500円の交付は12月下旬に始まる見込み
300%には届きませんが、発行済株式の2.6倍の新株が出るため、既存株主の議決権の割合は合計でも約28%に下がる取引でした。救済型の大規模な第三者割当では、価格だけでなく、株主総会の議案や、その後の非公開化の条件(今回は1株500円)まで含めて判断する必要があります。株式併合で少数株主を締め出す手続きは次の記事で解説しています。

スクイーズアウトとは|3つの手法と価格決定申立の実務を解説
スクイーズアウト(少数株主の強制排除)の仕組みを解説。株式等売渡請求・株式併合・全部取得条項付種類株式の3手法の比較、会社法上の要件、少数株主の価格決定申立権、大正製薬・ベネッセ等の実例まで網羅します。
株価への影響——上がる場合・下がる場合
第三者割当の発表で株価が動く理由は、主に4つです。
希薄化:株数が増えるので、利益が同じなら1株あたり利益(EPS)が下がる。議決権の割合も下がる
発行価格:時価より安く出せば、割り引いた分の価値が既存株主から割当先に移る
需給:割当先が株を市場で売れば、その分の売りが出る。MS型は売ることが前提
会社の将来の見え方:誰が株主になるか、何にお金を使うかで評価が変わる。有力企業との提携は成長への期待を呼び、資金繰りのための割当は業績の厳しさを映す
時価どおりの価格で出す限り、発行そのもので1株の価値は下がりません。株価を動かすのは、調達したお金が何を生むか、そして割当先がいつ売るかです。割り引いた分だけ価値が移る仕組みは、増資のメリット・デメリットの記事で数値例を使って説明しています。

EPS(1株あたり利益)とは|計算式と変動要因4パターン、PER・配当性向への読み替え方
EPS(Earnings Per Share・1株あたり利益)の計算式・変動要因(増益・自社株買い・増資・株式分割)を解説。PER・配当性向・PEGレシオなど他の投資指標との関係と、投資判断への活用法がわかります。
2026年9月の14社:提携型は上昇が多く、MS型は全社が下落
2026年9月に第三者割当を発表した会社のうち、資本提携・資本業務提携の7社とMS型の7社について、発表日の終値と翌営業日の終値を比べました。いずれも発表は取引終了(15時30分)の後です。
会社 | 類型 | 翌営業日の変化率 |
|---|---|---|
リンカーズ※ | 資本業務提携 | +44.2% |
大和自動車交通 | 資本業務提携 | +24.5% |
萩原工業※ | 資本業務提携 | +5.1% |
NANOホールディングス | 資本業務提携 | +1.0% |
Solvvy | 資本業務提携 | +0.8% |
日本ナレッジ | 資本提携 | −0.2% |
Link-Uグループ※ | 資本業務提携 | −16.3% |
ピクセラ | MS型 | −2.0% |
アーキテクツ・スタジオ・ジャパン | MS型 | −6.5% |
ノイルイミューン・バイオテック | MS型 | −9.5% |
ブライトパス・バイオ | MS型 | −13.1% |
エスクリプトエナジー | MS型 | −14.8% |
デ・ウエスタン・セラピテクス研究所 | MS型 | −20.7% |
夢展望 | MS型 | −21.2% |
MS型の7社は、翌営業日にすべて下落しました(−2.0〜−21.2%)。割当先が行使した株を市場で売ることが前提で、株価が下がれば会社が調達できる金額も減るためです
提携型の7社は5社が上昇しました。ただし、そのうち萩原工業とリンカーズ、下落したLink-Uグループは決算と同じ日の発表で、決算の内容も株価に効いています。決算と重ならない4社では、大和自動車交通が値幅制限いっぱいのストップ高になり、残る3社は±1%程度でした
同じ提携型でも、提携の中身で反応は分かれます。大和自動車交通は、6月に公表していた東京・銀座の保有物件の再開発(2027年4月着工予定)について、大和ハウス工業と契約に向けた協議を進めると開示しました。大手不動産会社が株主として再開発に加わることが材料視されたとみられます
1か月・14社の観察で、株価は相場全体や他の材料でも動くため、一般化はできません。それでも、「第三者割当」という言葉だけで売り買いを決めず、割当先と条件を確かめる必要があることは読み取れます。
大和自動車交通
東京都内を中心にハイヤー・タクシー事業を展開する旅客自動車運送会社。「大和自動車交通」ブランドで法人向けハイヤーおよび個人向けタクシーを運行し、都内各地に営業拠点を構える。不動産賃貸・売買・仲介事業、燃料・資材販売事業、自動車メーター販売(…
開示資料の読み方——大和自動車交通の例で見る7項目
上場会社が第三者割当を決めると、払込金額の算定根拠、割当先が払い込むお金を本当に持っているかを確認した内容、企業行動規範上の手続きなどを、東証のルールに従って適時開示しなければなりません(上場規程第402条・施行規則第402条の2)。発表文は長いですが、見る場所は決まっています。大和自動車交通の開示を例に、7つの項目を図にまとめました。
大和自動車交通は1株2,040円で49万100株を割り当て、約10億円の払込みを2026年9月25日に受けました(同社 2026年9月25日の開示)。前日の終値と同じ価格で、希薄化率は東証の判定に使う議決権ベースで10.85%(発行済株式数では9.34%)、割当先は長期保有を表明しており、7項目のどれにも大きな懸念が見当たらない、典型的な資本業務提携型です。
割当先の「保有方針」は約束ではない
割当先が払込みから2年以内に株を譲渡すると、会社を通じて東証に報告され、「第三者割当に係る株式譲渡報告書」として誰でも見られるようになります。割当先はこの報告に同意する確約書を出しますが、売ること自体を禁じるものではありません。
まとめ
第三者割当増資は、会社が選んだ特定の相手に新株(自己株式も)を割り当てる増資。3つの方法のうち、上場会社で最も件数が多い
払込金額は「決議の前日の終値×0.9以上」が目安(日本証券業協会の指針)。下回ると「特に有利な金額」にあたるおそれがあり、その場合は株主総会の特別決議が要る
希薄化率25%以上か支配株主の異動なら、独立した者の意見か株主の意思確認が必要(東証)。300%超は原則上場廃止、議決権の過半数を渡すときは10%の株主が総会決議を求められる(会社法)
割当先で性格が変わる。2026年9月の26件は、資本提携・資本業務提携とMS型が7件ずつで最も多かった
株価の反応も割当先と条件しだい。提携型は上昇が多く、MS型の7社は翌営業日にすべて下落した
開示では7項目(割当先・価格・希薄化・使い道・保有方針・払込資金・手続き)を確認する。保有方針は約束ではない
保有株が第三者割当を発表したら、まず割当先と払込金額、希薄化率を見て、MS型なら毎月初の行使状況の開示も追いかけましょう。








