減資のメリット・デメリット|株数も純資産も変わらない無償減資、資本金1億円の税優遇とJALの100%減資の違い

減資とは、会社が資本金の額を減らすことです。主に次のような場面で行われます。
欠損を埋めて、配当・自社株買いができるようにする:赤字の累積で配当の原資がない会社が、資本金を剰余金に移す(サンバイオ、コンヴァノ)
税負担を軽くする:資本金1億円以下で税制上の中小法人になる。1億円超のままでも外形標準課税の資本割などは下がりうる(サンバイオは目的に「税負担の軽減」)
経営再建で増資とセットにする:スポンサーの出資を受けると同時に資本金を減らし、欠損を埋める(シャープ、2015年)
法的整理で既存株主に責任を取らせる:既存の株式を消す「100%減資」。株主の持分がゼロになるのはこの形だけ(日本航空、2010年)
余った資本を株主に返す:減らした資本金を株主に払い戻す「有償減資」。上場企業では非常に少ない
上場企業の減資のほとんどは、資本金を剰余金に振り替えるだけでお金が動かない「無償減資」で、株式数も純資産も、1株当たり純資産も変わりません。
会社にとってのデメリットは、対外的な信用、株主総会と債権者保護の手続き(1か月以上)、有償減資なら会社のお金が出ていくこと。税のメリットも、2025年4月以後に始まる事業年度からは、資本金と資本剰余金の合計が10億円を超える会社だと外形標準課税が残るようになりました(前の年度に対象だった場合)。
仕組み、会社側のメリット・デメリット、手続き、株主への影響を、実例と開示の読み方とともに順に説明します。
この記事の内容(目次)
減資のメリット・デメリット一覧——会社と株主で分けて見る
減資の損得は、会社(経営者)から見るか、株主から見るかで変わります。最初に全体を整理します。
会社のメリット
欠損を埋められる:利益剰余金のマイナスを消し、決算書の見た目を整える
配当・自社株買いの余地ができる:資本金を剰余金に移すと、会社法の「分配可能額」が増える
税負担が軽くなる:資本金1億円以下は税制上の中小法人。法人税の軽減税率、欠損金の繰越控除が所得の100%まで、外形標準課税の対象外など。1億円超のままでも、欠損を埋めた分、外形標準課税の資本割と住民税の均等割は下がりうる
会社のデメリット
信用への影響:資本金の額は登記されていて誰でも確認できる。大きく減らすと経営が苦しい印象を与えやすい
手続きの負担:原則は株主総会の特別決議。債権者保護手続きに1か月以上、変更登記の登録免許税は3万円
税の抜け道は狭まった:2025年4月以後に始まる事業年度から、資本金と資本剰余金の合計が10億円超なら外形標準課税は残る
有償減資はお金が出ていく:財務の余力が減り、債権者の異議を招きやすい
株主から見ると
無償減資なら株数・持分・1株当たり純資産は変わらない。ROEやEPSも変わらない
配当・自社株買いが始まるきっかけになりうる。ただし資本剰余金からの配当は税の扱いが通常の配当と違う
欠損がある=赤字を重ねてきた会社。株価に効きやすいのは、同時に出る増資や債務超過の開示の方
100%減資だけは持分がゼロになる
減資とは——資本金を減らしても、株数と純資産は変わらない
減資は、会社法447条の「資本金の額の減少」です。株主総会で「減らす資本金の額」「減らした額を準備金にするか」「効力が生じる日」を決めます(会社法第447条(e-Gov法令検索))。減らせるのは効力発生日の資本金の額までなので、資本金をゼロにすることもできます。
誤解されやすいのは、資本金は金庫にあるお金ではないという点です。資本金は貸借対照表の「純資産の部」にある区分の一つで、株主が払い込んだお金のうち資本金に計上した額を記録したものです。お金そのものは、現預金や設備として資産の側にあります。資本金を減らしても、それだけで会社のお金が減ることはありません。

自己資本とは?貸借対照表と決算書のどこに載っているか|セコムの短信で自己資本比率58.9%を検算
自己資本は貸借対照表の純資産の部のうち株主資本とその他の包括利益累計額の合計で、自己資本比率は決算短信1ページ目の連結財政状態に載っています。セコムの短信で比率58.9%を検算し、純資産で割ると67.2%になる理由、有報・IFRSでの見方も解説。
図の例では、資本金100億円のうち99億円を「その他資本剰余金」に振り替え、そのうち70億円で利益剰余金のマイナス(欠損)を埋めています。純資産の合計は50億円のまま、株式数も変わりません。変わるのは純資産の中の区分だけです。
無償減資と有償減資の違い
減資は、会社のお金が動くかどうかで2つに分かれます。
お金の動き
無償減資:動かない。資本金を剰余金に振り替えるだけ
有償減資:減らした分を株主に払い戻す
純資産
無償減資:変わらない
有償減資:払い戻した分だけ減る
主な目的
無償減資:欠損填補、配当・自社株買いの原資づくり、資本金を1億円以下にする
有償減資:事業を縮小して余ったお金を株主に返す
実施の多さ
無償減資:上場企業の例のほとんど
有償減資:非常に少ない(下の研究)
会社法には「有償減資」という手続きはなく、「資本金の減少」と「資本剰余金からの配当」を組み合わせたものです。上場企業と有価証券報告書を出す非上場企業が資本金を1億円超から1億円以下に減らした例を2006〜2021年度について数えた研究でも、有償減資は非常に少なく、無償減資がほとんどでした(布袋正樹「中小企業向け優遇税制と上場企業等の減資行動」会計検査院『会計検査研究』第70号 p.33・34・43)。
株式併合・自己株式の消却・100%減資との違い
減資と混同しやすいのが、株数を減らす手続きです。今の会社法では資本金の額と株式数は連動しないので、減資で株数は減らず、株数を減らす手続きで資本金は減りません。
手続き | 資本金 | 株式数 | 純資産 |
|---|---|---|---|
無償減資 | 減る | 変わらない | 変わらない |
有償減資 | 減る | 変わらない | 減る |
株式併合 | 変わらない | 減る | 変わらない |
自己株式の消却 | 変わらない | 減る | 変わらない |
100%減資 | 減る | 既存の株はゼロ | 新たな出資で増える |
株式併合:たとえば10株を1株にまとめる手続き(会社法180条、株主総会の特別決議)。1株の値段は上がり、持分の割合はほぼ変わらない。1株に満たない端数は現金で精算されるため、少数株主を締め出す手段にも使われる
自己株式の消却:自社株買いで手元に置いた株を消す手続き(会社法178条、取締役会の決議)
100%減資:法的整理の再建計画で既存の株式をすべて消し、スポンサーの出資で出直す。株主の持分はゼロになる(後の節で説明)

スクイーズアウトとは|3つの手法と価格決定申立の実務を解説
スクイーズアウト(少数株主の強制排除)の仕組みを解説。株式等売渡請求・株式併合・全部取得条項付種類株式の3手法の比較、会社法上の要件、少数株主の価格決定申立権、大正製薬・ベネッセ等の実例まで網羅します。
会社にとっての減資のメリット
① 欠損を埋めて、配当・自社株買いの余地をつくる
会社が配当や自社株買いで株主にお金を渡せるのは、「分配可能額」の範囲内に限られます(会社法第461条(e-Gov法令検索))。分配可能額のもとになるのは剰余金で、赤字が積み重なって利益剰余金が大きくマイナスになると、分配可能額はゼロになります。資本金のままでは株主に返せない部分を、減資で剰余金に移すと、配当・自社株買いの原資にできます。
2026年の実例を2つ挙げます。どちらもグロース市場の会社です。
サンバイオ(4592):再生細胞薬の会社
2026年3月17日の取締役会で決定。資本金と資本準備金をそれぞれ約17億円減らし、繰越利益剰余金の欠損約34億円を埋める
目的は「税負担の軽減」「財務体質の健全化」と、「今後の株主還元(配当及び自己株式取得)を含む資本政策の機動性を確保」すること(サンバイオ 有価証券報告書(2026年1月期)p.106)
6月5日の効力発生で資本金は約84億円から約67億円に(サンバイオ 半期報告書(2026年9月14日)p.6)。2021年から毎年、定時株主総会の決議で同じ形の欠損填補をしている(同有価証券報告書 p.61)
コンヴァノ(6574)
2026年6月27日の定時株主総会で、資本金約52.4億円のうち約51.9億円と、資本準備金の全額約52.3億円をその他資本剰余金に移すことを決議。資本金は5,000万円に(コンヴァノ 臨時報告書(2026年6月29日))
目的は「分配可能額の確保」。同じ総会で、その他資本剰余金を原資とする設立以来初の配当(1株1円、総額約5.1億円)も決議(コンヴァノ 有価証券報告書(2026年3月期)p.49・127)
約43.1億円の欠損填補を9月30日の臨時株主総会に付議し、可決されれば同日に効力が生じる。同じ総会には自己株式の取得の議案もかけている(コンヴァノ プレスリリース(2026年8月24日))
サンバイオ
中枢神経系疾患を対象とした再生細胞治療薬を開発するバイオベンチャー。日米で慢性期外傷性脳損傷・慢性期脳梗塞・脳出血・加齢黄斑変性・網膜色素変性・脊髄損傷・パーキンソン病・アルツハイマー病など、既存治療では対応困難な疾患に対する細胞治療薬の販…
コンヴァノ
コンヴァノは、ネイルサロンチェーン運営を軸に複数事業を展開。「新しい価値の創造と機会の拡大」を企業理念として掲げ。ネイル事業の他、経営戦略・AI活用データ分析によるコンサルティング、医療資材卸売・医療DXソリューション提供、成長企業への投資…
なお、欠損填補そのものは分配可能額を増やしません。コンヴァノも8月24日の発表で、この欠損填補によって分配可能額は変わらないと明記しています。分配可能額を増やすのは資本金・準備金を剰余金に移す部分で、欠損填補は利益剰余金のマイナスを消し、今後の利益がそのまま利益剰余金として積み上がるようにする手当てです。
② 資本金1億円以下で、税制上の中小法人になる
税金の世界では、資本金1億円が大企業と中小企業の境目です。資本金が1億円以下になると、次のような中小法人向けの扱いを受けられます。ただし資本金5億円以上の大法人の100%子会社などは、資本金が1億円以下でも法人税の中小法人向けの特例の対象外です(国税庁 タックスアンサー No.5759)。
項目 | 資本金1億円超 | 資本金1億円以下 |
|---|---|---|
法人税率(年800万円以下の所得) | 23.2% | 15% |
欠損金の繰越控除 | 所得の50%まで | 所得の100%まで |
交際費の損金算入 | 接待飲食費の50% | 年800万円か、接待飲食費の50% |
外形標準課税 | 対象 | 対象外 |
表の15%には例外があります。2025年4月1日以後に始まる事業年度で所得が年10億円を超える年は17%、過去3年の平均所得が15億円を超える会社(適用除外事業者)は19%です(前掲 No.5759)。利益の大きい会社が資本金を減らしても、軽減税率の効果はほとんどありません。
特に大きいのが外形標準課税です。資本金1億円超の会社にかかる法人事業税の一部で、給与などを含む「付加価値」と資本金等の額に課税するため、利益が出ていなくてもかかる部分があります(総務省「法人事業税における外形標準課税」)。欠損金の繰越控除の上限(国税庁 No.5762)とあわせ、赤字が続く大企業ほど資本金を1億円以下にする動機が強くなります。
前掲の論文によると、上場企業等で資本金を1億円超から1億円以下に減らした会社は2015年度まで年10〜20社前後でしたが、2016年度から増え始め、コロナ禍の2020年度以降に急増しました(論文の図2では2021年度に80社、p.42〜43)。
資本金1億円超のままでも、減資で軽くなる税があります。外形標準課税の資本割と、法人住民税の均等割です。
何で決まるか:どちらも「資本金等の額」で税額が決まる(資本割は資本金等の額に税率をかけ、均等割は資本金等の額の段階で年額が決まる)
減資で下がる仕組み:資本金や資本準備金を減らし、欠損の填補に充てた額は「資本金等の額」から差し引ける(地方税法第72条の21第1項3号(e-Gov法令検索)。均等割は第23条1項4号の2)
下限:資本金と資本準備金の合計額より小さくはならない(第72条の21第2項、第52条4項)。資本金だけでなく資本準備金も一緒に減らして欠損を埋める形が多い理由の一つ
サンバイオは減資後も資本金が約67億円で中小法人にはなりませんが、目的に「税負担の軽減」を挙げています。資本金と資本準備金を同額ずつ減らして欠損を埋める形なので、この資本割・均等割の仕組みによるものと考えられます。
③ 増資と組み合わせて、再建の区切りをつける
経営再建では、スポンサーから出資を受ける増資と同時に減資を行うことがよくあります。シャープは2015年6月30日、みずほ銀行と三菱東京UFJ銀行に計2,000億円、投資ファンドに250億円の種類株式を発行したのと同時に、増資後の資本金約2,344億円(増資前は約1,219億円)のうち約2,339億円を減らして資本金を5億円にし、欠損の穴埋めに充てました(シャープ「第三者割当による種類株式の払込完了及び発行、資本金及び資本準備金の額の減少並びに剰余金の処分の効力発生に関するお知らせ」(2015年6月30日))。
シャープは当初、資本金を1億円に減らす案を再建策に盛り込もうとしましたが、大企業が中小企業向けの税優遇を使うことへの批判を受けて断念しました(前掲論文 p.40 注5)。この組み合わせで純資産を増やしているのは増資の方で、減資は純資産の中の数字の付け替えです。債務超過の会社でも、減資だけでは純資産のマイナスは解消しません。

自己資本比率がマイナスとは?|債務超過の上場企業は12社、1年で解消できなければ上場廃止
自己資本比率がマイナスなのは純資産がマイナスの債務超過のとき。すぐ倒産はしませんが、上場企業は期末に債務超過だと原則1年で解消しないと上場廃止です。債務超過の12社、改善期間の5社、増資・DES・減資の違い、決算短信での見つけ方まで解説します。
会社にとっての減資のデメリット・注意点
信用が下がって見える——ただし資本金は会社のお金ではない
資本金の額は登記事項で(会社法911条3項5号)、登記事項証明書で誰でも確認できます。取引先や金融機関が与信の目安に資本金を見ることがあり、資本金を大きく減らすと「経営が苦しい会社」と受け取られるおそれがあります。実際の支払い能力を表すのは現預金や純資産で、無償減資ではどちらも変わりません。
手続きに時間と費用がかかる
原則は株主総会の特別決議が必要で、債権者に異議を述べる機会を1か月以上与えなければ効力が生じません。官報公告の費用と、変更登記の登録免許税3万円もかかります。流れは次の節で説明します。
有償減資は会社のお金が減る
払い戻した分だけ現預金と純資産が減り、借入の返済余力が落ちます。債権者から異議が出れば、弁済や担保の提供を求められることもあります(会社法第449条5項(e-Gov法令検索))。
税のメリットには制限と評判の問題がある
前の節のとおり、税の特例には例外があり、外形標準課税は払込資本でも判定されるようになりました。そのうえ、大企業が中小企業向けの優遇を使うための減資は批判を受けやすく、シャープは1億円案を断念しています。
減資の手続き——株主総会・債権者保護・登記
減資は株主と債権者の両方の利害に関わるため、会社法で手続きが決まっています。サンバイオの2026年の日程に当てはめると、次のようになります。
株主総会:原則は特別決議(議決権の過半数を持つ株主が出席し、出席株主の議決権の3分の2以上が賛成。出席の要件は定款で3分の1まで下げられる)。ただし定時株主総会で、減らす額が欠損の額を超えないなら普通決議で足ります(会社法第309条2項9号(e-Gov法令検索))。欠損の範囲内だったサンバイオは普通決議(賛成94.94%、臨時報告書(2026年4月23日))、欠損約43億円を上回る約52億円を減らしたコンヴァノは特別決議(賛成94.63%、臨時報告書(2026年6月29日))でした
債権者保護手続き:官報で公告し、知れている債権者には個別に催告します。異議を述べられる期間は1か月以上。官報に加えて定款で定めた日刊新聞か電子公告でも公告すれば、個別の催告は省けます(会社法449条)
効力発生と登記:債権者保護手続きが終わっていないと効力は生じません。変更が生じたら2週間以内に登記し(会社法915条)、登録免許税は3万円です(法務局「株式会社変更登記申請書(資本金の額の減少)」記載例)
上場会社の開示:資本金の額の減少は、取締役会などで決めたら直ちに開示する決定事実で、軽微基準はありません(日本取引所グループ 適時開示FAQ「決定事実 資本金の額の減少」)
株主への影響——株価・ROE・配当はどう変わる?
無償減資で株数と1株当たり純資産は変わらない
サンバイオの半期報告書を見ると、2026年6月5日の減資の行は、資本金と資本準備金が約17億円ずつ減った一方、発行済株式総数は78,058,883株のままです(半期報告書 p.6)。コンヴァノも欠損填補の発表で「株主資本合計および純資産の総額に変動はなく」「株主の皆様の当社に対する持分にも影響を与えるものではありません」と説明しています(コンヴァノ プレスリリース(2026年8月24日))。持株数も、会社の中身に対する持分も、減資の前後で同じです。コンヴァノは同じ発表で、連結業績への影響もないとしています。
減資でROEやEPSは良くなる?
無償減資では変わりません。ROEは純利益÷自己資本、EPSは純利益÷株式数で、無償減資ではどちらの分母も動かないからです。
有償減資は払い戻した分だけ自己資本が減るので、ROEは計算上上がります。お金を株主に返して自己資本を小さくする点で自社株買いに近い効果ですが、株数は減らないのでEPSは基本的に変わりません。

自社株買いとは|EPS・ROE改善の仕組みと株価への影響
自社株買いの仕組み・目的・株価への影響をわかりやすく解説。EPS・ROE・PERなど財務指標への効果、メリット・デメリット、発表時の投資判断ポイントがわかります。
減資の発表で株価は下がる?
減資そのものは1株当たり純資産を変えないので、理屈の上では大きな株価の材料になりません。税負担が軽くなる分は利益の押し上げ要因ですが、欠損があることは決算書を見ればすでに分かっている情報です。注意が要るのは、減資は株価を動かす別の発表と同時に出やすいことです。
増資と同時:第三者割当などで株数が増えれば1株の価値は薄まる。発行する株数と価格を確かめる(詳しくは第三者割当増資)
債務超過の解消策の一部:減資だけでは純資産のマイナスは消えない。上場維持の判定に効くのは増資や黒字化の方(自己資本比率がマイナスとは?)
株主還元の準備:欠損填補と同時に配当や自社株買いの方針が出れば、見方は変わりうる。コンヴァノは減資と同じ総会で設立以来初の配当を決議し、9月30日の臨時総会には欠損填補とあわせて自己株式の取得の議案もかけた

増資のメリット・デメリット|企業は返済不要、株主は希薄化——大阪チタニウムの公募増資は株数21%増・翌日7%安
増資は返済不要の資金で自己資本比率を高める一方、既存株主には1株利益と持株比率の希薄化をもたらします。公募・第三者割当・ライツ・無償増資の違い、株価が下がる理由と希薄化が損にならない条件、中小企業の資本金の壁まで、大阪チタニウムの実例で解説。
配当が出るようになったら——資本剰余金からの配当は税の扱いが違う
減資で生まれた「その他資本剰余金」を原資に配当すると、税務上は「資本の払戻し」として扱われます。個人株主が受け取った金額のうち、みなし配当とされる部分を除いた残りは、株式の譲渡収入とみなされます(国税庁 タックスアンサー No.1536)。通常の配当とは税金の計算の仕方が違います。

みなし配当とは|計算式・税率・確定申告の扱いを具体例つきで解説
みなし配当の定義・発生するケース・計算方法・税率を具体的な計算例つきで解説。自己株式取得や資本の払戻しで生じる課税の仕組み、確定申告での総合課税・申告分離課税の選択まで。
100%減資とは——株主の持分がゼロになる
100%減資は、既存の株式をすべて会社が無償で取得して消却し、資本金も減らす手続きです。多くは会社更生・民事再生といった法的整理の再建計画の中で行われ、スポンサーの出資を受けて出直します。旧株主には何も残りません。破産・再生・更生の手続きは、それ自体が上場廃止基準の一つです(日本取引所グループ「上場廃止基準の概要」)。
代表例が日本航空です(国土交通省航空局「日本航空の再生について」(2012年11月)p.2〜5)。
2010年1月19日:会社更生手続きの開始を申し立て、同日に開始決定。企業再生支援機構が支援を決める
2010年11月30日:東京地方裁判所が更生計画を認可。計画には「既存株主の全株式(普通株式・A種優先株式)を無償取得し消却する」ことが入っていた
2010年12月1日:資本金2,510億円を100%減資。機構が3,500億円を出資(1株2,000円で1億7,500万株)し、金融機関は5,215億円の債権を放棄
2012年9月19日:東京証券取引所第一部に再上場
日本航空
日本を代表するフルサービスキャリア。国内線・国際線の旅客輸送を中核に、自社旅客機の貨物スペースおよび貨物専用機による貨物郵便事業を展開する。地域航空子会社(ジェイエア、日本エアコミューター、北海道エアシステム、日本トランスオーシャン航空、琉…
再上場した株式は、再建の過程で新たに発行されたものです。旧株式は消却済みなので、旧株主が再上場の恩恵を受けることはありません。
減資の発表を見たら確認する5つのこと
上場企業の減資は「資本金の額の減少に関するお知らせ」「資本金及び資本準備金の額の減少並びに剰余金の処分に関するお知らせ」といった表題で開示されます。次の順に読むと、株主にとっての意味をつかめます。
目的:欠損填補・分配可能額の確保か、税負担の軽減か、再建か。開示の最初の項目に書いてある
株式数が変わるか:「発行済株式総数は変わらない」とあれば通常の減資。株式の全部取得や消却を伴うなら100%減資
同時に出た開示:増資(第三者割当・新株予約権)、債務超過、継続企業の前提に関する注記。株価に効くのはこちら
還元方針:分配可能額ができた後に、配当や自社株買いの方針が出ているか。資本剰余金からの配当なら税の扱いも確認
決議の要件と日程:普通決議か特別決議か、債権者の異議の最終期日、効力発生日。株主総会の議案なら賛否を示せる
まとめ
減資=資本金の額を減らすこと。上場企業の多くは無償減資で、株式数・純資産・1株当たり純資産は変わらない
会社のメリット:欠損を埋めて配当・自社株買いの余地をつくる、資本金1億円以下で税制上の中小法人になる(1億円超のままでも資本割・均等割は下がりうる)、増資と組み合わせて再建の区切りをつける
会社のデメリット:信用の印象、株主総会(原則は特別決議)と債権者保護手続き(1か月以上)、有償減資ならお金が出ていく
税の抜け道は狭まった:2025年4月以後に始まる事業年度から、払込資本10億円超なら外形標準課税は残る
株主への影響:無償減資ならROE・EPSも変わらない。株価を動かすのは同時に出る増資や債務超過の開示。資本剰余金からの配当は「資本の払戻し」
100%減資だけは別物:法的整理で既存の株式が消え、持分はゼロ(日本航空 2010年)








