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シラーPER(CAPE)とは|S&P500は40.6倍、ITバブル以来の高水準

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シラーPER(CAPE)は、株価を「過去10年間の、インフレ調整後の1株当たり利益の平均」で割ったPERです。景気で上下する1年分の利益ではなく10年分をならして使うため、株式市場全体が長い目で見て割高か割安かを測る物差しとして使われます。ノーベル経済学賞を受けたロバート・シラー教授が、ジョン・キャンベル教授と考案しました。

米国のS&P500のシラーPERは2026年9月時点で40.6倍(8月は41.1倍)です。1881年以来の中央値16.6倍の約2.4倍で、40倍を超えたのはITバブル期(1999〜2000年)に続いて2度目です。

過去には、シラーPERが高い時に投資を始めるほど、その後10年のリターンが低い傾向がありました。30倍以上から始めた10年の実質リターンは平均で年−1.0%です。ただし2017年に30倍を超えてからもS&P500は約3.1倍に上がっており、売買のタイミングを教えてくれる指標ではありません。本記事では、計算方法、1881年からの推移、10年後のリターンとの関係、限界と使い方を、シラー教授が公開しているデータで確かめます。

シラーPERとは|通常のPERとの違い

シラーPERは、英語で Cyclically Adjusted Price Earnings Ratio(景気循環調整後PER)といい、頭文字からCAPE(ケープ)と呼ばれます。P/E10と書かれることもあります。計算式は次のとおりです。

分子の株価はS&P500の月中の終値の平均、分母の利益はS&Pが集計した1株当たり利益(1926年以降は直近4四半期の合計)です。どちらも米国の消費者物価指数で「今の物価」に直してから計算します(シラー教授のデータの説明)。

数字を入れると、2026年9月はS&P500の7,631(9月1日の終値)÷ 過去10年のインフレ調整後の1株当たり利益の平均 約188ドル ≒ 40.6倍です。今月の株価は今の物価そのものなので、分子はインフレ調整しても変わりません。

KabuGraph作成

通常のPERとの違いは、利益の期間とインフレ調整の2点です。

  • 利益の期間

    • 通常のPER:直近1年の実績(予想PERなら今期の予想)

    • シラーPER:過去10年の平均

  • インフレ調整

    • 通常のPER:しない

    • シラーPER:株価も利益も消費者物価指数で今の物価に直す

  • 主な使い道

    • 通常のPER:個別株や株価指数の、足元の利益に対する評価

    • シラーPER:株価指数の、長い目で見た評価

10年分の利益を使うのは、好況と不況の両方を平均に入れて、景気の波で利益が一時的にふくらんだり落ち込んだりした影響を薄めるためです。インフレ調整をするのは、物価が上がれば名目の利益も膨らむので、10年前の利益をそのまま平均すると今の利益水準より低く出てしまうからです。PERそのものの計算と目安は「PERとは」、1株当たり利益は「EPSとは」で解説しています。

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2009年、PERは124倍でもシラーPERは16倍だった

2つの違いがはっきり出たのが金融危機の2009年です。S&P500の1株当たり利益(直近12か月)は、2007年6月の84.9ドルから2009年3月には6.9ドルまで落ち込みました。その結果、2009年5月のPERは123.7倍と、1871年以来で最も高い値になりました。株価は底値圏だったのに、PERだけを見ると史上最も割高に見えてしまいます。

一方、同じ月のシラーPERは16.0倍で、長期の中央値16.6倍をわずかに下回っていました。その月から10年間のS&P500の実質リターン(配当再投資・インフレ調整後)は年12.4%です。利益が一時的に落ち込む局面では、シラーPERの方が実態に近い評価を示していました。

S&P500のPERとシラーPER(2007〜2011年、月次)

出典:Robert J. Shiller「U.S. Stock Markets 1871-Present and CAPE Ratio」よりKabuGraph算出。PERは月中平均の株価÷直近12か月の1株当たり利益(S&P集計の報告利益)

利益の一時的な落ち込みでPERがゆがむ場面は、「PERが当てにならないとき」でも整理しています。

「シラー」はノーベル賞学者のロバート・シラー教授

シラーPERの「シラー」は、米国の経済学者ロバート・J・シラー教授の名前です。投資家に関係のある経歴を3つに絞ると次のとおりです。

  • 2013年ノーベル経済学賞:イェール大学の教授として、ユージン・ファーマ、ラース・ピーター・ハンセンとともに「資産価格の実証分析」で受賞しました。ノーベル財団のプレスリリースは3人の成果を、株や債券の価格は数日〜数週間先は予測できないが、3〜5年といった長い期間なら大まかな方向は予測できる、とまとめています

  • 株価が「高すぎると下がり、低すぎると上がる」ことを示した:1980年代初めに、株価が配当に比べてはるかに大きく動くこと、株価÷配当の比率は高いと下がり、低いと上がる傾向があることを示しました。キャンベル教授との共同研究では、株価÷利益・配当の比率は将来の利益の伸びよりも、将来の株価の動きを予測するのに役立つと結論づけています(Campbell & Shiller「Valuation Ratios and the Long-Run Stock Market Outlook: An Update」、1998年の論文の改訂版)

  • 著書『Irrational Exuberance』(邦訳『投機バブル 根拠なき熱狂』):原著の初版は2000年、邦訳はダイヤモンド社から2001年に出ています。シラーPERの元になる1871年からの株価・配当・利益・金利・物価のデータは、この本で使ったものを更新し続けて公開しています。米国の住宅価格指数「ケース・シラー指数」の開発者の1人でもあります(シラー教授のデータページ)

S&P500のシラーPERの推移|1881年からの現在地

2026年9月のS&P500のシラーPERは40.6倍です(9月1日の終値ベース。8月の月中平均では41.1倍)。1881年1月以降の1,749か月で今より高かったのは、1999〜2000年のITバブル期の19か月と、2026年8月だけです。過去最高は1999年12月の44.2倍、最低は1920年12月の4.8倍です。

出典:Robert J. Shiller「U.S. Stock Markets 1871-Present and CAPE Ratio」よりKabuGraph作成。月次。1957年以前はS&P500の前身の指数。2026年9月は9月1日の終値ベース

主なピークと底、そしてそこから10年間の実質リターンを並べると次のとおりです。

時期

シラーPER

その後10年の実質リターン(年率)

1920年12月
戦後不況の底

4.8倍

+16.6%

1929年9月
大恐慌の直前

32.6倍

−1.4%

1932年6月
大恐慌の底

5.6倍

+9.7%

1966年1月
1960年代のピーク

24.1倍

−1.8%

1982年7月
高金利期の底

6.6倍

+14.3%

1999年12月
ITバブル

44.2倍

−3.2%

2009年3月
金融危機の底

13.3倍

+14.3%

2021年11月
利上げ前のピーク

38.6倍

—

2026年9月
現在

40.6倍

—

出典:Robert J. Shiller「U.S. Stock Markets 1871-Present and CAPE Ratio」よりKabuGraph作成。実質リターンは配当再投資・消費者物価調整後の年率。ピーク・底は各局面の月次の最高・最低

底から始めた10年はどれも年10%前後以上、ピークから始めた10年はどれもマイナスでした。2021年11月以降はまだ10年がたっていません。

1881年以来の平均は17.8倍、中央値は16.6倍です。ただし1990年以降に限ると平均27.3倍と、水準そのものが切り上がっています。その理由として挙げられる点は、下の「限界」の章で取り上げます。

月ごとの値は、KabuGraphの「S&P500のPER・シラーPER(CAPE)」のページで、通常のPER・配当利回り・米10年国債利回りと並べて確かめられます(シラーPERは1881年から、通常のPERは1871年から。毎週更新)。

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シラーPERが高いと、その後10年のリターンは低い?

傾向としてはその通りです。1881年1月〜2016年9月の各月にS&P500へ投資を始めたとして、その後10年間の実質リターン(配当再投資・インフレ調整後、年率)を、始めた月のシラーPERと並べたのが次の図です。

出典:Robert J. Shiller「U.S. Stock Markets 1871-Present and CAPE Ratio」よりKabuGraph作成。1点=1か月。1881年1月〜2016年9月に投資を始めた1,629か月。実質リターンは配当再投資・消費者物価調整後の年率

開始時のシラーPERの水準ごとに平均すると、次のようになります。

開始時のシラーPER

10年の実質リターン(年率の平均)

マイナスだった割合

10倍未満

+11.3%

0%

10〜15倍

+7.6%

10%

15〜20倍

+6.0%

9%

20〜25倍

+4.6%

24%

25〜30倍

+5.8%

5%

30倍以上

−1.0%

60%

出典:Robert J. Shiller「U.S. Stock Markets 1871-Present and CAPE Ratio」よりKabuGraph算出。1881年1月〜2016年9月に投資を始めた1,629か月。実質リターンは配当再投資・消費者物価調整後の年率
  • 低い水準から始めるほどリターンは高く、30倍以上から始めた10年は平均でマイナスでした。全期間の平均は年6.7%なので、30倍以上ではそれを8ポイント近く下回っています

  • ただし関係は大まかです。開始時のシラーPERと10年後のリターンの相関係数は−0.48で、シラーPERで説明できるのはリターンのばらつきの2割強(決定係数0.23)にとどまります

  • 25〜30倍の方が20〜25倍より平均が高いのは、2014〜2016年に25〜30倍で始めた10年が好調だった(平均で年10.4%)ためです。この10年は利益の伸びに加えて、シラーPER自体が26倍前後から37倍前後へさらに上がり、それだけで年3.6%分を押し上げました。今の40.6倍から同じ上乗せを得るには、10年後に58倍前後まで上がる必要があります

シラーPERの逆数(1÷シラーPER)は、10年平均の利益で見た「益回り」です。今の40.6倍なら約2.5%で、長期の中央値16.6倍のとき(約6.0%)の半分以下です。益回りと金利の比べ方は「株式益回りとは」で扱います。

シラーPERの限界|割高のまま何年も上がり続けることがある

売買のタイミングは教えてくれない

1996年12月5日、FRB(米連邦準備制度理事会)のグリーンスパン議長は講演で、「根拠なき熱狂(irrational exuberance)」が資産価格を押し上げていないかと問いかけました(FRB 講演録)。その月のシラーPERは27.7倍です。しかしS&P500はその後も上がって2000年3月までに約1.9倍(月中平均で比較)になり、シラーPERは1999年12月に44.2倍の最高値をつけました。

最近も同じことが起きています。2017年7月にシラーPERが30倍を超えてから2026年9月までの約9年間、30倍以上の月が7割を占めました。それでもS&P500は2,454(2017年7月の月中平均)から7,631(2026年9月1日の終値)へ約3.1倍になり、配当を含めた実質リターンは年11.1%でした。

割高を理由に全部売っていれば、この上昇を取り逃がしていたことになります。シラーPERが示すのは「これから10年の期待値が高めか低めか」であって、「いつ下がるか」ではありません。

利益が伸び続けると、10年平均が追いつかない

シラーPERは10年前までさかのぼった利益で割るため、利益が伸び続けている局面では、分母が今の稼ぐ力より小さく出ます。2026年6月のS&P500の1株当たり利益(インフレ調整後)は、過去10年の平均の約1.6倍でした(10年間の伸びは年9.4%)。同じ月の通常のPER(直近12か月の利益)は25.2倍で、シラーPERの40.2倍を大きく下回ります。1881年以来の平均では、シラーPERは通常のPERの1.1倍程度でした。

つまり今の40倍台は、今の利益水準が続くなら割高さを大きめに見せており、利益が10年平均まで戻るなら通常のPERで見ても40倍前後になるという数字です。どちらに近いかは、利益の伸びが続くかどうかの判断にかかっています。

会計ルール・自社株買い・金利・指数の中身の変化

  • 会計ルールの変化:ジェレミー・シーゲル教授は2016年の論文で、時価評価(mark-to-market)などの会計ルールの変更で報告利益の基準が変わり、シラーPERによる将来リターンの予測が悲観的になりすぎている可能性を指摘しました。国民経済計算の企業利益に置き換えると予測の精度が上がり、予想されるリターンも高くなるとしています(Financial Analysts Journal 掲載論文の要旨)

  • 自社株買い:配当の代わりに自社株買いで株主に還元する企業が増えると、1株当たり利益の伸び方が変わり、シラーPERの水準に影響します。シラー教授は2018年9月から、配当を再投資した「トータルリターン版」のシラーPER(TR CAPE)もあわせて公開しています。2026年9月のTR CAPEは43.2倍です

  • 金利:金利が低い時期は債券より株の魅力が相対的に増し、高いシラーPERが正当化されやすくなります。シラー教授のデータには、1÷シラーPERから実質の長期金利(10年国債利回り−過去10年のインフレ率)を引いた「超過CAPE利回り(Excess CAPE Yield)」も載っています。2026年9月は1.0%で、1881年以来の月のうち低い方から2割ほどの位置です(ITバブル期の1999年12月は−1.1%)

  • 指数の中身の変化:S&P500に連動するETF(SPY)の保有比率で見ると、情報技術セクターが38.0%を占めます(2026年6月末、SPDR S&P 500 ETF Trustのファクトシート)。100年前とは構成する企業も業種も違うため、昔の平均値をそのまま「適正な水準」とみなしてよいかには議論があります

米10年国債利回りは4.75%(2026年9月1日)と、2008年以降で最も高かった2023年10月の4.80%(月平均)に近い水準です。「金利が低いから高いシラーPERでもよい」という説明は、今は成り立ちにくい状況です。

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シラーPERの使い方|長期投資家が確かめたいこと

シラーPERは、S&P500や全米株式のインデックスファンドを長く持つ人が、期待リターンの見積もりと資産配分を点検するときに役立ちます。

  • 過去の平均リターンを、そのまま前提にしない:1881年以来、各月から始めた10年間の実質リターンの平均は年6.7%でした。シラーPERが高い時期は、この数字を前提に老後資金などの計画を立てると見込みが甘くなりやすくなります

  • まとまった資金を一度に入れるかを考える材料にする:開始時の水準がいちばん強く効くのは、一度にまとめて投資した場合です。積立のように時期を分けると、影響は薄まります

  • 資産配分を見直すきっかけにする:株価の上昇で株式の比率が目標より膨らんでいれば、元の比率に戻す(リバランスする)目安になります

  • 短期の売買には使わない:前の章のとおり、割高なまま何年も上がり続けることがあります

  • ほかの指標と並べて見る:通常のPER、益回りと金利の差、TR CAPEを並べると、「利益が伸びているから高いのか」「金利に比べて高いのか」を切り分けられます

シラーPERのよくある疑問

何倍なら割高?「25倍超えで割高」は正しい?

決まった基準はありません。1881年以来の中央値16.6倍を基準にすれば今は2.4倍ですが、1990年以降の平均27.3倍と比べれば1.5倍です。「25倍を超えたら割高」という線を引くと、1990年以降の月の6割が当てはまってしまい、その間も株価は長期的に上がってきました。

線を1本引くより、上の水準別の表のように「その水準から始めた過去の10年がどうだったか」で見る方が実用的です。

日経平均・日本株のシラーPERは?

日本には、株価指数の算出元が公表しているシラーPERの公式な系列がありません。日本株の割高・割安は、日経平均の予想PER(日経平均PERの推移)や、JPXが毎月公表する東証全体・業種別のPER・PBR(業種別PER・PBR)、TOPIXのPERで確かめるのが確実です。

日経平均のPERとして広く見られているのは今期の予想利益で計算した値で、過去10年の実績の利益を平均するシラーPERとは基準が違います。米国のシラーPERの数字と横に並べて比べないようにしましょう。

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まとめ

  • シラーPER(CAPE)=インフレ調整後の株価÷過去10年のインフレ調整後の利益の平均。景気で上下する利益をならして、市場全体を長い目で評価する指標

  • S&P500は2026年9月に40.6倍。1881年以来の中央値16.6倍の約2.4倍で、ITバブル期に続く2度目の40倍台

  • 高い水準で始めた10年ほどリターンは低い傾向。30倍以上から始めた10年の実質リターンは平均年−1.0%。ただし実例は2局面だけで、関係も大まか

  • 売買のタイミングには使えない。2017年に30倍を超えてからもS&P500は約3.1倍に。利益の伸び・会計・自社株買い・金利で水準は変わる

  • 使い道は期待リターンと資産配分の点検。通常のPER・益回りと金利の差と並べて見る

コラム著者・編集者

K

KabuGraph編集部

KabuGraph編集部は、投資情報の発信と株式分析ツールの開発に携わるチームです。日本株・米国株の事業分析から、投資に役立つ情報をわかりやすくお届けします。

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