メドレー(4480)の企業分析|ジョブメドレー×CLINICSの二刀流、医療DXの成長戦略

メドレー(4480)は、医療・介護領域に特化した求人プラットフォーム「ジョブメドレー」と、オンライン診療・クラウド診療支援「CLINICS」を中核とする医療DX企業です。
2025年12月期は売上高367.9億円(前期比+25.5%)と2016年12月期から10期連続の増収を達成。続く2026年12月期は上期(1〜6月)で営業利益24.5億円(前年同期比+67%)と利益が回復し、期末には上場来初の配当(1株18円)を予定しています。人材プラットフォーム事業が売上の約72%を占める収益の柱である一方、医療プラットフォーム事業の成長加速が中長期の注目テーマです。
この記事では、メドレーの2つの事業の仕組み、業績推移、医療DX戦略、投資判断のポイントを、個人投資家の視点からわかりやすく解説します。
この記事の内容(目次)
会社概要 — 「医療ヘルスケアの未来をつくる」プラットフォーム企業
メドレーは、代表取締役社長の瀧口浩平氏が2009年に創業した医療DX企業です。「医療ヘルスケアの未来をつくる」というミッションのもと、医療従事者の人材不足と医療機関のIT化という2つの社会課題に取り組んでいます。
項目 | 内容 |
|---|---|
会社名 | 株式会社メドレー(Medley, Inc.) |
証券コード | 4480(東証プライム) |
設立 | 2009年6月 |
上場 | 2019年12月(東証マザーズ)→ 現在 東証プライム |
代表取締役社長 | 瀧口 浩平 |
従業員数 | 1,815名(連結、2025年12月末時点) |
本社 | 東京都港区六本木 |
セクター | 情報・通信業(情報通信・サービスその他) |
「人材」と「テクノロジー」の両輪で医療を支える
メドレーの特徴は、医療・介護業界の「人手不足」と「IT化の遅れ」という2つの構造的課題に同時にアプローチしている点にあります。
2009年 — メドレーを創業。同年11月に医療介護の求人サイト「ジョブメドレー」を開始
2015年 — 医療情報サービス「MEDLEY」を開始し、医療プラットフォーム事業に参入
2016年 — オンライン診療プラットフォーム「CLINICS」を提供開始。国内オンライン診療のパイオニアに
2019年 — 東証マザーズに上場(2022年11月にプライム市場へ移行)
2025年12月期の売上構成比は、人材プラットフォーム事業が約72%、医療プラットフォーム事業が約25%。残る約3%は介護施設紹介「みんかい」や米国人材事業などの新規開発サービスです。人材事業のキャッシュフローを医療プラットフォームの成長投資に充てる戦略で事業を拡大しています。
セグメント別売上構成比(2025年12月期)
セグメント別売上推移
2つの事業を理解する
人材プラットフォーム事業 — 医療介護人材をダイレクトにつなぐ
人材プラットフォーム事業の中核は、医療・介護・福祉に特化した求人サイト「ジョブメドレー」です。従来の医療系人材紹介(エージェント型)とは異なり、求職者と事業所が直接やり取りするダイレクトリクルーティング型のモデルを採用しています。

収益モデルは成果報酬型で、求職者が採用された時点で事業所から報酬を受け取ります。掲載自体は無料のため、事業所にとっては採用コストを抑えながら必要な人材を探せる仕組みです。
指標 | 数値(時点) |
|---|---|
求職者登録数 | 333万人(ジョブメドレー従事者会員、2026年6月末。前年同期比+20%) |
月間新規登録 | 約5万人(2026年4月時点) |
利用事業所数 | 46.6万件(人材PF全体の顧客事業所、2026年6月末。前年同期比+8%) |
掲載求人数 | 約54万件(2026年6月時点) |
ジョブメドレーの強みは、医療・介護領域に特化した圧倒的な求人掲載数と求職者数にあります。看護師、薬剤師、介護職、歯科衛生士など50以上の職種をカバーしており、医療介護業界で国内最大級の求人サイトとなっています。
さらに、M&Aで取得した「グッピー求人」やオンライン研修システム「ジョブメドレーアカデミー」を通じて、採用だけでなく人材の定着・育成までを包括的にサポートする体制を構築しています。
医療プラットフォーム事業 — 医療現場のDXを推進
医療プラットフォーム事業は、医療機関のIT化・DXを支援するSaaSプロダクト群で構成されています。

CLINICS(クリニクス) — オンライン診療・服薬指導に対応したクラウド診療支援システム。患者向けアプリと医療機関向けシステムの両面を提供。オンライン診療システムで導入実績No.1(富士キメラ総研調べ、2023年実績)
MALL(モール) — 中小病院向け電子カルテ(従来はオンプレミス版が中心)。標準仕様に準拠したクラウドネイティブ版「MALLクラウド」をAIネイティブで開発中で、2027年12月期からの本格販売を予定する病院DXの中核
MEDIXS(メディクス) — 調剤薬局向けシステム。薬局のオンライン服薬指導に対応
DENTIS(デンティス) — 歯科医院向けのクラウド型業務支援システム。予約・診療・会計を一体管理
この事業はまだ先行投資フェーズにあり、セグメント利益はマイナスが続いています。しかし、2020年のコロナ禍で初診からのオンライン診療が時限的に認められ(2022年度に恒久化)、市場が一気に拡大。政府の医療DX推進施策も追い風となり、中長期的には「人材事業に並ぶ収益の柱」に育てることが経営の最重要テーマです。
業績推移と財務分析
メドレーの業績は、売上高は2016年12月期から10期連続で過去最高を更新し続けている一方、直近2期は営業利益率が低下しています。成長投資と収益性のバランスを読み解くことが、この銘柄を理解する鍵です。
通期業績推移(売上高・営業利益・営業利益率)
なぜ増収なのに営業利益率が低下しているのか
2023年12月期にピーク(13.0%)をつけた営業利益率が、2024年12月期(7.9%)、2025年12月期(5.8%)と低下しています。この背景には大きく4つの要因があります。
医療プラットフォーム事業への先行投資 — CLINICSやMALLなどのSaaSプロダクトの開発・営業体制強化に積極投資。セグメント利益はマイナスが続いていますが、売上は年率2〜4割台の高成長を継続しています
M&Aによる事業領域の拡大 — グッピーズ(求人サイト「グッピー求人」)やアクシスルートホールディングス(電子薬歴「MEDIXS」)の買収など、戦略的なM&Aに伴うのれん償却やPMIコストが利益を圧迫。のれん償却費は2024年12月期の7.7億円から2025年12月期は13.6億円に増加しました
新規開発サービスの損失拡大 — 米国人材事業や2025年1月に子会社化した介護施設紹介「みんかい」を含む新規開発サービスのセグメント損失が、2024年12月期の△3.8億円から2025年12月期は△7.7億円に拡大。医療PFの損失(△4.5億円)より大きくなっています
勤続支援金の廃止と規制対応コスト — 職業安定法施行規則の改正(2025年4月施行)により、求人サイトにも「就職お祝い金」の提供が禁止されました。ジョブメドレーでは従来、入職後60日以上勤続した求職者に「勤続支援金」を支給しており、求職者の応募動機と採用報告の仕組みを兼ねていましたが、規制に先行して2024年12月末で終了。勤続支援金がなくなったことで事業所が採用を報告しない「採用隠蔽」のリスクが高まり、その抑止対応として2025年4月応募分からサービス単価を10%超値上げしました。2024年12月期の決算説明会では「想定外の対応コストで成長施策の一部を諦めざるを得なかった」と説明されています
ただし、人材プラットフォーム事業単体の利益率は34.5%(2025年12月期)と非常に高く、安定的に利益を稼ぐ力は健在です。全社の利益率低下は、稼いだ利益を医療プラットフォームの成長に再投資している結果であり、一時的なものと会社側は説明しています。
なお、2025年12月期の経常利益は22.0億円(前期比△46%)、純利益は9.8億円(同△65%)と、営業利益以上に落ち込みました。前期に営業外収益として計上した受取和解金22.3億円が3.7億円に減ったことと、損金に算入されないのれん償却費の影響で税負担率が約59%まで上がったことが主因で、事業の実力とは切り分けて読む必要があります。また、2025年11月には通期予想を下方修正(売上高398億円→369億円、営業利益30億円→21億円、純利益31億円→13億円)しており、売上高と純利益は修正後の予想も下回る着地となりました。
セグメント別利益の推移
セグメント別利益推移
人材PF事業の利益は2021年の31.9億円から2025年の90.9億円へと4年間で約2.8倍に拡大しています。一方、医療PFは2024年12月期に黒字化目前(-0.2億円)まで改善したものの、2025年12月期は新たな投資により再び損失が拡大しました。
医療PF事業の赤字が許容されているのは、人材PF事業が生み出す安定的なキャッシュフローが十分にカバーしているからです。この「稼ぐ事業」と「育てる事業」の組み合わせは、SaaS企業の典型的な成長パターンです。
2026年12月期 上期決算の進捗と初配当
2026年12月期第2四半期(1〜6月累計)は、売上高226.8億円(前年同期比+22.8%)、営業利益24.5億円(+67.4%)、純利益15.0億円(+131%)と前期に低下した利益が大きく回復しました。第1四半期は営業損失△0.7億円(前年同期△1.2億円)でしたが、人材PFの売上が集中する第2四半期(4〜6月)単体で売上高124.9億円(+21%)、営業利益25.1億円(+59%)を稼いでいます。人材PFの売上成長率は前年同期の+14%から+22%へ再加速し、医療PFも+19%。会社が重視するEBITDAマージンは26%(前年同期比+4ポイント)でした。
項目 | 2026年12月期 上期実績 | 前年同期比 | 通期会社予想 | 進捗率 |
|---|---|---|---|---|
売上高 | 226.8億円 | +22.8% | 464.0億円(+26.1%) | 48.9% |
営業利益 | 24.5億円 | +67.4% | 29.5億円(+37.2%) | 82.9% |
経常利益 | 28.0億円 | +77.7% | 32.5億円(+47.6%) | 86.2% |
純利益 | 15.0億円 | +131.4% | 18.0億円(+84.5%) | 83.2% |
通期の会社予想は売上高464億円(前期比+26.1%)、営業利益29.5億円(+37.2%)、純利益18.0億円(+84.5%)、EPS 58.25円で、2026年2月の期初計画から据え置かれています。営業利益の進捗率が83%と高く見えるのは、利益が上期に偏る季節性があるためです(2025年12月期は上期14.6億円に対し下期6.9億円)。会社は下期の四半期EBITDAマージンを第3四半期5〜10%、第4四半期10〜15%と見込んだうえで、「EBITDA以下の利益項目では通期で上振れの可能性が高い」としています。医療PFは受注の後ろ倒しで上期のEBITDAマージンが0%にとどまりましたが、下期は黒字を見込むとしています。
株主還元も転換点を迎えました。2026年8月13日、メドレーは自己株式取得を中心としてきた還元方針を配当主軸に改め、2026年12月期末に1株18円の初配当(配当性向30%目安の業績連動)を予定すると発表しました。2019年の上場以来、利益はすべて成長投資と自己株式取得に回してきた会社の姿勢が変わったことになります。自己株式については上場後累計で発行済株式の10.5%を取得しており(2025年2月〜2026年3月だけで3回計70億円)、発行済株式総数の5%を超える分は消却する方針も同時に定めました。この取得が響き、2025年12月期末の純資産は148億円(前期末202億円)に減っています。
M&Aでは、2026年8月3日にリクルートグループで医師・薬剤師の人材紹介を手がけていたリクルートメディカルキャリアの全事業(取得価額10億円、取得時売上高26億円)を承継しました。「リクルートドクターズキャリア」「リクナビ薬剤師」は「ジョブメドレーエージェント 医師/薬剤師」に改称され、ジョブメドレーが相対的に手薄だった医師・薬剤師領域を補完します。連結への寄与は下期からです。

のれんとは|M&Aで生まれる無形資産と日本基準・IFRSの償却差異
のれん(会計)の意味・計算方法・日本基準とIFRSの償却ルールの違い・減損リスクを解説。M&A時に発生する無形資産の仕組みと、投資家がBSで確認すべきポイントがわかります。
投資家が注目すべきポイント
3つの強み
1. 構造的に縮まない市場
日本の医療・介護市場は少子高齢化に伴い拡大が続く一方、医療従事者の人手不足は年々深刻化しています。厚生労働省の推計(2024年7月)では2040年度に約272万人の介護職員が必要で、2022年度比で約57万人の追加確保が求められるとされており、人材マッチングへのニーズは構造的に拡大し続けます。景気変動に左右されにくいディフェンシブな市場特性は、投資対象として大きな魅力です。
2. ネットワーク効果による高い参入障壁
ジョブメドレーは従事者会員333万人・顧客事業所46.6万件という両面ネットワークを構築しています。求職者が多いから事業所が集まり、事業所が多いから求職者が集まるという好循環が生まれており、後発がゼロからこの規模を構築するのは極めて困難です。加えて成果報酬型の低コストモデルは、中小規模の医療機関に支持されています。
3. 医療DXという巨大な成長余地
日本の医療機関のIT化率は先進国の中でも低水準です。政府は「医療DX推進本部」を設置し、電子カルテの普及やオンライン診療の恒久化を推進しています。CLINICSがオンライン診療の導入実績No.1(富士キメラ総研調べ、2023年実績)を確保している現在、規制緩和と市場拡大の恩恵を最も受けやすいポジションにあります。
注意すべきリスク
1. 医療プラットフォーム事業の黒字化時期の不透明さ
医療PF事業は5年以上赤字が続いており、2024年12月期に黒字化目前まで迫ったものの再び赤字に転じました。2026年12月期上期も受注の後ろ倒しでEBITDAマージンは0%にとどまっています(会社は下期の黒字化を見込む)。投資フェーズが長引けば、全社の利益成長が抑制されるリスクがあります。
2. 人材事業への依存度の高さ
売上の約72%、利益のほぼ全額を人材PF事業に依存しています。ジョブメドレーの成長が鈍化した場合、全社業績への影響は大きくなります。求人市場は医療介護分野でもマイナビなどの大手人材会社や紹介会社と競合しており、競争環境の変化には注意が必要です(リクルートは2026年8月に医師・薬剤師の紹介事業をメドレーへ譲渡しており、この領域では競合から売り手に回りました)。
3. 診療報酬制度の影響
医療機関の経営は診療報酬制度に大きく左右されます。オンライン診療の診療報酬が引き下げられた場合、CLINICSの導入メリットが薄れ、医療PF事業の成長シナリオが遅延するリスクがあります。2026年6月施行の診療報酬改定では、オンライン診療の初診料(253点)・再診料(75点)は据え置かれた一方、施設基準が厳格化され、電子処方箋と組み合わせた「遠隔電子処方箋活用加算」(10点)が新設されました。点数引き上げという追い風は当面見込めず、次の改定(2028年度)までは制度面よりも導入数の積み上げが医療PFの成長を左右します。
まとめ
メドレー(4480)は、「人材プラットフォーム」と「医療プラットフォーム」の2本柱で、医療ヘルスケア領域のDXを推進する企業です。
投資の観点からのポイントを整理すると、以下の通りです。
事業の強さ: ジョブメドレーの従事者会員333万人・顧客事業所46.6万件というネットワーク効果。オンライン診療のCLINICSが導入実績No.1。少子高齢化に伴う構造的な需要拡大
成長性: 売上高は4年間で3.4倍に拡大(108.6億円→367.9億円)。人材PFは安定成長、医療PFは年率2〜4割台の高成長フェーズ。2026年12月期は売上高464億円(+26.1%)の会社予想に対し上期で49%の進捗
収益構造: 人材PFの高い利益率(34.5%)が全社を支える。医療PFへの先行投資により2025年12月期の全社利益率は低下したが、2026年12月期上期は営業利益+67%と回復。期末に上場来初の配当(1株18円、配当性向30%目安)を予定
注意点: 医療PFの黒字化時期が不透明(2026年12月期上期のEBITDAマージンは0%)。人材事業への依存度の高さ。診療報酬制度の変更リスク
医療・介護の人手不足は、日本が直面する最大級の社会課題の一つです。メドレーは「人材の確保」と「業務のIT化」という両面からこの課題に取り組む、数少ない上場企業です。現在は成長投資による一時的な利益率低下の局面ですが、医療PF事業が軌道に乗れば、事業ポートフォリオの厚みが増す展開が期待できるでしょう。

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メドレー
医療ヘルスケア領域のインターネットプラットフォーム企業。医療・介護・歯科分野の人材採用プラットフォーム「ジョブメドレー」を中核事業とし、成功報酬型の求人サービスで業界最大級の求人数を持つ。もう一つの柱として、クラウド診療支援システム「CLI…
本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。投資の最終判断はご自身の責任でお願いいたします。記事中の数値は2026年9月14日時点の情報に基づいています。










