みなし配当とは|自社株TOBや非上場株の買取りで受取額の一部が配当課税に、計算例と税率

みなし配当とは、会社法上は配当に該当しないものの、税務上は配当と同じ扱いを受ける所得のことです。自己株式の取得や資本の払戻し、会社の解散・合併などで株主が金銭を受け取ったとき、そのうち会社の資本金等の額(株主が払い込んだ資本に当たる部分)を超える部分が「みなし配当」として課税されます。
上場企業の自社株買いでTOBに応じた場合や、非上場企業のM&A・事業承継で株式を会社に買い取ってもらった場合に発生し、通常の株式譲渡とは異なる課税が行われます。この記事では、みなし配当の定義・発生するケース・計算方法・税率・確定申告の扱いを、具体的な計算例を交えて解説します。
みなし配当の定義と法的根拠
みなし配当は、所得税法第25条(個人株主の場合)および法人税法第24条(法人株主の場合)に規定されています。法律の趣旨は、形式的には剰余金の配当ではなくても、実質的に法人の利益が株主に帰属する行為があったときに、これを配当とみなして課税するというものです。
なぜ「みなし配当」が存在するのか
株主が会社から受け取る金銭には、大きく2つの性質があります。
資本の払戻し — 株主が払い込んだ資本(会社の資本金等の額)が戻ってきた部分。配当としては課税されない
利益の分配 — 会社が稼いだ利益が株主に渡った部分。配当所得として課税される
たとえば、自己株式の取得で会社が株主に1,000万円を支払ったとき、そのうち会社の資本金等の額に対応する部分が400万円であれば、残りの600万円は実質的に会社の利益が株主に渡ったとみなされます。この600万円が「みなし配当」です。自分がその株をいくらで買ったかは、ここでは関係ありません(それは後で譲渡損益の計算に使います)。
通常の株式売却(市場での売買など)であれば受け取った代金の全額が株式の売却収入になりますが、発行会社に直接売却する場合は、みなし配当と譲渡所得に分解して課税される点が大きな違いです。
みなし配当が発生する5つのケース
所得税法第25条では、以下のケースで株主が受け取る金銭等のうち、資本金等の額を超える部分がみなし配当になると定めています。
① 自己株式の取得
会社が自社の株式を株主から買い取るケースです。上場企業のTOB(公開買付け)や、非上場企業のオーナーが自社に株式を売却する場合が該当します。実務上、みなし配当が最も頻繁に発生するケースです。
② 資本の払戻し(資本剰余金の配当)
利益剰余金ではなく資本剰余金を原資にした配当は、会社法上は剰余金の配当ですが、税務上は「資本の払戻し」として扱われ、資本金等の額を超える部分がみなし配当になります。みなし配当にならない残りの部分は、株式の一部を売ったものとして扱われます(みなし譲渡)。
たとえば日本郵政(6178)は、2021年3月期の期末配当(1株50円)を資本剰余金から支払いました。1株50円のうちみなし配当は約19.85円で、残りの約30.15円は株式の売却収入として扱われ、持っている株の取得価額も1.7%減らす必要がありました。
③ 合併(非適格合併)
被合併法人の株主が合併法人から金銭等を受け取った場合、受取額のうち被合併法人の資本金等の額に対応する部分を超える金額がみなし配当です。ただし、適格合併の場合はみなし配当は発生しません。
④ 分割型分割(非適格分割)
分割法人の株主に分割承継法人の株式等が交付された場合、資本金等の額を超える部分がみなし配当になります。適格分割型分割の場合は合併と同様に発生しません。
⑤ 解散による残余財産の分配
会社が解散し、残余財産を株主に分配するとき、分配額のうち資本金等の額を超える部分がみなし配当です。
ケース | 具体例 | 適格で回避 |
|---|---|---|
自己株式の取得 | TOB応募、相対取引での売却 | × |
資本の払戻し | 資本剰余金を原資とする配当 | × |
合併 | 被合併法人の株主への金銭交付 | ○(適格合併) |
分割型分割 | 分割に伴う株式等の交付 | ○(適格分割) |
残余財産の分配 | 解散・清算時の株主への分配 | × |
みなし配当の計算方法
みなし配当の計算式は、ケースによって若干異なりますが、基本的な考え方は共通しています。
基本の計算式
ここで「資本金等の額のうち交付に対応する部分」の計算がケースごとに異なります。
自己株式の取得の場合
自己株式取得のケースでは、以下の計算式で求めます。
資本金等の額と発行済株式総数は、どちらも取得直前の数字を使います。発行済株式総数には、会社がすでに持っている自己株式を含めません。
資本の払戻しの場合
資本の払戻し(資本剰余金を原資とする配当)の場合は、会社全体の「払戻等対応資本金額等」を計算し、それを株主ごとに割り振った額を受取額から差し引きます。
この額を発行済株式総数(自己株式を除く)で割り、自分の保有株数を掛けた額が、自分の受取額から差し引く部分です。式は簡略化したもので、実際には前期末以降の資本の増減を反映したり、減少した資本剰余金の額を上限にしたりする調整があります。
この計算は会社が行い、株主へ通知します。個人株主が自分で計算する必要はありません。
残余財産の分配の場合
自己株式の取得と同じ構造で、分配の直前の資本金等の額を使います。この式は残余財産を一度に全部分配する場合のもので、何回かに分けて分配するときは、分配した割合に応じて按分します。
みなし配当の税率と課税方法
みなし配当の税務上の扱いは、株主が個人か法人か、対象が上場株式か非上場株式かで大きく異なります。
個人株主の場合
みなし配当は配当所得として課税されます。通常の配当と同じ課税区分です。
区分 | 源泉徴収税率 | 確定申告 | 配当控除 |
|---|---|---|---|
上場株式(持株比率3%未満) | 15.315%(所得税等)+ 5%(住民税)= 20.315% | 申告不要・総合課税・申告分離課税から選択 | 総合課税のみ適用可 |
上場株式(持株比率3%以上) | 20.42%(所得税のみ) | 総合課税(少額の場合を除き申告が必要) | 適用可 |
非上場株式 | 20.42%(所得税のみ) | 総合課税(少額の場合を除き申告が必要) | 適用可 |
持株比率3%の判定:自分の持株だけでなく、自分が支配する同族会社(資産管理会社など)の持株も合算して判定します(2023年10月以降)。
2027年1月からの税率:防衛特別所得税(所得税額の1%)が始まりますが、同時に復興特別所得税が2.1%から1.1%に下がるため、源泉徴収の合計税率(20.315%・20.42%)は変わりません。
法人株主の場合
法人株主が受け取るみなし配当は受取配当等の益金不算入(法人税法第23条)の対象になります。持株比率に応じて以下の割合が益金不算入(非課税)になります。
持株比率 | 区分 | 益金不算入割合 |
|---|---|---|
100%(完全子法人株式等) | 完全子法人 | 100% |
1/3超(関連法人株式等) | 関連法人 | 100%(負債利子控除あり) |
5%超1/3以下(その他株式等) | その他 | 50% |
5%以下(非支配目的株式等) | 非支配目的 | 20% |
なお、関連法人株式等(1/3超)や完全子法人株式等の判定には、一定期間の保有が要件です(みなし配当では、取引の効力発生日の前日を基準に判定します)。また、自社株TOBの公表後に取得した株式のように、自己株式として買い取られることが予定されている株式のみなし配当は、益金不算入の対象になりません。
確定申告での取り扱い
上場株式のみなし配当:3つの申告方法
上場株式(持株比率3%未満)のみなし配当は、通常の上場株式の配当と同じく、以下の3つから選択できます。
方法 | 税率 | 配当控除 | 損益通算 | 向いている人 |
|---|---|---|---|---|
申告不要 | 20.315%(源泉徴収のまま) | × | × | 手間をかけたくない人 |
総合課税 | 15%〜55%(所得税5〜45%+住民税10%。配当控除で実際の負担は下がる) | ○ | × | 課税所得695万円以下の人 |
申告分離課税 | 20.315% | × | ○(上場株式等の譲渡損と通算可) | 譲渡損失がある人 |
非上場株式のみなし配当:総合課税のみ
非上場株式のみなし配当は総合課税のみです。申告分離課税は選べません。源泉徴収された20.42%は前払いとして差し引かれ、確定申告で精算します。
配当控除は非上場株式でも適用されます。ただし、非上場株式の譲渡損失は上場株式等の配当所得と通算できないため、みなし配当と別に発生した譲渡損を相殺することはできません。
例外として、相続で取得した非上場株式を発行会社に売る場合の特例があります。相続税を納めた人が相続税の申告期限から3年以内に売れば、みなし配当として課税されず、受け取った全額が株式の売却収入として扱われます(売却益の税率は20.315%)。
譲渡所得との分離に注意
みなし配当が発生する取引では、受け取った金額のうちみなし配当部分は「配当所得」、残り(資本金等の額に対応する部分 − 取得費)は「譲渡所得」として別々に課税されます。
特定口座(源泉徴収あり)を利用していても、TOBで受け取ったみなし配当は、口座の設定によっては年間取引報告書に載らないことがあります。上場株式(持株比率3%未満)なら、みなし配当は源泉徴収で課税が済んでいるので、申告しなくても構いません。
ただし、譲渡部分の収入は資本金等の額に対応する額だけなので、取得費を下回って譲渡損になることもあります。この譲渡損やほかの取引の譲渡損がある場合は、確定申告(申告分離課税)でみなし配当と通算すると、源泉徴収された税金が戻ることがあります。
申告するときは、会社から届く「支払通知書」(みなし配当の額と源泉徴収税額が書かれた通知)を使います。TOBに応じた際は、特定口座でどう処理されるかを証券会社に確認しておきましょう。
みなし配当に関する支払調書
みなし配当が発生した場合、発行法人は「配当、剰余金の分配、金銭の分配及び基金利息の支払調書」を税務署に提出する義務があります(所得税法第225条)。株主に対しては、みなし配当の額と源泉徴収税額を書いた「支払通知書」を交付します。
株主が確定申告するとき、この通知書がみなし配当の金額と源泉徴収税額を確認する根拠資料になります。上場企業の場合は、証券会社の年間取引報告書に載ることもありますが、非上場企業の場合は会社から直接受け取る通知書が唯一の根拠書類となるため、紛失しないよう注意が必要です。
よくある疑問
NISA口座で保有している株式にもみなし配当は発生する?
はい、発生します。ただし、NISA口座で取得した上場株式について自己株式の取得等でみなし配当が生じた場合、そのみなし配当はNISA口座の非課税措置の対象です。NISA口座で保有している間は税金はかかりません。
株式併合でもみなし配当は発生する?
株式併合だけではみなし配当は発生しません。併合で1株未満の端数が生じ、その分を現金で受け取った場合も、みなし配当にはならず、全額が株式を売ったときの収入として扱われ、取得費との差額が譲渡所得(または譲渡損失)になります。MBOなどで株式併合により持株が端数になり、現金を受け取るケースもこれに当たります。
市場で株を売った場合はみなし配当にならないの?
なりません。みなし配当が発生するのは「発行法人に対する」株式の譲渡に限られます。取引所を通じた市場売却は第三者への売却なので、受け取った代金の全額が株式の売却収入になります。上場企業の自社株買いでも、市場買付けの場合は売り手にみなし配当は発生しません。TOBへの応募や、非上場企業が相対で株式を買い取る場合に発生します。
みなし配当がマイナスになることはある?
交付金銭等の額が資本金等の額に対応する部分以下の場合、みなし配当はゼロになります。マイナスにはなりません。この場合は受け取った全額が株式の売却収入になり、取得費を下回れば譲渡損失になります。

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まとめ
みなし配当のポイントを整理します。
定義 — 交付金銭等のうち、資本金等の額を超える部分。法人の利益が株主に移転したとみなされる
発生ケース — 自己株式の取得、資本の払戻し、非適格合併・分割、残余財産の分配
計算式 — 交付金銭等 − (1株あたり資本金等の額 × 取得株式数)
税率 — 上場(3%未満)は20.315%、非上場は20.42%で源泉徴収後に確定申告で精算。非上場は総合課税で、税負担は最大で約5割
確定申告 — 上場は申告不要・総合課税・申告分離課税の3択。非上場は総合課税のみ
みなし配当は事業承継・M&Aや自社株買い(TOB応募)で突然発生し、想定外の税負担が生じることがあります。特に非上場株式では税負担が最大で約5割になるため、取引の前に税理士へ相談し、税額シミュレーションを行うことを強く推奨します。

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