KabuGraph

大塚ホールディングス(4578)徹底分析|サムスカ特許崖を乗り越える「2本柱経営」とポカリスエットの底力

2026年12月期 第3四半期決算まで反映

Cover Photo

大塚ホールディングス(4578)は、抗精神病薬「エビリファイ」や遺伝性の腎臓病ADPKDの治療薬「サムスカ/ジンアーク」を世界に送り出してきた製薬グループで、ポカリスエットなどの消費財ブランドも持ちます。主力薬ジンアークの米国での独占販売期間終了という「特許の崖」を迎えながらも、2026年12月期は2度の上方修正で増益を見込み、年間配当も140円から200円(予想)へ増やします。

本記事では、医薬品と消費財の「2つの事業」の中身、業績と株主還元の推移、投資家が注目すべき強みとリスクを解説します。

会社概要と沿革

基本情報

項目

内容

社名

大塚ホールディングス株式会社

証券コード

4578(東証プライム)

代表者

代表取締役社長兼CEO 井上 眞

設立

2008年7月(持株会社化)

従業員数(連結)

37,758名(2025年12月31日現在、統合報告書2026)

決算期

12月

時価総額

約6.4兆円(2026年11月2日終値時点)

大塚製薬の企業情報ページ
大塚製薬 企業情報ページ

沿革と成長の軌跡

  • 1921年:大塚武三郎が徳島県鳴門に大塚製薬工業部(現・大塚製薬工場)を設立。にがりから炭酸マグネシウムをつくる化学原料メーカーとして出発し、1946年に輸液(点滴注射液)へ参入

  • 1964年:大塚製薬株式会社を設立。当初はグループ製品の販売会社で、1971年に創薬部門を設けて自社医薬品の開発に着手

  • 1980年:ポカリスエット発売。「汗の飲料はできないのか」という発想から生まれたイオン飲料

  • 2002年:エビリファイ(アリピプラゾール)米国発売。世界初のドパミンパーシャルアゴニスト

  • 2008年:大塚ホールディングス設立、純粋持株会社体制へ移行

  • 2010年:東証一部上場

  • 2015年:レキサルティ(ブレクスピプラゾール)が米国承認。2023年にアルツハイマー型認知症に伴うアジテーション(AAD)の適応を追加取得し成長が加速

  • 2018年:トルバプタンがADPKD適応で米国承認取得(商品名「ジンアーク」)。日本でのADPKD適応承認は2014年

  • 2025年:ジンアークの米国での独占販売期間が終了。同時にパイプライン(開発中の新薬候補)5製品の申請を推進

出典: 大塚ホールディングス「大塚グループのあゆみ」、統合報告書2026、薬事日報(2025年3月12日)

事業構造:「2つの事業」

大塚グループは「Otsuka-people creating new products for better health worldwide」の企業理念のもと、「トータルヘルスケアカンパニー」として2本柱で事業を展開しています。

  • 医療関連事業:エビリファイ、サムスカ/ジンアークなどの医薬品。研究開発型の製薬グループとしての顔

  • ニュートラシューティカルズ関連事業:ポカリスエットやオロナミンCといった消費財ブランド(機能性飲料・食品など)

この「2つの事業」体制は、製薬企業特有の特許切れリスクを消費財事業の安定収益で補完する構造であり、大塚HDの最大の特徴と言えます。医薬品と消費財ブランドの両方を持つことで、製薬会社の中でも独自のポジションを築いています。

大塚製薬「2つの事業」ページ — 医療関連事業とニュートラシューティカルズ関連事業の両輪
大塚製薬「2つの事業」ページ

事業を理解する

医療関連事業:精神・神経(CNS)領域を中心としたグローバル展開

医療関連事業はグループ売上の約7割を占める中核事業です。精神・神経(CNS:中枢神経系)、がん、自己免疫、希少疾患を重点領域としています。

サムスカ/ジンアーク(トルバプタン)

世界初の経口選択的バソプレシンV2受容体拮抗剤(腎臓で水分を再吸収させるホルモン、バソプレシンの働きを抑える飲み薬)として、低ナトリウム血症やADPKD(常染色体優性多発性嚢胞腎。腎臓に嚢胞が多数できる遺伝性の病気)の治療に使用されます。ピーク時の2024年度はジンアークだけで売上2,412億円とグループ売上の約1割を占める主力製品でした(2025年度は1,869億円、前期比−22.5%)。

2025年に米国での独占販売期間が終了し、2026年1〜9月の累計はサムスカ/ジンアーク合計で1,251億円(前年同期比−31.1%)と後発医薬品の浸透で大きく減りました。

エビリファイ/エビリファイメンテナ(アリピプラゾール)

世界初のドパミンパーシャルアゴニスト(脳内のドパミンの働きが強すぎるときは抑え、弱すぎるときは補うタイプの薬)として2002年に米国で発売されました。統合失調症・双極性障害・うつ病の補助療法に広く使用され、世界60カ国・地域以上で40億ドルを売り上げるグローバル製品に成長しました。

経口剤(飲み薬)の特許は既に満了していますが、持効性注射製剤(1回の注射で効果が長く続く製剤)のエビリファイメンテナが後続製品として貢献してきました。このメンテナ製剤も欧州で後発品の参入が見込まれています(会社は2026年7月、参入が当初の想定より遅れたと説明)。

レキサルティ(ブレクスピプラゾール)

エビリファイの後継として開発された次世代の抗精神病薬で、サムスカ/エビリファイメンテナの特許崖後を担う成長製品として期待されます。大うつ病の補助療法と統合失調症に加え、アルツハイマー型認知症に伴うアジテーション(焦燥性興奮)への適応を取得しており、ライフサイクルマネジメント(LCM。適応の追加などで製品の寿命を延ばす取り組み)を通じた独占期間の最大化を図っています。

ただし、成人のPTSDへの適応追加は承認に至っていません。2025年9月に米国FDAから審査完了報告通知(CRL。現状の申請内容では承認できないとする通知)を受けました。

主要製品一覧

製品名

一般名

領域

ステータス

サムスカ/ジンアーク

トルバプタン

腎臓

米国で独占販売期間終了(2025年)

エビリファイメンテナ

アリピプラゾール

CNS

欧州で後発品参入を想定

レキサルティ

ブレクスピプラゾール

CNS

成長中(AAD適応追加)

パイプライン:2029年以降の成長を担う8製品

大塚HDは第5次中期経営計画(2029年~)以降の成長ドライバーとして8製品を位置付けています。このうちIgA腎症治療薬「VOYXACT」をはじめ、米国で承認や申請まで進んだ製品は次のとおりです。

  • VOYXACT(シベプレンリマブ):IgA腎症治療薬。2025年11月に米国で迅速承認(効果の確認を続けることを条件にした早期の承認)を受けて12月に発売し、2026年10月には正式承認に向けた申請も完了しました

  • SIMTRIYO(センタナファジン):ADHD治療薬。2026年7月に米国で承認を取得しました

  • ジパレルチニブ:肺がん治療薬。米国で2次治療の申請が審査中(審査終了目標日は2027年2月27日)で、10月には1次治療の申請も始めました

2026年6月には米Transcend Therapeutics社の買収を完了し(取得対価7億ドル、開発品の売上に応じて最大5.25億ドルを追加で支払う可能性がある)、PTSD治療薬候補TSND-201(フェーズ3。承認前の最終段階の臨床試験)をパイプラインに加えました。研究開発費は2025年度が前期比12%増の3,528億円(売上収益比14.3%)、2026年度は3,730億円を見込んでいます(10月公表)。

井上社長は統合報告書2026で、第4次中期経営計画(2024〜2028年度)の最大の課題を「医療関連事業の主力製品のLOEによる調整局面を乗り越え、持続的な成長軌道を確保していくこと」としています(LOEは独占販売期間の満了)。

ニュートラシューティカルズ関連事業:ポカリスエットが支える安定基盤

ポカリスエット、オロナミンC、カロリーメイト、SOYJOYなど、高い知名度を持つ消費財ブランドを展開する事業です。機能性飲料・食品、医薬部外品、栄養補助食品の生産・販売を手掛け、グループ売上の約2割強(2025年度5,776億円、構成比23.4%)を占めます。

医療関連事業の特許切れによる収益変動を、このニュートラシューティカルズ事業の安定キャッシュフローで下支えする構造が、大塚HDの大きな強みとなっています。

特許崖への対応は、同業の製薬企業でも各社で大きく異なります。

  • 第一三共(4568):ADC(抗体薬物複合体。抗体に抗がん剤をつないだ薬)技術に全力投球

  • アステラス製薬(4503):フォーカスエリア戦略を推進

  • 大塚HD:この2本柱経営という独自の戦略で差別化を図っています

第一三共(4568)の企業分析|ADC抗がん剤エンハーツで売上2兆円突破、DXdパイプラインが拓くグローバル製薬の未来
あわせて読みたいRELATED POST

第一三共(4568)の企業分析|ADC抗がん剤エンハーツで売上2兆円突破、DXdパイプラインが拓くグローバル製薬の未来

第一三共(4568)のADC技術プラットフォーム、エンハーツを軸としたオンコロジー戦略、AstraZeneca・Merckとの大型提携、業績推移と2030年中期計画の投資判断ポイントを個人投資家向けに解説します。

アステラス製薬(4503)の企業分析|PADCEV・VYLOYが牽引し営業利益832%増、XTANDI特許切れ後の成長シナリオを読む
あわせて読みたいRELATED POST

アステラス製薬(4503)の企業分析|PADCEV・VYLOYが牽引し営業利益832%増、XTANDI特許切れ後の成長シナリオを読む

アステラス製薬(4503)のXTANDI後を見据えた重点戦略製品(PADCEV・VYLOY)の成長、中期経営計画、投資判断のポイントを個人投資家向けに解説します。

出典: 大塚ホールディングス 統合報告書2026、薬事日報「【大塚HD】新薬5製品を今年申請予定‐主力品特許切れ克服へ」(2025年3月12日)、大塚ホールディングス 2026年12月期 第3四半期決算短信 p.3〜6・p.9・p.18、2026年度 第3四半期決算説明資料 p.9・p.21・p.29、ブレクスピプラゾールの成人のPTSD効能追加承認申請について米国FDAから審査完了報告通知(CRL)を受理(2025年9月22日)、大塚グループのあゆみ

業績推移と財務分析

売上収益・営業利益の推移

大塚HDの売上収益は、レキサルティ・エビリファイメンテナ・サムスカ/ジンアーク・ロンサーフ(大腸がんなどの抗がん剤)の「グローバル4製品」をはじめとする医療関連事業とニュートラシューティカルズ関連事業の伸長に牽引され、2020年12月期の1兆4,228億円から2025年12月期は2兆4,689億円(前期比+6.0%)へ、5年間で約73%成長しました。

営業利益は2023年12月期に減損損失(1,724億円。資産の価値の目減りを一度に損失として計上するもの)で1,396億円まで落ち込んだ後に回復し、2025年12月期は4,794億円(営業利益率19.4%、前期比+48.2%)となりました。

売上収益・営業利益の推移(億円)

出典:決算短信・有価証券報告書・IR資料よりKabuGraph作成、2026/12予は会社予想(2026年10月30日修正)

2026年12月期は、当初の大幅減益の予想から2度の上方修正で増益の見通しに変わりました。営業利益の予想は次のように動きました。

  • 2月(当初):営業利益3,600億円(前期比-24.9%)と大幅減益を予想

  • 7月(修正幅の大きい1回目の上方修正):4,690億円へ。会社は、成長製品の伸びに加え、米国のジンアークと欧州のエビリファイメンテナで後発品の参入が当初の想定より遅れたことと、円安で為替の前提を1ドル150円から158円に見直したことを挙げました

  • 10月30日(第3四半期決算):4,880億円(前期比+1.8%)へ再び上方修正。売上収益(2兆7,250億円)は据え置き、売上総利益が予想を上回って推移し、研究開発費が一部プロジェクトの見直し等で予想を下回る見込みとなったことを理由としました

当期利益(親会社の所有者に帰属)は3,700億円と過去最高を見込んでいます。

1〜9月の累計は売上収益2兆424億円(前年同期比+12.3%)、営業利益4,237億円(同+4.0%)で、全セグメントが増収でした。前年同期の営業利益にはマイクロポート社株式の売却益526億円が含まれており、会社が経常的な収益力を示す指標とする事業利益は4,369億円(同+19.2%)でした。

ただし為替の影響を除くと、売上収益は+6.9%、営業利益は−2.1%でした。

当期利益・EPSの推移

当期利益(億円)とEPS(円)の推移

出典:決算短信・有価証券報告書・IR資料よりKabuGraph作成、2026/12予は会社予想(2026年10月30日修正)

配当の推移

2020年12月期から2023年12月期まで年間100〜110円で推移していた配当は、業績拡大に伴い2024年12月期120円、2025年12月期140円、2026年12月期は200円(予想。中間100円は決定済み)と増配を加速しています。

加えて2026年2月に決議した上限500億円の自社株買いは、10月28日までに453万7,700株(約500億円)を取得して終了し、全株を12月11日に消却(発行済みの株式から消すこと)する予定です。

1株あたり配当金の推移(円)

出典:決算短信・有価証券報告書・IR資料よりKabuGraph作成、2026/12予は会社予想(2026年7月31日修正、10月30日の第3四半期決算で据え置き)

財務サマリー

指標

2023/12

2024/12

2025/12

2026/12予

売上収益(億円)

20,186

23,299

24,689

27,250

営業利益(億円)

1,396

3,236

4,794

4,880

当期利益(億円)

1,216

3,431

3,632

3,700

EPS(円)

224.10

633.76

685.06

703.91

1株配当(円)

110

120

140

200

出典: 大塚ホールディングス 2026年12月期 第3四半期決算短信 p.9、2026年度 第3四半期決算説明資料 p.5・p.9、2025年度 決算補足資料(ファクトブック)p.1、統合報告書2025 p.24、通期連結業績予想の修正並びに剰余金の配当(中間配当)及び期末配当予想の修正(増配)に関するお知らせ(2026年7月31日)、統合報告書2026。2026/12予は2026年10月30日修正の会社予想

株価はなぜ約2.8倍になったのか

大塚HDの株価は、2023年3月末の4,203円から2026年11月2日の11,770円へ約2.8倍になりました。同じ期間に日本株全体(TOPIXに連動するETF)は約1.9倍で、国内の医薬品大手では中外製薬が約2.1倍、武田薬品工業が約1.5倍、第一三共は約0.6倍でした。

大塚HDの株価の推移(月末終値、円)

出典:東証株価よりKabuGraph作成(2023年3月〜2026年10月の各月末の終値と、2026年11月2日の終値)

上昇の大部分は、利益の伸びで説明できます。本業のもうけを表す会社の指標「事業利益」(売上から原価・販管費・研究開発費を引き、持分法による投資損益を加えた利益。減損や株式の売却益は含まない)は、2023年3月末の時点の会社計画(2023年度2,100億円)から2026年度の会社予想5,000億円へ約2.4倍に増える見通しです(2022年度実績の1,749億円からは約2.9倍)。

予想PER(株価÷会社予想の1株利益)で見ると、2023年3月末の14.5倍に対して今は16.7倍です。株価の約2.8倍のうち、会社予想の1株利益の伸びが約2.4倍分、PERの上昇が約1.15倍分にあたります(KabuGraph算出)。

時点

株価

会社予想EPS

予想PER

2023年3月末

4,203円

290.25円

14.5倍

2024年10月末

9,272円

443.24円

20.9倍

2025年4月末

6,957円

518.76円

13.4倍

2026年11月2日

11,770円

703.91円

16.7倍

出典:東証株価・各時点の決算短信の会社予想よりKabuGraph算出。会社予想EPSは各時点で公表されていたその期の予想(2023年3月末は2023年12月期、2024年10月末は2024年12月期、2025年4月末は2025年12月期、2026年11月2日は2026年12月期)。2024年12月期の会社予想にはAVP-786の開発中止に伴う減損損失(約1,000億円)が含まれ、2024年10月末の予想PERを押し上げている(減損を除くと概算15〜16倍、KabuGraph算出)

値動きは大きく3つの局面に分かれます。

  • 2023年3月〜2024年10月(4,203円→9,272円):事業利益が計画を上回り続けました。レキサルティ・エビリファイメンテナ・ジンアーク・ロンサーフの主力4製品が伸び、事業利益は2023年度に前年比+78.7%、2024年度に+37.7%増えました。2024年は7月に上期、8月と10月に通期の予想を引き上げ(通期の事業利益は期初の3,300億円→3,900億円→4,200億円)、8月1日には500億円の自己株買いも発表しました。

  • 2024年11月〜2025年4月(9,272円→6,957円、約25%下落):下げの途中で減益の計画が出ました。株価は計画が出る前の2025年1月末までに約12%下げていました。2025年2月、会社は米国でのジンアークの独占販売期間の終了(後発品は2025年5月に発売)に加え、研究開発費と販管費の成長投資が増えるとして、2025年度の事業利益を3,750億円(前年比−12.9%)と減益で計画しました。3月には700億円の自己株買いを決めましたが、株価は4月にさらに下げました。この間、日本株全体はほぼ横ばいで、国内の医薬品大手ではアステラス製薬・第一三共・エーザイが2割以上下げた一方、中外製薬は12%上げ、武田薬品工業はほぼ横ばいでした。

  • 2025年5月〜2026年11月(6,957円→11,770円、約1.7倍):減益の計画が2年続けて覆りました。2025年度は7月と10月に予想を引き上げ、事業利益は4,461億円(前年比+3.6%)と増益で着地しました。2026年度も2月の計画は事業利益3,550億円の大幅減益でしたが、7月と10月の上方修正で5,000億円の増益見通しに変わり、年間配当の予想も140円から200円に引き上げました。2026年2月の急な上昇は、日本株全体や他の医薬品株も大きく上げた月と重なります。同じ月の13日には、2025年度の決算(事業利益は10月の予想を約9%上回った)、2026年度の減益計画、500億円の自己株買いを同時に発表しています。

出典: 大塚ホールディングス 2022年度 決算説明資料、2023年度 決算説明資料、2024年度 決算説明資料、2025年度 決算説明資料、2026年度 第3四半期決算説明資料 p.9・p.12、第4次中期経営計画(2024年~2028年度)の策定について(2024年6月7日)、業績予想の修正に関するお知らせ(2024年7月26日)、2024年度 第2四半期決算説明資料、2024年度 第3四半期決算説明資料、2025年度 第3四半期決算説明資料、通期連結業績予想の修正並びに剰余金の配当(中間配当)及び期末配当予想の修正(増配)に関するお知らせ(2026年7月31日)、自己株式取得に係る事項の決定に関するお知らせ(2024年8月1日・2025年3月18日・2026年2月13日)。株価・ETF・他社の株価は東証の終値(TOPIX連動型ETFは2026年4月の1:10の分割を調整)

投資家が注目すべきポイント

強み・成長ドライバー

1. 「特許の崖」を乗り越える回復力

会社は2026年2月の期初計画で、主要製品の独占販売期間満了と国内の薬価改定(国が決める薬の公定価格の見直し)で売上総利益が約2,000億円減ると見込み、営業利益3,600億円(前期比-24.9%)の大幅減益を予想していました。

しかし、1〜9月の累計は売上収益2兆424億円(前年同期比+12.3%)と全セグメントで増収となり、通期予想も7月と10月に上方修正されました。事業利益では、レキサルティ(1〜9月の売上収益2,965億円、同+21.4%)などの主力製品の伸びやロイヤリティ収入の増加で、ジンアークの独占販売期間満了による影響を吸収したと会社は説明しています。

ただし、通期予想の上振れには後発品の参入の遅れと円安による分も大きいです。

2. ニュートラシューティカルズ事業の安定収益基盤

ポカリスエット、オロナミンC、カロリーメイトといった高い認知度を持つブランド群は、景気変動に左右されにくい安定的なキャッシュフローを生み出します。国内の製薬大手でこの規模の消費財事業を持つ例は珍しく、特許切れのショックを和らげるクッションとして機能しています。

ニュートラシューティカルズ関連事業の2026年1〜9月の事業利益は615億円(前年同期比+3.9%)で、連結の事業利益の約14%にあたります。

3. 株主還元の加速

年間配当は2022年12月期の100円から2026年12月期の200円(予想)へ4年で倍増します。上限500億円の自社株買いも2026年10月に取得を終えて全株を消却する予定で、株主還元姿勢は大きく転換しました。

2026年11月2日終値(10月30日の決算発表後)の実績PER(株価÷直近の通期の1株当たり利益)は17.2倍(会社予想ベースでは16.7倍)で、中外製薬(25.9倍)や第一三共(19.1倍)を下回ります。

リスク・注意点

1. 特許崖による減収はこれからも続く

ジンアークは2025年に米国での独占販売期間が終了し、2026年1〜9月の売上収益は1,006億円(前年同期比-35.3%)に減りました。会社は10月時点で4社の後発医薬品の発売を確認しており、今後も浸透が進むと見込んでいます。

欧州のエビリファイメンテナにも後発品の参入が見込まれており(7月時点で会社は参入が当初の想定より遅れたと説明)、減収が続くリスクを注視する必要があります。

2. 次世代パイプラインの不確実性

8製品を将来の成長ドライバーに位置付けていますが、医薬品開発の成功確率は高くありません。VOYXACTやSIMTRIYOのように米国で承認まで進んだ製品も出てきましたが、サムスカ級の売上を達成できる保証はありません。

2025年度の研究開発費3,528億円の積極投資が実を結ぶまでの「ギャップ期間」が、投資家にとっての不安材料となります。

3. PERは中外製薬・第一三共より低いが成長プレミアムは限定的

PER 17.2倍(2026年11月2日終値、実績ベース)は中外製薬(4519)や第一三共と比較して割安ですが、これは特許崖に伴う今後の利益成長の不透明感を市場が織り込んでいる表れとも言えます。次世代パイプラインの臨床試験結果次第で評価が大きく変わる局面にあります。

中外製薬(4519)の企業分析|ロシュ連携×独自創薬「ダブルウィング」でCore当期利益9期連続増益、時価総額11.2兆円のバイオ医薬リーダー
あわせて読みたいRELATED POST

中外製薬(4519)の企業分析|ロシュ連携×独自創薬「ダブルウィング」でCore当期利益9期連続増益、時価総額11.2兆円のバイオ医薬リーダー

中外製薬(4519)のロシュ傘下での独自創薬力、ヘムライブラ・エンスプリングの収益構造、パイプラインの将来性、投資リスクを個人投資家向けに解説します。

出典: 大塚ホールディングス 2026年12月期 第3四半期決算短信 p.2〜3、2026年度 第3四半期決算説明資料 p.6〜7、同 決算説明会トランスクリプト p.7、同 決算補足資料(ファクトブック)p.12、2025年度 決算説明資料 p.22、通期連結業績予想の修正に関するお知らせ(2026年7月31日)、自己株式の取得結果および取得終了並びに消却株式数に関するお知らせ(2026年10月30日)、統合報告書2026

まとめ

大塚ホールディングスは、医療関連事業とニュートラシューティカルズ関連事業の「2本柱経営」という独自の戦略で、製薬企業特有の特許崖リスクに対処しています。サムスカ/ジンアーク・エビリファイメンテナの特許満了が進む中でも、2026年12月期は2度の上方修正で増益の見通しに変わり、年間配当は200円(予想)と増配を加速しています。

今後の大塚HDの投資価値を左右するのは、レキサルティのLCM戦略と次世代パイプライン8製品の開発進捗、そしてポカリスエットに代表されるニュートラシューティカルズ事業の安定成長です。

  • 2025年12月期:売上収益2兆4,689億円、営業利益4,794億円(+48.2%。減損の減少と株式売却益が主因で、事業利益は+3.6%)

  • 2026年12月期:特許崖の影響が見込まれる中でも、2度の上方修正で営業利益4,880億円(前期比+1.8%)の増益見通しへ

  • 株主還元:年間配当は100円→200円(予想)と4年で倍増、500億円自社株買いも実施

  • 株価の評価:PER 17.2倍(2026年11月2日終値)は中外製薬・第一三共より低いが、パイプラインの成否が鍵

  • 収益の下支え:ポカリスエットなどニュートラシューティカルズ事業が収益の下支え役として機能


KabuGraphで銘柄詳細を確認する
大
4578医薬品

大塚ホールディングス

医療とヘルスケアを二本柱とするグローバル製薬グループ。大塚製薬・大鵬薬品工業を中核に、統合失調症治療薬「エビリファイ」後継の「レキサルティ」やがん治療薬など医療用医薬品を開発・販売する。一方、「ポカリスエット」「カロリーメイト」「ネイチャー…

コラム著者・編集者

K

KabuGraph編集部

KabuGraph編集部は、投資情報の発信と株式分析ツールの開発に携わるチームです。日本株・米国株の事業分析から、投資に役立つ情報をわかりやすくお届けします。

関連記事