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アステラス製薬(4503)の企業分析|PADCEV・VYLOYが牽引し営業利益832%増、XTANDI特許切れ後の成長シナリオを読む

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アステラス製薬(4503)は、前立腺がん治療薬XTANDIを主力とする日本の大手製薬企業です。2024年3月期は大型の減損損失と一時費用で営業利益が急落しましたが、2026年3月期は営業利益3,826億円(前期比+832%)と劇的なV字回復を達成。続く2027年3月期第1四半期(3ヶ月)も売上収益6,409億円(前年同期比+26.7%)・営業利益1,845億円(同+94.9%)と好スタートを切っています。

現在、投資家にとって最大のテーマは2027年以降に控えるXTANDI特許切れ後の成長シナリオです。PADCEV、VYLOY等の重点戦略製品がXTANDIの売上減少を補えるか。この記事では、アステラスの製品ポートフォリオ、V字回復の背景、中期経営計画と投資判断のポイントを解説します。

会社概要 — がん領域に注力する国内大手製薬

アステラス製薬は2005年に山之内製薬と藤沢薬品の合併で誕生した大手製薬企業です。がん領域、泌尿器、移植、眼科など幅広い疾患領域で事業を展開していますが、近年はがん領域(オンコロジー)へのフォーカスを鮮明にしています。

項目

内容

会社名

アステラス製薬株式会社(Astellas Pharma Inc.)

証券コード

4503(東証プライム)

本社

東京都中央区日本橋本町二丁目5番1号

代表取締役社長

岡村 直樹

従業員数

14,099名(連結、2026年3月31日現在)

決算期

3月

時価総額

約4.2兆円(2026年9月15日終値ベース)

(会社概要の従業員数はアステラス製薬 第21期定時株主総会招集通知 事業報告による)

主力製品の売上構成

主要製品別売上構成(2026年3月期実績)

出典:アステラス製薬 2026年3月期決算短信よりKabuGraph作成。XTANDIが売上の約45%、重点戦略5品計で約22%。「その他重点戦略製品」はIZERVAY・VEOZAH・XOSPATAの3品計

主要製品別売上収益の推移

出典:アステラス製薬 2026年3月期決算短信・決算補足資料よりKabuGraph作成。重点戦略製品はPADCEV・IZERVAY・VYLOY・VEOZAH・XOSPATAの5品計。2027/3(予)は会社予想で、製品別の予想は重点戦略製品計(6,100億円)とXTANDI(9,100億円)のみ開示。「その他」は売上収益合計との差額

製品ポートフォリオ — XTANDIから次世代製品へ

出典:アステラス製薬 製品と疾患領域

XTANDI — 年間9,608億円の基盤製品

XTANDI(イクスタンジ、一般名:エンザルタミド)は前立腺がん治療薬で、アステラスの売上の約45%を稼ぐ最大の収益源です。2026年3月期の売上は9,608億円(前期比+5.3%)で、欧州を中心に米国以外の地域での浸透が進みました。ただし会社自身が「2020年代後半に独占発売期間満了を迎える」と説明しており、米国では2027年以降、欧州・日本でも2028年以降に順次満了を迎えてジェネリック参入が見込まれます(出典:アステラス製薬 第21期定時株主総会招集通知経営計画2026)。

PADCEV — ADC技術で急成長するがん治療薬

PADCEV(パドセブ、一般名:エンホルツマブ ベドチン)はSeagen社(現Pfizer)と共同開発したADC(抗体薬物複合体)で、尿路上皮がん治療薬です。2026年3月期の売上は2,212億円(前期比+34.8%)と急成長中で、増収要因は転移性尿路上皮がんの一次治療(1L mUC、米国2023年12月承認)の浸透と、米国で2025年11月に承認されたシスプラチン不適応の筋層浸潤性膀胱がん(MIBC)術前術後補助療法の立ち上がりです。

次の成長ドライバーはMIBCの適応拡大で、2026年7月13日には米国でシスプラチン適応の有無を問わない形に広がりました(第Ⅲ相EV-304試験)。欧州でも2026年6月にシスプラチン不適応のMIBCで承認を取得し、日本は申請中。さらに膀胱温存療法(EV-309)の第Ⅲ相試験も始まっています(出典:アステラス製薬 2026年3月期決算短信2026年7月13日プレスリリース)。

VYLOY — 胃がん市場への参入

VYLOY(ゾルベツキシマブ)は胃がん治療薬で、2026年3月期の売上は631億円(前期比+415.6%)と前年比5倍以上の急拡大を記録。CLDN18.2陽性のHER2陰性胃がんを対象とした初の標的治療薬として、グローバルでの上市が進んでいます。

業績推移と財務分析

アステラスの業績は、2024年3月期に大型の減損損失や一時費用で急落した後、2026年3月期に劇的なV字回復を遂げました。

通期業績推移(売上収益・営業利益・営業利益率)

出典:決算短信・有価証券報告書・IR資料よりKabuGraph作成。2027/3(予)は会社予想。2024/3〜2025/3の営業利益急落はAT808・エベレンゾ・IZERVAY等の減損と一時費用の影響

EPS・配当金の推移

EPS・1株配当金の推移

出典:決算短信・有価証券報告書・IR資料よりKabuGraph作成。EPSは小数点以下を四捨五入、配当性向は決算短信の公表値。2024/3のEPS 9.51円に対し配当70円(配当性向736%)と業績悪化時にも減配せず。2027/3(予)は会社予想

注目すべきは、業績が大幅に悪化した2024年3月期・2025年3月期でも減配せず増配を続けた点です。配当性向は一時736%まで跳ね上がりましたが、株主還元への強い姿勢を示しています。2027年3月期は1株80円の予想で、これが実現すれば15期連続増配となります(2026年3月期の78円で14期連続)。配当利回りは3.4%(2026年3月期実績78円、2026年9月15日終値2,315円ベース。2027年3月期予想80円なら3.5%)と魅力的な水準です。

2027年3月期 第1四半期 — 売上+26.7%・営業利益+94.9%の好スタート

2026年8月5日に開示された第1四半期(2026年4〜6月の3ヶ月)は、売上収益6,409億円(前年同期比+26.7%)、営業利益1,845億円(同+94.9%)と大幅な増収増益でした。営業利益率は前年同期の18.7%から28.8%に上昇し、親会社帰属四半期利益は1,418億円(同+107.3%)と2倍超です。

項目

2027年3月期 1Q(3ヶ月)

前年同期比

売上収益

6,409億円

+26.7%

コア営業利益

2,214億円

+55.6%

営業利益(フルベース)

1,845億円(営業利益率28.8%)

+94.9%

親会社帰属四半期利益

1,418億円(EPS 79.15円)

+107.3%

重点戦略製品(5品計)

1,603億円(PADCEV 755・IZERVAY 272・XOSPATA 216・VYLOY 211・VEOZAH 149)

+43.2%(PADCEV +36.0%、IZERVAY +70.3%、VYLOY +50.7%)

XTANDI

2,766億円

+18.7%

通期予想(据え置き)

売上収益2兆2,200億円・営業利益3,950億円・純利益3,000億円・年間配当80円

1Q進捗率:売上28.9%、営業利益46.7%

好調の中身は次の3点です(出典:アステラス製薬 2027年3月期 第1四半期決算短信)。

  • 重点戦略製品とXTANDIの同時伸長:重点戦略5品計は1,603億円(+43.2%)で、PADCEVは1L mUCの浸透と米国MIBCの立ち上がり、VYLOYはClaudin 18検査の浸透が寄与。XTANDIも2,766億円(+18.7%)とグローバルで増収

  • 円安の追い風:期中平均レートは1ドル159円(前年同期145円)・1ユーロ185円(同164円)で、前年同期のレートを適用した場合と比べ売上収益で600億円、コア営業利益で255億円の押し上げ

  • 「その他の費用」の減少:前年同期の213億円から43億円に縮小し、フルベースの営業利益の伸び(+94.9%)がコア営業利益の伸び(+55.6%)を上回る要因に。ただし会社は通期で減損リスクや組織改編費用など約800億円の「その他の費用」を織り込んでおり、営業利益の1Q進捗率46.7%をそのまま上振れ余地と読むのは早計

投資家が注目すべきポイント

強み① 重点戦略製品の急成長

PADCEV、VYLOY、IZERVAY、VEOZAH、XOSPATAの5品合計は4,803億円(前期比+43%)に達しました。特にVYLOYは前期比5倍超、PADCEVは+35%と高い成長率を維持しています。これらの製品がXTANDI特許切れ後の収益を支える柱に育ちつつあります。

強み② 営業利益832%増のV字回復力

2024年3月期の大型減損ショックから、わずか2年で営業利益3,826億円まで回復しました。このV字回復力は、XTANDIの安定した基盤収益と重点製品の成長の両方が機能していることを示しています。

強み③ 業績悪化時にも減配しない株主還元姿勢

EPS10円の2024年3月期でも配当70円を維持。2026年3月期の78円で14期連続増配となり、2027年3月期予想の80円では15期連続の見込みで、配当利回り3.4%(2026年9月15日終値・実績78円ベース)は製薬セクターの中でも魅力的な水準です。


リスク① XTANDIの特許切れ

売上の約45%を稼ぐXTANDIの米国特許は2027年以降に満了を迎えます。ジェネリック参入による売上減少は避けられず、重点戦略製品の成長がこれを上回るかが最大の焦点です。ジェネリック参入後、XTANDIの売上が3〜5年で半減するシナリオでは約4,000〜5,000億円の減収インパクトとなります。

特許満了より先に効いてくるのが米国の薬価制度です。2027年1月からはIRA(インフレ抑制法)に基づくメディケアの交渉薬価がXTANDIに適用され、会社は2027年3月期のXTANDI売上を9,100億円(前期比約500億円減)と見込んでいます。減収は主にこのIRAの影響によるものです(出典:アステラス製薬 2025年度決算説明会資料)。

リスク② パイプラインの臨床試験リスク

遺伝子治療プログラムAT808やIZERVAYなど、開発・買収した資産の減損で2024年3月期・2025年3月期の業績が急落した記憶は新しく、創薬の不確実性は常に存在します。5カ年計画の達成はパイプラインの成功に大きく依存しており、後期臨床試験の結果次第で評価が大きく変わります。

リスク③ PER14.2倍は割安か

現在のPER14.2倍(2026年9月15日終値2,315円÷2026年3月期実績EPS 162.77円。2027年3月期予想EPS 167.46円では13.8倍、PBR 2.27倍)は製薬セクターとしてはやや低めですが、これはXTANDI特許切れによる将来の減益リスクを市場が織り込んでいるためと考えられます。株価が「割安」に見えるのは、成長性に対する市場の慎重な評価の裏返しです。

まとめ

アステラス製薬は、2024年3月期の業績急落からの劇的なV字回復を遂げ、PADCEV・VYLOYなど重点戦略製品の急成長が次の成長ステージへの布石を打っています。

最大の投資テーマはXTANDI特許切れ後の成長シナリオです。重点戦略5品の合計売上4,803億円はまだXTANDIの半分であり、今後数年間の成長ペースが株価の方向性を決めます。

配当利回り3.4%(2026年9月15日終値・実績78円ベース)と14期連続増配(2026年3月期まで)の実績は、業績の不確実性を受け入れながら長期保有する投資家にとっての安心材料です。2027年3月期第1四半期は売上+26.7%・営業利益+94.9%と好スタートを切りましたが、円安の追い風が大きく、2027年1月からのIRA適用と9月の米国政府との薬価合意の影響はこれから表れます。パイプラインの進捗、PADCEVの適応拡大、米国薬価政策の3点に注目して投資判断をすべき局面です。

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アステラス製薬

山之内製薬と藤沢薬品の合併により誕生した国内大手製薬企業。泌尿器・腎移植領域の免疫抑制剤「プログラフ」で世界的に知られ、前立腺がん治療薬「イクスタンジ」や尿路上皮がん治療薬「パドセブ」などオンコロジー領域にも強みを持つ。米国・欧州・アジアに…

コラム著者・編集者

K

KabuGraph編集部

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