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カーブアウトとスピンオフの違い|ソニーFG・JX金属・カーブスの実例で比べる対価・資本関係・税金

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M&Aや株式市場でいうカーブアウトは、切り出した事業や子会社の株式を買い手や市場の投資家に売り、親会社が対価(多くは現金)を受け取る手法です。スピンオフは、子会社の株式を親会社の既存株主に持株数に応じて無償で配る手法で、親会社には現金が入りません。

どちらも「事業を本体から切り離す」点は同じで、違いは切り出した株を「売る」か「株主に配る」かにあります。この違いから、分離後の親会社との資本関係、税金の扱い、株主の手元に何が届くかが分かれます。

ただし「カーブアウト」は、子会社を上場させて株を市場で売る「エクイティ・カーブアウト(子会社上場)」の意味でも使われ、スピンオフとよく混同されます。また、株式市場や税制でいうスピンオフは、株を株主に配って親会社の持分をなくす手法で、親会社との資本関係は原則として残りません(一部を残すパーシャルスピンオフでも20%未満)。

この記事では、経済産業省の指針と税制上の定義に沿って3つの手法を並べ、ソニーフィナンシャルグループ、JX金属、カーブスホールディングスの実例と、株主から見た影響の違いまで整理します(制度は2026年9月時点)。

カーブアウトとスピンオフの違いを一覧で比較

経済産業省の「事業再編実務指針」(2020年)p.92〜93は、事業を切り出す手法ごとに「特定の売却先が必要か」「対価を受け取るか」などを比較表で整理しています。これに沿って、売却型のカーブアウト、エクイティ・カーブアウト(子会社上場)、スピンオフを観点ごとに並べると次のとおりです。

  • 切り出した株の行き先

    • 売却型カーブアウト:特定の買い手(ファンド・事業会社)

    • 子会社上場:株式市場の投資家(IPO)

    • スピンオフ:親会社の既存株主(持株数に応じて)

  • 親会社が受け取る対価

    • 売却型カーブアウト:あり(売却代金)

    • 子会社上場:あり(売り出した株の代金)

    • スピンオフ:なし

  • 親会社の株主が受け取るもの

    • 売却型カーブアウト・子会社上場:なし

    • スピンオフ:子会社(新会社)の株式

  • 分離後の親会社の持分

    • 売却型カーブアウト:0%(全株を売った場合)

    • 子会社上場:売り出さなかった分が残る

    • スピンオフ:0%(パーシャルスピンオフは20%未満)

  • 親会社の税金

    • 売却型カーブアウト・子会社上場:売却益に法人税

    • スピンオフ:要件を満たせば譲渡損益の課税を繰り延べ

  • 株主の税金

    • 売却型カーブアウト・子会社上場:かからない

    • スピンオフ:要件を満たせばみなし配当課税の対象外(取得価額を按分)

  • 切り出した会社の上場

    • 売却型カーブアウト:上場は前提でない(買い手の傘下へ)

    • 子会社上場:上場する

    • スピンオフ:法律上は必須でないが、上場会社のスピンオフでは通常上場

  • 国内の例

    • 売却型カーブアウト:オリンパス→エビデント(2023年)

    • 子会社上場:ENEOS→JX金属(2025年)

    • スピンオフ:コシダカ→カーブス(2020年)、ソニー→ソニーFG(2025年、パーシャル)

出典:経済産業省「事業再編実務指針」「『スピンオフ』の活用に関する手引(制度編)」、各社開示資料よりKabuGraph作成

出典:経済産業省「事業再編実務指針」参考資料5.3-1、同「『スピンオフ』の活用に関する手引(制度編)」よりKabuGraph作成

見分けるときは、「親会社に現金が入るか」と「親会社の株主に新しい株が届くか」の2点を見れば足ります。現金が入って株主の手元が変わらなければカーブアウト、現金が入らず株主に株が届けばスピンオフです。

「カーブアウト」は複数の意味で使われる

「カーブアウト」という言葉は、文脈によって違う意味で使われます。代表的な使われ方は次の4つです。

  • 広い意味の「切り出し」

    • 意味:事業売却・子会社上場・スピンオフを含む、事業の切り出し全般

    • スピンオフとの関係:スピンオフも含まれる

  • 売却型(M&Aでよく使われる意味)

    • 意味:事業や子会社をファンド・事業会社に売る

    • スピンオフとの関係:別の手法(対価の有無が違う)

  • エクイティ・カーブアウト

    • 意味:子会社を上場させ、株を市場で売る(子会社上場)

    • スピンオフとの関係:別の手法(対価の有無・新しい株主が違う)

  • スタートアップ創出型

    • 意味:大企業の中で事業化できない技術を別会社にし、外部資金を入れて育てる

    • スピンオフとの関係:別の文脈(新規事業・起業)

出典:経済産業省「事業再編実務指針」(2020年)、同「起業家主導型カーブアウト実践のガイダンス」(2024年)よりKabuGraph作成

経済産業省の指針は切り出し全般を「事業の切出し」と呼び、その中で事業売却、スピンオフ、エクイティ・カーブアウトを別々の手法として扱っています(事業再編実務指針 p.20・92〜97)。同じ指針が引用する経済同友会の提言では「低収益事業の切り出し(カーブアウト)」という表現も使われており、カーブアウトを切り出し全般の意味で使う例もあります(同 p.25)。

一方、2024年の「起業家主導型カーブアウト実践のガイダンス」p.8は、スタートアップ創出型のカーブアウトについて、子会社やプロジェクトを切り出すという意味の「カーブアウト」とは異なる概念だと明記しています。

投資のニュースで「カーブアウト」と出てきたら、売却なのか、子会社上場なのか、スタートアップの設立なのかを開示資料で確かめるのが確実です。

スピンオフ後も親会社との資本関係は残るのか

日本のビジネス用語では、「親会社との資本関係を維持するのがスピンオフ、資本関係を断つのがスピンアウト」という使い分けが広く使われています(例:三井住友DSアセットマネジメント「わかりやすい用語集」カーブアウト)。ただし、株式市場や税制でいうスピンオフとは、資本関係の扱いが逆になります。

経済産業省はスピンオフを「既存の子会社の株式又は切り出した事業を承継させた子会社の株式を、親元会社の既存の株主に対して、その保有株式数に応じて交付することにより、当該子会社又は事業を切り離し、資本関係を含めて経営を独立させる手法」と定義しています(事業再編実務指針 p.94)。実際にスピンオフを行ったコシダカホールディングスも、株主向けの案内で「本スピンオフ実施後、当社とカーブスホールディングスの資本関係はなくなります」と明記しました(コシダカHD 2019年10月10日開示 p.3)。

株主から見れば、同じ株主が親会社と新会社の両方を持つので「つながり」は残りますが、親会社そのものが新会社の株を持ち続けるわけではありません。例外は親会社が20%未満を残せるパーシャルスピンオフです。スピンアウトとの使い分けはスピンアウトとスピンオフの違いで詳しく扱います。

エクイティ・カーブアウト(子会社上場)とスピンオフの違い

子会社が独立した上場会社になる、という結果だけを見ると、エクイティ・カーブアウトとスピンオフは似ています。経済産業省は両者を「資本関係を含めて独立させる手法」と位置づけ、比較表ではどちらも特定の売却先は「不要」としています。違いは対価の受領で、エクイティ・カーブアウトは「あり」、スピンオフは「なし」です(事業再編実務指針 p.92〜93)。

  • 対価:子会社上場では、親会社が持ち株を売り出して代金を得ます。子会社が新株を発行した分の資金は子会社に入ります。スピンオフでは親会社に現金は入りません

  • 新しい株主:子会社上場では、IPOで株を買った市場の投資家が新たに株主になります。スピンオフでは、親会社の株主がそのまま子会社の株主になります

  • 親会社の持分:子会社上場では売り出さなかった分が残り、過半数を持っていれば上場子会社(親子上場)になります。スピンオフでは0%(パーシャルスピンオフでも20%未満)です

  • 税金:子会社上場の売出しで出た売却益には法人税がかかります。スピンオフは要件を満たせば、親会社の譲渡損益課税が繰り延べられ、株主もみなし配当課税の対象外になります(スピンオフの活用に関する手引 p.3)

上場子会社は「過渡的な形」とされている

経済産業省は、子会社上場の後に上場子会社として残る状態を「過渡的形態」と位置づけ、少数株主との利益相反リスクに十分留意するよう求めています(事業再編実務指針 p.92・97〜98)。親会社と、子会社の一般株主との間で利害がぶつかりやすいためです。上場させる時点で、最終的に非子会社化する方針やその期間を示すことが望ましいともしています。

指針は、日本では長く上場子会社の形が固定化されがちだったことにも触れています。親子上場の構造と問題点は次の記事で解説しています。

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最近の例では、ENEOSホールディングスが2025年3月のJX金属の上場で持分を100%から42.4%に下げ、JX金属を連結子会社から持分法適用会社に変えました(ENEOS HD 2025年2月14日開示)。2026年6月にはJX金属の自己株式公開買付けに応じて、持分を42.38%から35.28%に下げています(ENEOS HD 2026年6月18日開示)。上場時に全株を売らず、段階的に手放していく進め方です。

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J
5016鉄鋼・非鉄

JX金属

半導体・情報通信分野に不可欠な先端材料の開発・製造・販売を主力とする非鉄金属企業。半導体用スパッタリングターゲットと圧延銅箔を主力製品とし、銅やレアメタルの資源開発から製錬・リサイクルまで、上流から下流をつなぐサプライチェーンを構築している…

パーシャルスピンオフとの違い

親会社が株の一部を持ち続ける点では、パーシャルスピンオフも子会社上場と似ています。違いは、パーシャルスピンオフでは子会社株の80%超を株主に無償で配り、親会社が残せるのは20%未満に限られることです。ほかの観点も含めて並べると次のとおりです。

  • 親会社に残る持分

    • エクイティ・カーブアウト:売り出さなかった分(上限なし)

    • パーシャルスピンオフ:20%未満

  • 親会社に入る現金

    • エクイティ・カーブアウト:あり(売出し分)

    • パーシャルスピンオフ:なし

  • 新たに株主になる人

    • エクイティ・カーブアウト:市場の投資家

    • パーシャルスピンオフ:親会社の既存株主

  • 税金の特例

    • エクイティ・カーブアウト:なし(売却益に課税)

    • パーシャルスピンオフ:要件を満たせば課税繰り延べ・みなし配当課税の対象外

  • 特有の手続き

    • エクイティ・カーブアウト:上場審査・株式の売出し

    • パーシャルスピンオフ:産業競争力強化法に基づく事業再編計画の認定

出典:経済産業省「『スピンオフ』の活用に関する手引(制度編)」(2026年5月)よりKabuGraph作成

パーシャルスピンオフ税制は2023年度の税制改正で創設され、2026年度の改正で期限の定めのない措置になりました(スピンオフの活用に関する手引 p.7)。パーシャルスピンオフで認められる範囲を超えて一部を持ち続けたり、株主に配らずに他者へ売ったりすると、税制上の適格要件を満たさなくなります(同 Q38、p.41〜42)。税制の詳細はスピンオフ税制とはにまとめています。

大きな事業ほど「売却以外」が選ばれやすい

事業再編実務指針によると、2017年以降に完了した欧米の切り出し取引のうち、スピンオフやエクイティ・カーブアウトなど第三者への売却以外の手法は、件数では約4%にとどまる一方、金額では約30%を占めます。20億ドル相当以上の案件に限ると、件数で約30%、金額で約45%です(事業再編実務指針 p.97 脚注184。研究会委員の意見書に基づく数値)。

指針はその理由として、事業が大きくなるほど買い手を見つけにくくなることや、独立した上場企業として成り立ちやすくなることを挙げ、スピンオフを「切り出す事業の規模が大きく、売却先を見出すことが困難な場合」などに適した手法としています(同 p.96〜97)。一方で、会社に現金が入らないことが、日本でスピンオフが使われにくい理由として指摘されています(同 p.96)。

どの手法を選ぶか:向いている場面と注意点

経済産業省の指針は、切り出す目的、資金確保の必要性、取引の時間軸、売却先の状況などに応じて手法を選ぶよう求めています(事業再編実務指針 p.92)。指針と手引の記述をもとに、企業から見た向き・不向きを整理すると次のとおりです。

  • 売却型カーブアウト

    • 向いている場面:現金が必要で使い道が決まっている。条件の合う買い手がいる

    • 注意点:売却益に法人税がかかる。全株を売れば、親会社は事業に関与できなくなる

  • エクイティ・カーブアウト(子会社上場)

    • 向いている場面:一度に全部は売りにくく、上場させてから段階的に手放したい

    • 注意点:売出しの売却益に法人税がかかる。上場子会社の間は少数株主との利益相反に注意が必要で、非子会社化の方針や期間を示すことが望ましいとされる

  • スピンオフ(パーシャルを含む)

    • 向いている場面:事業の規模が大きく、売却先が見つけにくい。従業員が独立を望んでいる。課税負担なく切り離したい

    • 注意点:親会社に現金が入らない。親会社が残せるのは20%未満で、パーシャルスピンオフには事業再編計画の認定が必要

出典:経済産業省「事業再編実務指針」p.92・96〜98、同「『スピンオフ』の活用に関する手引(制度編)」p.3・7よりKabuGraph作成

現金を得たいなら売却、段階的に手放すなら子会社上場、大きな事業を課税負担なく切り離すならスピンオフ、というのが大まかな使い分けです。

事例で比較:ソニーFGは子会社上場とスピンオフを両方経験した

同じ会社で2つの手法を見比べられるのが、ソニーグループの金融子会社ソニーフィナンシャルグループ(旧ソニーフィナンシャルホールディングス)です。2007年に子会社上場、2020年にTOBで完全子会社に戻し、2025年にパーシャルスピンオフで切り離しました。

出典:ソニーフィナンシャルホールディングス 2020年5月19日開示、同社「グループの沿革」、経済産業省 2024年2月14日発表よりKabuGraph作成

経緯とソニーの持分の推移は次のとおりです。

  • 2004年4月:金融持株会社として設立。ソニーの持分は100%

  • 2007年10月:東証一部に上場。新株発行と、ソニー保有株の売出し(エクイティ・カーブアウト)。ソニーの持分は60.00%

  • 2020年:ソニーが1株2,600円でTOB。8月に上場廃止、9月に完全子会社化。ソニーの持分は65.04%→100%

  • 2025年:9月29日にプライム市場へ上場。10月1日に株式の80%超をソニーの株主へ現物配当(パーシャルスピンオフ)。ソニーの持分は20%未満

出典:ソニーフィナンシャルホールディングス 2020年5月19日開示、ソニーフィナンシャルグループ「グループの沿革」・個人投資家向け説明会資料、経済産業省 2024年2月14日発表よりKabuGraph作成

2007年の上場の狙いは、各事業の拡大期を見据えて「経営の透明性を高め、独自に市場からの資金調達手段を確保すること」でした。ところが2020年には、上場会社として独立性に配慮する必要から、人材交流や経営インフラの共有に制約があるとして、ソニーが親子上場を解消しています(ソニーフィナンシャルHD 2020年5月19日開示 p.6〜7、同社 グループの沿革)。

2025年の切り離しは、経済産業省が「我が国企業による初めてのパーシャルスピンオフによる事業再編計画の認定案件」と発表した案件で、ソニーFGの発行済株式の80%超をソニーの株主に現物配当する計画でした(経済産業省 2024年2月14日発表)。上場は2025年9月29日、効力発生日は同年10月1日です(ソニーFG 個人投資家向け会社説明会資料(2026年3月)p.8、同(2026年9月)p.20)。

2007年はソニーに売出し代金が入り、2020年はソニーが買付代金を払い、2025年はソニーに現金が入らず株主に株が配られました。手法の違いが、そのまま親会社の現金の出入りに表れています。

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ソ
8729金融(除く銀行)

ソニーフィナンシャルグループ

ソニーフィナンシャルグループは、ソニー生命(ライフプランナーによる対面型生命保険)、ソニー損保(インターネット型自動車・火災・医療保険)、ソニー銀行(ネット銀行による預金・ローン・投信・FX)、ソニー・ライフケア(介護事業)で統合金融サービ…

そのほかの国内事例

手法ごとの国内事例は次のとおりです。

  • オリンパス→エビデント(2023年4月):売却型カーブアウト。2022年4月に科学事業を子会社エビデントへ承継させ、その全株式をベインキャピタルへ譲渡。オリンパスは医療分野に経営資源を集中

  • ENEOS→JX金属(2025年3月):エクイティ・カーブアウト。上場時の売出しでENEOSの持分は100%→42.4%。2026年6月に35.28%へ

  • コシダカ→カーブス(2020年3月):スピンオフ。カラオケ事業とカーブス事業を分離。コシダカ株1株につきカーブス株1株を交付し、資本関係は解消

出典:オリンパス 2022年8月29日発表、ベインキャピタル 2023年4月3日発表、ENEOSホールディングス 2025年2月14日・2026年6月18日開示、コシダカホールディングス 2019年10月10日開示、カーブスホールディングス「沿革」よりKabuGraph作成

オリンパスは、売却の理由を「エビデントの事業の特性に合った機動的かつ柔軟な意思決定を可能にすること」と説明しています(オリンパス 2022年8月29日発表)。ベインキャピタルによる全株式の取得は、2023年4月3日に完了しました(ベインキャピタル 2023年4月3日発表)。

カーブスホールディングスは、コシダカHDからのスピンオフで2020年3月に単独上場しました(コシダカHD 2019年10月10日開示、カーブスHD 沿革)。2017年度に創設されたスピンオフ税制を使った国内第1号とされる案件で、経済産業省の指針も2020年7月時点のスピンオフの活用実績を「1件」と記しています(事業再編実務指針 p.96)。

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7085情報通信・サービスその他

カーブスホールディングス

女性専用30分フィットネス「カーブス」をフランチャイズ中心に全国展開するフィットネス事業持株会社。会員数は約88万人規模に達し、1回30分の独自プログラム(筋力トレーニング・有酸素運動・ストレッチの組み合わせ)で運動習慣のない女性やシニア層…

株主から見た影響の違い

同じ「切り出し」でも、親会社の株主の手元で起きることは手法によってまったく違います。

スピンオフ:新会社の株が届くが、親会社の株価はその分下がる

  • 基準日に親会社株を持っていれば、手続きなしで新会社の株が届きます。コシダカの例では、コシダカ株1株につきカーブス株1株でした(コシダカHD 開示 p.3)

  • 権利落ち日には、理論上、配られた新会社株の価値の分だけ親会社の株価が下がります。コシダカも「理論的には、権利落ち日に中間期末配当に加え、カーブスホールディングス株式の価値相当分だけ当社株式価値が調整されます」と案内していました(同 p.6)。株主の資産が増えるわけではなく、同じ価値が2社に分かれると考えるのが基本です

  • 税制適格ならみなし配当課税はかからず、元の取得価額を「分配資産割合」で親会社株と新会社株に按分します。課税は売却するときまで繰り延べられます(スピンオフの活用に関する手引 p.9)

  • 税制適格のスピンオフでは、特定口座やNISA口座で親会社株を持っていた場合、新会社の株も同じ口座で保管されます(同 Q13)

  • 2025年9月16日施行の東証の規則改正で、新会社株は親会社株の権利落ち日から上場できるようになりました(東京証券取引所 2025年4月3日公表)。ソニーFGは効力発生日の10月1日より前、9月29日に上場しています

  • 上場直後は、配られた株の売却などで需給が崩れることがあります。ソニーFG自身も、上場直後の需給要因による株価変動に言及しています(ソニーFG 個人投資家向け会社説明会資料(2026年9月)p.21)

売却型カーブアウト:株主の手元は変わらない

  • 株主には何も届かず、株主の税金も発生しません

  • 親会社は売却代金を受け取り、売却益には法人税がかかります。コシダカも、一般的な株式売却で子会社を分離すると売却益に課税が生じる点を、スピンオフを選んだ理由の1つに挙げています(コシダカHD 開示 p.4)

  • 株主として見るべきは、売却価格が妥当かと、代金を何に使うか(成長投資・借入返済・株主還元)です

エクイティ・カーブアウト:親会社の株主と、子会社に投資する人で見方が違う

  • 親会社の株主には何も届きません。子会社株を持ちたければ、IPOや上場後の市場で買うことになります

  • 親会社は売出し代金を得ます。ENEOSはJX金属の上場について、事業ポートフォリオ転換に必要な投資や株主還元を「機敏かつ確実に実行することが可能」になると説明しました(ENEOS HD 2025年2月14日開示 p.2)

  • 上場子会社の株を買う投資家は、親会社との利益相反に加え、のちに親会社がTOBで完全子会社化する可能性も織り込む必要があります。ソニーFHは2020年にソニーのTOBを受けて上場廃止になりました

まとめ

  • カーブアウトは子会社株を「売る」手法で、親会社に現金が入る。スピンオフは子会社株を株主に「配る」手法で、親会社に現金は入らない

  • エクイティ・カーブアウト(子会社上場)は株を市場で売る方法。親会社が過半数を残すと上場子会社になり、経済産業省はこれを「過渡的形態」と位置づけている

  • スピンオフは資本関係を含めて独立させる手法。親会社が残せるのは、パーシャルスピンオフでも20%未満

  • 税金は、売却・売出しでは親会社の売却益に課税、スピンオフは要件を満たせば課税の繰り延べ・みなし配当課税の対象外

  • 「スピンオフ=資本関係を維持」は日本のビジネス用語での一般的な使い方で、株式市場・税制上のスピンオフ(資本関係を切る)とは意味が逆になる

カーブアウトの実務や、スピンアウトとの違いは次の記事で詳しく解説しています。

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コラム著者・編集者

K

KabuGraph編集部

KabuGraph編集部は、投資情報の発信と株式分析ツールの開発に携わるチームです。日本株・米国株の事業分析から、投資に役立つ情報をわかりやすくお届けします。

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