カーブアウトとは|日立22社→0社の実例に学ぶ事業切り出しの手法と実務

カーブアウト(Carve-out)は、企業グループや会社の中から特定の事業・子会社を切り出し、売却や独立によって別組織として分離するM&A手法です。英語の「carve out」は「切り出す・えぐり出す」を意味し、会社全体ではなく事業の一部だけを取引の対象にする点が通常のM&Aとの違いです。
日立製作所は、2009年3月時点で22社あった上場子会社を、同年の経営危機以降に段階的に売却・完全子会社化し、2022年度にゼロにしました。この大規模なカーブアウトに加え、デジタル・エネルギー領域への集中投資で企業価値を大きく引き上げました。オリンパスは科学事業をベインキャピタルに約4,276億円で売却し、医療機器専業へ転換しています。国内のカーブアウト件数は2015年の329件から2024年には417件に増加しており(EY Japan)、東証のガバナンス改革やアクティビストの要求を背景に今後も増えると見込まれます。
本記事では、カーブアウトの定義・3つの法的スキーム・スピンオフとの違い・実施プロセス・日本企業の代表的事例・TSA(移行サービス契約)の実務まで、投資家が知っておくべき全体像を解説します。
この記事の内容(目次)
カーブアウトの定義と基本構造
カーブアウトを一言でいえば、「企業が自社グループ内の事業や子会社を切り出し、第三者への売却や株式市場への上場によって分離すること」です。
買い手が会社の全株式を取得する一般的な企業買収(M&A)と異なり、カーブアウトでは売り手側が「どの事業を切り出すか」を主導する点が特徴です。売り手は非中核事業を手放すことで経営資源をコア事業に集中させ、買い手は会社全体を買うリスクを負わずに欲しい事業だけを取得できます。
カーブアウトが行われる典型的な場面
コングロマリット・ディスカウントの解消——多角化企業が市場から事業単体の価値の合計より低く評価される現象を、事業の分離によって是正する
事業ポートフォリオの最適化——ROICの低い事業や成長ステージの異なる事業を切り離し、資本配分を高ROIC事業に集中させる
アクティビスト対応——株主から低収益事業の切り離しを要求された場合に、能動的な対応策として実施する
対象事業のさらなる成長——大企業の一事業部門のままでは経営の意思決定が遅くなりがちな事業を独立させ、成長を加速させる
カーブアウトの3つの法的スキーム
カーブアウトを実行する法的手法は大きく3つあり、それぞれ承継方法・税務・手続負担が異なります。
承継方法
事業譲渡:個別資産ごとに承継(契約・従業員・許認可を1つずつ移転)
会社分割:権利義務を包括承継(債権・債務・契約がまとめて移転)
子会社株式譲渡:既存子会社の株式を第三者に譲渡
主なメリット
事業譲渡:不要な債務・契約を除外できる。買い手の簿外債務リスクが小さい
会社分割:個別同意が原則不要。事業の一体性を維持しやすい
子会社株式譲渡:手続がシンプル。子会社がそのまま事業を継続
主な課題
事業譲渡:取引先・従業員の個別同意が必要。許認可は原則再取得
会社分割:債権者保護手続が必要。不要な債務も承継するリスク
子会社株式譲渡:事業が子会社として独立していない場合は事前の分社化が必要
事業譲渡
承継する資産・負債・契約を1つずつ選べるため、買い手にとって最もリスクを限定しやすい手法です。しかし取引先との契約や従業員の雇用契約について個別の同意が必要になるため、対象事業の規模が大きいほど手続負担が増大します。許認可は原則として再取得が必要であり、業種によっては取得に数ヶ月を要することもあります。
会社分割(吸収分割・新設分割)
権利義務を包括的に承継するため、取引先や従業員の個別同意なしで事業の一体性を維持したまま移転できる点が強みです。ただし債権者保護手続(官報公告・個別催告)が必要であり、最低でも1ヶ月の公告期間を要します。また、包括承継であるため不要な債務やリスクも一緒に移転するおそれがあります。
実務では「新設分割で対象事業を新会社に移した後、その新会社の株式を第三者に譲渡する」という二段階スキームがよく使われます。
子会社株式譲渡
対象事業がすでに子会社として独立している場合、親会社が保有する子会社株式を第三者に譲渡するだけで事業の移転が完了します。日立製作所が上場子会社の株式を順次売却したケースがこれに該当します。手続は最もシンプルですが、対象事業が親会社の一部門にとどまっている場合は、先に会社分割で分社化しておく必要があります。
スピンオフ・パーシャルスピンオフとの違い
広義のカーブアウトに含まれるスピンオフ・パーシャルスピンオフは、第三者への売却を伴わず、既存株主に子会社株式を分配して独立させる点がカーブアウト(売却型)との最大の違いです。
観点ごとに比べると次のとおりです。
分離方法
カーブアウト(売却型):事業譲渡・会社分割・株式譲渡で第三者に売却
スピンオフ:子会社株式の100%を既存株主に現物分配
パーシャルスピンオフ:子会社株式の80%超を既存株主に現物分配(20%未満を親会社が保有)
親会社の持分
カーブアウト(売却型):0%(完全売却)
スピンオフ:0%
パーシャルスピンオフ:20%未満
売却対価
カーブアウト(売却型):あり(買い手から売り手に資金が支払われる)
スピンオフ・パーシャルスピンオフ:なし(株主への現物配当)
税制優遇
カーブアウト(売却型):原則なし(譲渡益課税が発生)
スピンオフ:スピンオフ税制で親会社の譲渡損益課税を繰延べ、株主のみなし配当課税は対象外(平成29年〜)
パーシャルスピンオフ:パーシャルスピンオフ税制で同様(令和5年〜。令和8年度改正で期限の定めのない措置に)
代表事例
カーブアウト(売却型):日立金属→ベインキャピタル、オリンパス→エビデント
スピンオフ:コシダカHD→カーブスHD(2020年、国内初の適格スピンオフ)
パーシャルスピンオフ:ソニーG→ソニーフィナンシャルG(2025年、国内初のパーシャルスピンオフ)
スピンオフは売却対価を得られない代わりに、適格要件を満たせば税制優遇(譲渡損益課税の繰延べ・みなし配当課税の適用除外)を受けられるため、親会社は税負担なく事業を分離できます。一方、カーブアウト(売却型)は売却資金を成長投資に回せるメリットがあり、日立のように「売って→買う」ポートフォリオ転換に適しています。
パーシャルスピンオフは2023年度税制改正で創設された制度で、親会社が20%未満の持分を残せるため、分離後も一定の関与を維持しながら税制優遇を受けられる折衷案として注目されています。当初は時限措置でしたが、令和8年度(2026年度)税制改正で期限の定めのない措置になりました(経済産業省「『スピンオフ』の活用に関する手引(制度編)」p.7)。
ソニーグループは2024年2月に経済産業省から産業競争力強化法に基づく事業再編計画の認定を取得し、2025年10月にソニーフィナンシャルグループのパーシャルスピンオフを実施しました(日本経済新聞 2024年2月14日)。

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カーブアウトの実施プロセス
カーブアウトは通常、以下の4つのフェーズで進行します。全体の期間は案件規模により半年〜2年程度です。
フェーズ1:方針決定と対象事業の選定
経営陣が事業ポートフォリオの見直し方針を決定し、どの事業を切り出すか(What)と、どの手法で切り出すか(How)を検討します。スクリーニングの基準には、ROIC・成長性・シナジーの有無がよく使われます。経済産業省の「事業再編実務指針」(2020年)では、事業ポートフォリオマネジメントの仕組みを整備する重要性が強調されています。
フェーズ2:事業分離の準備
対象事業のカーブアウト財務諸表(Carve-out Financial Statements)を作成し、親会社との共有資源をどう切り分けるかを整理するスタンドアロン分析を行います(詳細は次セクション)。この段階で、法的スキーム、従業員の処遇方針、知的財産の帰属も決めます。
フェーズ3:買い手選定と交渉
売却型カーブアウトでは入札プロセスを通じて買い手候補を募ります。PEファンドが買い手になるケースが多いのは、事業の独立運営やバリューアップに関する知見が豊富なためです。買い手はデューデリジェンス(DD)で対象事業の財務・法務・税務・事業リスクを精査し、スタンドアロンコスト(独立運営に必要な追加費用)を買収価格に反映させます。
フェーズ4:クロージングとDay 1
最終契約(SPA)の締結、競争法審査(必要な場合)、債権者保護手続(会社分割の場合)を経てクロージングに至ります。Day 1(事業移転日)以降は、TSA(移行サービス契約)に基づいて売り手から買い手への業務移行が段階的に進むのが一般的です。
スタンドアロン課題とTSA——カーブアウト最大の実務論点
スタンドアロン・イシュー(Standalone Issue)は、カーブアウトの成否を左右する最大の実務課題です。親会社のグループ内で共有していた機能やサービスが、分離後に使えなくなることで生じるコスト増やオペレーション上の問題を指します。
スタンドアロン課題の5つの類型
管理部門機能——経理・人事・法務・総務など、親会社のシェアードサービスに依存していた業務を自前で構築する必要がある
ITシステム——基幹システム(ERP)、メール、ネットワークなど親会社のIT基盤からの切り離しは、最も時間とコストがかかる領域
ブランド・知的財産——親会社のブランド名を使用していた場合、移行期間後のリブランディングが必要。日立金属はプロテリアルに、オリンパスの科学事業はエビデントに名称を変えた
スケールメリットの喪失——親会社グループの購買力や共同物流を利用していた場合、独立後に調達コストが上昇する
施設・不動産——親会社所有のオフィスや工場を使用していた場合、移転または賃貸借契約の締結が必要になる
TSA(Transition Service Agreement・移行サービス契約)
スタンドアロン課題への対処として、売り手がクロージング後の一定期間、対象事業に対してITや管理業務などのサービスを有償で提供する契約がTSAです。買い手が自立した体制を構築するまでの「橋渡し」として機能します。
TSAの設計にはいくつかの原則があります。
期限を明確に設定する——恒久的なサービス提供にならないよう、6ヶ月〜2年程度の終了マイルストーンを定める
有償が原則——売り手は自社のリソースを提供するため、対価を受け取る。無償提供は売り手の撤退インセンティブを弱める
サービス内容を具体的に列挙する——「管理業務全般」のような曖昧な記載ではなく、会計処理・給与計算・ITヘルプデスクなどサービスごとに範囲・水準・終了条件を定める
日本企業のカーブアウト事例
ここでは、カーブアウトの代表的な成功事例を3つ取り上げます。
日立製作所——上場子会社22社→0社のポートフォリオ転換
日立は、2009年3月時点で22社あった上場子会社を、同年の経営危機を契機に段階的に売却・完全子会社化し、2022年度にゼロにしました(日立製作所 統合報告書2023 p.14)。最後まで残った日立金属は2022年12月に上場廃止になっています。親子上場の解消と事業の入れ替えを、2009〜2022年度の構造改革で同時に進めた大型の事例です。
主な売却は以下のとおりです。
日立化成→昭和電工(現レゾナック):2020年、昭和電工による買収総額約9,640億円のTOBに応じ、保有株(約51%)を約4,940億円で売却。半導体材料や電子部品を手がけていたが、日立のデジタル戦略との相乗効果が薄いと判断
日立金属→ベインキャピタル連合:2022年にTOBが成立(買収総額約8,166億円)、2023年に「プロテリアル」に社名変更して独立運営
日立工機→KKR:2017年にKKRへ売却。電動工具メーカーで、現在は工機ホールディングス(HiKOKIブランド)
日立国際電気→KKR:2017年にKKRがTOBを実施し、2018年6月に事業を2つに分けた
半導体製造装置:KKRのもとでKOKUSAI ELECTRICとなり、2023年に東証プライムへ上場
放送・通信:2020年に日本産業パートナーズが出資する会社がKKRの保有株を取得し、2023年12月に日清紡グループ入り。2024年12月に「国際電気」へ社名を変えた
一方で日立は、ABBのパワーグリッド事業を約7,400億円(80.1%。2022年に残りの19.9%も取得)、米GlobalLogicを約1兆円で買収し、「売って→買う」サイクルで事業構成を根本から組み替えました。
売上収益に対する調整後営業利益の比率(調整後営業利益率)は、次のように上がっています。
2016年3月期:約6.3%
2024年3月期:約7.8%
2026年3月期:約11.3%。日立が経営目標に使うAdj. EBITA率(調整後営業利益に買収で生じた無形資産等の償却費を足し戻した利益の比率)では12.4%
出典:日立製作所「2016年3月期 連結決算の概要」「2026年3月期 連結決算の概要」、2024年3月期 決算短信よりKabuGraph算出
オリンパス→エビデント——科学事業を4,276億円でベインキャピタルへ
オリンパスは2022年に科学事業を分社化し、2023年4月にベインキャピタルが新会社「エビデント(Evident)」の全株式を約4,276億円で取得しました(オリンパス 2022年8月29日開示、ベインキャピタル 2023年4月3日発表)。科学事業は顕微鏡や非破壊検査装置で世界的シェアを持っていましたが、オリンパスは医療機器専業への戦略集中を選択しました。カメラなどの映像事業(2021年1月に日本産業パートナーズへ譲渡)に続く大型カーブアウトです。
パナソニック ヘルスケア→PHCホールディングス——KKR傘下で上場を実現
パナソニック(当時)は2013年、ヘルスケア事業の株式の80%をKKRに約1,650億円で譲渡しました(残る20%はパナソニックが再出資)。独立直後の2014年度にEBITDA(調整後)は約80%増え、追加買収を経た2020年度には独立前の約4.4倍になりました。2021年には東証一部(現プライム)に上場を果たしています(経済産業省「対日M&A活用に関する事例集」p.18)。
この事例は、親会社の一部門として成長余地が限られていた事業が、PEファンドの経営支援と独立した意思決定権によって大きく成長した典型例であり、カーブアウトが対象事業にとっても売り手にとってもWin-Winになり得ることを示しています。
カーブアウトのメリットとデメリット
売り手(親会社)のメリット
コア事業への経営資源集中——非中核事業に配分されていた人材・資金・経営陣の関心をコア事業に振り向けられる
売却資金の獲得——得た資金を成長投資やM&A、株主還元に充当できる。日立はカーブアウトで得た資金をABBパワーグリッド事業やGlobalLogicの買収に投じた
コングロマリット・ディスカウントの解消——事業構成をシンプルにすることで、市場からの評価が改善する可能性がある
資本効率の改善——ROICの低い事業を切り離すことで、全社のROICやROEが構造的に改善する
買い手(PEファンド等)のメリット
簿外債務リスクの限定——事業譲渡スキームであれば、不要な債務を承継せずに済む
バリューアップの余地——大企業の一部門として制約されていた意思決定の速度や投資判断を改善し、成長を加速できる
デメリット・リスク
スタンドアロンコスト——親会社のシェアードサービスを自前で構築する費用が、当初想定より膨らむリスクがある
従業員の流出——売却先への移籍に抵抗を感じる人材が退職するリスク。特にキーパーソンの流出は事業価値を毀損する
取引先・顧客の離脱——親会社のブランドや信用力に依存していた取引関係が、分離後に見直されるおそれがある
売り手に残る事業への影響——切り出した事業とのシナジーが残存事業にも貢献していた場合、分離によって残存事業の収益性が低下する可能性がある
税務コスト——売却型カーブアウトでは譲渡益に法人税が課されるため、手取り額は売却価格を下回る。スピンオフの形をとっても、税制の適格要件を満たさなければ親会社の譲渡益に課税され、株主が受け取った株式も配当とみなされて課税される
PEファンドとカーブアウト
カーブアウト案件はPEファンドにとって中核的な投資対象の1つです。大企業の一部門として十分な経営資源を投入されていなかった事業を買い取り、独立した経営体制のもとでバリューアップを図って数年後にExitする——という投資モデルが確立されています。
PEファンドがカーブアウトに注力する理由
構造的なバリューアップ余地——親会社の戦略から外れていた事業に適切な経営資源と経営陣を投入するだけで、大幅な業績改善が見込める
競合が少ない——スタンドアロン課題やTSA交渉など実務が複雑なため、事業会社よりもPEファンドが買い手として有利。結果として買収価格が抑えられる傾向がある
LBOとの親和性——対象事業が安定したキャッシュフローを生んでいれば、LBO(レバレッジドバイアウト)による資金調達で自己資金比率を下げ、リターンを高められる
日本でもベインキャピタル(日立金属→プロテリアル、エビデント)、KKR(パナソニック ヘルスケア→PHC、日立工機→工機ホールディングス)、日本産業パートナーズ(オリンパス映像事業→OMデジタルソリューションズ)など、大手PEファンドによるカーブアウト案件が年々増加しています。

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カーブアウトに関連する制度・ガイダンス
日本では近年、政府・取引所がカーブアウトを含む事業ポートフォリオ改革を後押しする制度整備を進めています。
事業再編実務指針(経済産業省・2020年)
経済産業省が2020年7月に公表した「事業再編実務指針」は、日本企業の事業ポートフォリオ見直しが遅れている原因として「マネジメントの仕組みの不十分さ」「規模の維持・拡大を当然視する意識」「資本効率を重視する発想の希薄さ」を指摘し、取締役会が定期的に事業ポートフォリオを評価して必要な入替えを実行する体制の構築を求めました。
起業家主導型カーブアウト実践のガイダンス(経済産業省・2024年)
2024年4月に経済産業省が公表したこのガイダンスは、大企業の事業を起業家が引き受けてスタートアップとして独立させる「起業家主導型カーブアウト」の実践手法を示しています(経団連タイムス 2024年7月)。経団連は2027年までにスタートアップの数と成功レベルを10倍にする「10X10X」目標の重要施策として、大企業によるカーブアウト・スピンオフの加速を掲げています。
スピンオフ税制・パーシャルスピンオフ税制
2017年度(平成29年度)税制改正で創設されたスピンオフ税制は、適格要件を満たすスピンオフについて、親会社の譲渡損益課税を繰り延べ、株主のみなし配当課税を対象外にする制度です(経済産業省「『スピンオフ』の活用に関する手引(制度編)」p.3)。2023年度(令和5年度)改正で、親会社が20%未満の持分を残すパーシャルスピンオフも対象になりました。
パーシャルスピンオフ税制は、令和8年度(2026年度)税制改正で「期限の定めのない措置」になりました(手引(制度編・令和8年5月)p.7)。あわせて要件が見直され、自社が経営資源を集中させる事業に専念するための事業ポートフォリオの組替えにも使える形になっています。
改正前(令和6年度改正後)と現行(令和8年度改正後)の主な違いは次のとおりです。
適用期限
改正前:2028年3月31日までに事業再編計画の認定を受けること
現行:期限の定めなし
親会社に残す持分
改正前:発行済株式の20%未満
現行:発行済株式の20%未満(変更なし)
切り出す子会社の事業
改正前:主要な事業として「新たな事業活動」を行っていること
現行:親会社が経営資源を集中させる事業として特定した事業「以外」の事業であること
従業者の継続
改正前:おおむね90%以上が引き続き従事
現行:おおむね80%以上が引き続き従事
出典:経済産業省「『スピンオフ』の活用に関する手引(制度編)」令和7年7月版 p.7〜8・令和8年5月版 p.7〜8よりKabuGraph作成
現行でも、産業競争力強化法の事業再編計画の認定を受けることが前提です。認定では、親会社が集中する事業と切り出す子会社の事業の双方で生産性向上の目標達成が見込まれることが求められます(手引(制度編・令和8年5月)p.8)。改正前の要件は「『スピンオフ』の活用に関する手引(制度編)」令和7年7月版 p.7〜8に載っています。

スピンオフ税制とは|コシダカ初適用からソニーのパーシャルスピンオフまで制度と事例を解説
スピンオフ税制の仕組み・適格要件・課税繰延の効果を、2017年の制度創設から、2026年度改正で期限の定めのない措置になったパーシャルスピンオフ税制まで解説。コシダカHD→カーブスHD、ソニーG→ソニーFGの実例で株主の取得価額按分も説明します。
まとめ——投資家がカーブアウトを見る視点
カーブアウトは売り手・買い手・対象事業の三者にとってメリットがある一方、スタンドアロン課題への対処が不十分だと価値を毀損するリスクもある手法です。投資家として以下の視点で開示情報を読むことが重要です。
なぜこの事業を切り出すのか——コア事業との戦略的な距離は明確か。切り出しが「弱い事業を押し出しているだけ」なのか、「強い事業に集中するための戦略的選択」なのかで意味合いが変わる
売却資金の使途——売却で得た資金を成長投資に回すのか、負債返済に充てるのか、株主還元に使うのかで、株主価値への影響が大きく異なる
TSAの内容と期間——TSAが長期にわたる場合、分離が不完全で追加コストが発生する可能性がある
残存事業への影響——切り出した事業との間にあったシナジーが失われることで、残る事業の収益性が低下しないか
売却価格の妥当性——対象事業のEBITDAやDCFベースでのバリュエーションが開示されている場合、同業の取引事例と比較して妥当かを検証する
国内のカーブアウト件数は増加傾向にあり、東証のガバナンス改革やアクティビストの影響力拡大により、今後も大型カーブアウトが続くことが予想されます。事業ポートフォリオの「引き算」がもたらす企業価値の変化を読み解く力は、投資家にとって重要なリテラシーとなるでしょう。

MBO(マネジメント・バイアウト)とは|大正製薬7,100億円の事例に学ぶ仕組みと株主の選択肢
MBO(経営陣による買収)の仕組み・手続きの流れ・プレミアムの目安を解説。大正製薬やベネッセの事例、株主がとれる3つの選択肢、2025年施行の東証新ルールまで投資判断に必要な情報を網羅します。










