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スクイーズアウトで株価はどうなる?|豊田自動織機の実例で見るTOB価格への張り付きと入金時期・税金

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スクイーズアウトが予定されたTOB(株式公開買付け)が公表されると、株価はほぼ即日TOB価格のすぐ下まで上がり、上場廃止までその水準に張り付くのが一般的です。売らずに最後まで持っていても株が紙くずになるわけではなく、原則としてTOB価格と同額の現金が、上場廃止から約3か月後に支払われます。

例外は2つあります。価格の引き上げや対抗TOBが期待されるとTOB価格を上回って取引され、TOBが不成立・撤回になれば支えを失って下落しやすくなります。2025〜2026年の豊田自動織機では、TOB価格が16,300円→18,800円→20,600円と2度引き上げられ、最後の引き上げまでの間、株価はおおむねTOB価格より上で推移しました。

また、TOBを経ずに株式併合などで行うスクイーズアウトでは、株価は公表された対価に向かって動き、対価が株価より低ければ下がります。2026年のブイキューブは対価が1株10円となり、株価は3月末の120円から最終売買日の9円まで下がりました。

この記事では、TOB公表から上場廃止・入金までの各段階で株価がどう動くかを、KabuGraphの株価データと各社の開示資料で確かめます。スクイーズアウトの手法や会社法上の要件はスクイーズアウトとは、TOBの制度はTOB(株式公開買付)とはで解説しています。

結論:株価は「TOB価格のすぐ下」に張り付く

保有株にスクイーズアウト予定のTOBが出たとき、株価と東京証券取引所(東証)での扱いは段階ごとに次のように変わります。

  • TOB公表(対象会社の賛同表明)

    • 東証での扱い:監理銘柄(確認中)に指定(開始予定を先に公表するTOBでは開始時)

    • 株価の動き:TOB価格のすぐ下まで急伸

    • 株主ができること:市場で売る/持ち続ける

  • TOB期間中(20営業日以上)

    • 東証での扱い:監理銘柄(確認中)

    • 株価の動き:TOB価格の少し下で推移。引き上げ期待があれば上回ることも

    • 株主ができること:市場で売る/TOBに応募する/持ち続ける

  • TOB成立〜株式併合の総会決議・売渡請求の承認

    • 東証での扱い:決議・承認の日に整理銘柄へ

    • 株価の動き:ほぼ横ばい

    • 株主ができること:市場で売る/持ち続ける

  • 整理銘柄の期間(実例で2週間半〜1か月)

    • 東証での扱い:整理銘柄

    • 株価の動き:ほぼ横ばい(TOB価格の1%弱下)

    • 株主ができること:最終売買日まで市場で売れる

  • 上場廃止後

    • 東証での扱い:上場廃止

    • 株価の動き:市場価格なし

    • 株主ができること:持株は現金に置き換わる(TOB価格×株数が原則)

出典:東京証券取引所の監理・整理銘柄の指定通知、各社の適時開示よりKabuGraph作成

TOBの期間は、公開買付開始公告の日から20営業日以上60営業日以内と定められています(金融商品取引法施行令 第8条(e-Gov法令検索))。

東証は、上場会社がスクイーズアウトを前提とするTOBに賛同を表明すると、上場廃止になるおそれがあるとして、その銘柄を「監理銘柄(確認中)」に指定します(例:東証「監理銘柄(確認中)の指定:トーイン」)。開始予定を先に公表するTOBでは、実際にTOBが始まる時点で指定されます。豊田自動織機は開始を公表した2026年1月14日に指定されました(東証「監理銘柄(確認中)の指定:豊田自動織機」)。

TOB成立後、株式併合の議案が株主総会で承認されるか、株式等売渡請求が取締役会で承認されると、上場廃止基準に該当して「整理銘柄」に移ります(基準は東証「上場廃止基準の概要」)。2026年の実例では、承認・決議の当日に整理銘柄に指定され、その期間は2週間半〜1か月ほどで、最終売買日の翌営業日に上場廃止となりました(ジェイ・エス・ビー、ソラスト、サニーサイドアップグループの東証通知)。

KabuGraph作成(模式図)

実例:豊田自動織機の株価とTOB価格

2026年に上場廃止となった豊田自動織機(6201)で、実際の株価の動きを確認します。トヨタ不動産が設立した会社がTOBで株式を集め、株式併合でスクイーズアウトしました。上場廃止は2026年6月1日です。

豊田自動織機の株価(月末終値)とTOB価格

出典:東証株価(月末終値。2026年5月は最終売買日の5月29日)、トヨタ不動産・豊田自動織機の開示資料よりKabuGraph作成。TOB価格は各月末時点で公表済みの価格(2025年6月3日に16,300円、2026年1月14日に18,800円、3月2日に20,600円)

主な出来事を時系列で並べると、株価がTOB価格にどう反応したかがわかります。

  1. 2025年4月25日:引け後に非公開化の憶測報道。終値13,225円から翌営業日(4月28日)は16,225円へ22.68%上昇(豊田自動織機 2025年6月3日開示)

  2. 2025年6月3日:TOB価格16,300円での実施予定を公表。前営業日(6月2日)の終値18,260円を10.73%下回る価格で、会社は応募を推奨するかどうかについて中立の立場をとった(同開示)。株価は6月末に16,300円まで下落

  3. 2025年7〜12月:各国の競争法などの審査待ちで、2025年12月上旬を目指していたTOBの開始が延びる(2026年1月14日開示)。この間、株価は16,300円前後から次第にTOB価格を上回るようになり、12月30日の終値は17,800円

  4. 2026年1月14日:TOB価格を18,800円に引き上げ、1月15日からTOBを開始(同開示)

  5. 2026年3月2日:機関投資家との対話を踏まえ、「最終かつ最善の価格」として20,600円へ引き上げる意向を公表。株主のエリオット側(所有割合6.7%)とは、20,600円への引き上げを条件に応募契約を結んだ(トヨタ不動産)

  6. 2026年3月23日:TOBが終了し成立(3月24日開示)

  7. 2026年5月12日:臨時株主総会で株式併合を承認し、整理銘柄に。5月29日が最終売買日(終値20,450円)、6月1日に上場廃止。端数の売却代金(1株20,600円相当)は8月下旬ごろ交付の見込み(5月12日開示)

読み取れるポイントは2つです。市場が引き上げを見込んでいた間は、株価はTOB価格より上にありました。そして最終価格20,600円が決まった後は、株価はその1%ほど下に収まり、入金が近づくにつれて差が縮みました(3月末20,400円→4月末20,430円→5月29日20,450円)。

最終売買日の株価はTOB価格の0.7〜0.8%下

2026年に上場廃止となった4社の最終売買日の終値を、TOB価格(=スクイーズアウトの対価)と比べました。どの銘柄もTOB価格のわずかに下で最後の取引を終えています。

  • 豊田自動織機(株式併合):TOB価格20,600円、最終売買日2026/5/29の終値20,450円で−0.7%

  • ソラスト(株式併合):TOB価格1,119円、最終売買日2026/8/5の終値1,110円で−0.8%

  • ジェイ・エス・ビー(株式等売渡請求):TOB価格9,000円、最終売買日2026/9/1の終値8,940円で−0.7%

  • サニーサイドアップグループ(株式併合):TOB価格1,320円、最終売買日2026/9/15の終値1,309円で−0.8%

出典:東証株価、各社の適時開示、東京証券取引所「上場廃止等の決定」よりKabuGraph作成

TOB価格は豊田自動織機の開示、ソラストの開示、ジェイ・エス・ビーの開示、サニーサイドアップグループの意見表明によります。

最終売買日に買っても、現金が届くのは数か月先です。差が残るのは、その間の時間の価値と、手続きが予定どおり進まないわずかなリスクが差し引かれるためと考えられます。市場で売る場合、TOB価格ちょうどで売れることはまず期待できず、この1%弱の差をどう見るかが「売るか、持ち続けるか」の分かれ目になります。

TOB価格を上回る・大きく下回るのはどんなときか

上回る:価格の引き上げや対抗TOBが見込まれるとき

TOB価格が安すぎると市場が判断した場合、株価はTOB価格を上回ります。価格の引き上げや、より高い価格での別のTOB(対抗TOB)を見込んだ買いが入るためです。豊田自動織機のTOBは、公表前日の株価がすでにTOB価格を上回っていた「ディスカウントTOB」でした。株価はその後もTOB価格より上で推移し、TOB価格は実際に2度引き上げられました。

大きく下回る:不成立・撤回のおそれがあるとき

完全子会社化を目指すTOBには通常、「応募が一定数(買付予定数の下限)に届かなければ1株も買わない」という条件が付きます。また、TOBは原則として撤回できませんが、対象会社に重大な変更が生じたときなど法令で認められた場合には撤回されることがあります(金融商品取引法 第27条の11)。不成立や撤回になれば応募した株式は返還され(豊田自動織機のTOB開始の開示「株券等の返還方法」)、TOB価格という支えがなくなるため、株価は公表前の水準に向かって下落しやすくなります。

そのため、大株主が反対を表明している、下限が高い、審査が長引いているといった、成立が危ぶまれる案件では、株価とTOB価格の差が広がりやすくなります。

TOBを経ないスクイーズアウトでは、対価に向かって下がることもある

TOBを行わず、株式併合などでいきなりスクイーズアウトする案件もあります。親会社が上場子会社を完全子会社にする場合や(例:ジーフットの開示)、上場廃止が迫る会社がスポンサーの出資を受けて非上場になる場合です。株価は公表された対価に向かって動くため、対価が株価より低ければ下がります。

2026年のブイキューブは、純資産の上場維持基準を満たせず上場廃止が決まる中(東証「上場廃止等の決定:ブイキューブ」)、スポンサーの日本革新投資が設立した会社への第三者割当増資と株式併合で非上場になりました。対価は当初1株40円と想定されていましたが(3月31日の開示)、最終契約では1株10円に引き下げられ(5月18日の開示)、株価もそれに向かって下がりました。

主な日付と株価(終値)の推移は次のとおりです。

  • 2026/3/31(終値120円):対価1株40円(想定)での非上場化を発表

  • 2026/4/1(終値70円):発表後の最初の取引日

  • 2026/4/30(終値47円):上場廃止が決定し、整理銘柄に

  • 2026/5/18(終値21円):対価を1株10円とする最終契約を発表

  • 2026/6/30(終値9円):最終売買日(7月1日に上場廃止)

出典:東証株価、ブイキューブの適時開示、東京証券取引所「上場廃止等の決定:ブイキューブ」よりKabuGraph作成

代金は10月上旬に交付される予定です(ブイキューブ「臨時株主総会の決議結果に関するお知らせ」)。TOBがないので応募という選択肢はなく、最終売買日までに市場で売るか、持ち続けて対価を受け取るかの二択になります。

公表前に株価が動くこともある

報道が先行すると、公表前から株価が上がります。豊田自動織機は憶測報道の翌営業日に22.68%上昇し、ジェイ・エス・ビーも2026年3月23日の憶測報道の後、終値3,305円から2営業日で4,600円まで上がりました(ジェイ・エス・ビーの意見表明)。こうした値上がりの後に公表されるTOB価格は、直前の株価に対するプレミアム(上乗せ率)が小さく見えることがあります。ジェイ・エス・ビーのTOB価格9,000円は、公表前営業日の終値7,000円に対しては28.57%、報道前の3,305円に対しては172.31%の上乗せでした(同)。

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上場廃止まで持ち続けたら?現金はいつ・いくら届くか

TOBに応募せず、市場でも売らずに持ち続けた株は、スクイーズアウトで買収者に強制的に取得され、現金に置き換わります。上場廃止後もその会社の株を持ち続けることはできません(東芝の株主向けFAQ)。

持ち続けても、配当や株主優待は通常受けられません。スクイーズアウトを前提とするTOBでは、配当をしないものとしてTOB価格が決められ、対象会社が配当予想を無配に修正する例が多く見られます(豊田自動織機のTOB開始の開示、ジェイ・エス・ビーの意見表明)。株主優待も、非上場化の決定とあわせて廃止が発表されることがあります(ジーフット「株主優待制度の廃止に関するお知らせ」)。

受取額:原則はTOB価格と同額

買収者は、スクイーズアウトで株主に渡す金額をTOB価格×株数と同じになるように設定すると、TOBの段階から開示するのが通例です(例:ジェイ・エス・ビーの意見表明)。株式等売渡請求では「1株につき9,000円」のように対価そのものが示され(ジェイ・エス・ビーの開示)、株式併合では端数の売却代金がTOB価格×株数になるように売却額を設定すると示されます(豊田自動織機の開示)。

入金時期:上場廃止から約3か月(実例で2か月半〜4か月)が目安

実例の上場廃止日(株式等売渡請求は取得日)と現金の支払い時期は次のとおりです。

  • 東芝(株式併合):上場廃止 2023/12/20 → 支払い 2024年3月中〜4月上旬(予定)

  • シダックス(株式併合):上場廃止 2024/3/18 → 支払い 2024/6/25

  • タキロンシーアイ(株式等売渡請求):取得日 2024/10/31 → 支払い 2025年2月上旬〜3月上旬(予定)

  • 豊田自動織機(株式併合):上場廃止 2026/6/1 → 支払い 2026年8月下旬(見込み)

  • ソラスト(株式併合):上場廃止 2026/8/6 → 支払い 2026年11月下旬(見込み)

  • ブイキューブ(株式併合、TOBなし):上場廃止 2026/7/1 → 支払い 2026年10月上旬(予定)

出典:東芝・シダックスの株主向けFAQ、タキロンシーアイ・豊田自動織機・ソラスト・ブイキューブの開示よりKabuGraph作成。予定・見込みは各資料の公表時点

出典は東芝、シダックス、タキロンシーアイ、豊田自動織機、ソラスト、ブイキューブの各資料です。株式併合では、効力が発生して持株が1株未満の端数になった後、端数をまとめて買収者に売るために裁判所の許可が必要で(会社法 第234条2項・第235条(e-Gov法令検索))、その分だけ時間がかかります。株式等売渡請求は取得日に株式が買収者へ移りますが(会社法 第179条の9)、代金の支払事務にやはり数か月かかった例があります。

出典:ジェイ・エス・ビー・豊田自動織機・タキロンシーアイの開示資料、東芝・シダックスの株主向けFAQ、会社法よりKabuGraph作成

受け取り方:信託銀行から案内が届き、配当金の受取方法に準じて支払われる

代金は株主名簿管理人の信託銀行が支払い、原則として配当金の受け取り方法に準じます(ジェイ・エス・ビーの開示)。ただし、証券口座で配当金を受け取る「株式数比例配分方式」は使えないことがあり、ブイキューブは、この指定が自動的に解除され、郵送される領収証を銀行の窓口に持参して受け取る形になると案内しています(ブイキューブ「株式併合について」)。

案件によっては、振込先を指定する書類を期限までに返送する手続きがあります。東芝・シダックス・タキロンシーアイでは、上場廃止(取得)の約1か月後に信託銀行から案内が届き、振込指定書を返送すれば指定した口座に振り込まれる形でした(東芝、シダックス、タキロンシーアイ)。一方、ブイキューブのように株主側の手続きは不要とする案件もあります。

シダックスでは、振込指定書を返送しなかった場合、配当金を銀行口座で受け取っていた株主にはその口座へ振り込まれ、それ以外の株主には「端数株処分代金領収証」が郵送され、ゆうちょ銀行などの窓口で現金を受け取る形でした。受け取りの時効は交付日から10年と案内されています(シダックスの株主向けFAQ)。

市場で売る・TOBに応募・持ち続ける:どれを選ぶか

選択肢は「最終売買日までに市場で売る」「TOBに応募する」「上場廃止まで持ち続ける」の3つで、主な違いは次のとおりです。

  • 受け取る金額

    • 市場で売る:その日の株価(実例ではTOB価格の1%弱下)

    • TOBに応募:TOB価格

    • 持ち続ける:TOB価格(原則)。配当は通常なし

  • 手数料

    • 市場で売る:売買手数料がかかる

    • TOBに応募:通常かからない

    • 持ち続ける:かからない

  • 現金になる時期

    • 市場で売る:通常の売却と同じ

    • TOBに応募:TOB終了後の決済日

    • 持ち続ける:上場廃止の約3か月後

  • 税金・口座の扱い

    • 市場で売る:上場株式の売却。特定口座・NISA口座の中で完結

    • TOBに応募:市場での売却と同様に申告分離課税。特定口座なら口座内で計算。NISA口座からの応募の扱いは証券会社で異なる

    • 持ち続ける:非上場株式の譲渡扱い。口座の外での譲渡になり、譲渡益があれば原則確定申告。NISAで持っていた分は払出し後の値動きだけが課税対象

出典:野村證券「TOB(公開買付け)発生後の流れ・お手続き比較表」、東芝・シダックスの株主向けFAQ、三菱UFJモルガン・スタンレー証券のFAQ、租税特別措置法、国税庁タックスアンサーNo.1463よりKabuGraph作成

選ぶときのポイントは次のとおりです。

  • 差は1%弱、待つ期間は数か月:最終売買日の株価とTOB価格の差は実例で0.7〜0.8%。100万円分の保有なら差は1万円に届かない程度ですが、市場で売ると売買手数料もかかります

  • 特定口座で持っているなら、市場で売るかTOBに応募するほうが手続きは簡単:上場廃止まで持つと口座から払い出されて口座の外での譲渡になり、上場株式の損益と通算できず、譲渡益が出れば確定申告も必要になります

  • TOBに応募すればTOB価格ちょうどで売れる:ただし公開買付代理人の証券会社での手続きが必要で、不成立なら株式は返還されます

  • 単元未満株も同じ価格を受け取れる:単元未満株は上場廃止が決まると市場で売れなくなりますが(野村證券の比較表)、多くのTOBは単元未満株も買付けの対象とし(例:豊田自動織機のTOB開始の開示)、スクイーズアウトでも持株数に応じて同じ対価が支払われます

  • 価格決定申立てを考えるなら持ち続ける:市場で売ったりTOBに応募したりすると、後から対価に異議を唱えることはできません(後述)

税金:スクイーズアウトの現金は「非上場株式の譲渡」

スクイーズアウトで受け取る現金は、上場廃止後に株式を手放した代金なので、非上場株式の譲渡として扱われます(東芝の株主向けFAQ、シダックスの株主向けFAQ)。個人株主の場合の扱いは次のとおりです。

  • 譲渡益には20.315%(所得税15.315%+住民税5%)の申告分離課税がかかる

  • 非上場株式(一般株式等)の譲渡なので、上場株式等の譲渡損益や配当と損益通算できない(国税庁 タックスアンサーNo.1463)

  • 譲渡損失の翌年以降3年間の繰越控除も認められない

  • 特定口座で持っていた株は、上場廃止に伴って口座から払い出され、元の取得価額を引き継いだまま口座の外で譲渡される。譲渡益が出れば原則として確定申告が必要

  • NISA口座で持っていた株は、払い出された時の価額で取得し直したものとみなされる(租税特別措置法 第37条の14 第4項)。そのためNISAで保有していた間の値上がり益は非課税のままで、課税対象は払出し時の価額と受取額の差額にとどまる。払出し時の価額は払出しの日の終値(その日に取引がなければ、それ以前で最も近い日の終値など)とされる(租税特別措置法施行令 第25条の13 第4項)。最終売買日の終値が基準なら、差額は実例でTOB価格の1%弱。この差額も口座の外での譲渡になる

価格決定申立てで上乗せは狙えるか

スクイーズアウトの対価に納得できない場合は、裁判所に「公正な価格」を決めてもらう申立てができます。手続きは手法によって異なります。

  • 株式等売渡請求:取得日の20日前から前日までに、裁判所へ売買価格の決定を申し立てる(会社法 第179条の8)

  • 株式併合:株主総会の前に反対を通知して総会でも反対し(議決権を行使できる株主の場合)、効力発生日の20日前から前日までに会社へ買取請求をする。価格の協議が効力発生日から30日以内に調わなければ、その後30日以内に裁判所へ申し立てる(会社法 第182条の4・第182条の5)

ただし最高裁は2016年、ジュピターテレコムの事案で、独立した第三者委員会の意見を聴くなど一般に公正と認められる手続きでTOBが行われ、TOB価格と同額で株式を取得した場合は、予期しない事情の変動がない限り取得価格はTOB価格と同額とするのが相当と判断しました(最高裁 平成28年7月1日決定)。全部取得条項付種類株式を使った事案についての判断です。

公正な手続きを踏んだ案件で上乗せを得るのは簡単ではなく、弁護士費用や時間もかかります。申立ての実務や過去の事例はスクイーズアウトとはで詳しく解説しています。

まとめ

  • スクイーズアウト予定のTOBが公表されると、株価はTOB価格のすぐ下まで上がり、上場廃止まで張り付く

  • 2026年に上場廃止となった4社では、最終売買日の終値はTOB価格の0.7〜0.8%下

  • 引き上げや対抗TOBが見込まれるとTOB価格を上回り、不成立・撤回なら下落しやすい(豊田自動織機は2度の引き上げ)

  • TOBを経ないスクイーズアウトでは、株価は公表された対価に向かって動き、対価が低ければ下がる(ブイキューブは対価10円、株価は120円→9円)

  • 最後まで持っていると、TOB価格×株数の現金が上場廃止の約3か月後に届く。配当や株主優待は通常なくなり、振込先を指定する書類の返送が必要な案件もある

  • その現金は非上場株式の譲渡扱いで、特定口座の外での譲渡になり、譲渡益が出れば原則確定申告が必要(NISAで持っていた分は払出し後の差額だけが課税対象)。手間と損益通算を考えると、最終売買日までの売却やTOBへの応募も有力な選択肢

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コラム著者・編集者

K

KabuGraph編集部

KabuGraph編集部は、投資情報の発信と株式分析ツールの開発に携わるチームです。日本株・米国株の事業分析から、投資に役立つ情報をわかりやすくお届けします。

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