トラストの例|スタンダード石油から日本製鐵・王子製紙まで、企業合同の代表例と解体後の姿

トラスト(企業合同)の代表例は、アメリカのスタンダード石油トラスト(1882年)と、日本の王子製紙(1933年の3社合併)・日本製鐵(1934年の製鉄大合同)です。いずれも同じ業種の会社が一つの資本・意思決定のもとにまとまって市場の独占を狙い、実際に市場の大半を握った典型例です。
アメリカでは石油や砂糖などのトラストが広がったことを受けて、1890年にシャーマン反トラスト法が制定されました。その後も鉄鋼(USスチール)などで巨大トラストが生まれ、石油とタバコのトラストは1911年に最高裁で解体を命じられています。
日本の大合同は戦後の過度経済力集中排除法で分割され、その流れはいまの日本製鉄・王子ホールディングス・アサヒ・サッポロといった上場企業に続いています。
本記事では、代表例を国・時代別に一覧にしたうえで、それぞれが「なぜトラストと呼ばれるのか」を結合の仕方と市場シェアから説明します。後半では、系譜がいまの上場企業にどうつながるかと、大型M&Aの成否を左右する独占禁止法の企業結合審査・米国の反トラスト訴訟を取り上げます。
この記事の内容(目次)
トラストの代表例一覧
まずは代表的なトラストを一覧にします。シェアは成立当時の数字です。
スタンダード石油トラスト(米国・1882年):約40社の株式を9人の受託者に信託し、石油精製能力の約90%を占めた。1911年に最高裁が解体を命令(流れをくむ会社の一つがいまのエクソンモービル)
アメリカン・シュガー(砂糖トラスト、米国・1892年):同業4社を買収し、精製会社の株式を自社株と交換で取得。砂糖精製の約98%を占めたが、1895年、最高裁はシャーマン法の対象外と判断
アメリカン・タバコ(米国・1890年):紙巻きたばこ大手5社の合同で、国内紙巻きたばこの95%を占めた。1911年に最高裁が解体を命令
USスチール(米国・1901年):カーネギーの製鋼会社とフェデラル・スチールを中核に統合。成立時のシェアは66%だったが、1920年、最高裁は解体を認めず(2025年に日本製鉄の完全子会社に)
大日本麦酒(日本・1906年):札幌・日本・大阪麦酒の3社合同で、シェアは70%。1949年に朝日麦酒・日本麦酒へ分割(いまのアサヒグループHD・サッポロビール)
帝国製麻(日本・1907年):日本製麻と北海道製麻の合併で、麻業総投資額の96%を占めた。のちの帝国繊維
王子製紙(日本・1933年):王子・富士製紙・樺太工業の3社合併で、全国洋紙生産の80%余を占めた。1949年に3社へ分割(いまの王子HD・日本製紙)
日本製鐵(日本・1934年):官営八幡製鉄所と民間5社の合同で、銑鉄96%・鋼塊52%を占めた。1950年に八幡・富士などへ分割(いまの日本製鉄)
出典:米国立公文書館、米連邦最高裁判決(221 U.S. 1 / 221 U.S. 106 / 251 U.S. 417)、各社沿革、百科事典(コトバンク)よりKabuGraph作成
トラストかどうかを見分ける3つのポイント
トラストに当たるかどうかは、次の3点で見分けられます。
同じ業種の会社どうしの結合であること——鉄鋼なら鉄鋼会社どうし、という「水平的」な結合。異業種を株式で束ねるのはコンツェルン(財閥)です
各社が独立性を失い、一つの意思決定のもとに入ること——株式の信託、持株会社、合併のいずれかによる。各社が独立したまま価格などを申し合わせるのはカルテルです
市場の独占・価格の支配を目的とすること——実際に市場を支配する力を強めた合同が、典型的なトラストとされます
出典:山川 日本史小辞典「トラスト」(HISTORIST)よりKabuGraph作成
この3点に当てはめると、上の一覧の例がなぜトラストと呼ばれるのかが分かります。いまの合併審査でも、同じ業種の会社が一つになって市場の競争が減るかどうかが焦点です(後述)。トラストの定義やカルテル・コンツェルンとの違いは「トラストとは」で詳しく解説しています。
アメリカのトラストの例——スタンダード石油から反トラスト法へ
「トラスト(trust)」はもともと「信託」を意味する英語です。19世紀後半のアメリカでは、複数の会社の株主が株式を一組の受託者(trustee)に預け、受託者がまとめて経営を支配する仕組みが広がり、多くの主要産業で競争をなくしていきました(米国立公文書館)。
トラストのまとめ方には、①受託者方式、②持株会社方式、③合併方式の3つがあります。1890年のシャーマン法で受託者方式が規制の対象になると、トラストは持株会社や合併へと形を変えました。
スタンダード石油トラスト(1882年)——「トラスト」という呼び名の由来になった例
成立:ロックフェラーらの石油会社群は、1879年の協定を経て1882年1月にトラスト協定を結び、40社の株式を9人の受託者に預けて、代わりに信託証券を受け取りました(1911年の米連邦最高裁判決、米国立公文書館)
なぜトラストか:石油精製という同じ業種の会社を、受託者が役員の選任や経営を通じて一括して支配しました。アメリカの石油精製能力の約90%を占めたとされます(世界大百科事典「トラスト」)
解体までの流れ:1892年にオハイオ州最高裁がトラスト協定を無効と判断すると、1899年にニュージャージーの会社を持株会社に改組して支配を続けました。1911年5月15日、連邦最高裁はシャーマン法違反と認め、37の子会社への支配を禁じた下級審の命令を支持しました(判決文)
いま:スタンダード石油は判決で34の会社に分かれ、その流れをくむエクソンとモービルは1999年に合併してエクソンモービルになりました(エクソンモービル 社史)
砂糖トラスト(アメリカン・シュガー)——独占しても解体されなかった例
なぜトラストか:アメリカン・シュガー・リファイニングは1892年、フィラデルフィアの競合4社の株式を自社株と交換で取得し、国内の砂糖精製をほぼ独占しました。最高裁の多数意見は「精製砂糖の製造のほぼ完全な支配」と認定しており、シェアは約98%でした(米国立公文書館)
結果:1895年のE.C.ナイト事件で最高裁は、「製造」の独占は州をまたぐ「通商」の制限には当たらないとして、シャーマン法の適用を認めませんでした(判決文)。成立間もないシャーマン法の限界を示した例です
アメリカン・タバコ(1890年)——紙巻きたばこの95%を握った合同
なぜトラストか:1890年1月以前は互いに競争していた大手5社(アレン&ジンター、W・デューク・サンズなど)が一つになりました。この5社で国内の紙巻きたばこの95%を製造していました(1911年の米連邦最高裁判決)
結果:1911年5月29日、最高裁はシャーマン法違反と認め、結合を解いて法に反しない形に組み直す計画を下級審で定めるよう命じました(期限は6か月)
USスチール(1901年)——巨大でも「大きさだけでは違法ではない」
成立:1901年、ゲーリーとモルガンの一団がカーネギーの製鋼会社を買収し、自分たちが持つフェデラル・スチールと統合しました。この2社が中核となってUSスチールが生まれています(USスチール社史)
なぜトラストか:一審で意見を示した判事2人は、約180の独立企業を一つの経営支配のもとに置いた「結合の結合」と表現しています(1920年の最高裁判決が引用)
結果:政府は1911年に解体を求めて提訴しましたが、1920年3月1日、最高裁は「法は単なる大きさを違法とはしない」として解体を認めませんでした(判決文)
いま:2025年6月、日本製鉄がUSスチールを完全子会社にしました(後述)
北部証券会社(1901年)——持株会社型のトラストが解散させられた例
日本のトラストの例——戦前の「大合同」
日本の代表的なトラストは、同じ業種の会社どうしの合併で生まれました。ここで取り上げる4社は、いずれも戦後の分割・再編を経て、いまの上場企業につながっています(次章)。
同じ時期の日本では、異業種の会社を持株会社で束ねる財閥(コンツェルン)も発達しました。財閥の仕組みは次の記事で解説しています。

コンツェルンとは|財閥のピラミッド構造とカルテル・トラストとの違い、1947年禁止・1997年解禁まで
コンツェルンとは、持株会社などが株式保有で異業種の企業を支配する企業グループのこと。カルテル・トラストとの違いを図と表で比べ、三井合名など財閥の仕組み、1947年の持株会社禁止と1997年の解禁、現在の独占禁止法9条の規制まで一次資料で解説します。
日本製鐵(1934年)——官民の「製鉄大合同」
成立:1934年、日本製鐵株式會社法にもとづき、官営八幡製鉄所と、輪西製鉄・釜石鉱山・富士製鋼・三菱製鉄・九州製鋼の民間5社が合同しました(渋沢社史データベース)
なぜトラストか:1934年の生産シェアは銑鉄で96%、鋼塊で52%に達し、半官半民の鉄鋼トラストと呼ばれます(コトバンク「日本製鉄」)
限界:日本鋼管などの有力な製鋼会社が合同に加わらなかったため、粗鋼や鋼塊のシェアは銑鉄ほど高くなりませんでした(同)
いま:戦後に八幡製鐵・富士製鐵などへ分割され、再合併を経て日本製鉄(5401)につながっています(次章)
王子製紙(1933年)——洋紙の8割を握った「大王子」
成立:1933年、王子製紙が富士製紙・樺太工業と合併し、その規模から「大王子」と呼ばれました(王子ホールディングス 沿革)
なぜトラストか:全国の洋紙生産の80%余、新聞用紙では95%を占めました(世界大百科事典「王子製紙」)
コンツェルンの側面も:同時に木材・石炭など関連する30余りの会社を支配し、一つの財閥を形成しました(同)。トラスト(同業の合同)とコンツェルン(株式による支配)の両面を持っていた例です
いま:戦後に3社へ分割され、王子ホールディングス(3861)と日本製紙(3863)に続いています(次章)
大日本麦酒(1906年)——ライバル3社のビール合同
成立:1906年、札幌麦酒・日本麦酒・大阪麦酒の3社が合同しました。3社はサッポロ・ヱビス・アサヒを売る競争相手で、国内での競争を避けることなどを目的に合併しています(サッポロビール「150年の道のり」)
なぜトラストか:合同時の国内市場シェアは70%に達し、戦後に分割されるまで圧倒的なシェアを保ちました(サッポロビール「150年の道のり」第3編・第4編)
いま:1949年に朝日麦酒と日本麦酒に分割され、アサヒグループホールディングス(2502)とサッポロビール(2501)として続いています(次章)
帝国製麻(1907年)——麻業の投資の96%を押さえた製麻トラスト
成立:1907年、日本製麻と北海道製麻の合併で生まれました(北海道立文書館)
なぜトラストか:麻業の総投資額の96%を占めるトラストになったとされます(旺文社日本史事典「帝国製麻会社」)
いま:1941年に帝国繊維へ商号を変え、戦後の再編を経て1959年に現在の帝国繊維となりました(帝国繊維「当社のあゆみ」)。消防用ホースなど防災製品のメーカーとして上場しています(証券コード3302)
戦後の分割と、いまの上場企業へのつながり
日本製鐵・王子製紙・大日本麦酒といった戦前の大合同は、戦後の過度経済力集中排除法によって分割されました(渋沢社史データベース・日本製紙 沿革・サッポロビール「150年の道のり」)。同法の運用は次のように進みました。
1947年12月18日:過度経済力集中排除法が公布・施行
1948年2月:持株会社整理委員会が325社を集中排除の指定企業に
その後:指定の取り消しが相次ぎ、最終的に分割再編成を指令されたのは18社、実際に分割されたのは11社
出典:国立公文書館「過度経済力集中排除法が公布される」よりKabuGraph作成

コンツェルンは今も禁止されている?|1947年の禁止から1997年解禁、独禁法9条に残る規制
コンツェルンは今の日本では禁止されていません。GHQの財閥解体を受けて1947年の独占禁止法9条が持株会社を禁じた理由、1997年の解禁、今も残る9条の規制と報告義務、M&Aで焦点になる企業結合審査との違いを、条文と公取委の資料で解説します。
鉄と紙は分割後に再び大きくまとまり、ビールは別々の会社のまま競争を続けているのが対照的です。戦前のトラストが分割を経て、いまのどの上場企業につながっているかは次のとおりです。
日本製鐵
戦後の分割(1950年):八幡製鐵・富士製鐵・日鉄汽船・播磨耐火煉瓦
その後:1970年に八幡・富士が合併して新日本製鐵、2012年に住友金属工業と統合して新日鐵住金、2019年に日本製鉄へ商号変更
いまの上場企業:日本製鉄(5401)
王子製紙
戦後の分割(1949年):苫小牧製紙・十條製紙・本州製紙
その後:苫小牧製紙が1960年に王子製紙へ改称し、1996年に本州製紙と合併。2012年に持株会社化。十條製紙は1993年に山陽国策パルプと合併して日本製紙に
いまの上場企業:王子ホールディングス(3861)、日本製紙(3863)
大日本麦酒
戦後の分割(1949年):朝日麦酒・日本麦酒
その後:朝日麦酒は現在のアサヒグループ。日本麦酒は1964年にサッポロビールへ改称。2003年に持株会社のサッポロホールディングスを設立し、2026年7月に同社が事業会社を吸収合併して商号をサッポロビールに変更
いまの上場企業:アサヒグループホールディングス(2502)、サッポロビール(2501)
帝国製麻
戦後の分割(1950年):帝国繊維が解散し、中央繊維・帝国製麻などを設立
その後:1959年に中央繊維と帝国製麻が合併して帝国繊維
いまの上場企業:帝国繊維(3302)
出典:日本製鉄・王子ホールディングス・日本製紙・サッポロビール・帝国繊維各社の沿革とニュースリリース、渋沢社史データベース、ブリタニカ国際大百科事典(コトバンク)よりKabuGraph作成
各社の沿革は日本製鉄・王子ホールディングス・日本製紙・サッポロビール・帝国繊維の公式サイトで確認できます。サッポロの商号変更は同社の2026年7月1日のリリースによります。
日本製鉄
日本製鉄は、粗鋼生産量で国内首位・世界有数の総合鉄鋼メーカー。高炉から条鋼・鋼板・鋼管・特殊鋼まで幅広い鉄鋼製品を製造し、自動車・建設・造船・エネルギー産業に供給する。鉄鋼事業を中核に、エンジニアリング事業(製鉄プラント・環境ソリューション…
王子ホールディングス
国内最大手の製紙企業グループ。子会社312社・関連会社58社を擁する大規模グループ。段ボール原紙・加工、白板紙・紙器、包装用紙・製袋、家庭紙「ネピア」ブランドの紙おむつ等を生活産業資材として幅広く展開する。機能材分野では特殊紙、感熱紙、粘着…
アサヒグループホールディングス
アサヒグループホールディングスは、世界有数の総合飲料・食品メーカーです。アサヒビール、ニッカウヰスキー、アサヒ飲料、カルピスなどのブランドでビール類・低アルコール飲料・洋酒・焼酎・清酒・ワイン・清涼飲料を製造・販売しています。国内だけでなく…
サッポロビール
「サッポロ生ビール黒ラベル」「ヱビスビール」を主力とする酒類メーカー。国内ではビール・発泡酒・ワインの製造販売に加え、「銀座ライオン」等のビヤホール・レストランを直営展開する。海外はベトナム(SAPPORO VIETNAM)、カナダ(SLE…
現代の合併はトラストか——独占禁止法の企業結合審査
戦後の日本には1947年に制定された独占禁止法があります。条文に「トラスト」という言葉は出てきませんが、合併によって「一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなる」場合、その合併は禁じられています(独占禁止法 第15条(e-Gov法令検索))。届出から審査、問題解消措置までの流れは「トラストとは」で解説しています。
現代の同業大合併はトラストに似ていても、競争が残る範囲でしか認められない点が戦前と違います。投資家にとっては、同業の大型合併が発表されたとき、公正取引委員会の審査を通るか、どんな問題解消措置が条件になるかが、成立の時期や合併の効果を左右する論点になります。
八幡製鐵・富士製鐵の合併(1970年)——条件付きで認められた再合併
戦後に分割された日本製鐵の2社が、20年を経て再び合併しました。公正取引委員会の審判を経て、設備の譲渡・株式の譲渡・技術やノウハウの提供といった競争回復措置を条件に認められました(経済産業研究所)
合併後の新日本製鐵は、粗鋼生産でUSスチールに迫る世界第2位の企業になりました(同)
新日本製鐵・住友金属工業の合併(2012年)——約30分野を審査
公正取引委員会は約30の取引分野を審査し、無方向性電磁鋼板では合算シェアが約55%、高圧ガス導管のエンジニアリング業務では約60%になるとして問題を指摘しました(公正取引委員会 平成23年度事例2)
住友商事への5年間のコストベースでの製品供給や商権の譲渡などの問題解消措置を前提に、2011年12月14日に排除措置命令を行わない旨を通知しました(同)。合併自体は認めつつ、シェアが高くなる分野だけ競争相手を育てるという考え方です
三井住友銀行・三菱UFJ銀行の誕生(2001年・2006年)——銀行どうしの大型合併
成立:2001年4月にさくら銀行と住友銀行が合併して三井住友銀行に、2006年1月に東京三菱銀行とUFJ銀行が合併して三菱東京UFJ銀行(2018年4月から三菱UFJ銀行)になりました(全国銀行協会「銀行の提携合併リスト」)
審査:後者の統合で公正取引委員会は47の取引分野を審査しました。大手17行の預金に占める合算シェアは約40%で第1位になるものの、都市銀行などの有力な競争相手がいることなどから、競争を実質的に制限することとはならないと判断しています(公正取引委員会 平成17年度事例13)
トラストとの違い:同業どうしの合併という形はトラストと同じですが、競争が残ることを確かめたうえで認められており、市場を独占した戦前のトラストとは異なります
日本製鉄のUSスチール買収(2025年)——かつてのトラストの流れが一つに
2025年6月18日、日本製鉄はUSスチールとの「パートナーシップ成立」を発表し、完全子会社にしました(日本製鉄 ニュースリリース、JETRO ビジネス短信)
米国政府は両社と国家安全保障協定を結び、独立取締役1人の選任権や一定事項の同意権が付いた「黄金株」を持つことになりました(JETRO)
1901年に生まれたアメリカを代表するトラストと、1934年の日本の製鉄トラストの流れをくむ会社が、一つのグループになった形です。ただし国をまたぐ買収で、国内市場を独占するトラストとは性格が異なります
現代アメリカの反トラスト法の執行例
アメリカではいまも反トラスト法による独占への対応が続いています。ここで挙げる4件はいずれも、トラストの「結成」ではなく、すでに市場を支配した企業による独占の維持(シャーマン法2条)が問われた事件です。合併によるトラストの結成を止めるのは、いまは主にクレイトン法の合併規制です(米司法省反トラスト局)。
4件の経過は次のとおりです。
AT&T(ベル・システム):1974年に提訴
1982年に和解
1984年1月1日に地域の電話会社22社を切り離し、7つの地域会社にまとめた(米連邦司法センター)
マイクロソフト:1998年に提訴
グーグル(検索):2020年に提訴
2024年8月に一審が違法と判断
2025年9月の救済判断はChromeの売却を退け、排他的な契約の禁止やデータ共有を命令
2026年1月にグーグル、2月に司法省側も控訴(米司法省・連邦地裁・Alphabet 10-Q)
グーグル(広告技術):2023年に提訴
2025年4月に一審が、サイト運営者向けの広告ツールで競合を不当に排除したと判断
2026年9月2日の救済判断はAdX(広告取引所)の売却を退け、競合ツールとの接続やデータ共有などの行為規制と監視人の設置を命令(連邦地裁の命令・米司法省・Alphabet 10-Q)
出典:米連邦司法センター、米官報(Federal Register)、米司法省、米連邦地裁(コロンビア特別区・バージニア州東部地区)、Alphabet Form 10-Q(2026年4〜6月期)よりKabuGraph作成
AT&Tは実際に分割されましたが、マイクロソフトとグーグル(検索・広告技術)では会社の分割までは命じられていません。スタンダード石油の時代と比べると、解体より行為の規制に重心が移っているといえます。株主から見ると、分割なら事業そのものが切り離され、行為規制なら事業は残ったまま契約や取引の仕方に制約がかかる、という違いがあります。
まとめ——トラストの例と、いまの上場企業・M&Aへのつながり
トラストの代表例は、アメリカのスタンダード石油トラスト(1882年)と、日本の王子製紙(1933年)・日本製鐵(1934年)
トラストかどうかは「同じ業種」「独立性を失って一つの意思決定へ」「市場支配を狙う」の3点で見分ける
アメリカのトラストには、反トラスト法で解体されたもの(スタンダード石油・アメリカン・タバコ・北部証券)と、解体されなかったもの(砂糖トラスト・USスチール)がある
日本の大合同は戦後に分割され、日本製鉄・王子HD・日本製紙・アサヒ・サッポロ・帝国繊維などの上場企業に続いている
現代の同業合併(鉄鋼・銀行など)は独占禁止法の企業結合審査を受け、競争が残る範囲で、必要なら問題解消措置を条件に認められる
同業の大型M&Aでは、日本の企業結合審査や米国の反トラスト法の審査を通るか、どんな条件が付くかが、成立の時期や合併の効果を左右する
トラストの定義や、カルテル・コンツェルンとの違いを整理したい方は、次の記事もあわせてご覧ください。

トラストとは|語源は1882年スタンダード石油の「信託」、カルテルとの違いから独禁法の合併審査まで
トラスト(企業合同)とは、同業種の企業が市場支配を狙い、独立性を失って一つになる結合形態。語源は1882年スタンダード石油の信託方式です。カルテル・コンツェルンとの違い、反トラスト法の由来、いまの独占禁止法の合併審査まで図解します。








