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コンツェルンは今も禁止されている?|1947年の禁止から1997年解禁、独禁法9条に残る規制

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コンツェルン(持株会社などの親会社が、株式の保有で複数の企業を束ねる企業グループ)は、今の日本では禁止されていません。戦後の1947年に独占禁止法第9条が持株会社を禁じたため、財閥型のコンツェルンは作れなくなりました。しかし1997年の改正で持株会社は解禁され、現在9条で禁止されているのは「事業支配力が過度に集中することとなる会社」だけです。

カルテル・トラスト・コンツェルンのうち、今も正面から禁止されているのはカルテルで、コンツェルンは行き過ぎた場合だけが規制の対象です。この記事では、禁止の理由(GHQによる財閥解体)と1997年の解禁の経緯、今も残る規制の中身を、条文と公正取引委員会(公取委)の資料をもとに整理します。投資家にとっては、今の「〇〇ホールディングス」がなぜ認められているのか、M&Aで何が審査されるのかを知る手がかりになります。

結論:コンツェルンは今は禁止されていない

日本の法律に「コンツェルン」という言葉は出てきません。規制の対象になってきたのは、コンツェルンの頂点に立つ持株会社と、株式の保有による事業支配力の集中です。扱いは時期によって大きく変わりました。

出典:独占禁止法、公正取引委員会 年次報告(平成8・9・14年度)よりKabuGraph作成
  • 1947年:独占禁止法(4月14日公布、7月20日全面施行)が、第9条で持株会社を禁止(国立公文書館「独占禁止法が制定される」)

  • 1997年:改正法が6月11日に成立し、12月17日に施行。全面禁止から「事業支配力が過度に集中することとなる持株会社」だけの禁止へ(公正取引委員会 平成8年度年次報告、平成9年度年次報告)

  • 2002年:再改正(11月28日施行)で禁止規定(9条1項・2項)から「持株会社」の語が消え、持株会社に限らず全ての会社が対象に(公正取引委員会 平成14年度年次報告)

  • 現在:持株会社を頂点とする企業グループは原則として自由につくれる。禁止されるのは、9条の3つの類型に当たる過度な集中と、個別の市場で競争を実質的に制限する株式保有(10条)

カルテル・トラスト・コンツェルン、禁止されているのはどれ?

カルテル・トラスト・コンツェルンという3つの企業結合の形態のうち、独占禁止法で禁止されているのはどれでしょうか。1947年の制定時と現在とでは答えが違うので、分けて整理します。

  • 1947年の制定時

    • カルテル(企業連合):禁止

    • トラスト(企業合同):禁止(私的独占など)

    • コンツェルン(企業連携):持株会社を禁止

  • 現在

    • カルテル(企業連合):禁止(不当な取引制限)

    • トラスト(企業合同):合併自体は自由。競争を実質的に制限する合併は禁止

    • コンツェルン(企業連携):原則自由。事業支配力が過度に集中する会社、競争を実質的に制限する株式保有は禁止

  • 主な条文

    • カルテル(企業連合):3条

    • トラスト(企業合同):15条(合併)、3条(私的独占)

    • コンツェルン(企業連携):9条、10条

出典:独占禁止法(e-Gov法令検索)、国立公文書館「独占禁止法が制定される」、公正取引委員会「独占禁止法の規制内容」よりKabuGraph作成

制定時の独占禁止法は、「トラスト・カルテルなどの私的独占行為や不当な取引制限」とともに、「事業支配力の過度の集中や持株会社」を禁止する法律でした(国立公文書館「独占禁止法が制定される」)。つまり1947年時点では3つとも禁止の対象でした。

現在、行為の類型として正面から禁止されているのはカルテルです。公取委は、事業者が価格や生産数量などを共同で取り決めるカルテルを、第3条が禁じる「不当な取引制限」に当たる行為として挙げています(公正取引委員会「独占禁止法の規制内容」)。

一方、トラストとコンツェルンは「行き過ぎた場合に禁止」という扱いで、合併や株式保有そのものは禁じられていません。トラストの意味はトラストとはで解説しています。

なぜ禁止されたのか|GHQによる財閥解体

禁止の出発点は、戦後の財閥解体です。戦前の三井・三菱・住友・安田などの財閥は、財閥本社(持株会社)を頂点に傘下の会社を株式で支配する、ピラミッド型のコンツェルンでした(下谷政弘・川本真哉「持株会社をめぐる諸問題」『経営史学』54巻2号(J-STAGE))。三井の場合、傘下の会社は約270社あり、そのうち三井本社が指定した直系会社が10社、準直系会社が12社でした(三井広報委員会「三井財閥最後の日」)。

1945年9月の「降伏後における米国の初期の対日方針」は、経済活動を軍事目的に動員しにくくするため、日本の商工業の大部分を支配してきた産業と金融の大きな企業結合、つまり財閥の解体を打ち出しました(国立国会図書館「日本国憲法の誕生」所収の原文(SWNCC150/4))。

出典:国立公文書館「日本のあゆみ」、日本大百科全書「財閥解体」、下谷政弘・川本真哉「持株会社をめぐる諸問題」、三井広報委員会・三菱グループ沿革よりKabuGraph作成

財閥解体で行われたこと

  • 財閥本社の解散:1946年8月に発足した持株会社整理委員会が、1947年9月までに5回に分けて83社を持株会社に指定し、四大財閥の本社や浅野・大倉などの本社を解散させた。三井本社は1946年9月30日の株主総会の決議で解散し、三菱本社も同年9月に解散した

  • 財閥家族の支配の排除:財閥家族として指定された56人に、持株の処分と会社役員からの退任を命じた。1948年1月制定の財閥同族支配力排除法で、旧財閥系企業の役員にも追放措置がとられた

  • 株式の分散:持株会社整理委員会に譲渡された株式は、財閥家族や財閥系企業を除き、その会社の従業員や工場所在地の住民などに優先して売却された

  • 巨大企業の分割:1947年12月18日公布の過度経済力集中排除法で、1948年2月に325社を指定。しかし占領政策の転換で指定の取り消しが相次ぎ、分割再編成の指令は18社、実際に分割されたのは11社にとどまった

出典:三井広報委員会「三井財閥最後の日」、三菱グループ「沿革」、国立公文書館「過度経済力集中排除法が公布される」、日本大百科全書・世界大百科事典「財閥解体」(コトバンク)よりKabuGraph作成

財閥の系譜にある今の上場企業や、戦後の企業集団との違いは次の記事で紹介しています。

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独占禁止法9条は「財閥の復活」を防ぐためのもの

解体された財閥が再結集しないよう、1947年の独占禁止法は持株会社そのものを禁止しました。公取委は禁止の理由として、財閥解体の措置を法的に担保すること、端的には「財閥復活の阻止」を挙げていたとされます(下谷・川本 2019)。

公取委自身も、独占禁止法は戦後、財閥の解体などで経済の民主化が図られるなかで、経済民主化を担保する制度として制定されたと説明しています(公正取引委員会 独占禁止法施行70周年の委員長談話)。

1947年の独占禁止法は何を禁止したのか

制定時の9条は「持株会社はこれを設立してはならない」と定め、持株会社を「株式を所有することにより他の会社の事業活動を支配することを主たる事業とする会社」と定義していました(下谷・川本 2019)。既存の会社が持株会社に「なる」こと(転化)を禁じる規定もあり、下谷・川本(2019)はこれを1949年の改正で加わったものとしています。

当初は他社株の保有そのものも禁止だった

制定時の独占禁止法には、9条よりも厳しい規定がありました。10条が、金融業以外の会社が他の会社の株式を取得することを禁じていたのです(下谷・川本 2019)。他社株を持てなければ持株会社は作りようがないため、法案の取りまとめ役だった橋本龍伍は、9条は財閥本社のようなものを認めないという建前を宣言する意味があるだけだ、という趣旨を述べていました(同)。

1949年改正で「事業持株会社」は認められた

1949年の改正で10条が大きく緩められ、他社株の保有が禁止されるのは会社間の競争を減殺する場合などに限られました。大企業が他社株を持ってグループの親会社になり始めると、9条の「持株会社」は株式保有を主たる事業とする純粋持株会社だけを指し、自ら本業を営みながら子会社株式を持つ事業持株会社は禁止されない、という解釈が定着します(下谷・川本 2019)。

2つの持株会社の違いは次のとおりです。

  • どんな会社か

    • 純粋持株会社:自らは事業を行わず、子会社の支配を主な事業とする会社

    • 事業持株会社:自ら本業を営みながら、子会社の株式も持つ会社

  • 1949〜1997年の扱い

    • 純粋持株会社:禁止(9条)

    • 事業持株会社:認められた(9条の解釈)

出典:下谷政弘・川本真哉「持株会社をめぐる諸問題」『経営史学』54巻2号よりKabuGraph作成

1997年に解禁された理由

持株会社の禁止には経済界から繰り返し緩和の要請が出ていましたが、公取委は「公正かつ自由な競争の促進」を掲げて改正に反対し、9条を戦後の経済民主主義の「象徴、最後の砦」とみる反対論も根強くありました(下谷・川本 2019)。流れが変わったのは1990年代半ばです。

解禁までの流れは次のとおりです。

  • 1995年3月31日:「規制緩和推進計画」を閣議決定。公取委に対し、持株会社規制の検討を始めて3年以内に結論を得るよう求める

  • 1995年12月:公取委の研究会が「事業支配力の過度の集中の防止という目的に反しない範囲内で見直すことが妥当」とする報告書。同月8日、経団連が純粋持株会社の解禁を求める意見を公表

  • 1996年12月17日:「経済構造の変革と創造のためのプログラム」を閣議決定。持株会社を解禁する方針を明記

  • 1997年3月11日:改正法案を閣議決定し、国会に提出

  • 1997年6月11日:改正法が成立(6月18日公布、平成9年法律第87号)

  • 1997年12月17日:改正法を施行。事業支配力が過度に集中することとなる持株会社だけを禁止する形に

  • 1998年3月:銀行法などの改正により、銀行・保険会社・証券会社なども持株会社を設立できるように

出典:公正取引委員会 平成8年度年次報告・平成9年度年次報告、同「金融機関の業態区分の緩和及び業務範囲の拡大に伴う不公正な取引方法について」、経団連「純粋持株会社の解禁についての考え方」よりKabuGraph作成

解禁を後押しした理由

  • 経済界の要請と規制緩和:公取委は改正の経緯として、経済界からの度重なる要請に加え、企業活動のグローバル化や産業の空洞化の懸念を背景に、規制緩和の観点から見直しが求められたことを挙げている(平成8年度年次報告)

  • 「国際的に特異な規制」という主張:経団連は、純粋持株会社の一律禁止は欧米に例がなく、日本のほかは韓国にしか見られない規制だと主張し、「持株会社が解禁されても、戦前の財閥のような事業支配力の強大な集中が実現することはあり得ない」として9条の削除を求めた(経団連、1995年12月8日)

  • 組織再編の道具として:持株会社はグループの再編やリストラにも有効だという主張が1980年代半ばから現れ、バブル崩壊後に勢いを増した(下谷・川本 2019)

  • NTTと金融再編:NTTを分離したうえで純粋持株会社の下に再統合する案が浮上し、不良債権に苦しむ大銀行を金融持株会社で統合する必要も高まった(同)

ただし改正は「何でも自由」にしたわけではありません。事業支配力が過度に集中することとなる持株会社の禁止は残し、一定規模以上の持株会社グループには公取委への事業報告と、新設時の届出を義務づけました(平成8年度年次報告)。

参議院商工委員会の附帯決議も、持株会社制度が中小事業者への系列支配の強化などにつながらないよう、独占禁止法の厳正な運用を求めています(公正取引委員会 平成8年度年次報告 附属資料)。

解禁後に生まれた持株会社

解禁後の持株会社設立の第1号は、ダイエーによるダイエーホールディングコーポレーションでした(日本大百科全書「持株会社」(コトバンク))。

上場会社では、大和証券が1999年に持株会社の大和証券グループ本社へ移行し、同社は沿革で「日本の上場会社初の純粋持株会社」と記しています(大和証券グループ本社「沿革」)。NTTも1999年に持株会社体制へ移行し、NTT東日本・NTT西日本・NTTコミュニケーションズを設立しました(NTT「NTTグループの歩み」)。

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大
8601金融(除く銀行)

大和証券グループ本社

投資・金融サービス業の大型証券グループ。138の子会社と39の関連会社を擁する。有価証券売買・デリバティブ商品取引、引受け・売出し、募集・売出し取扱い、私募取扱いを中心に、銀行業・その他金融業も展開。欧州・アジア・米州の主要金融市場に営業拠…

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N
9432情報通信・サービスその他

NTT

日本最大の通信グループ。NTTドコモによる携帯電話・5G・ブロードバンドの「総合ICT事業」、NTTデータグループによるシステムインテグレーション・データセンターの「グローバル・ソリューション事業」、NTT東日本・西日本による固定電話・「フ…

大手銀行も持株会社体制に移りました。2000年9月には、第一勧業銀行・富士銀行・日本興業銀行の3行が、共同持株会社のみずほホールディングスを設立しています(みずほホールディングス「経営の健全化のための計画」(2000年9月、金融庁))。

下谷・川本(2019)がレコフデータをもとに集計したところ、1999〜2018年に上場企業が純粋持株会社を設立した件数は572件にのぼります(うち74件は2018年末までに持株会社体制を解消)。持株会社の仕組みやつくり方は次の記事で解説しています。

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今の独占禁止法9条が禁止していること

現在の独占禁止法 第9条(e-Gov法令検索)第1項は次のとおりです。

他の国内の会社の株式(社員の持分を含む。以下同じ。)を所有することにより事業支配力が過度に集中することとなる会社は、これを設立してはならない。

第2項は、既存の会社が株式の取得・所有によってそうした会社になること(転化)も禁じています。

1997年の条文は「持株会社」を禁止の対象にしていましたが、2002年の改正(平成14年法律第47号、11月28日施行)で禁止規定から「持株会社」の語が消え、全ての会社が対象になりました。いまの9条に残る「持株会社」の語は、後で見る報告義務の区分(9条4項)で使われています。

同じ改正で、大規模会社の株式保有総額を制限していた9条の2は廃止されています(公正取引委員会 平成14年度年次報告、参議院 議案情報)。

「事業支配力が過度に集中すること」の意味は第3項が定めています。会社グループの総合的な事業規模が相当数の事業分野にわたって著しく大きいこと、資金にかかわる取引を通じた他の事業者への影響力が著しく大きいこと、または関連する相当数の事業分野でそれぞれ有力な地位を占めていることによって、国民経済に大きな影響を及ぼし、公正かつ自由な競争の促進の妨げとなることです。

出典:独占禁止法9条・同施行令15条、公正取引委員会「事業支配力が過度に集中することとなる会社の考え方」・報告書提出会社一覧よりKabuGraph作成

禁止される3つの類型

公取委はガイドライン「事業支配力が過度に集中することとなる会社の考え方」(2002年11月12日策定)で、禁止される会社グループを3つの類型で示しています。各類型の形と数値の目安は次のとおりです。

  • 第1類型

    • どんな形か:グループの規模が大きく、相当数の主要な事業分野にそれぞれ別の大規模な会社を持つ

    • 数値の目安:グループの総資産15兆円超(金融会社を除く)、5以上の主要な事業分野、各分野に単体総資産3,000億円超の会社

  • 第2類型

    • どんな形か:大規模な金融会社と、金融以外の大規模な会社をあわせ持つ

    • 数値の目安:単体総資産15兆円超の金融会社+単体総資産3,000億円超の非金融会社

  • 第3類型

    • どんな形か:相互に関連する相当数の主要な事業分野で、それぞれ有力な会社を持つ

    • 数値の目安:5以上(規模が極めて大きい分野の有力な会社を持つ場合は3以上)の主要な事業分野、各分野で売上高シェア10%以上の会社

出典:公正取引委員会「事業支配力が過度に集中することとなる会社の考え方」よりKabuGraph作成

会社グループは、会社・子会社・実質子会社(議決権の25%超50%以下を持ち、単独で最大の株主である会社)で数えます。主要な事業分野は、日本標準産業分類3桁分類のうち売上高6,000億円超の業種です。

一方、次のような場合は過度な集中に当たらないと例示されています(同ガイドライン)。

  • 自社の事業部門を100%子会社にする分社化(設立当初から100%所有を続ける場合)

  • 一定の要件を満たす未上場の研究開発型企業に出資するベンチャー・キャピタル

  • 金融会社が異業態の金融会社を新設して参入する場合

  • 会社と子会社の総資産の合計が6,000億円以下の場合

大きなグループには報告・届出の義務

会社とその子会社(議決権の過半数を持つ国内の会社)の総資産の合計が次の額を超える会社は、毎事業年度終了後3か月以内に、グループの事業に関する報告書を公取委に出さなければなりません(9条4項、独占禁止法施行令 第15条)。新たに設立された会社がこの基準に当たるときは、設立から30日以内に届け出ます(9条7項)。

手続きの詳細は公正取引委員会「法第9条に基づく事業に関する報告制度」と「会社設立の届出制度」にあります。

会社の種類ごとの基準額(グループの総資産)は次のとおりです。

  • 持株会社(子会社株式の取得価額が総資産の50%超の会社):6,000億円

  • 銀行業・保険業・第一種金融商品取引業を営む会社(持株会社を除く):8兆円

  • 上記以外の会社:2兆円

出典:独占禁止法 第9条、同施行令 第15条、公正取引委員会「法第9条に基づく事業に関する報告制度」よりKabuGraph作成

公取委が公表している報告書提出会社一覧(PDF)によると、令和7年度(2025年度)に報告書を出した会社は125社(持株会社47社、金融会社9社、一般事業会社69社)でした。トヨタ自動車、三菱商事、日立製作所、日本電信電話、三菱UFJフィナンシャル・グループなど、日本を代表する企業グループが並びます。報告の対象になることは、禁止されることを意味しません。

9条の廃止論と「維持」の結論

9条そのものをなくす議論もありました。政府の「規制改革実施計画」(2014年6月24日閣議決定)を受けて、公取委は9条を廃止した場合に生じうる弊害を検討しています。

公取委は2015年3月31日、9条を廃止すると過度な集中が生じても有効に対処する手段がなくなるなどとして、「引き続き、独占禁止法第9条を維持し、我が国における事業支配力の過度集中について監視していく必要がある」との考え方を公表しました。あわせて報告・届出の手続きは簡素化されています(公正取引委員会 2015年3月31日公表)。

9条以外の歯止め|M&Aで焦点になる企業結合審査

9条は、国の経済全体で見た力の集中を問題にする規制(一般集中規制)です。個々の市場での競争は、別の条文で審査されます。公取委のガイドラインも、9条の3類型に当たらない会社でも、株式保有や合併によって個別の市場の競争を実質的に制限することになれば、10条や15条などで禁止されると明記しています(事業支配力が過度に集中することとなる会社の考え方)。

2つの条文が何を規制するかは次のとおりです。

  • 独占禁止法 10条(株式保有):他の会社の株式の取得・所有によって一定の取引分野の競争を実質的に制限することとなる場合は禁止。一定規模以上の取得は事前の届出が必要

  • 独占禁止法 15条(合併):競争を実質的に制限することとなる合併は禁止。一定規模以上の合併は事前の届出が必要

出典:独占禁止法(e-Gov法令検索)、公正取引委員会「事業支配力が過度に集中することとなる会社の考え方」よりKabuGraph作成

このほか銀行・保険会社には、他の会社の議決権を持てる上限(独占禁止法 第11条(e-Gov法令検索))があり、銀行を子会社とする持株会社をつくるには内閣総理大臣の認可(銀行法 第52条の17(e-Gov法令検索))が必要です。

実例:みずほの3行統合は2つの面から審査された

第一勧業銀行・富士銀行・日本興業銀行の3行が持株会社を設立して統合したとき、公取委は個別の市場への影響(10条・15条)と経済全体への集中(9条)の両方を審査し、どちらも問題ないと判断しました。統合後のシェアが1位になっても、それだけで禁止されるわけではないことが分かる例です。

  • 個別の市場(10条・15条):預金・貸出・債券の引受や売買・信託の分野ごとに検討。都市銀行など18行の中で3行を合算すると、預金は20数%、貸出は25%強でいずれも1位になるが、預金の代わりになる金融商品や有力な競争相手がいることなどから、競争を実質的に制限しないと判断

  • 経済全体への集中(9条):3行の持株会社グループは3つの類型のいずれにも当たらず、事業支配力の過度な集中にはならないと判断

出典:公正取引委員会「(平成12年度:事例1)(株)第一勧業銀行,(株)富士銀行及び(株)日本興業銀行の持株会社の設立による事業統合」よりKabuGraph作成

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みずほフィナンシャルグループ

みずほフィナンシャルグループは、みずほ銀行・みずほ信託銀行・みずほ証券を中核とする国内3大金融グループの一角。個人・法人向けの預金・貸出・為替に信託と証券を組み合わせ、銀行・信託・証券が一体で顧客に向き合う体制を敷く。資産運用ではアセットマ…

M&A・TOBでは審査の日程に注目

株式市場で話題になる大型のTOBや経営統合で「公取委の審査」が焦点になるのは、主にこの10条・15条による企業結合審査のほうです。審査がどこまで進むかで、取引の日程が変わります。

  • 届出から30日は実行できない:届出が必要な株式取得や合併は、届出の受理から30日を経過するまで行えない(禁止期間)。公取委が必要と認めれば短縮される

  • 詳しい審査に進むと期限が延びる:公取委が追加の報告等を求めると第2次審査に入り、その旨が公表される。判断の期限は「届出の受理から120日」と「全ての報告等の受理から90日」のいずれか遅い日まで

  • 条件付きで認められることもある:競争を実質的に制限することになる場合でも、届出会社が問題解消措置を採ることを前提に、問題なしと判断されることがある

出典:公正取引委員会「企業結合審査の手続に関する対応方針」よりKabuGraph作成

コンツェルンの禁止についてよくある疑問

財閥は復活したのか?

戦後、旧財閥系の会社は、財閥解体で手が付けられなかった銀行を中心に企業集団を形成しましたが、家族・同族による支配は復活しませんでした(日本大百科全書「財閥解体」(コトバンク))。

三菱では1952年に各社の社長懇談会が発足し、1954年に「三菱金曜会」と改められました。財閥の商号・商標の使用を禁じた政令も、1952年のサンフランシスコ平和条約発効で廃止され、社名を変えていた各社は三菱の社名に戻っています(三菱グループ「沿革」)。

1950年前後からは大企業の間で株式の持ち合いが進み、「財閥復活」がささやかれたこともありました(下谷・川本 2019)。ただし戦後の企業集団は、財閥本社のような頂点の持株会社を持たない点で、戦前のコンツェルンとは形が違います。企業集団の具体例はコンツェルンの例で紹介しています。

持株会社の解禁は1997年?1998年?金融ビッグバンとの関係は?

独占禁止法の改正で純粋持株会社が解禁されたのは1997年です(6月11日成立、12月17日施行)。1998年3月は、銀行・保険会社・証券会社なども持株会社を設立できるようになった時期です(公正取引委員会 平成9年度年次報告、同「金融機関の業態区分の緩和…」)。

純粋持株会社の解禁そのものは独占禁止法の改正(1997年)によるものです。金融ビッグバンと関係が深いのは、この1998年3月の金融持株会社の解禁のほうで、流れは次のとおりです。

  • 1997年6月:独占禁止法の改正法が成立。ただし銀行・保険会社・証券会社を子会社とする持株会社(金融持株会社)の設立・転化は、改正法の附則で引き続き禁止(公正取引委員会 平成9年度年次報告「独占禁止法制の動き」)

  • 1997年12月:「持株会社の設立等の禁止の解除に伴う金融関係法律の整備等に関する法律」が成立し、この附則を削除。1998年3月から金融機関も持株会社を設立できるように(同、公正取引委員会「金融機関の業態区分の緩和…」)

  • 1998年6月:金融ビッグバンを実施するための「金融システム改革のための関係法律の整備等に関する法律」が成立(同「独占禁止法制の動き」)

「〇〇ホールディングス」は法律違反にならないの?

なりません。1997年以降、持株会社は原則として自由につくれます。グループの総資産が大きければ公取委への報告が必要ですが、それは監視のための手続きで、9条が禁じる3類型に当たらない限り、持株会社であること自体は違法ではありません。

ただし、法律上問題がないことと、投資先としてどう評価するかは別の話です。投資家から見た持株会社の論点は、次の記事で解説しています。

コンツェルンとホールディングスの言葉の違いはコンツェルンとホールディングスの違いで解説しています。

まとめ

  • コンツェルン(持株会社などの親会社が、株式の保有で企業を束ねる企業グループ)は、今の日本では禁止されていない

  • 1947年の独占禁止法9条は、GHQの財閥解体を受けて財閥の復活を防ぐために持株会社を禁止した。禁止が続いたのは実際には純粋持株会社で、事業持株会社は1949年改正以降認められた

  • 1997年12月17日施行の改正で解禁。2002年の改正で、9条の禁止の対象は持株会社に限らない「事業支配力が過度に集中することとなる会社」になった

  • 9条がいま禁止するのは、公取委が示す3つの類型に当たる過度な集中だけ。大規模なグループは毎年公取委に報告し、公取委は9条を維持して監視を続けている

  • 個別の市場での競争は、10条(株式保有)・15条(合併)の企業結合審査で扱われる

  • 投資家にとっては、持株会社であること自体は問題ではない。M&AやTOBで見ておきたいのは、公取委の企業結合審査の行方

コンツェルンの意味や仕組み、カルテル・トラストとの違いは、次の記事で全体を整理しています。

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コラム著者・編集者

K

KabuGraph編集部

KabuGraph編集部は、投資情報の発信と株式分析ツールの開発に携わるチームです。日本株・米国株の事業分析から、投資に役立つ情報をわかりやすくお届けします。

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