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Welby(4438)の企業分析|製薬会社向けPHRアプリ、売上2.3倍予想の実現性

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Welby(ウェルビー、4438)は、糖尿病や高血圧、がんなどの患者が症状や血圧を記録して医師と共有するスマートフォンアプリ(PHR=パーソナル・ヘルス・レコード)を作り、運営する会社です。アプリは患者には無料で、お金を払うのは製薬会社と、医療機関・企業・自治体・保険者です。2025年12月期の売上高6.36億円のうち53%が、製薬会社の依頼で作る疾患別アプリ(疾患ソリューション事業)でした(Welby 2025年12月期 決算短信)。

業績は赤字が続いています。2025年12月期は売上高6.36億円(前期比+20.4%)、営業損失4.53億円。2026年12月期は売上高14.66億円(前期の2.3倍)、営業損失0.30億円を計画していますが、上期(1〜6月)の実績は売上高3.76億円・営業損失2.57億円で、予想どおりなら下期だけで売上高10.9億円が要ります(2026年12月期 第2四半期決算短信)。

会社が通期予想を出した直近4期(2020・2023・2024・2025年12月期)は、いずれも売上高が予想の45〜71%にとどまり、決算期が終わってから下方修正しています。財務面では2026年6月末の純資産が1.08億円(自己資本比率6.7%)まで減り、転換社債や新株予約権による潜在株式が発行済株式の25.6%あります(第三者割当による新株式の発行に関するお知らせ)。2026年10月13日終値の株価は297円、時価総額は約25億円です。この記事では、稼ぎ方、予想の達成に何が要るか、財務と上場維持基準、競合、株価指標を一次資料から整理します。

会社概要 — 創業者が3割強を持つPHRの専業

Welbyは2011年9月、比木武氏(現・代表取締役)が東京都渋谷区で設立した会社です。比木氏は住友商事、楽天を経て、メドピアで取締役COOを務めた後に当社を創業しました(Welby 有価証券報告書(2025年12月期) p.5・p.54)。2019年3月29日に東証マザーズに上場し、2022年4月の市場区分の見直しでグロース市場に移りました。

  • 証券コード・市場:4438(東証グロース)

  • 設立:2011年9月(株式会社ウェルビーとして設立、2018年10月に現社名へ変更)

  • 本社:東京都中央区京橋

  • 代表者:代表取締役 比木武。2023年4月から共同代表だった山本武氏は2026年3月30日に退任し、比木氏の単独代表になりました

  • 従業員:連結44人(2025年12月末)

  • セグメント:PHRプラットフォームサービス事業の単一セグメント(12月決算)

出典:Welby 有価証券報告書(2025年12月期)・代表取締役の異動(内定)に関するお知らせ(2026年2月24日)・Welby公式サイト「Welbyについて」よりKabuGraph作成

沿革 — 製薬会社向けのアプリから、医療機関・保険者向けへ

  • 2011年9月:株式会社ウェルビーを設立

  • 2017年12月:デジタルガレージと日本郵政グループが出資し、業務提携

  • 2019年3月:東証マザーズに上場

  • 2019年11月:医薬品卸のスズケンと資本業務提携

  • 2019年12月:がん患者向けアプリ「WelbyマイカルテONC」を公開

  • 2023年6月:保険者向けの子会社Welbyヘルスケアソリューションズを設立(12月に日本生命が同社に出資)

  • 2023年11月:スズケンがデジタルガレージから130万株を買い取り、主要株主に

  • 2024年4月:中部電力と資本業務提携(第三者割当増資)。中部電力からメディカルデータカード(MeDaCa)の株式の50%を取得して子会社に

  • 2025年12月:転換社債と新株予約権を投資会社のマイルストーン・キャピタル・マネジメントに発行

  • 2026年4月:患者向けの医薬品情報サイト「Kotokoto」を開始

出典:Welby 有価証券報告書(2025年12月期) 沿革・株式の売出し、主要株主の異動及びその他の関係会社の異動に関するお知らせ(2023年11月10日)・日本生命保険相互会社と業務提携に関する基本合意書締結…のお知らせ(2023年12月21日)・メディカルデータカード株式会社の株式の取得(子会社化)に関するお知らせ・第三者割当による第13回新株予約権及び第1回無担保転換社債型新株予約権付社債の発行…に関するお知らせよりKabuGraph作成

大株主 — 比木氏が33.67%、スズケンが19.65%

  • 比木武(代表取締役):33.67%

  • スズケン(医薬品卸):19.65%

  • ブライトリンクパートナーズ:5.26%

  • 中部電力:5.15%

  • 日本郵政キャピタル:4.20%

出典:Welby 半期報告書(2026年12月期) 大株主の状況(2026年6月30日現在、自己株式を除く発行済株式に対する割合)よりKabuGraph作成

スズケンは2025年12月末に議決権の20.04%を持ち、Welbyを持分法適用会社にしていました。2026年3月に転換社債の転換で株式数が増えて20%を下回り、取締役の派遣も終わったため、スズケンは「その他の関係会社」ではなくなりました(支配株主等に関する事項及びその他の関係会社の異動に関するお知らせ)。

比木氏は2026年9月15日、1株500円で10万株(5,000万円)を自ら引き受ける第三者割当増資を発表しました。発行価額は直前の終値249円の約2倍で、払込期日は9月30日、引受後の持株比率は34.44%の見込みです(第三者割当による新株式の発行に関するお知らせ)。

売上の内訳 — 製薬会社向けが53%、上位2社は提携先

セグメントは1つですが、会社は売上高を「疾患ソリューション事業(製薬企業向け)」と「マイカルテ事業(医療機関・企業・自治体・保険者向け)」に分けて開示しています。2025年12月期は疾患ソリューションが3.37億円(53.1%)、マイカルテが2.98億円(46.9%)でした。

サービス別の売上構成比(2025年12月期)

出典:Welby 2025年12月期 決算短信「経営成績の概況」よりKabuGraph算出。売上高635.7百万円に占める割合(単一セグメントのため、会社が開示するサービス別の売上高)。疾患ソリューション事業は製薬企業向け、マイカルテ事業は医療機関・企業・自治体・保険者向け

サービス別の売上高の推移

出典:Welby 決算短信(2020/12・2021/12・2022/12・2023/12・2024/12・2025/12)の「経営成績の概況」よりKabuGraph作成。2019/12は2020年12月期決算短信の前期比から算出。2022/12までは単体、2023/12からは連結。四捨五入のため合計は通期の売上高と一致しないことがある。会社はサービス別の予想を開示していない
  • 2023年の半減:売上高は前期の10.51億円から5.75億円に45.2%減りました。会社は「製薬企業向け案件長期化による受注遅れ及びPHR共通基盤にかかる事業化と受注の遅れ」を理由に挙げています(2023年12月期 決算説明資料 p.12(スライド番号11)。2022年は単体、2023年は連結の比較)

  • 2025年のマイカルテ増加:メディカルデータカードの子会社化と、PHRプラットフォームの要件定義・開発の売上計上で+148.2%(2025年12月期 決算短信)

  • 2025年の疾患ソリューション減少:同じ年に疾患ソリューションは4.08億円から3.37億円に17.3%減りました。会社は「当初想定案件の受注未達及びPHRサービス及び当社のPHRプラットフォーム案件の長期化による受注期ズレ等」を理由に挙げています(2025年12月期 決算短信)

主な販売先は、2025年12月期で日本生命保険が16.1%、中部電力が15.8%でした(有価証券報告書(2025年12月期) p.22)。日本生命は子会社Welbyヘルスケアソリューションズの株主、中部電力はWelbyの株主でもある提携先で、2社で売上の約3割を占めます。

事業を理解する — 患者は無料、製薬会社と医療機関・保険者が払う

WelbyのPHRは、医師が患者にアプリを紹介し、患者が血圧・血糖値・症状などを記録して、本人の同意のもとで医療者が診察に使う、という流れで使われます(有価証券報告書(2025年12月期) p.7)。患者は無料で使え(Welbyマイカルテ「よくあるご質問」)、売上は製薬企業と、医療機関・企業・自治体・保険者から得ています。

Welbyのお金の流れ。製薬企業が疾患ソリューション事業に3.37億円(売上の53%)、医療機関・企業・自治体・保険者がマイカルテ事業に2.98億円(47%)を払い、患者はアプリを無料で使う(2025年12月期)
出典:Welby 有価証券報告書(2025年12月期)「事業の内容」・2025年12月期 決算短信よりKabuGraph作成

収益の形は2つです。製薬企業向けは、初期開発費とプラットフォームのライセンス付与に加え、保守運用・機能ごとの料金・ライセンス料を毎年受け取ります(改修やユーザー調査も請け負います)。医療機関・企業・自治体向けは、初期導入費のほか、固定の利用料と利用者数などに応じた従量の料金を受け取ります(2026年12月期 第2四半期決算説明資料 p.32(スライド番号31))。

疾患ソリューション事業 — 製薬会社と作る疾患別アプリ

Welby公式サイトのサービス一覧。潰瘍性大腸炎・クローン病向け「IBDサプリ」と全身性エリテマトーデス向け「LupusPRO」
出典:Welby公式サイト「サービス」

製薬企業の依頼で、その薬を使う患者と医療者向けのアプリを開発・運営する事業です。新薬の発売にあわせ、薬の適正使用、病気の啓発、患者の治療継続の支援に使われます。アプリは主に製薬企業のブランド名で提供されますが、保守・運用・問い合わせ対応はWelbyが担います。臨床研究で患者の報告を集めるツール(ePRO)としての利用も増えていると会社は説明しています(有価証券報告書(2025年12月期) p.7)。

  • Tダイアリー:肺がん治療薬タグリッソを服用する患者の服薬状況や症状を記録

  • IBDサプリ:潰瘍性大腸炎・クローン病の患者が排便状況などを記録し、医師に伝える

  • HAEノート:遺伝性血管性浮腫の発作を写真やメモで記録

出典:Welby 有価証券報告書(2025年12月期) p.8-9よりKabuGraph作成

Welbyの疾患領域ごとのPHRラインナップ。生活習慣病・がん・中枢神経疾患・自己免疫疾患・希少疾患など、これまでに44疾患でPHRを提供(サービス終了分を含む)
出典:Welby 2026年12月期 第2四半期決算説明資料 p.6(PDFのページ番号。スライド右下の番号は5)

これまでに44疾患でアプリを提供し(終了したサービスを含む)、製薬企業向けの開発実績は約40件です(2026年12月期 第2四半期決算説明資料 p.6・p.34)。

売上は第4四半期(10〜12月)に偏ります。主要顧客である外資系製薬企業の決算が集中する第4四半期に納品・検収が多くなり、期末に予定した案件がずれると、その年の売上から抜け落ちます(有価証券報告書(2025年12月期) p.18)。2026年12月期の上期は、製薬企業から受注した新規PHRサービスの売上計上で、疾患ソリューションの売上高が2.44億円(前年同期比+81.2%)に伸びました(2026年12月期 第2四半期決算短信)。

疾患領域単位のPHRプラットフォーム事業の説明。薬剤単位の個別開発から、疾患領域単位のプラットフォームへの転換と、PF契約料・OEM契約料・年間利用料などの報酬形態
出典:Welby 2026年12月期 第2四半期決算説明資料 p.25(PDFのページ番号。スライド右下の番号は24)

会社は、薬ごとに個別に開発する形から、疾患領域ごとの共通プラットフォームにライセンスを付与する形への転換を進めています。契約を長くし、個別開発(フロー)中心の収益を年間利用料などの継続収益(ストック)中心に変える狙いです(2026年12月期 第2四半期決算説明資料 p.24-25・第三者割当による新株式の発行に関するお知らせ)。

WelbyマイカルテONC — がん治療中の体調・副作用を記録

WelbyマイカルテONCの公式サイト。がん・血液疾患で治療通院中の患者向けの手帳アプリ
出典:WelbyマイカルテONC公式サイト

がん・血液疾患で通院する患者が、日々の体調や副作用を記録して医療者に伝えるアプリで、2019年12月に公開しました(有価証券報告書(2025年12月期) 沿革)。会社は疾患ソリューション事業の中で説明しており、患者の記録を、がん治療のリアルワールドデータとして研究に使うことも見込んでいます(2025年12月期 決算短信)。

がん診療連携拠点病院など464施設のうち、契約医療機関は68施設(2026年6月末、14.7%)です。会社は2026年に100施設、2027年に150施設を目標にしています(2026年12月期 第2四半期決算説明資料 p.13)。

Welbyマイカルテ事業 — 医療機関・企業・自治体向け

Welbyマイカルテの一般の方・患者向けページ。高血圧や糖尿病など生活習慣病の患者のための自己管理アプリ
出典:Welbyマイカルテ公式サイト(一般の方・患者向けページ)

糖尿病・高血圧などの生活習慣病の患者向けの自己管理アプリです。血圧計・血糖測定器・体重計などと連携して測定値を記録でき、家族や登録した医療機関と共有できます(有価証券報告書(2025年12月期) p.10)。売上の出どころは4つです。

  • PHR基盤のOEM提供:自社でPHRサービスを始めたい生命保険会社などの企業に、マイカルテの仕組みを提供

  • 健康保険組合・自治体:生活習慣病の重症化予防ツールとしての利用料

  • 製薬会社・機器メーカー・検査会社:月額の利用料

  • 医療機関:有料機能の利用料

出典:Welby 有価証券報告書(2025年12月期) p.10よりKabuGraph作成

Welbyマイカルテの医療機関向けページ。患者の血圧などの記録を医療機関の管理画面で確認できるクラウドサービス
出典:Welbyマイカルテ公式サイト(医療機関向けページ)

利用者が登録したかかりつけ医療機関は33,927施設(2026年6月末、無料利用を含む)、Welbyの各アプリの合計ダウンロード数は約125万回です(2026年12月期 第2四半期決算短信)。子会社MeDaCaのアプリを含めると152万超です。マイカルテの契約医療機関は7,270施設で、会社は2027年に1万施設を目標にしています(2026年12月期 第2四半期決算説明資料 p.13・p.33)。

注力疾患領域の事業戦略とKPI。マイカルテ契約医療機関7,270軒(2026年6月末)、2027年目標1.0万軒、オンコロジーの契約医療機関68軒(2026年目標100軒、2027年目標150軒)
出典:Welby 2026年12月期 第2四半期決算説明資料 p.13(PDFのページ番号。スライド右下の番号は12)。スライドの「アプリDL数150万DL」は子会社MeDaCaのアプリを含む値(同資料 p.33)で、本文の約125万回はWelbyの各アプリの合計(第2四半期決算短信)

マイカルテ事業の売上高は2025年12月期に2.98億円(前期比+148.2%)でしたが、2026年12月期上期は一部案件の期ズレなどで1.32億円(前年同期比−13.7%)に減りました(2026年12月期 第2四半期決算短信)。

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保険者・自治体向け — みなし健診と重症化予防

Welbyのプレスリリース。静岡県袋井市と契約し、国民健康保険に加入する40歳以上の市民を対象に「みなし健診」サービスを開始
出典:Welby プレスリリース「Welby、静岡県袋井市と契約し「みなし健診」事業で住民の特定健診受診率向上を推進」(2026年7月2日)

2023年6月に設立した子会社Welbyヘルスケアソリューションズ(当社の持分93.4%、日本生命も出資)が、健康保険組合や自治体向けの事業を担います(有価証券報告書(2025年12月期) p.12・日本生命保険相互会社と業務提携に関する基本合意書締結…のお知らせ)。

  • みなし健診:特定健診を受けていない人について、通院先の医療機関から同じ項目の検査結果を受け取り、特定健診を受けたとみなす。2026年6月から静岡県袋井市の国民健康保険で提供を始めた(プレスリリース 2026年7月2日)。PHCホールディングス傘下のウィーメックスとも、健診代行に組み合わせる協業を始めた(プレスリリース 2026年6月3日)

  • 重症化予防:2025年9月に横須賀市でPHRを使った重症化予防事業を始め、11月にはアボットの持続グルコース測定器「FreeStyleリブレ」と組み合わせた事業を始めた(有価証券報告書(2025年12月期) 沿革)

自治体向け事業の推進と医療機関ネットワークの構築。みなし健診・重症化予防の提供を通じて医療機関ネットワークをつくり、PHRデータの利活用やデータ販売につなげる構想
出典:Welby 2026年12月期 第2四半期決算説明資料 p.26(PDFのページ番号。スライド右下の番号は25)

この領域は計画どおりに進んでいません。2024年・2025年12月期の業績予想の下方修正では、いずれも保険者向け事業の開発の遅れが理由の一つに挙げられています(2025年1月31日・2026年1月30日の業績予想の修正に関するお知らせ)。

MeDaCa — 検査結果を患者のスマートフォンに返す

メディカルデータカードの公式サイト。医療機関向け「MeDaCa PRO」で外注検査結果を患者に共有するサービス
出典:メディカルデータカード(MeDaCa)公式サイト

医療機関が外注した臨床検査の結果を、患者のスマートフォンに返すサービスです。2024年4月、中部電力から株式の50.0002%を1.5億円で取得して子会社にしました。取得前の2023年3月期は売上高0.38億円、営業損失2.31億円でした(メディカルデータカード株式会社の株式の取得(子会社化)に関するお知らせ)。

2026年2月にはマイカルテとのデータ連携を始め、検査値と日々の生活記録をまとめる狙いを示しています(Welby プレスリリース 2026年2月12日)。

Kotokoto — 2026年4月に始めた患者向け医薬品情報

患者中心医療の支援サイト「お薬のこと・病気のこと(Kotokoto)」のトップページ。薬の名前から作用や副作用を調べられる
出典:お薬のこと・病気のこと(Kotokoto)公式サイト

処方薬を使う患者や家族向けに、薬の作用・副作用や病気の情報を載せるサイトで、2026年4月20日に始めました。医薬品医療機器総合機構(PMDA)の情報や「くすりのしおり」などを参照し、患者・医療従事者は無料、製薬企業向けの管理機能は有償です(Welby プレスリリース 2026年4月22日)。会社は2026年12月期の予想で、この「患者向け医療教育プラットフォーム」を新しい収益源に数えています(業績予想の開示に関するお知らせ)。

業績推移と財務分析

通期業績 — 2022年の黒字を最後に、営業赤字が続く

2020年12月期以降で売上高が最も多かったのは2021年12月期の11.39億円で、2023年12月期に5.75億円へ半減しました。営業損益は2022年12月期の0.61億円の黒字を除いて赤字で、2024年12月期は営業損失6.54億円(営業利益率−123.9%)まで膨らみました。

通期業績推移(売上高・営業利益・純利益・営業利益率・売上高成長率)

出典:Welby 決算短信(2020/12・2021/12・2022/12・2023/12・2024/12・2025/12)・業績予想の開示に関するお知らせ(2026年2月24日)・2026年12月期 第2四半期決算短信よりKabuGraph作成。2022/12までは単体、2023/12からは連結。純利益は当期純利益(連結は親会社株主に帰属する当期純利益)。2026/12(予)は会社予想(2026年2月24日公表、8月13日の第2四半期決算時点で修正なし)。会社は売上高と営業利益だけを予想し、経常利益・純利益・EPSの予想は開示していない(開示に理由の記載はない)。営業利益率は営業利益÷売上高。売上高成長率は各期の決算短信に記載の前期比(千円単位の値から計算した率。2023/12は短信に記載がないため2023年12月期 決算説明資料 p.12の値、2026/12(予)は2026年12月期 第2四半期決算短信に記載の会社予想の前期比)
  • 純損失が営業損失より大きいのは減損:ソフトウェアなどの減損損失を2023年12月期に0.81億円、2024年12月期に1.61億円、2025年12月期に0.94億円計上しました。2020年12月期は減損0.86億円と繰延税金資産の取り崩し0.19億円がありました(2021年1月21日・2024年1月31日・2025年1月31日・2026年1月30日の特別損失の計上及び業績予想の修正に関するお知らせ)

  • 粗利率は約7割、販管費が売上を上回る:2025年12月期の売上総利益率は70.6%でしたが、販管費9.01億円が売上高の1.4倍あり、営業赤字が続いています(2025年12月期 決算短信)

  • 2026年12月期の計画:会社は、疾患領域単位のプラットフォームの稼働、患者向け医療教育プラットフォームやデータ・リサーチの新規事業、保険者向け事業の拡大で売上を伸ばすとし、組織強化や開発への投資は続けるため営業損失0.30億円としています(業績予想の開示に関するお知らせ)

会社予想と実績 — 予想を出した4期はいずれも売上高が予想の45〜71%

会社が通期予想を開示した直近4期は、いずれも第3四半期まで予想を据え置き、決算期が終わった後の1月に大幅な下方修正をしています。2021年・2022年12月期は「合理的な業績予想の算定が困難」として期初に予想を開示せず、期中も公表しませんでした(2020年12月期・2021年12月期・2022年12月期の決算短信)。

2026年12月期も、2月13日の決算短信では「第4四半期会計期間に売上が大きくなる季節的変動性の影響など」を理由に予想を出さず、11日後の2月24日に開示しました(2025年12月期 決算短信・業績予想の開示に関するお知らせ)。

決算期

会社予想

実績

達成率

2020/12
(2020年2月公表)

12.17億円

8.65億円

71.0%

2023/12
(2023年8月公表)

11.56億円

5.75億円

49.8%

2024/12
(2024年8月公表)

11.73億円

5.28億円

45.0%

2025/12
(2025年8月公表)

11.52億円

6.36億円

55.2%

2026/12
(2026年2月公表)

14.66億円

上期
3.76億円

上期
25.7%

数値はいずれも売上高。出典:Welby 業績予想の修正に関するお知らせ(2021年1月21日・2024年1月31日・2025年1月31日・2026年1月30日)・業績予想の開示に関するお知らせ(2026年2月24日)・2026年12月期 第2四半期決算短信よりKabuGraph算出。2023〜2025年は第2四半期決算の時点で初めて通期予想を開示した。達成率は実績÷予想(2026/12は上期実績÷通期予想)

営業損益も、予想(2020年は営業利益1.12億円、2023〜2025年は営業損失1.06億円・1.64億円・0.86億円)に対し、実績は営業損失2.38億円・4.37億円・6.54億円・4.53億円でした。修正の開示で会社が挙げた理由は次のとおりです。

  • 第4四半期への集中:外資系製薬企業の決算が集中する第4四半期に納品・検収が偏り、そこで受注が遅れると年間の売上がそのまま減る(各年)

  • 受注の期ズレと案件の長期化:製薬企業からの案件の受注見込みのずれ、案件の長期化、期中の新規案件の積み上げ不足(2023〜2025年)

  • 新規事業の遅れ:PHR基盤を企業に提供する案件の受注リードタイムの長期化、保険者向け事業の開発の遅れ(2023〜2025年)

  • 2020年:新型コロナウイルスの拡大による顧客の意思決定の遅れや、開発の長期化

出典:Welby 業績予想の修正に関するお知らせ(2021年1月21日・2024年1月31日・2025年1月31日・2026年1月30日)よりKabuGraph作成

2026年12月期 上期 — 予想の達成には下期に売上10.9億円

上期(1〜6月の累計)の売上高は3.76億円(前年同期比+30.7%)、営業損失は2.57億円(前年同期は2.50億円の損失)でした。疾患ソリューションが新規PHRサービスの計上で2.44億円(+81.2%)に伸び、マイカルテは期ズレなどで1.32億円(−13.7%)でした(2026年12月期 第2四半期決算短信)。通期予想は8月13日時点で修正していません。

上期・下期の売上高(2026/12(予)の下期は通期予想−上期実績)

出典:Welby 第2四半期決算短信(2021/12・2022/12・2023/12・2024/12・2025/12・2026/12)・決算短信(2021/12・2022/12・2023/12・2024/12・2025/12)・業績予想の開示に関するお知らせよりKabuGraph算出。下期=通期−上期累計(千円単位で計算し、四捨五入のため合計は通期の売上高と一致しないことがある)。2026/12(予)の下期は会社予想(2026年2月24日公表、8月13日時点で修正なし)の通期売上高14.66億円から上期実績を引いた額。2022/12までは単体
  • 必要な下期売上は10.9億円:2025年の下期(3.48億円)の3.1倍、2021年以降で最も多かった2021年の下期(7.50億円)の1.45倍です

  • 下期に約2.3億円の営業黒字が要る:下期の営業損益は2021年が1.17億円、2022年が1.75億円の黒字でしたが、2023〜2025年は1.52億〜3.47億円の赤字でした(各期の短信からKabuGraph算出)

  • 受注の手がかり:2026年6月末の仕掛品は0.56億円(2025年12月末0.04億円)、前受けにあたる契約負債は0.94億円(同0.56億円)に増えました(2026年12月期 第2四半期決算短信)。会社は「下期に向けた受注も堅調に推移」と説明しています(2026年12月期 第2四半期決算説明資料 p.16)

売上のフローとストックの内訳。2026年上期はストック2.31億円(61%)、フロー1.45億円(39%)。2025年上期はストック2.07億円(72%)、フロー0.79億円(28%)
出典:Welby 2026年12月期 第2四半期決算説明資料 p.18(PDFのページ番号。スライド右下の番号は17)

上期の売上のうち、PHRプラットフォームの利用料や運用・改修など継続的に入る「ストック」は2.31億円(61%)、ライセンスや初期開発費などの「フロー」は1.45億円(39%)でした(2026年12月期 第2四半期決算説明資料 p.18)。

財務 — 純資産1.08億円、資金は外部からの調達頼み

赤字が続き、自己資本は2023年12月末の10.63億円から2026年6月末には0.57億円に減りました。自己資本比率は6.7%、純資産(新株予約権と非支配株主持分を含む)は1.08億円です(2026年12月期 第2四半期決算短信)。

財務の推移(自己資本・現預金・自己資本比率)

出典:Welby 決算短信(2021/12・2022/12・2023/12・2024/12・2025/12)・2026年12月期 第2四半期決算短信よりKabuGraph作成。自己資本は純資産から新株予約権と非支配株主持分を除いた額。現預金は期末の現金及び現金同等物(2026/6末は現金及び預金)。2022/12末までは単体

株式・新株予約権・転換社債による直近の資金調達は次の3回です。

  • 2024年4月:中部電力に第三者割当増資(434,782株、1株1,150円、手取り4.97億円)

  • 2025年12月:マイルストーン・キャピタル・マネジメントに転換社債3.78億円(転換価額378円で固定)と第13回新株予約権(106万株分、当初の行使価額378円)を発行。2026年3月に16万株分が転換され、社債の残高は3.18億円

  • 2026年9月:比木氏に第三者割当増資(10万株、1株500円、0.5億円、払込期日9月30日)

出典:第三者割当による新株式の発行に関するお知らせ(2026年9月15日)・第三者割当による第13回新株予約権及び第1回無担保転換社債型新株予約権付社債の発行…に関するお知らせ(2025年11月14日)・2026年12月期 第2四半期決算短信よりKabuGraph作成

株価(10月13日終値297円)は転換価額・行使価額の378円を下回っており、このままでは転換や行使による資本の増加は見込みにくい状況です。第13回新株予約権には、取締役会の決議で行使価額を直前の終値の90%に修正できる条項があり(下限252円)、割当日(2025年12月1日)から6か月が過ぎた2026年6月以降は修正できる状態です。10月13日までに修正の開示はありません(第三者割当による第13回新株予約権…の発行…に関するお知らせ)。

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2026年9月15日時点の潜在株式は216万株で、発行済株式(843.6万株)の25.6%にあたります。転換社債の未転換分が84万株、第13回新株予約権が106万株で、残りの約26万株はストックオプションなどその他の新株予約権です(差し引きでKabuGraph算出。第三者割当による新株式の発行に関するお知らせ)。9月30日の比木氏への割当(10万株)が行われていれば、発行済株式853.6万株に対して25.3%です。すべてが株式になれば、1株あたりの価値はその分薄まります。

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株価指標(2026年10月13日終値)

  • 株価:297円

  • 時価総額:約25億円

  • PER:算出できない(2025年12月期のEPSは−65.21円。2026年12月期は純利益・EPSの予想を開示していない)

  • PBR:11.2倍(2025年12月末のBPS 26.59円)。2026年6月末の自己資本で計算すると約44倍

  • PSR(時価総額÷売上高):3.9倍(2025年12月期の実績)、1.7倍(2026年12月期の会社予想)

  • 配当:無配(2026年12月期も0円の予想)

出典:東証株価・Welby 2025年12月期 決算短信・2026年12月期 第2四半期決算短信よりKabuGraph算出(2026年10月13日終値)

純資産が小さいため、PBRは割高・割安を測る物差しとしてほとんど意味を持ちません。赤字でPERも使えないため、売上高に対する時価総額(PSR)と、会社予想の達成度で見ることになります(KabuGraphの見方)。株価は2023年の高値818円、2024年の高値834円から下がり、2026年4〜9月は231〜350円で推移しました(第三者割当による新株式の発行に関するお知らせ 最近の株価の状況)。

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競合との比較

会社は「PHR業界での競合は同様の規模感のものは現在明確に存在しない」としています(Welby 2026年12月期 第2四半期決算説明資料 p.35(スライド番号34))。ただ、Welbyの売上を支える3種類の顧客(製薬企業、保険者・自治体、医療機関)のそれぞれに、規模の大きい上場企業が別の商品で入り込んでいます。

会社

売上高
(億円)

営業
利益率

Welby(4438)

6.4

−71.2%

JMDC(4483)

504.6

20.8%

メドレー(4480)

367.9

5.8%

エムスリー(2413)

3,513.6

20.9%

出典:Welby 2025年12月期 決算短信・JMDC 有価証券報告書(2026年3月期)・メドレー 有価証券報告書(2025年12月期)・エムスリー 2026年3月期 決算短信よりKabuGraph算出。各社の直近の通期実績(Welby・メドレーは2025年12月期、JMDC・エムスリーは2026年3月期でIFRSの売上収益・営業利益)。営業利益率は営業利益÷売上高
  • 製薬企業向け

    • エムスリー:医師会員35万人以上の医療従事者向けサイト「m3.com」で、製薬企業の情報を医師に届ける「MR君」などのマーケティング支援が柱です(エムスリー 2026年3月期 決算短信)。Welbyとは届け先(医師か患者か)が違いますが、どちらも製薬企業の販売促進の予算から支払われます(KabuGraphの見方)

    • CureApp(非上場):高血圧症やニコチン依存症などの治療用アプリを開発しています(CureApp公式サイト「プロダクト」)。患者の記録と行動の変化を支える点で、Welbyの疾患別アプリと重なります

  • 保険者・自治体向け

    • JMDC:健康保険組合の保健事業をデータで支援し、加入者向けのPHR「Pep Up」を提供しています。子会社のキャンサースキャンを通じ、自治体の特定健診の受診率向上事業も手がけます(JMDC 有価証券報告書(2026年3月期) p.6)。Welbyのみなし健診・重症化予防と顧客が重なります

  • 医療機関・患者向け

    • メドレー:診療所向けのクラウド「CLINICS」(電子カルテ、Web予約・問診、オンライン診療)と、患者向けアプリ「melmo」を提供しています(メドレー 有価証券報告書(2025年12月期) p.8)。診療所と患者をアプリでつなぐ点が、マイカルテの医療機関向けサービスと重なります

規模の差は大きく、Welbyの売上高はJMDCの約80分の1、エムスリーの約550分の1です。

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投資家が注目すべきポイント

強み

1. 製薬企業と作る疾患別アプリの実績

これまでに44疾患でアプリを提供し、製薬企業向けの開発は約40件です。がん領域のマイカルテONCは68施設と契約しています(2026年6月末)。

2. 患者は無料、医療機関を通じて広がる基盤

かかりつけ登録は33,927施設、アプリの合計ダウンロードは約125万回です(2026年6月末)。費用は製薬企業や企業・保険者が払うため、患者に課金せずに利用者を増やせます。

3. 大手企業との提携

スズケンと中部電力が株主で、日本生命は子会社に出資しています。中部電力と日本生命は2025年12月期の主要な販売先でもあり、TISI(旧TIS)やウィーメックスとも協業を始めました。

4. 継続収益の比率と高い粗利率

2026年12月期上期の売上の61%が利用料などのストック収益で、売上総利益率は2025年12月期で70.6%です。売上が伸びれば固定費を吸収しやすい構造です。

リスク

1. 予想を出した4期すべてで大幅な未達

予想を出した2020・2023・2024・2025年12月期は、売上高が予想の45〜71%でした。2026年12月期は下期だけで売上高10.9億円、営業黒字約2.3億円が要ります。

2. 純資産1億円と上場維持基準

2026年6月末の純資産は1.08億円です。12月末に東証の基準でいう純資産の額がゼロ以下になると、1年以内に解消しなければ上場廃止になります。

3. 転換社債・新株予約権による希薄化

潜在株式は発行済株式の25.6%(2026年9月15日時点)です。株価が378円を上回るか、新株予約権の行使価額が引き下げられると、株式が増える可能性があります。

4. 2029年末からの時価総額基準(40億円→100億円)

上場10年を迎えるWelbyは2029年12月末に時価総額40億円以上、2030年12月末からは見直し後の100億円以上で判定されます。満たさなければ原則1年の改善期間を経て上場廃止で、100億円基準の猶予を受けても、2031年以後の事業年度末に40億円を割れば上場廃止です。2026年10月13日の時価総額は約25億円です。

5. 特定の顧客と第4四半期への依存

2025年12月期は上位2社(日本生命・中部電力)で売上の約3割を占めました。製薬企業向けは第4四半期に納品が集中し、期ズレがそのまま年間の業績に響きます。

まとめ

Welby(4438)は、製薬企業と医療機関・企業・自治体・保険者からお金を受け取り、患者が無料で使うPHRアプリを作る会社です。

  • 事業:製薬企業向けの疾患別アプリ(2025年12月期の売上の53%)と、医療機関・企業・保険者向けのマイカルテ(47%)。44疾患の開発実績と、かかりつけ登録3.4万施設の基盤を持つ

  • 業績:2025年12月期は売上高6.36億円・営業損失4.53億円。2026年12月期は売上高14.66億円・営業損失0.30億円を計画するが、上期は3.76億円で、下期に10.9億円が要る

  • 財務:純資産1.08億円(2026年6月末)、潜在株式25.6%。年末の純資産と資金調達、2029年末からの時価総額基準(40億円、2030年末から100億円)が論点

  • 株価指標:時価総額約25億円、PSRは会社予想の売上高に対して1.7倍、PBR 11.2倍(2026年10月13日終値)

予想どおりなら営業赤字がほぼ解消する小型株ですが、会社予想は過去4回とも大きく外れています。11月中旬の第3四半期決算で、売上の積み上がり、受注の状況、純資産の水準を確かめたい銘柄です。


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4438情報通信・サービスその他

Welby

生活習慣病を中心とした疾患管理向けPHR(Personal Health Record)プラットフォームを提供する医療IT企業。患者がスマートフォンアプリで記録した血圧・血糖値・体重等のデータを医療者と共有し、治療継続と行動変容を支援する。…

本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。投資の最終判断はご自身の責任でお願いいたします。記事中の株価指標は2026年10月13日終値、その他の数値は2026年10月13日時点で確認できた開示(2026年12月期 第2四半期決算短信まで)に基づいています。

コラム著者・編集者

K

KabuGraph編集部

KabuGraph編集部は、投資情報の発信と株式分析ツールの開発に携わるチームです。日本株・米国株の事業分析から、投資に役立つ情報をわかりやすくお届けします。

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