ダウ理論とは|6つの法則と、高値・安値で判定するトレンド転換

ダウ理論とは、ウォール・ストリート・ジャーナルの創刊者チャールズ・H・ダウの考えを、ダウの没後に同紙の論説で相場を予想し続けたウィリアム・P・ハミルトンらがまとめた「トレンド(相場の流れ)」の見方です。上昇トレンドは高値と安値がともに切り上がる状態、下降トレンドはともに切り下がる状態で、トレンドは明確な転換のシグナルが出るまで続くとみなします。
ダウ理論の6つの基本法則は、①平均はすべての事象を織り込む ②トレンドには3種類ある ③主要トレンドは3段階からなる ④平均は相互に確認されなければならない ⑤トレンドは出来高でも確認されなければならない ⑥トレンドは明確な転換シグナルが出るまで継続する、の6つです。売買の判断に直接使うのは⑥で、上昇トレンドなら、戻りが前の高値に届かないまま、押し目でつけた安値(押し安値)を終値で割ったら、下降トレンドに転じたと判断します。
この記事では、ダウ理論の成り立ちと6つの法則の元の意味、トレンドと転換の見分け方の図解、任天堂の月末終値に当てはめた実例、研究で分かっている限界、日本株の個別銘柄での使い方を、ハミルトンの原著と日本テクニカルアナリスト協会の資料をもとに解説します(2026年10月13日時点)。押し目での買い方と移動平均線は、それぞれ別の記事で扱います。
この記事の内容(目次)
ダウ理論とは——ダウの論説を、後継者たちが理論にまとめた
ダウ理論の全体像を1枚にまとめると、次のようになります。成り立ちと6つの法則の中身は、このあと順に説明します。
ダウ理論の元は、チャールズ・H・ダウ(1851〜1902年、生没年はInternet Archiveの書誌)が新聞に書いた株式市場の見方です。ダウは経済ニュースのダウ・ジョーンズを共同で創業し、ウォール・ストリート・ジャーナルを創刊して編集者を務めました(Cowles「Can Stock Market Forecasters Forecast?」Econometrica 1巻3号(1933年)p.314)。
ダウ自身は、自分の考えをまとめた本を出していません(日本テクニカルアナリスト協会「伝統的理論」、2026年10月13日閲覧)。今「ダウ理論」と呼ばれているものは、ダウの死後に別の人たちがダウの論説を読み解き、まとめたものです。
1884年7月3日:ダウが、市場全体の動きを知るための平均株価を発表したといわれる。日本テクニカルアナリスト協会は、今のダウ工業株30種平均の元になった指数としている(日本テクニカルアナリスト協会「テクニカル分析の歴史」)
1896年:工業株の平均(5月26日)と鉄道株の平均(10月26日)の算出が始まる。S&P ダウ・ジョーンズ・インデックスは、今の「ダウ工業株平均」と「ダウ輸送株平均」の起点をこの2つの日としている(S&P Dow Jones Indices「Dow Jones Averages Methodology」2026年5月版 pp.7〜8(Internet Archive保存版))
1902年:ダウが死去。翌1903年、S・A・ネルソンが『The ABC of Stock Speculation』を出版し、ダウの考えを「ダウ理論」として紹介した(日本テクニカルアナリスト協会「伝統的理論」。著者名はInternet Archiveの書誌による)
1903〜1929年:ウィリアム・P・ハミルトンがウォール・ストリート・ジャーナルの論説で、ダウ理論に基づく相場の予想を26年間に255本書いた。ハミルトンは1929年12月に死去(Cowles(1933)p.314)
1922年:ハミルトンが『The Stock Market Barometer』(Harper & Brothers)を出版し、ダウ理論を詳しく説明した
1932年:ロバート・レアが『The Dow Theory』(Barron's)を出版。日本テクニカルアナリスト協会は、これでダウ理論が完成したと考えられている、としている
レアはダウ理論を12の「定理」に整理しました(Brown, Goetzmann & Kumar(1998年、討議論文版)第2節の注4)。6つの法則は、こうした原典の要点を後から6つにまとめた形で、言い回しは資料によって少しずつ違います。この記事では、日本テクニカルアナリスト協会の「伝統的理論」の6つの骨子に沿って説明します。
法則 | 意味 | 売買で見ること |
|---|---|---|
①平均はすべての事象を織り込む | 景気・業績・事件の影響は、いずれ株価の水準に表れる | ニュースそのものより、株価がどう反応したか |
②トレンドには3種類ある | 主要:1年〜数年 | 今見ているのはどの長さのトレンドか |
③主要トレンドは3段階からなる | 先行する投資家だけが動く→順張りの投資家が加わる→一般の投資家が加わる | 話題になり始めたのはどの段階か |
④平均は相互に確認されなければならない | 工業株と鉄道株の2つの平均が、同じ方向に動くこと | 業種や市場全体も同じ方向か |
⑤トレンドは出来高でも確認されなければならない | トレンドの方向に動くとき、出来高が増える | 上げる日・下げる日の出来高 |
⑥トレンドは明確な転換シグナルが出るまで継続する | 高値・安値の関係が逆転するまで、トレンドは続く | 押し安値・戻り高値を終値で抜けたか |
6つの基本法則——元の意味と、今の株価への当てはめ方
6つの法則を、ハミルトンの原著と日本テクニカルアナリスト協会の説明で、1つずつ確かめます。
①平均はすべての事象を織り込む
日本テクニカルアナリスト協会は、景気の変動や天変地異があっても、株価指数はいずれどこかの水準で落ち着き、それが「織り込む」の意味だと説明しています(日本テクニカルアナリスト協会「伝統的理論」)。ハミルトンも、市場は、誰もが知り、望み、信じ、予想していることのすべてを表していると書いています(Hamilton『The Stock Market Barometer』(1922年)p.8)。
投資家にとっては、「好材料が出たのに下がった」「悪いニュースなのに下げない」といった、情報そのものより株価の反応を見るという考え方につながります。
②トレンドには3種類ある
日本テクニカルアナリスト協会の説明では、トレンドは次の3つです(日本テクニカルアナリスト協会「伝統的理論」)。ハミルトンは主要トレンドの長さを「1年足らずから3年以上」と書いています(Hamilton(1922年)pp.8〜9)。
主要トレンド(メジャートレンド):1〜数年続く大きな流れ
二次トレンド(セカンダリー・スイング):主要トレンドの揺り戻し。数週間〜数か月、反対の方向に動き、それまでの変化幅の3分の1〜3分の2を戻す
小トレンド(マイナートレンド):二次トレンドの中の、3週間未満の小さな動き
大和証券の用語解説は、目安を長期1年〜数年、中期3週間〜3か月、短期3週間未満としています(大和証券「金融・証券用語解説:ダウ理論」、2026年10月13日閲覧)。
日足で見える上げ下げの多くは、二次トレンドか小トレンドです。同協会の用語集は、時間軸の使い方の例として「週足で大局を確認し、日足で売買タイミングを詰める」を挙げています(日本テクニカルアナリスト協会「用語集」、2026年10月13日閲覧)。上昇トレンドの中の揺り戻し(押し目)がどこまでなら押し目といえるかは、押し目買いの記事で目安を図解しています。
③主要トレンドは3段階からなる
主要トレンドは、上昇でも下降でも3つの段階を経るとされます。日本では「先行期・追随期・利食い期」とも呼ばれます(大和証券「金融・証券用語解説:ダウ理論」)。
第1段階(先行期):情報に明るい先行型の投資家だけが動き出す(日本テクニカルアナリスト協会「伝統的理論」)。レアの説明では、景気の先行きへの信頼が戻り始める段階
第2段階(追随期):株価指数が急速に動き始め、順張りの投資家が多数加わる。レアの説明では、企業業績の改善に株価が反応する段階
第3段階(利食い期):新聞に記事が出て関連するニュースも増え、一般の投資家が加わる最終段階。先行した投資家は売り抜ける(大和証券の用語解説)。レアの説明では、投機が盛んになりインフレが目立つ段階
レアは下降の主要トレンドも、高値で買われた根拠だった期待が捨てられる段階→景気と業績の悪化による売り→価値に関係なく健全な証券まで投げ売られる段階、の3つとしています。上の「レアの説明」とあわせて、Brown, Goetzmann & Kumar(1998年、討議論文版)第2節が引用するレアの記述によります。
どの段階にいるかは、後になってから分かるのがふつうです。ニュースで連日取り上げられ、周りの人が話題にし始めたら第3段階かもしれない、と疑うきっかけにはなりますが、段階を当てて売買のタイミングを計るのは難しいと考えておきましょう(KabuGraphの見方)。景気の局面と株価の関係は、次の記事でデータとともに解説しています。

景気サイクル(景気循環)とセクターローテーション|日本株で検証
景気サイクル(景気循環)は景気が拡張と後退を繰り返すこと。山と谷は内閣府が後から決め、2020年5月の谷の後の山は未定(2026年10月時点)。株価は景気に先行し、2018〜21年の日本株では谷の後に自動車・鉄鋼が強かった一方、銀行はモデルどおり動かなかった。
④平均は相互に確認されなければならない
元の意味は、ダウが作った工業株の平均と鉄道株の平均が、同じ方向に動くことです。日本テクニカルアナリスト協会は、景気が良くなって工業生産が活発になれば、原材料や製品の物流も活発になって鉄道株の平均も上がるはずで、片方だけが動くときは「騙し」の可能性がある、と説明しています(日本テクニカルアナリスト協会「伝統的理論」)。
ハミルトンは、2つの平均は互いに裏づけ合い、主要な動きで食い違うことは無いと書く一方、2つの平均が抜けるのは同じ日や同じ週でなくてよく、同じ方向に動けば足りるとしています(Hamilton(1922年)p.6・p.158)。日本株での置き換え方は、後の章で整理します。
⑤トレンドは出来高でも確認されなければならない
ダウは、主要トレンドの方向に平均が動くときに出来高が増えると考えました(日本テクニカルアナリスト協会「伝統的理論」)。ハミルトンも、出来高は強気相場の方が大きく、上げで増え、下げで減ると書いています(Hamilton(1922年)p.136)。
ただし、ハミルトン自身は別の章で、出来高は「一般に思われているほど重要ではない」とも書いています(Hamilton(1922年)p.177)。日本テクニカルアナリスト協会も、下降トレンドでは買い手が下がるのを待って買いを控えるので、出来高は増えない方が自然だ、と指摘しています(同「伝統的理論」)。出来高は判定の主役ではなく、値動きの裏づけを見る補助として使うのが原典にも近い使い方です。出来高の見方はローソク足の見方の記事でも扱っています。
⑥トレンドは明確な転換シグナルが出るまで継続する
一度できたトレンドは、はっきりした逆転のサインが出るまで続いているとみなす、という法則です。「もう天井だろう」「そろそろ底だろう」という感覚で逆らわない、という考え方でもあります。何を「明確な転換シグナル」とみなすかは、次の章で図解します。
トレンドの見分け方——高値と安値の切り上げ・切り下げ
日本テクニカルアナリスト協会の用語集は、ダウ理論を「高値・安値の推移でトレンドを判定する古典的理論」とし、上昇トレンドを「高値・安値が切り上がる価格推移」、下降トレンドを「高値・安値が切り下がる価格推移」と定義しています(日本テクニカルアナリスト協会「用語集」)。
押し目:上昇トレンド中の一時的な下落局面(同用語集)。この記事では、押し目でつけた安値を「押し安値」と呼ぶ
戻り:下降トレンド中の一時的な反発局面(同)。戻りでつけた高値を「戻り高値」と呼ぶ
トレンド転換:高値・安値の更新関係が逆転すること(同)
どの山・谷を数えるかに、決まった物差しはありません。小さな上下まで数えると判定がひんぱんに変わり、大きな波だけを数えると判定が遅れます。同協会は、エリオット波動の山と谷の取り方について、「一定の比率以上逆行したらトレンドが転換したとみなす」カギ足の転換ルールを使えば機械的に決められる、と紹介しています(日本テクニカルアナリスト協会「伝統的理論」)。自分で山・谷を拾うときも、「何%以上戻したら山・谷とするか」を先に決めておくと、判定がぶれにくくなります(KabuGraphの見方)。物差しの違いで判定の時期がどれだけ変わるかは、次の章で任天堂の株価を例に示します。
転換のシグナル——戻りが高値に届かず、押し安値を終値で割る
日本テクニカルアナリスト協会は、上昇トレンドが下降に転じたと判断する場面を、下げた後の戻りの頂が前のピークに届かず、再び下げて直前の谷底を下回ったときと説明しています。下降から上昇へは、その逆で、2番目の底が1番目の底まで下げずに上がり、直前の山頂を上回ったときです(日本テクニカルアナリスト協会「伝統的理論」)。下の図の①がこの形です。
このルールは後世の要約ではなく、原典にあります。ハミルトンは下降から上昇の向きで、上げの後の押しが前の安値まで下げず、その後に前の戻りの高値を上回れば、主要な上昇相場が始まったとみなしてよいと書き、相場の転換は平均株価の「ジグザグの階段」に表れるとしています(Hamilton(1922年)pp.177〜178)。
高値を更新した後で押し安値を割る②の形では、安値の切り上げは崩れても、高値はまだ切り下がっていません。用語集の定義に当てはめると、「上昇トレンドとはいえなくなった」状態で、下降トレンドと呼べるのは、次の戻りが前の高値に届かず、安値を再び割ってからです(KabuGraphの整理)。②は確認に時間がかかる分、途中で高値を更新して上昇に戻る「だまし」も起きます。
終値で見るか、ヒゲで見るか
ハミルトンは、ダウの平均を日々の終値の平均として記録し(Hamilton(1922年)p.172)、後で説明する「ライン」も「終値の連続」で読んでいます(同p.158)。押し安値を割ったかどうかは、終値で判断するのが原典に沿った見方です。
ローソク足のヒゲの先は、取引時間中に一瞬だけついた値段のこともあります。ヒゲの先だけで「割った」と判断すると、終値では押し安値の上に戻っている日にも売ってしまいます。ローソク足の終値とヒゲの読み方は、次の記事で図解しています。

ローソク足の見方|陽線・陰線とヒゲの読み方、形の意味は位置で変わる
ローソク足は1本で始値・高値・安値・終値を表し、実体は始値から終値、ヒゲの先が高値・安値。陽線・陰線は始値との比較で前日比とは別。十字線・包み足・窓など1本・2本の形と、出た位置で意味が逆になる形、だましの注意点を図解。
横ばい(ライン)——トレンドが無いときは抜けた方向を待つ
ハミルトンは、平均が数週間、狭い範囲で動く状態を「ラインを作る」と呼び、経験上、売り抜け(分配)か仕込み(集積)の時期を表すとしました。2つの平均がラインの上に抜ければ強気、下に抜ければ下げのサインです(Hamilton(1922年)pp.6〜7)。ラインは、十分な日数の終値が狭い値幅に収まったものとされています(同p.158)。
このラインの考え方は、後の研究で「チャネル・ブレイクアウト」(一定期間の値幅を終値で抜けたら売買する)と呼ばれるルールの起源とされています(Sullivan, Timmermann & White(1998年、討議論文版)p.12)。三尊天井のように、天井で山を作った後に谷を割る形は、酒田五法の記事で図解しています。

酒田五法とは|三山・三川・三空・三兵・三法の代表パターンを図解、本間宗久との関係も
日本生まれのローソク足分析「酒田五法」(三山・三川・三空・三兵・三法)の代表パターンをチャート図解つきで解説。本間宗久との関係(言い伝えと実際)、売買シグナルの読み方、ダマシの注意点までまとめます。
実際の株価で見る——任天堂の月末終値に当てはめると
ダウ理論の判定を、実際の個別銘柄に当てはめてみます。任天堂(7974)の2023年1月〜2026年10月13日の月末終値を結び、前の章の転換シグナルの図の①②のルールで山・谷と転換を読みました(下の図では、出来事をA〜Cで示します)。月末の終値だけを使っているので、月の途中についた高値・安値は入っていません。
2023年2月末〜2025年6月末(上昇トレンド):5,124円から13,880円まで、高値と安値を切り上げ続けた(高値6,542円→8,400円→8,556円、安値6,221円→7,720円)
2024年9月末(だまし。図のA):4月末の押し安値7,720円を7,636円で割った(−1.1%)。転換シグナルの図の②の形で、安値の切り上げは崩れたが高値はまだ切り下がっていない。11月末に8,810円で高値を更新し、その後も高値・安値の切り上げが続いた。ここで手放して、11月末の高値更新を見て買い直すと、売った値段より15.4%高く買い直すことになる。買い直さなければ、2025年6月末の13,880円までの上げ(7,636円から+81.8%)を逃した
2025年12月末(転換のシグナル。図のB):6月末の13,880円の後、7月末に12,690円まで押し、8月末(13,310円)・11月末(13,280円)と2度戻したがどちらも高値に届かず、12月末に10,595円で7月末・9月末の安値(12,690円・12,805円)をまとめて割った。転換シグナルの図の①の形で、高値から−23.7%の地点
その後:2026年6月末の6,815円まで下げた。シグナルの10,595円からさらに−35.7%、高値の13,880円からは−50.9%
2026年10月13日(図のC):8,172円。6月末の6,815円を下回ってはいないが、8月末の戻り高値9,044円も上回っていない。月末終値で見る限り、下降トレンドの終わりはまだ確認されていない
この例から、ダウ理論の判定について次のことが分かります。
シグナルは天井から遅れて出る:転換シグナルの図の①の形が完成したのは、高値から2割強下げた後だった
それでも、その後の大きな下げを避けられることがある:シグナルの後、さらに3割強下げた
だましもある:2024年9月末は、押し安値を1%ほど割っただけで上昇に戻った
山・谷の物差しで時期が大きく変わる:何%以上の戻りを山・谷に数えるかで、基準になる安値もシグナルの月も変わる(下の表)
山・谷に数える | 基準になる安値 | シグナル | 高値13,880円 |
|---|---|---|---|
3%以上 | 2025年9月末 | 2025年12月末 | −23.7% |
5%以上 | 2025年3月末 | 2026年1月末 | −27.6% |
10%以上 | 2024年9月末 | 2026年5月末 | −48.5% |
小さな戻りまで山・谷に数えるほど、シグナルは早く出て、だましも増えます。5%の物差しでは、7月末の12,690円からの戻り(8月末13,310円、+4.9%)を山に数えないので、12,690円は谷として確定せず、基準は高値の前の3月末の10,110円になります。10%の物差しでは、4月末の7,720円(2月末の8,400円から−8.1%の押し)も谷に数えないので2024年9月のだましは起きませんが、2025〜2026年の転換を知るのは高値から5割近く下げた後でした。
任天堂の事業と業績は、次の記事で解説しています。
任天堂
家庭用ゲーム機のハード・ソフトを一体開発する世界的ゲームメーカー。据置型ゲーム機「Nintendo Switch」シリーズを主力プラットフォームとし、「マリオ」「ゼルダの伝説」「ポケットモンスター」「どうぶつの森」など強力な自社IPを多数保…

任天堂(7974)の企業分析|Switch 2で売上倍増2.3兆円、マリオ映画10億ドル突破のIPプラットフォーム企業
任天堂(7974)のSwitch 2発売効果、IP戦略の拡大、業績推移と2027年3月期見通し、投資リスクを個人投資家向けに解説します。
「平均は相互に確認」を日本株でどう使うか
④の元の考え方は、異なる2つの業種の平均が同じ方向を示さない動きは信頼できない、というものです(Brown, Goetzmann & Kumar(1998年、討議論文版)第2節)。工業株と鉄道株の組み合わせを日本株にそのまま持ち込む決まりはありませんが、個別銘柄を見るときには、次のように置き換えて使えます(KabuGraphの見方)。
個別銘柄と、その業種の指数:銘柄の上昇トレンドが、同じ業種の東証業種別株価指数(TOPIXの構成銘柄を33業種に分けた指数)やTOPIX-17でも見られるか(日本取引所グループ「東証業種別株価指数・TOPIX-17シリーズ」ファクトシート、2025年8月29日時点)。業種全体が下降トレンドの中で1銘柄だけ高値を更新しているなら、決算や開示など、その銘柄だけの理由があるかを確かめる
個別銘柄と、市場全体:主要トレンドの向きが、TOPIX(浮動株時価総額加重型の東証株価指数。日本取引所グループ「TOPIX(東証株価指数)」、2026年10月13日閲覧)と同じか。市場全体の流れを見る大切さは、株の格言の記事の「漁師は潮を見る」でも取り上げている
需要がつながる業種どうし:ダウの「作る(工業)→運ぶ(鉄道)」の考え方をなぞるなら、素材と加工品、部品と完成品のように、需要がつながる業種の指数が同じ方向かを見る
長い足と短い足:日足の上昇トレンドが、週足・月足の主要トレンドと同じ向きか。週足が下降トレンドの中の日足の上げは、二次トレンドの戻りにすぎないことがある
確認を待つほど、判断は遅れます。ハミルトンも、2つの平均が同じ日に抜ける必要はないとしており(Hamilton(1922年)p.158)、確認は「方向がそろっているか」を見る程度にとどめ、売買の合図そのものにはしない方が現実的です(KabuGraphの見方)。
ダウ理論は当てになるか——遅れ・だまし・研究
日本テクニカルアナリスト協会は、ダウの考え方には市場を観察するうえで参考になる視点が含まれる一方、ダウが見ていたのは150年ほど前の市場なので、そのまま今に当てはまるとは考えない方がよい、としています(日本テクニカルアナリスト協会「伝統的理論」)。弱点は次の3つです。
遅れる:転換は高値・安値ができた後でしか判定できない。任天堂の例では、シグナルは高値から23.7%下げた地点だった
だましがある:押し安値をわずかに割って戻ることがある(任天堂の2024年9月末)
横ばいに弱い:トレンドが無い時期は、上下に振られて売買がかさむ。ハミルトンの予想を検証したCowlesは、工業株平均が横ばいだった1909〜1914年に、ハミルトンの予想に従った資金が、年5%の利息で運用した場合より年7.8%少なくなったと報告している(Cowles(1933)pp.315〜316)
研究:ハミルトンの予想と、高値・安値のブレイクを使うルール
Cowles(1933年):1903年12月〜1929年12月のハミルトンの論説の予想に従って工業株平均の銘柄を売買すると年12%で、持ち続けた場合の年15.5%を下回った。株を持つ・空売りする・手を引く、の切り替え90回のうち、成功と失敗は45回ずつだった(Cowles「Can Stock Market Forecasters Forecast?」Econometrica 1巻3号 pp.314〜315)
Brown, Goetzmann & Kumar(1998年):同じ論説を見直し、ハミルトンの資金は株を持たない期間が長かった(Cowlesの集計では株を持つ55%・空売り16%・市場の外29%)ことからリスクを調整すると、1902〜1929年の売買は高いシャープレシオと正のアルファ(リスクに見合う以上の超過収益)を上げていたと結論した(Brown, Goetzmann & Kumar「The Dow Theory: William Peter Hamilton's Track Record Reconsidered」Journal of Finance 53巻4号)。討議論文版は、ダウ理論を「修正したモメンタム戦略」と解釈している(同討議論文版 第1節)
Brock, Lakonishok & LeBaron(1992年):1897〜1986年のダウ工業株平均で、移動平均と「トレーディング・レンジ・ブレイク」(直近の高値・安値を抜けたら売買する)のルールを検証し、買いシグナルの後のリターンは売りシグナルの後より高く、売りシグナルの後はマイナスだった(Journal of Finance 47巻5号の要旨(IDEAS/RePEc))。ただし、売買の手数料を引く前の結果で、配当も含めていない。後の検証では、1897〜1996年で最も成績の良いルールは年63.1回売買し、手数料が1回0.27%で利益が消える水準だった(Sullivan, Timmermann & White 討議論文版 p.23)
Sullivan, Timmermann & White(1999年):検証するルールを7,846通り(約8,000)に広げ、たくさんのルールを試すことで成績が良く見える偏り(データ・スヌーピング)を調整した。比べる基準は、平均リターンでは売買しない場合(常に市場の外にいてリターン0)、シャープレシオでは安全資産の利子率。1897〜1986年には、調整後もこの基準を上回るルールがあった。ただし1987〜1996年の10年では、最も成績の良いルールも基準を統計的に意味のある差で上回れず、S&P500先物(1984〜1996年)でも基準を上回る証拠はなかった(Journal of Finance 54巻5号(IDEAS/RePEc)、討議論文版 p.3・p.13・p.27)
どの研究も米国の株価指数が対象で、日本の個別銘柄で確かめたものではありません。ハミルトンの成績も、リスクの測り方しだいで「市場に負けた」とも「リスクの割に良かった」とも読めます。移動平均や高値・安値のブレイクを使う単純なルールは、手数料を引く前で見れば1986年までのダウ平均では効いていたが、その後の10年では確認できなかった、というのが研究から言えることです。手数料や税金がかかる個人の売買では、成績はさらに下がります。
勢いに乗る売買(モメンタム)が日本株でどう働いてきたかは、次の記事でデータとともに解説しています。

モメチン(モメンタムチンパンジー)とは|勢い買いの意味と、日本株で続きにくいモメンタム効果
モメチン(モメンタムチンパンジー)は、株価の勢いだけで上がっている株に飛び乗る買い方を自嘲・揶揄するSNSの俗語。元のモメンタム効果(勝ち組−負け組)は日本株では1990年11月〜2026年8月の累積がほぼゼロで、2026年7月には1か月で−18.3%と逆回転した。
日本株で使う手順——個別銘柄のチャートで
証券会社のアプリで個別銘柄のチャートを開いたら、次の順に確かめます。
週足・月足で主要トレンドを決める:高値と安値が切り上がっているか、切り下がっているか、横ばい(ライン)か
日足で直近の山と谷を拾う:直近の押し安値(下降なら戻り高値)に水平線を引く。山・谷は終値で取る
業種と市場全体を確かめる:同じ業種の指数やTOPIXも同じ方向か(④)。違うなら、その銘柄だけの理由を決算・開示で確かめる
出来高を補助に見る:上げる日に出来高が増え、押しで減っているか(⑤)
撤退の値段を先に決める:上昇トレンドで買うなら、「押し安値を終値で割ったら手放す」のように決めてから注文する
決算発表と権利落ちの日に注意する:決算で大きく窓を開けて押し安値を割ることがある。株式分割を調整していないチャートでは、権利落ちの日の段差を「割った」と誤って読む(分割の権利落ちで、株価は分割比率に応じて理論上下がる。日本取引所グループ「用語集:株式分割」、2026年10月13日閲覧)
早く手放すか、確認を待つかで、損の形が変わります。転換シグナルの図の②の形(高値を更新した後の押し安値割れ)で手放すと、任天堂の2024年9月のように、高値の更新を見て15.4%高く買い直すことがあります。①の形(高値に届かない戻りの後の安値割れ)まで待つと、2025年12月のように、高値から2割強下げてから手放すことになります。
上昇トレンドの中の押し目で買うときの、押しの深さの目安と損切りの置き方は、次の記事で図解しています。

押し目買いとは|押し目の目安と、下落の始まりとの見分け方
押し目買いは、上昇トレンドの途中の一時的な下げ(押し目)で買うこと。前提は高値と安値の切り上げ。目安は移動平均線・前の高値・上げ幅の1/3〜2/3で、押し目の安値を割ったら下落の始まりを疑う。損切りの置き方と株数の計算例も図解。
トレンドの向きを、高値・安値ではなく移動平均線で見る方法もあります。移動平均線の向きと株価の位置で売買のタイミングを見るグランビルの法則は、次の記事で解説しています。

グランビルの法則とは|移動平均線の向きと株価の位置で読む8つの売買ポイント
グランビルの法則は、移動平均線の向きと株価の位置・離れ方で売買の時期を判断する買い4つ・売り4つの法則。200日線、単純移動平均の計算、日本のツールの期間、ゴールデンクロスとの違い、三菱UFJ・トヨタの月足の実例とだましを図解。
押し安値の少し下に逆指値の売り注文を置けば、撤退を自動にできます。ただし逆指値は取引時間中の値段で発動するので(注文の種類の記事)、終値で判定するルールとはずれることがあります。注文の種類と、損失を小さく抑える手順は次の記事にまとめています。

逆指値・寄成・寄指・引指・不成注文とは|9つの注文方法と東証の取引時間を図解
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ロスカット(損切り)とは|プロスペクト理論が邪魔をする「損失確定」の技術
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よくある質問
ダウ理論とダウ平均の関係は?
ダウ理論の「平均」は、ダウが作った平均株価のことです。工業株と鉄道株の2本の平均が同じ方向に動くかで相場を判断したのがダウ理論で、今は工業株30銘柄の「ダウ工業株平均」と、輸送株20銘柄の「ダウ輸送株平均」として算出されています(S&P Dow Jones Indices「Dow Jones Averages Methodology」2026年5月版)。
エリオット波動との違いは?
エリオット波動は、ラルフ・N・エリオットがダウ理論を独自に研究して精緻化したもので、1938年に『The Wave Principle』として出版されました。上昇の5つの波と下降の3つの波の計8波で1つのサイクルと考えます(日本テクニカルアナリスト協会「伝統的理論」)。ダウ理論は高値と安値の関係でトレンドを判定し、エリオット波動は波を数えて今の局面を当てはめる点が違います。同協会は、波の数え方が恣意的だという批判があることにも触れています。
移動平均線やMACDとの違いは?
ダウ理論は、チャートに線を足さず、山と谷の位置関係だけでトレンドを判定します。移動平均線は一定期間の終値の平均をつないだ線で、向きと株価の位置で流れを見ます(グランビルの法則の記事)。MACDは2本の移動平均の差でトレンドの勢いを見る指標です(MACDの記事)。ボリンジャーバンドは、移動平均の上下に値動きのばらつき(標準偏差)の帯を描き、値動きの幅の広がりや縮みを見る指標です(ボリンジャーバンドの記事)。どれも過去の値動きから計算するので、トレンドの転換を確かめるのが遅れる点は共通です。
日足と週足、どちらで見ればいい?
両方です。週足・月足で主要トレンドの向きを確かめ、日足で押し安値・戻り高値の位置と売買のタイミングを見ます(日本テクニカルアナリスト協会「用語集」)。日足と週足でトレンドの向きが違うときは、週足の向きを優先し、日足の動きは二次トレンドの揺り戻しかもしれないと考えます(KabuGraphの見方)。
ダウ理論だけで勝てる?
勝てるとは言えません。ハミルトンの予想は持ち続けた場合の成績を下回り(Cowles 1933)、リスクを調整すると良かったという再検証もあります(Brown, Goetzmann & Kumar 1998)。高値・安値のブレイクや移動平均を使う単純なルールも、1987〜1996年の米国では、最も成績の良いものでさえ、売買しない場合を統計的に意味のある差で上回れませんでした(Sullivan, Timmermann & White 1999)。それ以前の好成績も、売買の手数料を引く前のものです。トレンドの向きを確かめる物差しとして使い、撤退の値段を先に決めておくことが大切です。
まとめ
ダウ理論は、ダウの論説をハミルトン(1922年)・レア(1932年)らがまとめたトレンドの見方。ダウ自身は本を残していない
上昇トレンドは高値・安値の切り上げ、下降トレンドは切り下げ。トレンドは明確な転換シグナルが出るまで続くとみなす
転換のシグナルは、戻りが前の高値に届かず、押し安値を終値で割ったとき。高値を更新した後に割っただけなら「崩れた」段階で、だましもある
④平均の相互確認は、元は工業株と鉄道株の2つの平均。日本株では業種の指数・TOPIX・週足と、方向がそろうかを見る使い方ができる
⑤出来高は補助。ハミルトン自身も「思われているほど重要ではない」と書いている
シグナルは遅れ、横ばいに弱い。任天堂の月末終値では、転換のシグナルは高値から23.7%下げた地点で出た。研究でも、ハミルトンの成績の評価は分かれ、高値・安値のブレイクなどの単純なルールは、それまでの好成績が手数料を引く前のもので、1987〜1996年の米国では効果が確認できなかった








