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信用売り残が多いとどうなる?|踏み上げの条件と、買い戻されない売り残の見分け方

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信用売り残が多いと、将来の買い戻し(買い需要)が積み上がった状態になります。株価が上がり始めると、売り方の買い戻しが重なって上昇が速まる(踏み上げ)ことがあります。ただし2016〜2026年の東証のデータでは売り長の銘柄が上がりやすい傾向は無く、売り残が多いだけで上がるとは言えません。

この記事では、買い戻されない売り残と、信用売り残では見えない機関投資家の空売りの見分け方を、データと実例で説明します。

信用売り残が多いとどうなる?——将来の買い戻しと踏み上げ

信用売り残は、信用取引で株を借りて売り、まだ返していない株数です。売った人(売り方)は、株価が下がると見て売っています。東証は銘柄ごとの売り残・買い残を、毎営業日16時を目安に前営業日の分を公表しています(JPX「銘柄別信用取引残高」、2026年10月20日時点)。2026年9月28日(9月25日申込分)からこの日次の公表になり、それまでは毎週金曜時点の残高を翌週の第2営業日(通常は火曜)の16時30分に公表していました(東証「信用取引残高の公表情報の変更日及び今後の公表スケジュールについて」)。

信用残高の定義や、信用倍率・需給の4つの局面といった基本は次の記事にまとめています。

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売り残が多い銘柄で起きうる4つのこと

  • 将来、買い戻しの注文が出る:借りた株はいずれ返します。返し方は、市場で同じ株数を買って返す「買戻し」と、手持ちの株を渡して返す「現渡し」の2つです(JPX「信用取引制度の概要」(2026年9月更新)p.13)。制度信用の売りは最長6か月以内に返すので(同p.9)、積み上がった売り残も期日までには買戻しか現渡しで返されます

  • 株価が上がると、買い戻しが買い戻しを呼ぶ(踏み上げ):信用売りは株価が上がると損失が出て、最大損失に上限がありません。保証金が一定率を下回ると追加の差し入れ(追証)も求められます(同p.18)。損切りの買い戻しが株価を押し上げ、別の売り方の損失をさらに広げます

  • 株が足りなくなると、売り方にコストと規制がかかる:制度信用の売りが買いを上回り、日本証券金融(日証金)が貸す株が足りなくなると逆日歩がかかります。日証金の注意喚起・申込制限・申込停止や、東証の委託保証金率の引上げまで進むと、新規の売りが出にくくなります(JPX「信用取引・貸借取引に関する規制」)

  • 下げている間は、買い戻しを急ぐ理由がない:株価が下がっていれば売り方には含み益があり、下げの途中の買い戻しは利益確定で、急いで出るものではありません。売り残の多さだけで下げが止まるとは言えません(KabuGraphの見方)

出典:JPX「信用取引制度の概要」(2026年9月更新)・楽天証券「リスクを抑えて株主優待をゲットできる方法、知っていますか?」よりKabuGraph作成

市場の買い需要になるのは、図の左の「買戻し」だけです。権利取りやつなぎ売りの売りは「現渡し」で返され、売り残が減っても市場では株が買われません。売り残が多いときは、その売りがどちらで返されそうかをまず考えます(後半の「踏み上げにならない売り残」)。

踏み上げが起きやすい条件(逆日歩の上限・申込停止・株価の上昇)と2026年の急騰例は、次の記事で日証金のデータを使って確かめています。

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逆日歩が付いても株価が上がるとは限りません。踏み上げが起きやすい条件(売り残・株価の上昇・逆日歩の上限の倍率・申込停止)と、日証金のデータで確かめた2026年の実例を解説。権利付最終日に上限まで付いた21銘柄は、配当落ちを含む翌日の前日比で上昇5・下落13でした。

買い残が多い場合はこの裏返しで、将来の返済売りが上値を重くしやすくなります(信用買い残が多いとどうなる?)。

売り残が「多い」かを測る3つの物差し

売り残の株数だけでは、多いかどうかは決まりません。発行済株式の多い大型株なら数百万株でもわずかで、出来高の少ない小型株なら数万株でも重くなります。次の3つを並べて見ます。

①信用倍率(買い残÷売り残)——1倍未満が「売り長」

信用倍率が1倍を下回ると、売り残が買い残より多い「売り長」です。将来の買い戻しによる値上がりが期待できるとして「取組が良い」とも呼ばれます(大和証券「金融・証券用語解説[取組]」、2026年10月20日閲覧)。

売り長は少数派で、2026年10月16日申込分では信用残のある普通株3,677銘柄のうち194銘柄(5.3%)でした。同じ10月16日に売り残のあった2,305銘柄の信用倍率の中央値は9.0倍でした(その日1日分の銘柄の中央値)。

ただし倍率は割り算なので、買い残が少ない銘柄では、売り残がわずかでも1倍を切ります。また権利付最終日の前には権利取りの売りで売り長が増えます。3月末の権利付最終日だった2026年3月27日申込分では535銘柄が売り長で、権利落ち後の4月3日には338銘柄に減りました(出典:東証「銘柄別信用取引週末残高」「銘柄別信用取引残高」・東証株価よりKabuGraph算出)。

②売り残の出来高比——買い戻しに何日分の売買が要るか

売り残を直近20営業日の1日平均出来高で割った日数で、売り方が全員買い戻すのに何日分の売買が要るかの目安です。踏み上げの条件としての読み方は「逆日歩で株価はどうなる?」で扱っています。

2026年10月16日申込分では、売り残のある2,305銘柄の中央値は0.14日分で、1日分を超えるのは304銘柄(13.2%)、5日分を超えるのは29銘柄(1.3%)でした(出典:東証「銘柄別信用取引週末残高」「銘柄別信用取引残高」・東証株価よりKabuGraph算出。出来高は株式分割を調整)。出来高の数日分の売り残があれば、普通株の中では多い部類です。

③上場株式数に対する比率——取引所と日証金の規制の目安

東証の銘柄別の残高表には、売残高・買残高のそれぞれに「上場比」(上場株式数に対する比率)の列があります(JPX「銘柄別信用取引残高」の2026年10月19日申込分。掲載は直近5営業日分)。取引所や日証金が規制を始める基準も、この比率で決まっています。制度信用の売り残が多い銘柄ほど、規制で新規の売りが止まりやすくなります。

基準

売り残の条件

何が起きるか

東証
日々公表銘柄

売残高が上場株式数の10%以上で、売残高が買残高の60%以上

日々公表銘柄に指定して注意を促す(委託保証金率の引上げの前段)

東証
委託保証金率の引上げ(第一次)

日々公表銘柄で、売残高が上場株式数の15%以上かつ買残高の70%以上

新規の信用取引の保証金率に20%(うち現金20%)を上乗せ

日証金
貸株注意喚起

制度信用の売残高が上場株式数の10%以上(または1万単位以上)など、3つの基準のうち2つ

将来の申込制限・停止の可能性を通知

出典:東証「『日々公表銘柄』の指定等に関するガイドライン」「信用取引に係る委託保証金の率の引上げ措置等に関するガイドライン」、日本証券金融「貸借取引の利用制限措置等について」よりKabuGraph作成(2026年10月20日時点)。売り残の基準だけを抜き出した。買い残・売買比率・売買回転率の基準もある

日証金の注意喚起の後は、申込制限・申込停止(いわゆる売り禁)へと進みます。ただし日証金は、状況によって注意喚起を経ずに制限措置をとることがあると明記しています(日本証券金融「貸借取引の利用制限措置等について」、2026年10月20日閲覧)。規制の段階と、売り禁で何ができなくなるかは次の記事で扱っています。

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データで確かめる:売り長の銘柄は、その後上がったか

2016〜2026年の東証のデータでは、売り長の銘柄がその後上がりやすい・急騰しやすいという傾向は見られませんでした。4週で20%以上上がった割合は売り長の銘柄で1.9%と全銘柄(4.0%)より低い一方、20%以上下がった割合も1.3%(全銘柄2.2%)と低めです。売り長の銘柄の96%は貸借銘柄で、もともと上下とも大きく動きにくい銘柄が多いことの表れでもあります(貸借銘柄全体でも、4週で20%以上上がった割合は3.1%、下がった割合は1.6%)。

売買代金の大きい銘柄に絞ると、売り長と全銘柄の差はほぼ消えます。一方、売り残が出来高に比べて大きい銘柄は、絞っても13週後に全銘柄を上回った割合が低めでした。

集計の方法

  • 対象:東証の普通株(ETF・REITなどを除く)。2016年10月21日〜2026年10月19日の509週の週末残高のうち、20日の出来高がそろう507週(2016年11月4日〜)で、延べ185万8,007件(銘柄×週、4,468銘柄)

  • 区分:売り長=売り残が買い残を上回る(信用倍率1倍未満)。売り残の出来高比=売り残÷直近20営業日の1日平均出来高(株式分割を調整)

  • 比べ方:その週から4週後・13週後の株価の騰落率(株式分割を調整した終値。配当は含まない)を、同じ週の全銘柄の中央値と比べた差(超過リターン)の中央値と、全銘柄の中央値を上回った割合

  • 注意:毎週の観測は先の期間が重なり合うので、件数は独立したサンプルの数ではありません。上場廃止などで先の株価が無い観測は除きました(13週後が欠けたのは全体の1.4%、売り長では0.3%)

区分

13週後の超過リターン
(中央値)

全銘柄の中央値を上回った割合

4週で±20%以上動いた割合
(上昇/下落)

全銘柄
185.8万件

0.00%

50.0%

4.0%/2.2%

売り長
23.3万件

−0.45%

48.2%

1.9%/1.3%

売り長で、売り残が出来高の1日分以上
11.5万件

−0.96%

46.0%

2.2%/1.5%

上の条件で、直近4週に株価が10%以上上昇
1.2万件

−2.56%

43.2%

4.1%/2.6%

(比較)直近4週に株価が10%以上上昇した全銘柄
22.6万件

−1.45%

46.4%

7.4%/4.3%

出典:東証「銘柄別信用取引週末残高」「銘柄別信用取引残高」・東証株価よりKabuGraph算出(2016年10月〜2026年10月)。件数は銘柄×週で、先の期間が重なり合う。騰落率は配当を含まない

売り長の銘柄が13週後に全銘柄の中央値を上回った割合は48.2%で、ほぼ五分五分です。「売り長かつ売り残が出来高の1日分以上で、直近4週に10%以上上げた」という踏み上げの入口に見える形でも、13週後の超過リターンの中央値は−2.56%でした。ただし直近4週で10%以上上げた銘柄は、売り長かどうかに関係なくその後は伸び悩みがちです(全銘柄で−1.45%)。その全銘柄(4週で+20%以上が7.4%)と比べても、売り長の方が大きく上がった割合は低めでした。

売り残の出来高比別:13週後の株価(全銘柄の中央値との比較)

出典:東証「銘柄別信用取引週末残高」「銘柄別信用取引残高」・東証株価よりKabuGraph算出(2016年10月〜2026年10月)。売り残のある普通株の銘柄×週。件数は0.5日分未満82.5万件、0.5〜2日分30.1万件、2〜5日分8.3万件、5日分以上3.1万件。騰落率は株式分割を調整した終値で、配当は含まない

売り残が出来高の5日分以上あった観測では、13週後に全銘柄の中央値を上回ったのは41.2%で、4週で20%以上上がった割合も1.8%でした。信用倍率で分けても、0.5倍未満の銘柄は13週後の超過リターンの中央値が−0.84%(上回った割合46.5%)でした。

4週で見ると、差は四半期末をまたぐ期間に集中

4週後で比べると、売り長の銘柄の劣後は3月・6月・9月・12月の月末をまたぐ期間に集中していました(超過リターンの中央値−0.60%、上回った割合45.3%)。月末をまたがない4週間に絞ると、超過リターンの中央値は+0.13%、上回った割合は50.9%で、差はほぼ無くなります。この計算は配当を含まず、売り長は権利付最終日の前に増えるので、配当・優待の権利落ちの下げが一因とみられます(KabuGraphの見方)。

ただし13週後で比べると、四半期末の前2週以内でない週の売り長も−0.42%で、13週の劣後を権利落ちだけでは説明できません。月末をまたがない4週間でも、4週で20%以上上がった割合は2.1%と全銘柄(4.3%)より低いままでした。

  • 売買代金で絞ると、売り長の差はほぼ消える:20営業日の平均売買代金(の近似)が1億円以上の銘柄に限ると、売り長の13週後の超過リターンの中央値は−0.06%、全銘柄の中央値を上回った割合は49.8%。4週で±20%以上動いた割合は売り長が2.1%/1.4%、全銘柄が4.5%/2.9%で、上下とも動きは小さめ。売り残が出来高の5日分以上の銘柄は−1.61%(43.4%)で、差が残りました

  • 年ごとに見ると:売り長で売り残が出来高の1日分以上の13週後の超過リターン(中央値)は、2016年(10月から)〜2026年(7月ごろまで)の11年のうち、2018年と2026年を除く9年でマイナス

踏み上げにならない売り残——権利取り・つなぎ売り・一般信用

売り残の中には、株価が上がっても市場で買い戻されない売りが混ざっています。代表が次の3つです。

優待・配当の権利取り(クロス取引)

株主優待や配当の権利を取るために、権利付最終日に現物を買うと同時に同じ株数を信用で売り、翌営業日以降に信用売りを現物で返す(現渡し)手順があります。値動きを打ち消して権利だけを取る方法で、楽天証券は「人気の株主優待銘柄は、株主優待の権利獲得日が近づくと『つなぎ売り』などによる売建のニーズが高まり」、一般信用なら逆日歩がかからないと説明しています(楽天証券「リスクを抑えて株主優待をゲットできる方法、知っていますか?」、2026年10月20日閲覧)。

この売りは、権利付最終日に向けて一般信用の売り残を膨らませ、権利落ちとともに消えます。9月末の権利付最終日(2026年9月28日)を控えた9月25日申込現在、東証の信用取引の売り残に占める一般信用の割合は株数で43.4%でしたが、権利落ち後の10月2日申込現在は21.8%でした。一般信用の売り残は2億3,664万株から7,739万株へ、1週間でおよそ3分の1になっています(JPX「信用取引現在高」、二市場の合計)。

普通株の信用売り残(一般信用・制度信用、金額の近似)

出典:東証「銘柄別信用取引週末残高」「銘柄別信用取引残高」・東証株価よりKabuGraph算出(2025年9月〜2026年10月)。普通株(ETF・REITなどを除く)の売残高の株数×その日の終値の合計。2026年9月28日以降は日次公表の各週の最後の日。2026年10月19日は月曜日の値

一般信用の売り残は、3月・9月の権利付最終日の直前の週末に跳ね上がり、月末をまたいだ翌週に大きく減ります。2017〜2026年の3月・9月の20回すべてで、その月のピークの週から月末明けの最初の週にかけて一般信用の売り残(金額の近似)は減り、減り方は21〜66%(中央値47%)でした(出典:東証「銘柄別信用取引週末残高」「銘柄別信用取引残高」・東証株価よりKabuGraph算出)。6月・12月の月末や、2月・8月の下旬にも小さな山があります。

権利落ちの後に一般信用の売り残が減っても、その多くは現渡しで、市場での買い戻しではありません。権利付最終日の前に増えた売り残を「踏み上げの燃料」と読むと、見立てを誤ります。権利付最終日をまたぐ信用売りでは、配当相当額を払う配当落調整金もかかります。

保有株のつなぎ売り

現物を持っている人が、値下がりに備えて同じ銘柄を信用で売ることを「つなぎ売り(売りつなぎ)」と呼びます。値上がりした場合は現物を引き渡せば損失が出ません(大和証券「金融・証券用語解説[売りつなぎ]」、2026年10月20日閲覧)。現物とセットの売りは、株価が上がっても現物と合わせた損益が動かないので、踏み上げの圧力になりにくい売りです。

一般信用の売りには、日証金の逆日歩も規制もかからない

信用取引には、取引所が銘柄を選び返済期限が最長6か月の制度信用と、証券会社が条件を決める一般信用があります。一般信用は日証金の貸借取引を使えず、品貸料(逆日歩)も証券会社との間で決まります(JPX「信用取引の概要」)。楽天証券も「一般信用取引の場合、証券金融会社を利用せず株式を調達するので、逆日歩がかかりません」としています(前掲のページ)。

2026年10月16日申込分では、普通株の売り残(金額の近似)の34.0%が一般信用でした。3月・9月の権利付最終日(またはその直前)の週末には、これが2026年3月27日に40.3%、9月25日に47.5%まで上がりました(出典:東証「銘柄別信用取引週末残高」「銘柄別信用取引残高」・東証株価よりKabuGraph算出。上のJPXの比率は市場全体の株数、こちらは普通株の金額の近似で、対象と単位が違う)。

  • 制度信用の売り残が多い:日証金で株が足りなくなると逆日歩がかかり、注意喚起・申込停止へ進みうる。売り方へのコストと規制の圧力が働く

  • 一般信用の売り残が多い:日証金の逆日歩も申込停止もかからない。代わりに証券会社が決める貸株料がかかり、短期の売りは高めになる(制度信用と一般信用の料率の比較)。株価が上がれば損失が膨らむのは同じだが、逆日歩のコストで買い戻しを迫られることはない

東証の残高表は、売残高を一般信用と制度信用に分けて載せています。売り残が多いと気づいたら、どちらの売りかを先に見ます。逆日歩の仕組みは次の記事で説明しています。

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SBI証券・楽天証券は制度信用と一般信用(無期限)の料率が同じ(買方金利年2.80%・貸株料年1.10%、2026年10月6日確認)。買いは同額、空売りは逆日歩のない一般信用が有利。優待クロスは短期3.90%と逆日歩の損益分岐(1株30銭)で判断します。

機関投資家の大口の空売りは、信用売り残では見えない——空売り残高報告で別に見る

東証の信用売り残に入るのは、信用取引で売った分だけです。空売りには、顧客が証券会社から株を借りて売る「信用取引による空売り」と、株主との契約などで株を借りて売る「信用取引以外の空売り」があります(JPX「空売り規制」、2026年10月20日閲覧)。後者は信用売り残に載らないので、機関投資家の大口の空売りは、信用売り残を見ても分かりません。

空売り残高報告:0.2%以上で報告、0.5%以上を東証が公表

  • 報告:発行済株式の0.2%以上(かつ50売買単位超)の空売りの残高を持つと、証券会社を通じて取引所に報告します(有価証券の取引等の規制に関する内閣府令 第15条の2。e-Gov、2026年10月20日時点)

  • 公表:東証は、残高割合が0.5%以上の報告と、0.5%以上だった人が0.5%未満に下がった(解消を含む)報告を、報告者の名前・残高割合・株数とともに公表します(同第15条の4、JPX「空売り残高に関する情報」)。毎営業日17時を目処の掲載です

  • 時点・対象:公表はおおむね2営業日遅れで(JPX「空売り残高 ご利用の手引き」)、信用取引による空売りも、それ以外の空売りも含みます

出典:JPX「空売り規制」「銘柄別信用取引残高」(2026年10月14日申込現在)「空売り残高に関する情報」(2026年10月16日公表分のうち計算日10月14日の3社)、有価証券の取引等の規制に関する内閣府令よりKabuGraph作成

サンリオ(8136)の2026年10月14日申込現在の信用残は、売り残が193万3,700株(上場株式数の0.2%)、買い残が1,480万4,200株で、信用倍率は7.7倍の「買い長」でした(JPX「銘柄別信用取引残高」の2026年10月14日申込分。掲載は直近5営業日分)。ところが同じ日を計算日とする空売り残高は、GOLDMAN SACHS INTERNATIONAL(3.62%)、Barclays Capital Securities Ltd(1.49%)、MERRILL LYNCH INTERNATIONAL(1.07%)の3社だけで合計7,917万7,885株(発行済株式の6.18%)ありました(JPX「空売り残高に関する情報」2026年10月16日公表分)。信用売り残の少なくとも約41倍です。同じ公表分には、計算日が10月15日のモルガン・スタンレーMUFG証券(1.92%)も載っています。

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サ
8136商社・卸売

サンリオ

サンリオはハローキティ・シナモロール・クロミなど400種超のオリジナルキャラクターIPを保有する世界最大級のキャラクター企業。2020年の辻朋邦社長就任以降、物販中心からライセンス中心のビジネスモデルへ構造転換を推進し、FY2026には営業…

信用倍率だけを見ると売り物の少ない銘柄に見えても、信用取引の外に大きな空売りが積み上がっていることがあります。売り残の多い少ないを判断するときは、空売り残高報告も並べて見ます。

市場全体では、売買代金に占める空売りの割合(空売り比率)が2026年10月16日に32.9%でした(価格規制ありの空売り25.7%、規制なし7.2%。JPX「空売り集計(日次)」2026年10月16日、一覧)。これは信用取引の売りも含むその日の売買の比率で、残高ではありません。

売り残が多い銘柄で、買う人・売っている人が確かめること

買う人・持っている人

  • 売り残が増えたのは、権利付最終日の前か:一般信用の売り残が急に増えていれば、権利取りのつなぎ売りの可能性が高く、権利落ちの後に現渡しで消えます

  • 株価が上がり始めているか:踏み上げの引き金は株価の上昇です。下げている間は、売り残が多くても買い戻しは急がれません

  • 売り残は出来高の何日分か:日数が短ければ、買い戻しは日々の売買に吸収されやすくなります

  • 売られている理由は何か:業績の悪化や増資など、売られる材料が本物なら、売り残が多くても下げ続けます

  • 規制は新規の買いも止める:東証の委託保証金率の引上げは「信用取引による新規の売付け及び買付け」にかかり、2026年10月時点の第一次措置の例では委託保証金率50%以上(うち現金20%以上)です(JPX「信用取引に関する規制等」)。日証金の申込停止では、制度信用の買い方の現引きも止まることがあります(日本証券金融「貸借取引の利用制限措置等について」、2026年10月20日閲覧)

売っている人(空売りしている人)

  • 損切りの株価を先に決めておく:損失は株価が上がるほど膨らみ、委託保証金が足りなくなれば追証を求められます

  • 逆日歩と規制の段階を毎日確かめる:日証金の注意喚起・申込制限・申込停止は、通常16時30分頃に公表されます(日本証券金融「貸借取引の利用制限措置等について」)

  • 一般信用の売りでも、踏み上げのリスクは同じ:日証金の逆日歩がかからないだけで、株価が上がれば損失は同じように膨らみます

  • 空売り残高報告も見る:信用取引の外の大口の売りが減っていく(買い戻されている)のか、積み上がっていくのかは、信用売り残では分かりません

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東証の残高は翌営業日の16時を目安に出ますが、日証金の貸借取引残高(制度信用のうち日証金を通した分)は当日の18時半過ぎに速報が出ます(日本証券金融「銘柄別融資・貸株残高(速報、確報)について」、2026年10月20日閲覧)。何時に何が分かるかは「信用残はリアルタイムで見られる?」で整理しています。

よくある質問

売り残が多ければ、必ず踏み上げる?

いいえ。2016〜2026年の東証のデータでは、売り長の銘柄が4週で20%以上上がった割合は1.9%で、全銘柄(4.0%)より低めでした。20%以上下がった割合も1.3%(全銘柄2.2%)と低く、もともと大きく動きにくい銘柄が多いことの表れです。踏み上げには、株価の上昇で売り方が損を抱えることや、規制で新規の売りが止まることが重なる必要があり、売り残の多さはその条件の1つにすぎません。

売り残が急に減ったら、買い戻しが入ったということ?

そうとは限りません。権利落ちの直後に一般信用の売り残がまとめて減ったなら、つなぎ売りが現渡しで返された可能性が高く、市場での買いは出ていません。残高の数字だけでは、買戻しか現渡しかは区別できません。

売り残が増えているのに株価が下がるのはなぜ?

売り方の見立てどおりに下げているか、売り残の中身がつなぎ売り(現物の買いとセット)で株価の方向とは関係がないかのどちらかが多いと考えられます(KabuGraphの見方)。買い戻しが株価を押し上げるのは、株価が上がり始めて売り方が損を抱えてからです。

信用倍率が1倍を切ったら買い?

それだけでは判断できません。2016〜2026年のデータでは、信用倍率1倍未満の銘柄が13週後に全銘柄の株価の中央値を上回った割合は48.2%で、ほぼ五分五分でした。4週後で比べ、3月・6月・9月・12月の月末をまたがない期間に限ると、差はほぼありません。売買代金1億円以上の銘柄に絞った13週後でも、上回った割合は49.8%です。1倍を切った理由(権利取りの売りか、下落を見込んだ売りか)と株価の動きを合わせて見ます。

まとめ

  • 信用売り残が多い=将来の買い戻しが積み上がった状態。株価が上がり始めると、損を抱えた売り方の買い戻しが重なって踏み上げになりうる

  • 市場の買いになるのは「買戻し」だけ。権利取りやつなぎ売りは「現渡し」で返され、権利落ちとともに消える。一般信用の売り残は2017〜2026年の3月・9月の20回すべてで月末明けに減った(中央値で47%減)

  • 多いかどうかは信用倍率・出来高比・上場株式数比で測る。売り長は2026年10月16日申込分で普通株の5.3%。東証・日証金の規制の基準は上場株式数比で決まる

  • 2016〜2026年のデータでは、売り長の銘柄が上がりやすい・急騰しやすいとは言えない。上下とも大きく動きにくい銘柄が多く、売買代金で絞ると全銘柄との差はほぼ消える。売り残が出来高の5日分以上の銘柄は、絞っても13週後に全銘柄を上回った割合が43.4%と低め

  • 一般信用の売りには日証金の逆日歩も規制もかからない(代わりに証券会社の貸株料がかかる)。売り残が制度信用か一般信用かを先に見る

  • 機関投資家の大口の空売りは、信用売り残では見えない。空売り残高報告(0.2%以上で報告、0.5%以上などを東証が公表)で別に見る

本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。投資の最終判断はご自身の責任でお願いいたします。

コラム著者・編集者

K

KabuGraph編集部

KabuGraph編集部は、投資情報の発信と株式分析ツールの開発に携わるチームです。日本株・米国株の事業分析から、投資に役立つ情報をわかりやすくお届けします。

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