ソニーグループ(6758)の企業分析|ゲーム・音楽・イメージセンサーの三本柱で営業利益1.4兆円、エンタメ×テクノロジーの王者
2027年3月期 第1四半期決算まで反映

ソニーグループ(6758)は、ゲーム・音楽・映画のエンタテインメント事業と、CMOSイメージセンサーの半導体技術を融合させた世界有数のテクノロジー×エンタメ企業です。2026年3月期は売上高12兆4,796億円、営業利益1兆4,475億円で過去最高を更新しました。
PlayStation 5のネットワークサービス収入の拡大、音楽の配信・ライブ・IP収入の伸び、そしてイメージセンサーの高付加価値化が業績を牽引しています。この記事では、ソニーの5セグメントの事業構造、各事業の競争力、業績推移、投資判断のポイントを解説します。
会社概要 — エンタメ×テクノロジーの5セグメント体制
項目 | 内容 |
|---|---|
会社名 | ソニーグループ株式会社(Sony Group Corporation) |
証券コード | 6758(東証プライム) |
本社 | 東京都港区港南1丁目7番1号 |
代表者 | 代表執行役 十時 裕樹 |
従業員数 | 約94,900名(連結、2026年3月31日現在。金融事業の分離等により前期末から約17,400名減) |
決算期 | 3月 |
時価総額 | 約22.1兆円(2026年9月18日終値3,697円ベース) |
セグメント別売上構成(2026年3月期)
セグメント別売上高推移
ソニーの事業は大きく5つのセグメントに分かれています。ゲーム&ネットワークサービス(G&NS)が全体の37%と最大のシェアを占め、エレクトロニクス(ET&S)、イメージセンサー(I&SS)、音楽、映画がそれぞれ11〜18%を構成する分散型のポートフォリオです。2026年3月期に増収だったのはI&SS(+19.6%)と音楽(+15.1%)の2つで、G&NSはほぼ横ばい(+0.3%)、映画(−0.4%)とET&S(−6.2%)は減収でした。
セグメント別の事業分析
ゲーム&ネットワークサービス — PS5エコシステムの収益化
G&NSはPlayStation 5のハードウェア販売、ゲームソフト(ファースト・サードパーティ)、PlayStation Plus/Networkのサブスクリプションで構成されます。2026年3月期の売上は4兆6,857億円、営業利益は4,633億円で過去最高を更新しました。ただしこれは、Bungieの無形資産等の減損1,201億円(第2四半期315億円・第4四半期886億円)を計上したうえでの過去最高です。売上自体は前期比+0.3%とほぼ横ばいでしたが、ネットワークサービスの月額課金収入が安定的に拡大しており、ハードウェアの販売サイクルに依存しにくい収益構造への移行が進んでいます(セグメント別の売上高・営業利益はソニーグループ 2026年3月期決算短信のセグメント情報による)。
音楽 — サブスクリプション成長の恩恵
Sony Music Entertainment(SME)は、世界3大音楽レーベルの一角を占めます。2026年3月期の売上は2兆1,201億円(前期比+15.1%)、営業利益は4,470億円で前年比+25.1%の増益でした。ただしこの増益額897億円にはPeanuts Holdings LLCの追加持分取得に伴う再測定益347億円(一時要因)が含まれており、これを除いた実勢の増益率は約+15%です。
会社が挙げた増収要因は配信だけではありません。
レコーデッドミュージック・音楽出版における配信サービス収入の増加
レコーデッドミュージックのライブイベント・マーチャンダイジング収入の増加
ビジュアルメディア&プラットフォームの増収
劇場公開作『劇場版「鬼滅の刃」無限城編』『国宝』の寄与(アニプレックス)
モバイル向けを中心としたゲームアプリ収入の増加
裏を返せば、2027年3月期の音楽セグメントの会社予想は営業利益4,000億円(−11%)の減益です。再測定益の剥落と劇場公開作の反動が主因であり、配信の構造的成長だけでセグメント利益が伸び続けるわけではない点は押さえておきたいところです。
イメージング&センシング・ソリューション(I&SS)— CMOSセンサーの絶対王者
ソニーのCMOSイメージセンサーは世界シェア約50%(Yole Group調べ、2025年の金額ベース)で首位に立ちます。スマートフォン向けが主力ですが、車載(ADAS)、産業用(ロボット、ドローン)、AI向け(画像認識)へと用途が広がっています。2026年3月期は売上2兆1,515億円(前期比+19.6%)、利益成長率は+36.8%と全セグメント中最も高い伸びを記録しました。会社が挙げた増収要因は、モバイル向けイメージセンサーの販売増・製品ミックスの改善・数量増です。
一方、2027年3月期の会社予想は売上2兆700億円(−4%)・営業利益4,000億円(+12%)で、増益はモバイル向けの減収をデジタルカメラ向けの増加・前期の構造改革費用や減損の反動・研究開発費の減少で補う想定です。売上そのものは減少見込みであり、需要拡大が一本調子で続く前提では見ていない点に注意が必要です。
映画 — Sony Pictures Entertainment
Sony Pictures Entertainmentは映画・テレビ番組の制作・配給を行います。スパイダーマンシリーズなどの強力なIPを保有しており、劇場公開に加えてストリーミング配信でのライセンス収入が拡大しています。2026年3月期の売上は1兆4,993億円で前期比−0.4%とほぼ横ばい、営業利益は−10.6%の減益でした。利益率はコンテンツ投資の規模により変動が大きい傾向にあります。
ET&S — エレクトロニクス事業
テレビ(BRAVIA)、カメラ(α)、オーディオなどのコンシューマーエレクトロニクス事業。2026年3月期の売上は2兆2,605億円で前期比−6%(−1,487億円)、営業利益も1,909億円から1,586億円へ−17%と減収減益でした。ディスプレイの数量減が主因で、成長ドライバーとしての役割はG&NS・I&SS・音楽に移っています。2027年3月期はメモリ価格上昇の影響を、調達・設計・販売施策により約300億円に抑える計画です。
業績推移と財務分析
通期業績推移(売上高・営業利益・営業利益率)
営業利益は2020年3月期の8,455億円から2026年3月期の1兆4,475億円へと6年間で+71%の成長を達成しています(起点は金融事業を含む公表値、終点は継続事業ベースのため基準は厳密には揃っていません)。セグメント別では2025年3月期→2026年3月期にG&NS(+11.7%)、音楽(+25.1%)、I&SS(+36.8%)の3つがそろって二桁増益となった一方、映画(−10.6%)とET&S(−16.9%)は減益でした(出典:ソニーグループ 2025年度 連結業績概要(決算説明会資料))。
2027年3月期の見通し
会社予想では売上12.5兆円、営業利益1兆7,200億円(+18.8%)を計画。Q1実績では売上2兆8,378億円(金融事業を除く継続事業ベースの前年同期比+8.2%)、営業利益4,765億円(同+40.2%)と好調なスタートを切っています(出典:ソニーグループ 2026年度 第1四半期 連結業績概要)。
会社自身が挙げているもう一つの制約はメモリの調達です。2027年3月期のPS5ハード販売は「妥当な価格で調達できるメモリの量」を前提に計画されており、ET&Sではメモリ価格上昇の影響を約300億円に抑える計画としています。また持分法適用会社では、ソニー・ホンダモビリティ(SHM)が2026年3月25日に「AFEELA 1」および第2弾モデルの開発・発売中止を発表し、4月21日に事業縮小を決定しました。ソニーは2026年3月期にこれに伴う追加の持分法投資損失449億円を計上しており、2027年3月期にも追加損失を会社予想に織り込んでいます。
成長投資 — TSMCとの熊本合弁(2026年8月に確定契約)
I&SSの最大の投資案件は、ソニーセミコンダクタソリューションズとTSMCによる次世代イメージセンサー向けの合弁会社です。2026年5月8日に基本合意(MOU)を公表し、2026年8月11日に確定契約を締結しました。
項目 | 内容 |
|---|---|
合弁会社 | Advanced Vision Semiconductor Manufacturing Corporation |
所在地 | 熊本県合志市 |
拠出額 | ソニー 約4,650億円(現金および会社分割による資産移転)/TSMC 約2,820億円 |
位置づけ | ソニーが唯一の支配株主。ソニーグループの連結子会社として運営予定 |
量産開始 | 2029年予定 |
2027年3月期の連結業績への影響は軽微の見込みとされています。なお長崎の既存工場への新規設備投資については、合弁会社による投資とあわせて「日本政府の支援を前提に柔軟に協議中」という段階であり、確定した増設計画として公表されているわけではありません。
株主還元 — 5,000億円の自社株買いと自己株式の消却
2026年5月8日、ソニーは取得上限2億3,000万株(発行済株式総数の3.89%)・5,000億円の自己株式取得枠を設定しました(取得期間は2026年5月11日〜2027年5月10日)。あわせて2026年5月29日に自己株式184,494,319株(2026年4月30日時点の発行済株式総数の3.0%)を消却しています。
自己株式の保有方針も変更し、株式報酬への充当が見込まれる分を残して原則それ以外は消却する方針としました(従来は発行済株式総数の約3%を保有)。配当は2027年3月期の年間予想が35円(中間17.5円・期末17.5円)で、2026年9月18日終値3,697円に対する予想利回りは約0.9%です。
投資家が注目すべきポイント
強み① エンタメ×テクノロジーのユニークなポートフォリオ
ゲーム、音楽、映画のエンタメ3事業と、イメージセンサー・エレクトロニクスのテクノロジー2事業を併せ持つ企業は世界的にも稀です。エンタメのサブスクリプション化による安定収益と、テクノロジーの成長性という守り(ディフェンシブ)と攻め(グロース)の両面を兼ね備えた事業構造は大きな競争優位性です。
強み② CMOSイメージセンサーの技術的優位
世界シェア約50%(Yole Group調べ、2025年の金額ベース)のCMOSイメージセンサーは、2層トランジスタ画素積層型などの次世代技術を実用化しています。スマートフォン以外にも車載・産業用・AIへと用途が広がる一方、2027年3月期の会社予想は売上−4%・営業利益+12%で、増収が一本調子に続く前提には立っていません。
リスク① ゲームハードウェアサイクルと開発費高騰
PS5は発売6年目を迎え、次世代機への移行期が近づいています。AAAタイトルの開発費は数百億円規模に膨らんでおり、1タイトルの成功・失敗が業績に大きなインパクトを与えます。ネットワークサービスのリカーリング収入は増加しているものの、ハードウェアサイクルの影響は完全には排除できません。
リスク② イメージセンサーの設備投資と中国リスク
I&SS事業は設備投資集約型です。2026年8月11日に確定契約を結んだTSMCとの熊本の合弁会社にはソニーが約4,650億円を拠出する予定で、長崎の既存工場への新規設備投資も日本政府の支援を前提に協議中の段階にあります。スマートフォン向けの中国メーカー依存度が高く、Huaweiの自社センサー開発や中国市場の減速は中長期のリスク要因です。
リスク③ 映画・エンタメのヒット依存
映画事業は興行収入に左右される変動性の高い事業であり、四半期ごとの利益変動が大きくなります。スパイダーマン等の強力なIPはあるものの、コンテンツ制作コストの上昇は利益率を圧迫する要因です。
リスク④ 生産拠点の地震リスクとメモリ調達
イメージセンサーの主力生産拠点は熊本・長崎など九州に集中しています。2026年7月28日の令和8年熊本地震では熊本テクノロジーセンター(熊本県菊陽町)が生産を停止し、8月4日から段階的に再開、8月中旬に地震発生前の稼働水準へ復旧する見込みと公表されました。2027年3月期の会社予想はこの地震の影響を織り込んでいません。TSMCとの合弁会社も同じ熊本県内(合志市)に立地します。加えてメモリ価格の上昇は、PS5ハードの販売計画(調達可能なメモリ量が前提)とET&Sの採算(影響を約300億円に抑える計画)の両方に効いてきます。
まとめ
ソニーグループは、ゲーム・音楽・イメージセンサーの三本柱で営業利益過去最高を更新した、世界でも数少ないエンタメ×テクノロジー企業です。PlayStation Networkのサブスクリプション化、音楽の配信・ライブ・IP収入の拡大、イメージセンサーの高付加価値化が利益を押し上げました。ただし2026年3月期の増益には、音楽のPeanuts Holdings再測定益347億円のような一時要因も含まれます。
2027年3月期は営業利益1兆7,200億円(+18.8%)を会社予想としており、第1四半期の実績も好調です。2026年3月期の純損失は金融事業のパーシャル・スピンオフに伴う非資金の会計処理によるもので、継続事業ベースでは純利益1兆309億円の黒字。会社予想の1兆2,100億円はこれに対して+17.4%です。一方でこの予想は熊本地震の影響を織り込んでおらず、TSMCとの合弁への約4,650億円の拠出と5,000億円の自社株買いが並走します。エンタメIPの長期的な価値、半導体への投資負担、株主還元の3つを合わせて見る投資判断が重要です。
ソニーグループ
エンタテインメントとテクノロジーを融合させた総合企業。PlayStation等のゲーム事業、ソニー・ミュージックによる音楽制作・出版、ソニー・ピクチャーズによる映画・テレビ番組制作、カメラ・テレビ・ヘッドホン等のエレクトロニクス製品、スマー…










