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追い証(追証)とは|委託保証金維持率の計算と発生時の対処法

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追い証(おいしょう)とは、信用取引で含み損が膨らみ、証券会社に預けている担保(委託保証金)の価値が基準を下回った際に、追加の保証金を差し入れなければならない制度です。「追加保証金」(追加委託保証金とも)を略した呼び方です。信用取引をする上で避けて通れないルールであり、追い証の仕組みを正しく理解していないと、想定外の大きな損失を被るリスクがあります。

この記事では、追い証が発生する条件と計算方法を具体例つきで解説し、発生した場合の対処法から、そもそも追い証を出さないための実践的なリスク管理まで網羅します。

追い証の仕組み──なぜ追加の保証金が必要になるのか

信用取引では、証券会社から資金や株式を借りて売買します。この「借りる」という性質上、証券会社は貸し倒れリスクを管理するために、投資家に担保として委託保証金の差し入れを求めます。

新規に信用取引の建玉を持つ際には、法令(金融商品取引法に基づく内閣府令)により約定代金の30%以上かつ30万円以上の委託保証金が必要です。しかし建玉を保有している間に株価が不利な方向に動くと、含み損が発生して担保の実質的な価値が目減りします。

この担保価値の目減りが一定の基準(最低委託保証金維持率)を下回った時点で発生するのが追い証です。信用買いなら株価の下落、信用売り(空売り)なら株価の上昇が追い証の原因になります。

委託保証金率と最低保証金維持率の違い

委託保証金率

最低保証金維持率

意味

新規建てに必要な保証金の割合

建玉保有中に維持すべき保証金の割合

法令・取引所の基準

約定代金の30%以上・最低30万円(内閣府令)

20%(取引所の受託契約準則)

証券会社の一般的な設定

30%が多い。SBI証券は31%

20〜25%(取引所の基準と同じか、それより高め)

下回ると

新規建てができない

追い証が発生する

出典:金融商品取引法第161条の2に関する内閣府令、東京証券取引所「受託契約準則」、各証券会社の信用取引ルール(SBI証券の31%は同社HELP「必要委託保証金」、2026年10月21日閲覧)よりKabuGraph作成

委託保証金維持率の計算方法

追い証が発生するかどうかは、委託保証金維持率で判定されます。計算式は以下のとおりです。

ここで実質保証金は、差し入れた保証金(現金+代用有価証券の評価額)から、含み損や未払いの諸経費を差し引いた金額です。

具体例:信用買いで追い証が発生するまで

以下の条件で信用買いした場合を考えます。最低保証金維持率は20%とします(SBI証券・楽天証券・松井証券など。SMBC日興証券は25%)。

  • 買い建て:A社株 1,000株 × 1,000円 = 建玉金額 100万円

  • 差入保証金:現金 33万円(保証金率33%)

  • 諸経費は省略

株価

含み損

実質保証金

維持率

判定

1,000円

0円

33万円

33.0%

問題なし

900円

−10万円

23万円

23.0%

問題なし

850円

−15万円

18万円

18.0%

追い証発生

800円

−20万円

13万円

13.0%

追い証発生

KabuGraph作成。諸経費は省略。追い証の条件を「維持率20%割れ」だけとした場合

株価が850円に下落した時点で維持率が18.0%となり、最低保証金維持率20%を下回ります。この場合、維持率を20%に回復させるために必要な追い証は2万円(100万円×20%−18万円)です。

ただし、追い証の条件は証券会社によって違います。SMBC日興証券は維持率25%割れで追い証が出て、30%まで戻す額を求めます。この例なら、850円で30万円−18万円=12万円、900円(維持率23.0%)でも7万円の追い証です。

「あといくら下がったら追い証?」の計算

追い証が発生するまでの余裕額は、次の式で求められます。

上の例でいえば、株価1,000円の時点で 33万円−100万円×20%=13万円の余裕があります。つまり株価が130円(13%)下落して870円を割り込むと追い証が発生します。多くの証券会社のツールにはこの余裕額が表示されるので、建玉を持ったら毎日確認する習慣をつけましょう。

また、楽天証券とSMBC日興証券は、実質保証金が30万円(信用取引に必要な最低額)を割ったときにも追い証を求めます。SBI証券と大和証券も、評価損などを引いた保証金が30万円を下回ると、30万円まで(下回った分の)保証金の差し入れを求めます。SBI証券は、入金が確認できないとその後の新規の注文や出金を受け付けません(SBI証券 HELP「必要委託保証金」・大和証券 ヘルプ「委託保証金・担保余力照会:新規建可能状況」・SMBC日興証券「信用取引の『委託保証金率』『委託保証金維持率』とは?」、いずれも2026年10月21日閲覧)。この例のように保証金が30万円に近いと、株価が3%下がる(970円を割る)だけで追い証や差し入れの対象になります。最低額ぎりぎりで建てるのは避けましょう。

追い証が発生したらどうする?──3つの対処法と期限

追い証の発生は通常、大引け後の値洗い(時価評価の再計算)で判定され、翌朝までにメールやアプリで通知されます。通知を受けたら、期限内に以下のいずれかの方法で対応する必要があります。

対処法1:現金または有価証券を追加で入金する

不足額以上の現金を証券口座に振り込むか、追加の有価証券を担保として差し入れます。入金後に維持率が回復すれば追い証は解消されます。

対処法2:建玉を一部または全部決済する

含み損を抱えた建玉を決済(返済)して建玉金額を減らすことでも、追い証を解消できます。主要な証券会社はどこもこの方法を認めています。ただし、決済した金額がそのまま追い証に充てられるわけではありません。差し引かれるのは、決済した建玉の建てたときの金額の20%(SMBC日興証券は30%)だけです。

これは、決済すると、その建玉を持つために必要だった保証金(建玉金額の20%)が要らなくなるためです。たとえば100万円で建てた建玉を返済すると、追い証から差し引かれるのは20万円です。追い証が出る基準(維持率20%か25%か)も証券会社によって違うので、利用している会社のルールを確認してください。

対処法3:両方を組み合わせる

一部の建玉を決済して損失を確定させつつ、残りの不足分を入金する方法です。

追い証の入金期限

追い証の入金期限は証券会社によって異なりますが、追い証発生日の翌々営業日(T+2)が一般的です。たとえば月曜日の大引け後に追い証が発生した場合、水曜日の正午ごろまでに入金が必要になります。土日・祝日は営業日に含まれないため、金曜日に発生した場合は翌火曜日が期限です。

ただし、急落で維持率が大きく下がると期限が早まる会社があります(松井証券は維持率10%未満、SMBC日興証券は20%未満で翌営業日)。楽天証券は、前引けか大引けで維持率が10%を割ると、期限を待たずに建玉を決済することがあります。

証券会社

入金期限

備考

SBI証券

翌営業日

過ぎると新規建てができなくなる。翌々営業日の12時までに解消しないと、その日の後場に全建玉を強制決済

楽天証券

翌々営業日12:00

保証金が30万円を割っても追い証。前引けか大引けで維持率が10%を割ると、追い証の請求なしに決済されることがある

松井証券

翌々営業日11:30

維持率10%未満なら翌営業日11:30に早まる

SMBC日興証券

翌々営業日

維持率25%割れで追い証が出て、30%まで戻す額が必要(他社より厳しめ)。維持率20%未満なら翌営業日に早まる

出典:SBI証券・楽天証券・松井証券・SMBC日興証券(日興イージートレード)の信用取引ルール(2026年10月時点)よりKabuGraph作成。実際の期限は利用中の証券会社で確認してください

追い証を払えない場合──強制決済と残るリスク

期限内に追い証を解消できなかった場合(または、維持率が急に大きく下がった場合)、証券会社は投資家の建玉を強制的に反対売買(強制決済)します。信用買いなら成行の売り注文、信用売りなら成行の買い注文が自動執行され、損失が確定します。

強制決済後に借金が残るケース

強制決済は「それ以上損失が広がらないようにする」ための措置ですが、決済時に保証金を上回る損失が出ていた場合、不足額を証券会社に支払う義務が残ります。これは事実上の「借金」であり、信用取引では投資元本を超える損失が発生しうる理由のひとつです。

さらに、期限を過ぎると遅延損害金(年率14.6%程度が一般的)が日割りで加算されます。放置すると法的措置(訴訟・差押え)に発展する可能性もあるため、支払いが困難な場合は速やかに証券会社に連絡し、分割払いなどの相談をすることが重要です。

強制決済後のペナルティ

  • 信用取引の停止 ── 追い証の未解消が続くと、一定期間または無期限で信用取引口座が利用停止になります

  • 現物株の強制売却 ── 代用有価証券として差し入れている株式が、投資家の意思に関係なく売却されることがあります

  • 口座の解約 ── 悪質な場合は証券口座そのものが解約されるケースもあります

追い証を出さないための5つのリスク管理

追い証は発生してから慌てるのではなく、そもそも発生させないことが最善の対策です。以下の5つのポイントを意識しましょう。

1. レバレッジを抑える

信用取引では最大約3.3倍のレバレッジが可能ですが、目一杯に使うと少しの値動きで維持率を割り込みます。建玉金額を保証金の2倍以下に抑える(保証金率50%以上を維持する)と、維持率20%まで30ポイントの余裕が生まれ、追い証リスクは大幅に下がります。

2. 逆指値(ストップロス)注文を入れる

あらかじめ損切りラインを決めて逆指値注文を入れておけば、決めた価格まで下がったときに自動で売り注文が出ます。追い証に至る前に損切りが執行されるよう、維持率が25〜30%に達する価格帯に設定するのがひとつの目安です。ただし、ストップ安に張り付くような急落では、注文が出ても売れないことがあります。

3. 分散投資で一極集中を避ける

ひとつの銘柄に建玉を集中させると、その銘柄の急落で一気に維持率が下がります。複数の銘柄やセクターに分散することで、特定銘柄の値動きの影響を緩和できます。

4. 代用有価証券に頼りすぎない

代用有価証券は掛け目(80%)で評価されるうえ、その株自体の値下がりで担保価値が減少します。保証金に占める現金の比率を50%以上に保つことで、相場急落時の二重パンチを防げます。特に危険なのが「二階建て」と呼ばれる取引です。A社株を代用有価証券として差し入れ、さらに信用取引でA社株を買うと、A社株が下落した際に建玉の含み損と担保価値の減少が同時に直撃し、あっという間に追い証に追い込まれます。何%下がると追い証になるかを現金担保の場合と比べた計算は、次の記事で扱っています。

信用二階建てとは|何%下がると追証か、三階建てとの違い
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信用二階建てとは|何%下がると追証か、三階建てとの違い

信用二階建ては、保有株を担保(代用有価証券)に入れて同じ銘柄を信用で買うこと。下落が評価損と担保の目減りの両方に効き、担保80万円で200万円買う例では現金担保の20%に対し14.3%の下落で追証。三階建ての意味と避け方も。

5. 維持率を毎日チェックする

ほとんどの証券会社のアプリやWebサイトで、リアルタイムの維持率と「追い証までの余裕額」を確認できます。忙しくても1日1回は確認し、維持率が30%を切ってきたら警戒レベルを上げましょう。維持率が新規建てに必要な30%を下回ると、法令のルールで、口座から現金や株を引き出せなくなります(どの証券会社でも同じです)。追い証(20%割れ)より手前で発動するこの「引出制限」は、いわばイエローカードです。この段階で建玉の縮小を検討すれば、追い証に追い込まれるリスクを大きく減らせます。

追い証にまつわるよくある質問

信用売り(空売り)でも追い証は発生する?

発生します。信用売りの場合、株価が上昇すると含み損が増え、維持率が低下して追い証が発生します。株価の上昇には理論上の上限がないため、信用売りの追い証は青天井で膨らむリスクがあります。

追い証は一度入金すればそれで終わり?

いいえ。入金後にさらに株価が不利に動けば、翌営業日の値洗いで再び追い証が発生します。追い証が出た時点で、ポジションそのものを見直すことが重要です。入金だけで解決しようとすると、損失がさらに広がるリスクがあります。

ストップ安で売れない場合はどうなる?

ストップ安で売り注文を出しても約定しない場合でも、追い証の義務は変わりません。損切りしたくても約定しない状態が続き、追い証が連日発生するという最悪のケースもありえます。これが信用取引で最も警戒すべきリスクのひとつです。

株価が戻れば追い証は自動的に消える?

消えません。多くの証券会社では、一度発生した追い証はその後の相場変動で維持率が基準を上回っても自動的には解消されません。期限内に追加の入金または建玉の決済によって追い証を解消する必要があります。「放っておけば株価が戻って解消されるだろう」という判断は強制決済につながるリスクがあります。

現物取引では追い証は発生する?

現物取引では追い証は発生しません。追い証は証券会社から資金や株式を「借りている」信用取引特有のリスクです。現物取引では自己資金の範囲内で取引するため、担保や維持率の概念がありません。

まとめ

追い証は信用取引におけるリスク管理の最後の砦です。ポイントを整理します。

  • 追い証=委託保証金維持率が最低基準(多くの証券会社で20%)を下回った時に求められる追加保証金

  • 入金期限は追い証発生日の翌々営業日(T+2)が一般的(急落時は早まることがある)

  • 期限内に解消しなければ強制決済。元本を超える損失(借金)が残るリスクもある

  • 最善の対策は「追い証を出さないこと」。レバレッジを抑え、逆指値を設定し、維持率を毎日確認する

信用取引は資金効率を高める強力なツールですが、リスク管理を怠ると大きな損失につながります。追い証の仕組みを正しく理解したうえで、無理のないレバレッジで活用しましょう。

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コラム著者・編集者

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KabuGraph編集部

KabuGraph編集部は、投資情報の発信と株式分析ツールの開発に携わるチームです。日本株・米国株の事業分析から、投資に役立つ情報をわかりやすくお届けします。

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