信用二階建てとは|何%下がると追証か、三階建てとの違い

信用二階建てとは、保有している現物株を信用取引の担保(代用有価証券)に差し入れ、同じ銘柄を信用取引で買うことです。株価が下がると建玉の評価損と担保の目減りが同時に起きるため、現金を担保にした場合より小さな下落で追証になります。俗に「三階建て」と呼ぶのは、その現物まで借金で買っている状態です。
この記事では、何%下がると追証かを現金担保と比べ、急落時の売りの連鎖、確かめ方と避け方を図解します(2026年10月20日時点)。
この記事の内容(目次)
信用二階建てとは——担保の現物株と同じ銘柄を信用で買うこと
信用取引では、現金の代わりに保有株を委託保証金として差し入れることができ、これを代用有価証券と呼びます。その代用有価証券と同じ銘柄を信用で買い建てた状態が「二階建て」です。現物の株が1階、その上に載せた信用の買い建玉が2階、というたとえです。
JTG証券:「現物で保有されている代用有価証券と同一の銘柄を信用取引においても買建する取引」(JTG証券「信用取引ルール:二階建て取引」、2026年10月20日閲覧)
楽天証券:「代用有価証券として差し入れている株式と、信用買建玉に同じ銘柄が含まれること」(楽天証券「信用取引の基本ルール」、同日閲覧)
三菱UFJ eスマート証券:信用代用の現物株と信用の買い建玉が同じ銘柄の状態。信用売りの建玉が現物と同じ銘柄でも「二階建」とは呼ばない(三菱UFJ eスマート証券「建玉評価関連図」、同日閲覧)
同じ銘柄への投資額が、自己資金の約3.7倍になる
新しく信用の建玉を持つには、約定代金の30%以上、最低30万円の委託保証金が必要です(内閣府令 第2条・第3条、e-Gov、2026年10月20日閲覧)。つまり建てられるのは保証金の約3.3倍までです。代用有価証券の株は、時価の80%を上限に評価されます(同 第6条)。
100万円の現物を担保にすると評価は80万円で、信用で買えるのは最大で80万円÷30%=約267万円です。二階建てでは、この約267万円と担保の現物100万円の合計約367万円が同じ銘柄に乗り、自己資金100万円の約3.7倍になります。現金80万円だけを担保にした場合は約267万円で、約3.3倍です。
JPXも、現金30万円と時価30万円の株を差し入れると保証金は54万円分になり、約180万円まで取引できる例を示しています(JPX「信用取引制度の概要」、2026年9月)。
なぜ危ない?——下落が「評価損」と「担保の目減り」の両方に効く
追証の判定に使う委託保証金の維持率は、次の式で計算します(追い証(追証)とはと同じ考え方。手数料・金利は省略)。
建玉の評価損は評価益と相殺できますが、評価益が出ても保証金には加算されません(JPX「信用取引制度の概要」)。楽天証券は毎営業日の大引けの時点で計算し、維持率が20%を割るか、受入保証金が30万円を割ると追証です(楽天証券「信用取引の基本ルール」)。
二階建てでは、A社の株価が d だけ下がると、分子の「代用の株の時価」と「評価損」の両方が動きます。

追い証(追証)とは|委託保証金維持率の計算と発生時の対処法
追い証(追加保証金)の仕組みを初心者向けに解説。委託保証金維持率の計算方法、具体的な発生シミュレーション、期限内の対処法、追い証を出さないための実践的なリスク管理まで。
例:A社の現物1,000株を担保に、A社を2,000株信用で買う
A社の株価1,000円。現物1,000株(時価100万円、代用の評価80万円)
その現物を担保に、A社を信用で2,000株(約定代金200万円)買う
比べる相手:現金80万円を担保に、同じ200万円を信用で買う(受入保証金は同じ80万円)
維持率20%を割るか、受入保証金が30万円を割ると追証(楽天証券の基準。SMBC日興証券は維持率25%)。この例では20%の線が先に来る
A社の下落率 | 株価 | 現金担保の維持率 | 二階建ての維持率 |
|---|---|---|---|
0% | 1,000円 | 40.0% | 40.0% |
10% | 900円 | 30.0% | 26.0% |
14.3% | 857円 | 25.7% | 20.0% |
20% | 800円 | 20.0% | 12.0% |
10%下がった時点で、二階建ての維持率は26.0%と現金担保(30.0%)より4ポイント低く、14.3%の下落で20%を割ります。現金担保なら20%の下落まで持ちこたえます。20%下がったときに求められる追証は、現金担保なら0円(ちょうど20%)、二階建てなら16万円(200万円×20%−24万円)です。
差がつくのは式の傾きのせいです。株価が1%下がるごとに、現金担保の維持率は1ポイント、二階建ては1+(代用の評価額÷建玉の約定代金)=1.4ポイント下がります。
別の銘柄でも、一緒に下がるなら二階建てに近い
担保が別の銘柄でも、相場全体の急落や、同じ業種・親子会社のように値動きが連動する銘柄なら、二階建てに近い危うさがあります。グラフの琥珀色の線は、担保の別銘柄がA社の半分の率で下がる場合で、16.7%の下落で20%を割ります。一般には次の式で、β(担保の銘柄がA社の何倍の率で下がるか)が1に近いほど二階建てと同じになります。
現金担保は β=0、二階建ては β=1 です。例の数字では (80−40)÷(200+80)=14.3%になります。
何%下がると追証?——建玉の大きさ別の早見表
二階建ての危うさは、建玉を大きくするほど増します。受入保証金80万円(現金80万円、またはA社の現物100万円の代用評価)で、信用買いの約定代金を変えたときに維持率が20%を割る下落率は次のとおりです。
信用買いの約定代金 | 受入保証金の何倍か | 現金担保 | 二階建て |
|---|---|---|---|
80万円 | 1.0倍 | 80.0% | 40.0% |
120万円 | 1.5倍 | 46.7% | 28.0% |
160万円 | 2.0倍 | 30.0% | 20.0% |
200万円 | 2.5倍 | 20.0% | 14.3% |
240万円 | 3.0倍 | 13.3% | 10.0% |
約267万円 | 約3.3倍 | 10.0% | 7.7% |
建玉を担保の2倍(160万円)に抑えても、二階建てなら20%の下落で追証です。上限まで建てると、二階建ては7.7%の下落で追証になります。
楽天証券は受入保証金が30万円を割っても追証になるため、建玉が小さい上の2行ではそちらが先に来ます。建玉80万円なら二階建てで31.3%、120万円なら25.0%の下落で追証です(現金担保は62.5%・41.7%)。二階建ては「80万円×(1−下落率)−建玉×下落率=30万円」、現金担保は「80万円−建玉×下落率=30万円」を解いた値です(楽天証券「信用取引の基本ルール」、2026年10月20日閲覧)。
維持率が30%を割った段階で、保証金は引き出せなくなります(内閣府令 第7条)。同じ例で30%を割る下落率は、現金担保の10.0%に対し、二階建ては7.1%です。
信用三階建てとは——借金で買った現物で二階建てにすること(俗語)
「信用三階建て」は、取引ルールで定義された言葉ではない俗語です。辞書には、借金をして現物株を買い、その株を代用有価証券にして同じ銘柄を信用で買うこととする用例があります(Weblio「新語時事用語辞典:信用三階建て」、2013年2月6日更新)。決まった定義はなく、人によって数え方が違うこともあります。
二階建て:自己資金で買った現物を担保に、同じ銘柄を信用で買う
三階建て:その現物を、カードローンなどの借入れで買っている(二階建ての土台まで借金)
計算すると:自己資金ゼロで約367万円分を持つ
100万円を借りてA社の現物を買い、それを担保に上限(約267万円)まで信用で買うと、自己資金ゼロで約367万円分のA社株を持つことになります。A社が1%下がるごとに約3.7万円の損が出て、株価がどこまで下がっても、借りた100万円の返済義務は残ります。追証や強制決済で建玉を閉じても、借入れは消えません。
信用取引そのものも、レバレッジをかける以上、手元資金以上の損失が出ることがあります(JPX「信用取引制度の概要」)。強制決済の後に残った不足額の支払いは、追い証の記事で扱っています。
急落で二階建ての売りが連鎖する仕組み
二階建ての買い手が多い銘柄や、相場全体が急落する局面では、売りが売りを呼ぶ連鎖が起きえます。
株価が下がる:相場全体の急落や悪材料
維持率が速く下がる:二階建てでは評価損と担保の目減りが同時に進む
追証・強制決済:期限までに入金できなければ強制決済。急落時は期限前に決済されることもある(楽天証券の例は上の注意)
担保の現物まで売られる:信用の返済売りに加え、楽天証券は不足金に充てるため代用有価証券を任意で売却できるとしている(楽天証券「信用取引の基本ルール」)。その売りも株価の下げに加わる
値幅制限いっぱいまで下がるストップ安で売れないと、翌日も評価損と追証が積み上がります。
2024年8月の急落では、信用買い残が1週間で9,086億円減った
市場全体の数字でも、急落の週には信用の買い建玉がまとめて閉じられています。東証の信用取引現在高によると、信用買い残は2024年8月2日申込現在の4兆8,721億円から、8月9日申込現在の3兆9,635億円へ、1週間で9,086億円(18.6%)減りました(東証「信用取引現在高 過去推移表」)。この間の8月5日、日経平均は1日で4,451円(12.4%)下げています(三菱UFJアセットマネジメント「投信調査コラム 日本版ISAの道 その407」、2024年8月8日。終値は31,458.42円)。
信用買い残の推移(2024年6月21日〜10月4日申込現在、週次)
この金額は約定代金(建てたときの値段)で数えています(東証「信用取引現在高」、2026年10月16日申込現在の表の注4)。株価が下がって目減りした分ではなく、新しく建てられた分を大きく上回る建玉が閉じられたことを示します。
2024年8月9日申込現在の週:9,086億円減(18.6%減)。2002年8月以降の週次データで、前週からの減少額は最大
2025年4月11日申込現在の週:5,188億円減(11.6%減)。減少額で2位
2011年3月18日申込現在の週:4,845億円減(25.7%減)。東日本大震災の週で、減少率では最大(2013年7月までは大阪を含む三市場の合計)
出典:東証「信用取引現在高 過去推移表」よりKabuGraph算出(2002年8月2日〜2026年9月18日申込現在の週次。委託と自己の合計、金額=約定代金。年末年始などは2週分の比較)
銘柄ごとの信用残高の読み方と、買い残が多い銘柄が下げたときに何が起きるかは、次の記事にまとめています。

信用残高とは|買い残・売り残から相場の需給バランスを読む方法
信用残高(信用買い残・売り残)の意味と見方を解説。信用倍率・貸借倍率の計算と読み方、東証・日証金の公表のタイミングに加え、2016〜2026年のデータで見ると信用倍率の高さや増減だけでは株価の向きは分からない、という限界まで整理します。

信用買い残が多いとどうなる?|上値が重くなる仕組みと、買い残が減る意味
信用買い残が多いと返済売りが控えて上値が重く、下げに転じると投げや追証で下げが速くなりやすい。2016〜2026年の売買の多い銘柄では、買い残が出来高の5〜10日分あると半年後の株価が市場の中央値を6%下回った。減る意味も解説。
二階建てになっていないかの確かめ方と避け方
確かめ方:証券会社の画面で見る4つのこと
代用に入っている銘柄:保有株の預り区分が「信用代用」か「保護預り」かを見る。楽天証券は「保有商品一覧」で預り区分別の数量を確認できる(楽天証券「信用取引の基本ルール」)
買った現物が自動で代用になる設定:楽天証券には、新しく買った現物株を「信用代用」に自動で振り替える設定がある(同)。SMBC日興証券(日興イージートレード)は、代用に使える預り株式を全て代用有価証券として扱う(SMBC日興証券「はじめに(保証金について)」)。こうした口座では、同じ銘柄を信用で買った時点で二階建てになる
二階建ての表示:三菱UFJ eスマート証券の「建玉評価関連図」は、二階建ての銘柄に「二階建注意」と表示する(三菱UFJ eスマート証券「建玉評価関連図」)
何%下がると20%を割るか:受入保証金、代用の評価額、建玉の約定代金を上の式に入れて計算する。維持率の数字だけでなく、下落率に直して見る
証券会社と取引所の制限
ネット取引で原則禁止の会社もある:JTG証券は、インターネットでの信用取引では二階建てを原則禁止とし、特定の銘柄が委託保証金の50%を超えるとその銘柄の新規・追加の買い建てを受けず、二階建てに当たれば建玉を任意で決済することがあるとしている(JTG証券「信用取引ルール:二階建て取引」)
顧客ごとの規制・期限の繰り上げ:楽天証券は、建玉や代用有価証券の状況によって、顧客ごとに取引を規制したり、保証金の差し入れ期限を繰り上げたりすることがあるとしている(楽天証券「信用取引の基本ルール」)
取引所の増担保規制:信用取引の利用が過度な銘柄には、東証が委託保証金率を引き上げ、その一部を現金で差し入れるよう求める。第一次の措置は委託保証金率を20ポイント上げて50%、うち現金20%(東証「信用取引に係る委託保証金の率の引上げ措置等に関するガイドライン」、2026年10月20日閲覧)。対象の銘柄では、代用有価証券だけで新しい建玉を建てることはできない
避け方
同じ銘柄を買い増すなら、担保は現金にする:担保の価値が株価と一緒に下がらない
二階建ての分の現物を代用から外す:預り区分を保護預りに移せば、担保の目減りは起きない(信用で買える額はその分減る。振替の方法は証券会社による。SMBC日興証券のように、代用に使える預り株式を全て代用にする会社では選べないことがある)
建玉を小さくし、20%を割る下落率を先に計算する:早見表のとおり、建玉を担保の2倍に抑えても、二階建てなら20%の下落で追証
下がったところで信用で買い増さない:二階建てのままナンピンすると、建玉が増えて下落率の余裕がさらに縮む
損切りの値段を決め、逆指値を置く:ただし、ストップ安に張り付くと注文が出ても約定しないことがある

ロスカット(損切り)とは|プロスペクト理論が邪魔をする「損失確定」の技術
ロスカット(損切り)の意味・目安・ルールの作り方をわかりやすく解説。損切りできない心理的原因(プロスペクト理論)から、逆指値を使った自動化、信用取引の強制決済・FXの強制ロスカットまで網羅。
同じ銘柄の信用売り(つなぎ売り)は逆にヘッジになる
現物と同じ銘柄を信用で売るのは二階建てではありません(三菱UFJ eスマート証券「建玉評価関連図」)。「つなぎ売り」と呼ばれ、株価が下がると現物の評価損を信用売りの利益で埋められます。JPXも、現物100万円を持ったまま同じ銘柄を信用で売り、株価が2割下がったときの現物の評価損20万円を信用売りの利益20万円でカバーする例を示しています(JPX「信用取引制度の概要」「保有株式の株価下落リスクのヘッジが可能」)。
A社の現物100万円を担保に、A社を100万円信用で売ると、維持率は次のように動きます(掛目80%、手数料・金利は省略)。
株価が上がると:担保の評価は上がり、信用売りの評価損も増える。維持率は「80%−0.2×上昇率」で、20%を割るのは株価が4倍(300%上昇)のとき。楽天証券の基準では受入保証金が30万円を割る方が先で、株価が3.5倍(250%上昇)で追証
株価が下がると:信用売りの評価益は保証金に加算されないので、担保の目減り分だけ、1%下がるごとに0.8ポイント下がる。維持率は「80%×(1−下落率)」で、20%を割るのは75%下落のとき。楽天証券の基準では受入保証金が30万円を割る方が先で、62.5%下落で追証
二階建てとは逆に、担保と建玉の損益が打ち消し合い、維持率も80%から始まるので、追証までの余裕が大きくなります。その代わり、株価が上がっても利益は打ち消されます。信用売りには貸株料、制度信用なら逆日歩(品貸料)もかかります(JPX「信用取引制度の概要」)。配当の権利日をまたぐと、配当落調整金を支払います。返済は、持っている現物を渡す「現渡し」でもできます(同)。

逆日歩とは|空売り投資家が負担する「株のレンタル料」の仕組み
逆日歩(品貸料)は制度信用の空売りで株不足になると日証金の入札で決まる追加コスト。公表される品貸料率は品貸日数分込みで、負担は公表値×株数。水曜・連休前に日数が増える仕組み、最高料率と2〜10倍の倍率、一般信用での回避策を解説。

制度信用と一般信用どっちが得?|SBI証券・楽天証券を比較
SBI証券・楽天証券は制度信用と一般信用(無期限)の料率が同じ(買方金利年2.80%・貸株料年1.10%、2026年10月6日確認)。買いは同額、空売りは逆日歩のない一般信用が有利。優待クロスは短期3.90%と逆日歩の損益分岐(1株30銭)で判断します。
よくある質問
NISA口座の株と同じ銘柄を信用で買うと二階建て?
NISA口座で持っている株は代用有価証券にできないので(楽天証券「信用取引の基本ルール」)、担保の目減りで追証が早まることはありません。ただし、同じ銘柄に現物と信用の両方で投資していることは変わらず、下落すれば両方に損が出ます。
二階建ては禁止されている?
一律の禁止ではなく、証券会社ごとの扱いです。法令が定めているのは代用有価証券の評価の上限(株は時価の80%)などで(内閣府令 第6条)、JTG証券のようにネット取引で原則禁止とする会社も、楽天証券のように注意を促したうえで状況に応じて規制する会社もあります。
株価が上がっているときは有利?
上がれば現物と信用の両方で利益が出て、担保の評価も上がるので、信用で買える額が増えます。その余力でさらに買い増すと、同じ銘柄への投資額が膨らみ、下げに転じたときの余裕はさらに小さくなります。建玉の評価益は保証金に加算されないので、上昇中に買い増すほど早見表の下の行に近づきます。
信用三階建てと二階建ての違いは?
二階建ては自己資金で買った現物を担保に同じ銘柄を信用で買うこと、三階建て(俗語)はその現物まで借金で買っている状態です。計算例は上の「信用三階建てとは」にまとめています。










