ファーストリテイリング(9983)の企業分析|売上3.96兆円・海外ユニクロ2.4兆円、5期連続最高益のグローバルSPA
2026年8月期決算まで反映

ファーストリテイリング(9983)は、「ユニクロ」「ジーユー」を展開する日本最大のアパレル企業です。2026年8月期の売上収益は3兆9,633億円(前期比+16.6%)、事業利益7,184億円(同+30.4%)と5期連続で過去最高の業績を更新しました。
成長のエンジンは海外ユニクロ事業です。売上2兆4,111億円(前期比+26.2%)と過去最高を記録し、すべての地域で2桁の増収増益となりました。時価総額は約23.5兆円(2026年10月29日終値時点)で、日経平均株価の構成ウエート上位3銘柄の一角としても注目されています。
この記事の内容(目次)
会社概要 — 「LifeWear」で世界を席巻するSPA
項目 | 内容 |
|---|---|
会社名 | 株式会社ファーストリテイリング |
証券コード | 9983(東証プライム) |
決算期 | 8月 |
時価総額 | 約23.5兆円(2026年10月29日時点) |
事業別売上構成(2026年8月期)
セグメント別売上収益推移
海外ユニクロが全体売上の約61%を占め、国内ユニクロ(約27%)を大きく上回っています(2026年8月期、出典:ファーストリテイリング 2026年8月期 決算サマリー)。「LifeWear(究極の普段着)」コンセプトのもと、ヒートテックやUVカットなどの機能性商品が世界中で支持されています(出典:同 決算説明会資料 p.4)。
成長戦略と事業構造
海外ユニクロ — 北米・欧州が新たな成長極に
海外ユニクロ事業は2026年8月期(2025年9月〜2026年8月)に売上収益2兆4,111億円(前期比+26.2%)、事業利益4,398億円(同+44.1%)と過去最高を更新し、すべての地域で2桁の増収増益となりました(為替の影響を除いた現地通貨ベースでは売上が約18%増、事業利益が約35%増)。特に北米(売上3,649億円、+34.6%)と欧州(同5,126億円、+38.7%)は旗艦店の出店やブランド発信で高成長が続き、欧米を合わせた売上規模はグレーターチャイナ、韓国・東南アジア・インド・豪州地区を初めて上回りました。
前期に減収・大幅減益だったグレーターチャイナは、2026年8月期に売上収益7,240億円(前期比+11.3%)、事業利益1,120億円(同+24.6%)と増収増益に戻りました。中国大陸は現地通貨ベースで売上が約3%増、事業利益が約18%増で、会社は「事業構造改革が着実に進み、再成長に向けて手応えがあった1年」と説明しています。香港・台湾も増収増益でした。会社は2027年8月期もグレーターチャイナの増収・2桁の増益を見込んでいます。
国内ユニクロ — 1兆円超で過去最高、足元は天候で振れ
国内ユニクロは2026年8月期に売上収益1兆848億円(前期比+5.7%)、事業利益1,960億円(同+8.1%)と過去最高を更新しました(前期に初めて1兆円を突破)。既存店売上高(Eコマース含む)は通期で+5.1%で、ウルトラストレッチパンツやUVカットなどの機能性商品、バレルパンツなどトレンドのシルエットを反映した商品が売上をけん引しました。売上総利益率は調達に使う為替予約レートの円安で0.1ポイント低下しましたが、上期を中心に人件費・賃借料の比率が下がり、販管費比率は0.4ポイント改善しています。
足元は天候で振れています。既存店+Eコマース売上は第4四半期(2026年6〜8月の3ヶ月)に前年比96.0%と落ち込みました。会社は、6月と8月の気温が前年より低かったことや台風・豪雨で夏物の需要が伸び悩んだためと説明しています。一方、2027年8月期最初の月の2026年9月は、気温が下がって秋冬物が好調に売れ、110.8%と2桁の増収でした。
期間 | 売上高 | 客数 | 客単価 |
|---|---|---|---|
2026年6〜8月(第4四半期) | 96.0% | 92.0% | 104.4% |
2025年9月〜2026年8月(通期) | 105.1% | 100.2% | 104.8% |
2026年9月 | 110.8% | 99.5% | 111.3% |
会社は2027年8月期の国内ユニクロを増収、事業利益は前年並みと見込んでいます。値引率の改善に取り組む一方、調達に使う為替予約レートが円安となって原価率が上がる影響が大きく、売上総利益率は若干低下する見通しです。
ジーユー — 第2の柱へ、商品力の回復が課題
低価格帯のトレンドファッションブランド「ジーユー」は、2026年8月期の売上収益が3,367億円(前期比+1.8%)、事業利益が315億円(同+11.0%)でした。品番の絞り込みと販売計画の精度向上でオペレーションの質は上がってきましたが、第4四半期(6〜8月)は新コレクションへの切り替え期で販売に苦戦しました。ユニクロが「機能×ベーシック」を担い、ジーユーが「トレンド×低価格」を担うブランドポートフォリオの棲み分けは機能していますが、第2の柱へ育てるには商品力の回復が課題です。会社は2027年8月期から商品全体を刷新し、増収増益を見込んでいます。
業績推移と財務分析
通期業績推移(売上収益・事業利益・事業利益率)
2026年8月期(2025年9月〜2026年8月)は売上収益3兆9,633億円(前期比+16.6%)、事業利益7,184億円(同+30.4%)、親会社の所有者に帰属する当期利益5,425億円(同+25.3%)と、5期連続で過去最高の業績となりました。7月時点の会社予想に対して売上は若干下回り、事業利益は上回っています。この利益には、一部の事業で税務上の損金計上が増えて税率が例年より低くなった分が含まれます(出典:ファーストリテイリング 2026年8月期 決算短信・決算説明会資料 p.6)。
2027年8月期の会社予想は売上収益4兆4,500億円(前期比+12.3%)、事業利益8,300億円(同+15.5%)と、過去最高の更新が続く見込みです。親会社の所有者に帰属する当期利益は5,600億円(同+3.2%)と伸びが小さく、会社は税率が例年並みに戻ることと、韓国・東南アジアのユニクロの成長で非支配持分が増えることを見込んでいます。前提の為替レートは1ドル156.2円です(出典:ファーストリテイリング 2026年8月期 決算説明会資料 p.22)。
EPS・配当金の推移
EPS・1株配当金の推移
ファーストリテイリングは利益成長に連動した増配を続けており、配当性向は2023〜2025年8月期に30〜35%程度でした。2026年8月期は10月8日に期末配当の予想を320円から530円に引き上げ(11月5日の取締役会で決議する予定)、年間配当は850円(前期比+350円)、配当性向48.1%となる予定です。会社は、海外ユニクロの拡大で収益の柱が増え、成長投資を積極的に行っても十分な資金を確保できるようになったとして、配当性向を50%程度へ引き上げ、高成長を最優先としながら高還元を両立する「新たなステージに入った」と説明しています(出典:ファーストリテイリング 2026年8月期の配当予想の修正に関するお知らせ・決算説明会資料 p.28)。
2027年8月期の会社予想は年間900円(中間450円・期末450円、配当性向49.3%)です。予想配当利回りは約1.2%(900円÷2026年10月29日終値73,800円)と低水準ですが、株価の値上がり益(キャピタルゲイン)主体の銘柄として位置付けられます。
投資家が注目すべきポイント
強み① 海外ユニクロの持続的成長
北米・欧州の高成長に加えて2026年8月期はグレーターチャイナも増収増益に戻り、海外ユニクロはすべての地域で2桁の増収増益となりました。世界のアパレル市場で「機能性×高品質×手頃な価格」のLifeWearポジションを確立しており、ZARAやH&Mとは差別化された成長余地があります。
強み② 利益率の改善トレンド
事業利益率はコロナ期の8.5%(2020/8)から18.1%(2026/8)へ大幅に改善。国内ユニクロでは販管費比率の低下(人件費・賃借料比率の改善)、海外ユニクロでは質の高い出店や商品・売り場づくり・情報発信の連動の強化で増収増益が続き、2026/8期は海外のすべての地域で事業利益率が上がりました。2027/8期の会社予想では事業利益率18.7%とさらなる改善を見込んでいます。
リスク① グレーターチャイナの回復の持続性
グレーターチャイナは2026年8月期に増収増益(事業利益+24.6%)へ戻りましたが、中国大陸の売上は現地通貨ベースで約3%増と小幅にとどまりました(事業利益は約18%増)。2025年8月期には会社が消費意欲の低下や商品構成の課題を減益要因に挙げており、売上の伸びが戻るかを含めて回復の持続性は引き続き注視が必要です。
リスク② 為替変動
海外ユニクロ比率61%かつ仕入は主にドル建てのため、為替は円高・円安のどちらに動いても別のかたちで業績に効きます。
円高:売上の61%を占める海外ユニクロの売上・利益が円換算で目減りします。
円安:ドル建て仕入の原価率が上昇し、国内ユニクロの粗利益率を押し下げます。会社も2027年8月期の国内ユニクロについて、調達に使う為替予約レートの円安で原価率が上がり、売上総利益率が若干低下すると見込んでいます。
調達分は為替予約でヘッジしているものの、予約レートの水準次第で四半期ごとの原価率は変わり、急激な変動はどちらの方向でも業績を振らします。
リスク③ 高バリュエーション
株価73,800円(2026年10月29日終値)ベースの実績PERは41.7倍(2027年8月期の会社予想EPS 1,825.06円ベースでは40.4倍)で、ZARAのインディテックス(20倍台後半)やH&M(約23倍)と比較しても大幅なプレミアムがついています(2社は2026年10月28日終値と直近通期EPSよりKabuGraph算出)。日経平均の構成ウエートが8%台(2026年9月末)と大きいことによる指数買い需要が株価を支えている面もあり、ファンダメンタルズ以外の要因で株価が支えられているリスクには留意が必要です。
まとめ
ファーストリテイリングは、LifeWearコンセプトのもとユニクロを世界的ブランドに育て上げ、売上3.96兆円・5期連続最高益を達成しています。北米・欧州を中心とした海外ユニクロの成長が全体を牽引しており、利益率の改善トレンドも続いています。
グレーターチャイナの回復の持続性と高バリュエーションがリスクですが、グローバルSPAとしてのブランド力と日経平均への大きな寄与度(構成ウエートは上位3銘柄の一角)は独自のポジションです。成長性を重視するグロース投資家にとって、中長期的な注目銘柄であり続けるでしょう。
ファーストリテイリング
ファーストリテイリングは、カジュアル衣料品チェーン「ユニクロ(UNIQLO)」を世界で展開するグローバルアパレル企業です。高機能素材「ヒートテック」「エアリズム」「ウルトラライトダウン」などの独自開発商品をSPA(製造小売)モデルで提供。低…










