逆日歩とは|空売り投資家が負担する「株のレンタル料」の仕組み

逆日歩(ぎゃくひぶ)とは、信用取引の空売り(信用売り)で発生する追加コストです。証券金融会社で貸し出す株が不足した際に、外部の証券会社や機関投資家から株を調達するための費用が空売りをしている投資家に転嫁されます。
逆日歩は事前に金額を予測することが難しく、突発的に高額になるケースもあるため、信用取引を行う投資家にとって見落とせないリスク要因です。この記事では、逆日歩の定義・発生メカニズム・計算方法・連休時の注意点・回避策までを体系的に解説します。
この記事の内容(目次)
逆日歩とは
逆日歩の正式名称は「品貸料(しながしりょう)」といいます。制度信用取引で空売りが行われると、証券会社は投資家に貸し出す株を用意しなければなりません。社内の買い方から担保として預かった株で足りない分は、日証金(日本証券金融株式会社)から借りる「貸借取引」で調達されます(日本証券金融「貸借取引、信用取引の仕組み」)。
信用売りの残高が信用買いの残高を上回る状態を「売り長(うりなが)」と呼びます。売り長が続き、日証金でも貸し出す株が不足する(貸株超過)と、日証金は証券会社や機関投資家などから入札方式で株を借りてきます。このとき貸し手に支払う株のレンタル料こそが逆日歩の正体です(日本証券金融「品貸入札、逆日歩、最高料率、応札ランク」)。

逆日歩は誰がもらえる?|受け取れる人と、逆日歩で儲けられるか
逆日歩を受け取れるのは制度信用の買い方と、日証金の入札で株を貸した側で、一般信用の買い方や現物株主は対象外です。逆日歩で儲けられるかは、受け取る逆日歩と金利(年2.80%、2026年10月)・値動きの差で決まります。

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逆日歩が発生する仕組み
逆日歩の発生メカニズムを理解するには、制度信用取引における株式貸借の流れを把握することが重要です。投資家・証券会社・日証金・入札で株を貸す証券会社や機関投資家の4者の間で株のやり取りが行われます(日本証券金融「貸借取引、信用取引の仕組み」・同「品貸入札、逆日歩、最高料率、応札ランク」)。
通常時(逆日歩が発生しないケース)
投資家が空売りの注文を出すと、証券会社は社内の買いと付け合わせ(社内対当)、足りない分を日証金に申し込みます。日証金は、融資(買い方の買付代金の貸付け)の担保として受け入れた株を貸株に充てます。この範囲で足りれば外部調達は不要なため、逆日歩は発生しません。投資家が負担するのは通常の「貸株料」のみです。
日証金の中でのこの充当(融資の担保株を貸株に、貸株の担保として受け入れた売付代金を融資に充てること)を、日証金の用語集は「食い合い」と呼んでいます。「社内対当」は、証券会社が社内で同じことをする場合の言い方です(日本証券金融 用語集〈か行〉「食い合い」・〈さ行〉「社内対当」「差引残高」)。
株不足時(逆日歩が発生するケース)
空売りが殺到して貸株の申込が融資の申込を上回る「貸株超過」になると、日証金は約定日の翌営業日の朝、証券会社からの追加申込み(翌朝訂正)を受け付けると同時に、品貸入札と呼ばれるオークションで、証券会社や機関投資家などから不足分の株を借り入れます。このオークションで決まった借入コストが「逆日歩」として、品貸日数分(後述)まとめて、制度信用で売っている投資家全員に課されます(日本証券金融「品貸入札、逆日歩、最高料率、応札ランク」)。
日証金は、逆日歩が高騰している銘柄では売り方のコストが増え、手仕舞い(買い戻し)が促されやすくなると説明しています(日本証券金融「貸借取引情報のご活用方法について」)。買い戻しが重なると株価が上がる「踏み上げ」につながることもありますが、逆日歩が付けば必ず株価が上がるわけではありません。

逆日歩で株価はどうなる?踏み上げの条件と実例|上限10倍の急騰株も5営業日で3割安、権利付最終日の21銘柄は13銘柄が下落
逆日歩が付いても株価が上がるとは限りません。踏み上げが起きやすい条件(売り残・株価の上昇・逆日歩の上限の倍率・申込停止)と、日証金のデータで確かめた2026年の実例を解説。権利付最終日に上限まで付いた21銘柄は、配当落ちを含む翌日の前日比で上昇5・下落13でした。
逆日歩が決まるまでの1日の流れ
逆日歩は約定日の翌営業日にかけて、以下の流れで決定されます(日本証券金融「銘柄別融資・貸株残高(速報、確報)について」)。
時点 | イベント |
|---|---|
約定日 9:00〜15:30 | 取引時間中に空売り・信用買いが執行される |
約定日 16:00〜18:30頃 | 証券会社が日証金に当日分の貸借取引を申し込む |
約定日 18:30過ぎ | 日証金が銘柄別の融資・貸株残高(速報)を公表。株不足(貸株超過)の銘柄が判明 |
翌営業日 8:30〜10:00頃 | 追加申込み(翌朝訂正)と品貸し申込み(入札)を同時に受付。追加申込みを先に充て、残った不足を安い応札から埋める |
翌営業日 10:40頃 | 逆日歩(品貸料率、品貸日数分)が銘柄別に確定・公表 |
貸株超過になっても、逆日歩がつかずに終わる日があります。翌朝の追加申込みだけで不足が埋まると日証金の表示は「*****」(満額)、入札で0銭の応札だけで株が集まると「0.00」(零銭)になり、どちらも逆日歩は0円です(日本証券金融「品貸入札、逆日歩、最高料率、応札ランク」)。

逆日歩の満額・零銭とは|どちらも逆日歩0円、日証金の「*****」「0.00」の見方と最高料率4倍・8倍の実例
逆日歩の「満額」は翌朝の追加申込みで株不足が解消した状態(日証金の表示は「*****」)、「零銭」は品貸入札が0銭で決まった状態(「0.00」)で、どちらも逆日歩は0円。入札の仕組みと最高料率、権利付最終日に上限が4倍・8倍になる例を2026年9月のデータで解説。
逆日歩の計算方法
逆日歩の計算はシンプルです。日証金が公表する1株あたりの「品貸料率」に、売建てている株数を掛けます。公表される品貸料率は、1日分の料率(品貸料)に品貸日数を掛けた後の値なので、日数をもう一度掛けてはいけません(日本証券金融「よくあるご質問」逆日歩の計算方法について)。
具体的な計算例
以下は、100株(1単元)を売建てている場合の例です。日証金のサイトや証券会社の画面に出るのは「公表値」の列の数字(品貸日数分)で、1日あたりの料率はそれを品貸日数で割った値です。
1日あたり | 品貸日数 | 公表値 | 100株の |
|---|---|---|---|
0.50円 | 1日 | 0.50円 | 50円 |
1.00円 | 3日(水曜売建) | 3.00円 | 300円 |
5.00円 | 5日(連休前) | 25.00円 | 2,500円 |
10.00円 | 7日(年末年始) | 70.00円 | 7,000円 |
最後の例のように、連休を挟むと逆日歩の合計が数千円規模に膨らむこともあります。1株10円は、株価5,000円の銘柄(100株で投資単位50万円)の最高料率(1日あたりの上限、2026年10月時点の早見表)です。品貸日数7日の申込日に上限いっぱいで決まると、公表値は1株70円(10円×7日)、100株で7,000円となり、売建代金50万円の1.4%が1回の連休で消える計算です。
権利付最終日の直前や臨時措置で上限が引き上げられれば、負担はさらに膨らみます。年末年始の品貸日数は暦によって5〜7日で、2019年のGW10連休では11日でした。
最高料率(逆日歩の上限)
逆日歩には上限が設定されており、これを最高料率と呼びます。最高料率は「貸借値段×売買単位=投資単位」の大きさに応じて日証金が早見表で定めており、投資単位5万円以下で1売買単位あたり1日100円、5万円を超えると1万円ごとに20円が加算されます(日本証券金融「最高料率早見表(株式)」、2026年10月時点)。株価3,000円・100株なら投資単位30万円→600円、1株あたり6円が1日の上限で、おおむね株価の0.2%が目安です。
最高料率は1日あたりの上限なので、公表値の上限は品貸日数分になります(株価3,000円・品貸日数3日なら1株18円)。さらに、次の条件では上限そのものが引き上げられます(倍率適用)。
条件 | 倍率 | 対象の申込日 |
|---|---|---|
配当などの権利付銘柄 | 2倍 | 権利落日の6〜2営業日前 |
配当などの権利付銘柄 | 4倍 | 権利落日の前営業日 |
注意喚起の銘柄 | 2倍 | 通知日の翌営業日〜取消日の前営業日 |
申込制限・申込停止の銘柄 | 2倍 | 実施日〜解除日の前営業日 |
権利付銘柄の2倍の期間で規制中 | 4倍 | 権利落日の6〜2営業日前 |
権利落日の前営業日で規制中 | 8倍 | 権利落日の前営業日 |
異常な貸株超過(臨時措置) | 4倍 | 日証金が指定する日〜解除日の前営業日 |
極めて異常な貸株超過など(臨時措置) | 10倍 | 同上 |
倍率が上げるのは上限だけで、決まる料率が倍になるわけではありません(日本証券金融「品貸入札、逆日歩、最高料率、応札ランク」)。それでも上限まで上がる日は負担が大きく、株価3,000円・100株で臨時措置の10倍がかかると、上限は1日6,000円、品貸日数3日なら18,000円です。
連休・土日の落とし穴
逆日歩の適用日数(日証金の用語では品貸日数)は受渡日ベースで計算されます。株式の受渡しは約定日の2営業日後(T+2)に行われるため、週末や祝日を挟むと適用日数が大きく膨らみます(日本証券金融 用語集〈さ行〉「品貸日数」)。増えた日数分は、翌朝に公表される品貸料率にまとめて入ります。
曜日別の逆日歩適用日数
以下は祝日がない通常の週における適用日数の目安です(2019年7月のT+2決済移行後)。適用日数は「その日の売建ての受渡日」から「翌営業日の売建ての受渡日」までの暦日数で決まります。
新規売建日 | 受渡日(T+2) | 品貸日数 |
|---|---|---|
月曜日 | 水曜日 | 1日 |
火曜日 | 木曜日 | 1日 |
水曜日 | 金曜日 | 3日(金・土・日) |
木曜日 | 翌月曜日 | 1日 |
金曜日 | 翌火曜日 | 1日 |
GW・年末年始は最大の危険ゾーン
ゴールデンウィークや年末年始など、市場が長期間休場する前後は最も逆日歩リスクが高まるタイミングです。受渡日が連休直前の営業日に当たる日(連休前の最終取引日の2営業日前)に新規売建てを行うと、翌営業日の売建て分の受渡日が連休明けになるため、一度に5〜7日分の逆日歩がかかる可能性があります(2019年のGW10連休では11日分)。さらに、連休前は権利確定や手仕舞いで空売りが増加しやすく、1日あたりの料率自体も高騰しやすい傾向にあります。
デイトレード(日計り取引)なら逆日歩はかからない
同日中に売建てと返済買いを完了するデイトレード(日計り取引)では、逆日歩は発生しません。逆日歩は日証金の夜間の貸借残高(翌営業日への持ち越し分)に対して課されるため、大引けまでにポジションを閉じれば日証金への貸借申込自体が発生せず、逆日歩の対象外となります。
逆日歩はいつ・どうやって決まるのか
逆日歩の金額は売建て時点では確定しておらず、翌営業日の午前に行われる日証金の品貸入札で決まります。水曜日に売建てた場合の流れは以下のとおりです。
時点 | イベント |
|---|---|
水曜 9:00〜15:30 | 取引時間中に空売りが執行される(この時点では逆日歩は不明) |
水曜 16:00〜18:30頃 | 証券会社が日証金に貸借取引を申し込み |
水曜 18:30過ぎ | 日証金が融資・貸株残高(速報)を公表 → 株不足(貸株超過)かどうかが判明 |
木曜 8:30〜10:00頃 | 追加申込み(翌朝訂正)と品貸し申込み(入札)を同時に受付 → 追加申込みを先に充て、残った不足を入札で埋めて1日あたりの料率が決まる |
木曜 10:40頃 | 逆日歩が公表 → 公表値(3日分込み)× 株数が水曜売建分のコスト |
つまり、水曜日に空売りした時点では逆日歩がいくらかかるか(そもそも発生するかどうかすら)わかりません。逆日歩は「事後的に判明するコスト」であり、これが逆日歩リスクの本質です。
逆日歩を避ける方法
逆日歩は予測が困難ですが、取引の仕方を工夫することでリスクを軽減・回避できます。
一般信用取引を利用する
逆日歩が発生するのは制度信用取引に限られます。一般信用取引では、証券会社が自社で株を用意し、日証金の貸借取引は使えないため、逆日歩は発生しません(日本証券金融「選定について」)。ただし、一般信用にも証券会社が定める「貸株料」がかかります。SBI証券・楽天証券では、無期限の貸株料は制度信用と同じ年1.10%、優待クロスなどに使われる短期は年3.90%です(SBI証券「買い方金利・売り方金利・貸株料率・HYPER料」・楽天証券「信用取引 手数料/金利/貸株料」、いずれも2026年10月7日閲覧)。
制度信用取引 | 一般信用取引 | |
|---|---|---|
逆日歩 | 発生する可能性あり | 発生しない |
貸株料 | 年1.10% | 無期限 年1.10% |
返済期限 | 6ヶ月 | 無期限 |
売建できる銘柄 | 貸借銘柄 | 証券会社が独自に選定 |
料率が同じなら、空売りは逆日歩のない一般信用(無期限)の方が有利です。ただし無期限で売れる銘柄・株数は証券会社の在庫しだいで、優待クロスでは短期の貸株料と制度信用の逆日歩のどちらが安いかの比較になります。

制度信用と一般信用どっちが得?|SBI証券・楽天証券を比較
SBI証券・楽天証券は制度信用と一般信用(無期限)の料率が同じ(買方金利年2.80%・貸株料年1.10%、2026年10月6日確認)。買いは同額、空売りは逆日歩のない一般信用が有利。優待クロスは短期3.90%と逆日歩の損益分岐(1株30銭)で判断します。
日証金の速報で事前チェックする
日本証券金融(日証金)は毎営業日の18時半過ぎに銘柄別の融資・貸株残高(速報)を、翌営業日の10時40分頃に逆日歩(品貸料率)を公表しています(日本証券金融「銘柄別融資・貸株残高(速報、確報)について」・用語集「品貸入札」、2026年10月時点)。証券会社の取引ツールや日証金のWebサイトで確認でき、速報で貸株超過(株不足)になっている銘柄を見れば、翌朝に逆日歩がつきそうな銘柄をある程度把握できます。
ただし、翌朝の追加申込みで不足が解消すれば逆日歩はつかず、残った分も品貸入札の結果で初めて料率が決まるため、完全な事前予測はできない点に注意が必要です。
連休前のポジション管理を徹底する
前述のとおり、GWや年末年始の前後は逆日歩が膨らむリスクが特に高くなります。連休を挟む空売りポジションは事前に返済するか、適用日数分のコストを許容できるかをシミュレーションしてから判断しましょう。

一般信用取引とは|逆日歩なし・無期限保有のメリットと制度信用との使い分け
一般信用取引の仕組み・メリット(逆日歩なし・返済期限なし)・デメリット(売建在庫の制約・短期の貸株料が高い)を解説。制度信用取引との違いを比較表で整理し、優待クロスやコスト面での使い分けがわかります。

配当落調整金とは|制度信用84.685%・一般信用売建100%の計算式と税金の扱い
配当落調整金の仕組み・計算式(制度信用は買い方・売り方とも84.685%、一般信用の売り方は主要ネット証券で100%)・税金の扱いを解説。信用取引で権利確定日をまたいだときに発生する配当金相当額のルールと、優待クロスで現物の配当金と相殺したときの実質コスト(一般信用は損益通算で実質ゼロ、制度信用は約15%の差益)がわかります。
まとめ
逆日歩は空売りの追加コスト — 制度信用取引で株不足が生じた際、日証金が入札で証券会社や機関投資家などから株を借りるコストが空売り投資家に転嫁される
金額は毎日変動し予測困難 — 品貸入札の結果で決まるため、需給が逼迫して上限が引き上げられると、100株で1日数千円〜数万円に膨らむこともある
公表値は品貸日数分込み — 負担は「公表された品貸料率×株数」。日数をもう一度掛けない。1日あたりは公表値÷品貸日数
連休前は最大のリスクゾーン — 品貸日数が一度に5〜7日(2019年のGW10連休は11日)になり、その日数分が公表値に入るうえ、1日あたりの料率も高騰しやすい
一般信用取引で回避可能 — 逆日歩は発生しない。SBI証券・楽天証券では無期限の貸株料は制度信用と同じ年1.10%、短期は年3.90%(2026年10月7日閲覧)
日証金速報で日々チェック — 保有銘柄の逆日歩動向を監視し、リスクが高まったら早めに対処する
本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。投資の最終判断はご自身の責任でお願いいたします。










