オークネット(3964)の企業分析|BtoBネットオークションで売上641億円、中計目標を2年前倒しで達成

オークネット(3964)は、中古車・スマートフォン・ブランド品・ワインなど多様な商材を扱うBtoB(企業間取引)ネットオークションのプラットフォーム企業です。
2025年12月期は売上高641億円(前期比+14.7%)、営業利益95億円(同+35.9%)と大幅な増収増益を達成。中期経営計画「Blue Print 2027」のEBITDA目標100億円を2年前倒しで達成し、目標をEBITDA135億円・配当性向50%以上へ上方修正しました。2026年12月期の上半期も営業利益の進捗率が59%と好調で、8月には通期予想を引き上げるとともに、年間配当予想を82円(うち今回限りの特別配当39円)としました。
この記事では、オークネットの事業構造、業績推移、中期経営計画、投資判断のポイントを、個人投資家の視点からわかりやすく解説します。
この記事の内容(目次)
会社概要 — BtoBオークションのデジタル商流を支えるプラットフォーマー
オークネットは1985年、テレビ画面で中古車を競る「TVオートオークション」として創業しました(1989年に衛星通信、2008年にインターネットへ移行)。現在は「循環型商流プラットフォーム」として、中古車からスマートフォン、ブランド品、ワインまで多様な商材のBtoBオンラインオークションを運営しています。
項目 | 内容 |
|---|---|
会社名 | 株式会社オークネット(AUCNET INC.) |
証券コード | 3964(東証プライム) |
設立 | 2008年(グループ創業は1985年) |
代表取締役社長 | 藤崎 慎一郎 |
本社所在地 | 東京都港区北青山 |
従業員数 | 1,119名(連結、2025年12月末) |
決算期 | 12月 |
事業内容 | BtoBネットオークション(中古車・スマートフォン・ブランド品等)、車両検査 |
オークネットの事業は、「ライフスタイルプロダクツ」「モビリティ&エネルギー」「その他」の3セグメントに分かれます。売上高の約7割をライフスタイルプロダクツが占め、スマートフォンやブランド品のオークション・商品販売が成長の中心です。
セグメント別売上構成比(2025年12月期)
3つの事業セグメントを理解する
ライフスタイルプロダクツ — スマホとブランド品で急成長

ライフスタイルプロダクツは、売上高452億円(前期比+17.5%)、営業利益84億円(同+56.5%)と高い成長を見せるオークネットの中核セグメントです。大きく「デジタルプロダクツ」と「ファッションリセール」の2事業から構成されます。
デジタルプロダクツ(スマートフォン等)は、国内外で買取・下取りされた中古スマートフォンやタブレットのBtoBオークションです。2025年12月期の取扱高は839億円(前期比+71.3%)、流通台数は254万台(同+53.7%)と急拡大しました。会社は、仕入れ先(国内の買取・下取り事業者)との連携強化で流通台数が増え、平均落札単価も上がったことを理由に挙げています。2026年上期は、GIGAスクール端末(学校で配られた1人1台端末の入れ替え分)を含む新たな仕入れ先と、為替の影響による単価の上昇が加わりました。
ファッションリセール(ブランド品・酒類)は、国内最大級のBtoBブランドオークション「AUCNET Brand Auction」を運営しています。BtoB取扱高は526億円(前期比+1.1%)と安定推移。会員数は6,883社(同+17.2%)と拡大を続けており、質店やリサイクルショップのインフラとしての地位を確立しています。このほか、消費者からブランド品を買い取って店舗・ECで販売する「C向け事業」として「ブランディア」「GALLERY RARE」を運営しています。2024年4月に買収したJOYLABによる酒類の買取販売もここに入ります。
モビリティ&エネルギー — 創業事業の中古車オークション+車両検査

モビリティ&エネルギーは、売上高161億円(前期比+9.7%)、営業利益35億円(同−5.9%)の安定収益セグメントです。2025年12月期の減益は、新基幹システム「BASE」と会員サイト「AUCNET CARS」の立ち上げ費用や従業員向け株式報酬といった一時的な費用によるもので、2026年上期(1〜6月累計)の営業利益は前年同期比+28.5%に戻っています。
オートモビルは創業事業の中古車オークションです。2025年12月期の取扱高は5,601億円(前期比+12.1%)、成約台数は55万台(同+5.5%)。会場に車を持ち込む必要がないオンラインオークションの先駆者として、全国16,000超の加盟店をネットワークしています。
車両検査(AIS)は、第三者の立場で中古車の品質検査を行うサービスで、オークションの信頼性を支えるインフラです。検査台数は158万台(前期比+13.2%)と5年連続で過去最高を更新。オークション手数料ではなく検査料で稼ぐ収益構造はオークネット独自の強みです。
その他 — アグリ・サーキュラーコマース
その他セグメント(売上高33億円、前期比+8.6%)には、花き(生花)のBtoBオークションや、循環型コマース(サーキュラーコマース)事業が含まれます。営業損益は−3.7億円の赤字です。会社の説明では、花き(アグリ)は集荷数・平均単価がともに前年を下回って取扱高が伸び悩んだ一方、サーキュラーコマースは不採算事業から撤退して赤字を縮めました。
業績分析 — 中古スマホがけん引する利益率回復と成長加速
オークネットの業績は、2021年12月期以降に大きく拡大しました。2020年と2024年にブランド品の買取販売会社を買収したこともあり、売上高は2020年12月期の241億円から2025年12月期の641億円へ約2.7倍になっています。
オークションは手数料だけが売上になるのに対し、買取販売は商品の販売額がまるごと売上になります。そのため売上の伸びほど利益は増えず、2024年12月期は営業利益率が12.5%まで下がりました。2025年12月期は中古スマートフォンの取扱高が急増し、利益率は14.8%に戻っています。
通期業績推移(売上高・営業利益・営業利益率・売上成長率)
注目すべきポイントは2024年12月期に営業利益率が12.5%へ落ち込んだ後、2025年12月期で14.8%に回復した点です。2024年12月期は売上高が前期比+29.1%と大きく伸びた一方、営業利益は+5.1%(70.1億円)にとどまりました。買収した2社の買取販売で売上高は膨らみましたが、そのC向け事業ではインバウンド需要の低下や高額品の販売不振が続き、ライフスタイルプロダクツの営業利益は前期比−1.6%でした(会社説明)。
2025年12月期は、ライフスタイルプロダクツの営業利益が前期比+56.5%と跳ね上がり、連結の営業利益も95.2億円(+35.9%)になりました。会社が挙げる回復の理由は次の2つです。
中古スマートフォン:取扱高が839億円(+71.3%)、流通台数が254万台(+53.7%)と急増
ブランド品のBtoBオークション:手数料体系の一部見直しで収益性が向上
この増益は、事業の統合やC向けの構造改革、創業40周年記念施策などの一時的な費用(期初の会社想定で約12億円)をこなしたうえでのものです。
一方で、買収した事業はまだ立て直しの途中です。C向け事業は店舗の閉鎖や米国の関税政策の影響で軟調でした。2024年4月に買収した酒類買取のJOYLABは計画を下回って推移し、2025年7〜9月期にのれん(買収額のうち相手の純資産を上回った部分)9.65億円を減損しています。減損は特別損失なので営業利益には響きませんが、純利益(59.2億円、+32.0%)を押し下げました。
2026年12月期の会社予想(2026年8月4日に上方修正)は売上高750億円(+16.9%)、営業利益120億円(+26.1%)、営業利益率16.0%で、2024年の買収前(2021〜2023年の15〜16%台)とほぼ同じ水準まで戻す見込みです。
上半期(2026年1〜6月累計)の実績は売上高380億円(前年同期比+16.8%)、営業利益71億円(同+21.3%)と順調です。両セグメントの好調に加え、前年にあった一時的な費用(従業員向け株式報酬・40周年記念施策)がなくなったことも効いています。
株主還元 — 配当性向50%以上へ、2026年は特別配当も
1株当たり利益(EPS)・配当・配当性向の推移(分割調整後)
配当方針は大きく転換しています。2023年12月期まで配当性向30%前後で推移していましたが、2024年12月期に40%超へ引き上げ、2026年2月には中期経営計画の目標を配当性向50%以上に改めました。
2026年12月期の配当予想は82円(普通配当43円+特別配当39円)です(2026年8月4日修正)。普通配当だけで配当性向50.1%と目標を満たしたうえで、中期経営計画でM&A用に取っておいた投資枠70億円のうち35億円を特別配当として株主に回します。会社は目的を「資本効率の向上」としています。
特別配当は今回限りなので、来期以降の配当の土台は普通配当の43円です。2026年10月1日終値1,371円で計算すると、配当利回りは82円で約6.0%、普通配当43円だけなら約3.1%です(KabuGraph算出)。
配当以外の還元も進めています。
自己株買い:2025年2月に35.3億円で自己株式を取得(自己株式を除く発行済株式の5.89%)。2025年12月には150万株(発行済株式の3.03%)を消却
株主優待:2025年12月末の株主から「オークネット・プレミアム優待俱楽部」を導入。2026年4月の分割後も300株から受けられるよう拡充し、2026年9月2日時点の株主(100株以上)には今回限りの特別優待も実施
出典:オークネット 適時開示(2025年2月18日・12月23日、2026年4月28日・8月4日)よりKabuGraph作成
なお、2025年4月と2026年4月にそれぞれ1:2の株式分割を実施しており、合計で1株が4株になっています。上のグラフのEPS・配当は分割後の基準に統一しています。
中期経営計画「Blue Print 2027」 — 目標を2年前倒し達成、上方修正
オークネットは中期経営計画「Blue Print 2027」で、最終年度(2027年12月期)のEBITDA100億円を目標に掲げていました。しかし2025年12月期のEBITDAが目標を上回って着地したため、目標を2年前倒しで達成しました。
これを受けて目標を上方修正し、新たな数値目標は以下の通りです。
項目 | 当初目標 | 修正後目標 |
|---|---|---|
EBITDA | 100億円 | 135億円 |
配当性向 | 40%以上 | 50%以上 |
2025年12月期のEBITDA(営業利益に減価償却費とのれん償却費などを足したもの。本業で稼ぐ現金の目安)は105.6億円(前期比+31.5%)でした。135億円までは約28%の上積みが必要ですが、2026年上期(1〜6月累計)だけで76.8億円(前年同期比+21.1%)を稼いでいます。
目標に届くかどうかは、デジタルプロダクツ事業の拡大が続くか、つまり中古スマートフォン市場の動向がカギを握ります。
財務基盤
2025年12月期末の総資産は508億円、純資産は266億円(自己資本比率約52%)。現金及び現金同等物は231億円で、借入金はありません。財務は健全です。
ただし、営業キャッシュフロー127億円のうち約43億円は、落札代金を売り手に支払うまで預かっている「オークション借勘定」が増えたことによる一時的な分です(立て替えにあたるオークション貸勘定の増加と差し引いた額)。これを除くと約84億円になります(KabuGraph算出)。
2025年に35億円の自己株買いを行い、2026年も35億円の特別配当を予定していますが、会社は残りのM&A投資枠(35億円)と好調な営業キャッシュフローで十分な投資余力を保てるとしています。
まとめ — BtoBオークション基盤の成長性と投資判断のポイント
オークネットは、中古車・スマートフォン・ブランド品という巨大な二次流通市場において、BtoBオークションのデジタルインフラを提供する企業です。
プラットフォーム型のビジネスモデルによるネットワーク効果、中古スマートフォン事業の伸びによる利益率回復、中期経営計画の前倒し達成と上方修正、配当性向の引き上げなど、成長と株主還元の両立を実現しつつある段階にあります。一方で、中古車・中古スマートフォン市場の循環性や、買収した事業の不振(2025年には酒類買取のJOYLABでのれん9.65億円を減損)も意識すべきポイントです。
配当を見るときは、2026年12月期の82円に今回限りの特別配当39円が含まれる点に注意が必要です。利回りを考える土台は普通配当の43円(2026年10月1日終値で約3.1%)です。
オークネット
オークネットは、循環型マーケットデザインカンパニーとして、中古車・デジタル機器・ブランド品・バイク・医療機器等多業界でオンラインオークションを展開。中古車オークションが中核事業で、会員向けのライブ中継・共有在庫市場・落札代行等サービスを提供…
本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。投資の最終判断はご自身の責任でお願いいたします。記事中の数値は2026年10月1日時点の情報に基づいています(株価は同日終値)。










