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大阪ガス(9532)の企業分析|Freeport LNGとシェールガスで海外利益が国内を上回る、Daigasグループの変貌

2027年3月期 第2四半期決算まで反映

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大阪ガス(9532)は、関西圏を地盤とする都市ガス大手でありながら、米国のFreeport LNGプロジェクトや米国シェールガス上流事業(Sabine Oil & Gas)への投資で海外エネルギー利益が急成長している企業です。「Daigasグループ」としてガス・電力の枠を超え、不動産、素材(活性炭など)、情報サービスなど多角的な事業を展開しています。

2026年3月期は売上高2兆303億円、営業利益1,748億円(前期比+8.8%)と堅調な業績を記録。海外エネルギーセグメントの利益(営業利益+持分法投資利益)は883億円と、国内エネルギーの719億円をすでに上回る規模に成長しています。

この記事では、大阪ガスの3つの事業セグメント、海外LNG事業の成長性、配当・株主還元方針、投資判断のポイントを個人投資家の視点から解説します。

会社概要 — 都市ガスからグローバルエネルギー企業へ

大阪ガスは1897年に設立された日本最大級の都市ガス事業者です。2018年に「Daigasグループ」へブランドを刷新し、国内ガス事業にとどまらないグローバルエネルギー企業への変貌を打ち出しました。

Daigasグループ(大阪ガス)のコーポレートサイト。グループ理念「つくる、つなぐ」を紹介
出典:Daigasグループ公式コーポレートサイト

項目

内容

会社名

大阪ガス株式会社(Daigasグループ)

証券コード

9532(東証プライム)

代表取締役社長

藤原 正隆

従業員数(連結)

約21,800名(2026年3月末時点)

本社

大阪市中央区平野町四丁目1番2号

時価総額

約2.3兆円(2026年10月30日終値時点)

PER / PBR

15.1倍 / 1.25倍(2026年10月30日終値時点、2026年3月期実績ベース)

出典:大阪ガス 会社概要・2026年3月期決算短信・有価証券報告書よりKabuGraph作成。時価総額・PER/PBRは東証株価・決算短信よりKabuGraph算出(2026年10月30日終値時点)

3つのセグメントの売上構成(2026年3月期)

セグメント別売上構成比(2026年3月期)

出典:大阪ガス 2026年3月期決算短信よりKabuGraph作成(外部顧客への売上高ベース)。海外エネルギーは売上は小さいが利益貢献が大きい

3つの事業を理解する

大阪ガスは「国内エネルギー」「海外エネルギー」「ライフ&ビジネスソリューション」の3つのセグメントで構成されています。売上の8割を占める国内エネルギーに対し、利益では海外エネルギーが急成長しているのが特徴です。

国内エネルギー — 関西圏のガス・電力供給基盤

大阪ガスの家庭向けガスサービスページ。ガス料金プランや住宅設備の情報を提供
出典:大阪ガス 家庭向けサービス(大阪ガスマイ大阪ガス)

国内エネルギーセグメントは、関西圏を中心とした都市ガスの製造・供給と電力の販売を手がけます。2026年3月期の売上高は1兆6,434億円(前期比△5.4%、セグメント間の内部売上を含む)、セグメント利益(営業利益+持分法投資利益)は719億円。国内のガス供給件数は約516万件(前期比+0.9%)、低圧電力の供給件数は約195万件と厚い顧客基盤を持ち、電力小売にも積極参入しています。

ただし、国内の都市ガス市場は人口減少・省エネ化・オール電化の普及により販売量が長期的に縮小トレンドにあります。関西電力(9503)のガス小売参入も競争圧力となっており、大阪ガスが電力の小売で関西電力の顧客を奪う動きと表裏一体の「相互侵食」が進んでいます。

海外エネルギー — Freeport LNGとSabineシェールガスが利益を牽引

海外エネルギーセグメントは、大阪ガスの成長戦略の中核です。2026年3月期の売上高は1,437億円(外部顧客向けでは1,270億円、売上構成比6.3%)にとどまりますが、セグメント利益(営業利益+持分法投資利益)は883億円と、国内エネルギーの719億円をすでに上回りました(営業利益ベースでも677億円対687億円と拮抗しています)。売上に対する利益率は6割超と驚異的な高さを誇ります。

さらに、米国では2019年に100%取得したSabine Oil & Gasを通じて天然ガスの上流権益を保有しています。会社はこれを「国内エネルギー事業とのナチュラルヘッジ」と位置づけ、期初に当年度販売量の7〜8割の売価を固定(ヘッジ)して利益を安定させつつ、ガス価格高騰時は生産量を増やしてアップサイドを狙う運営をしています。このように、上流(シェールガス採掘)→中流(液化・輸出)→下流(販売)のバリューチェーンを一気通貫で構築していることが、大阪ガスの海外事業の競争力の源泉です。

豪州でも上流権益を広げています。2026年9月18日には、BPが保有する西豪州ブラウズ堆積盆地のガス田鉱区群(Brecknock・Calliance・Torosa)の5%権益を取得する売買契約を締結しました。取得主体のOsaka Gas Browseには豪州子会社とJOGMECが共同出資する予定で、想定LNG生産量約1,100万トン/年のうち約55万トン/年を引き取る見込みです。ただしプロジェクトはまだ概念設計(Pre-FEED)段階で、規制当局やJVパートナーの承認を経て取得が完了するため、収益貢献は当面先になります。

ライフ&ビジネスソリューション — ガス以外の多角化事業

ライフ&ビジネスソリューションは、不動産の開発・賃貸、素材(活性炭・ファイン材料・炭素材製品)、情報処理サービスなどを手がける多角化セグメントです。2026年3月期の売上高は3,198億円(外部顧客向けでは2,638億円)、セグメント利益は374億円。素材のうち活性炭(大阪ガスケミカルの「白鷺」ブランド)は排ガス脱臭・水処理から半導体製造で使うドーピングガスの除去まで用途が広く、2027年3月期は海外の活性炭事業の増益で材料部門が前期比+32億円の増益見通しと、ガス事業で培った石炭化学技術を活かした成長分野です。

セグメント別利益構成(2026年3月期)

出典:大阪ガス 2026年3月期決算短信よりKabuGraph作成。セグメント利益=営業利益+持分法投資利益。海外エネルギーは売上比6%ながら利益は国内を上回る

業績推移と財務分析

通期業績推移(売上高・営業利益)

通期業績推移(売上高・営業利益・営業利益率)

出典:決算短信・有価証券報告書・IR資料よりKabuGraph作成。2027/3は会社予想(2026年10月29日に売上高を2兆1,700億円から2兆2,540億円へ修正、営業利益は据え置き)

2023年3月期はLNG価格高騰で売上が2兆2,751億円と急増した一方、フリーポートLNG基地の火災(2022年6月〜2023年2月に操業停止)に伴う代替LNG調達費用などで営業利益は600億円に落ち込み、国内エネルギーはセグメント損失273億円となりました。2024年3月期以降は火災損失の反動と原料費調整のタイムラグ差益、海外事業の利益拡大で営業利益1,600〜1,700億円台を安定的に稼げる体質に変わりつつあります。2027年3月期は営業利益1,500億円(−14.2%)の減益予想ですが、2023年3月期以前と比べれば高い水準です。

減益の主因は、原油価格の上昇・高止まりで国内エネルギーに出るタイムラグ差損です。会社の経常利益増減分析(2026年10月29日時点、前年差−145億円)では、国内エネルギーが−379億円(うちタイムラグ−451億円)、海外エネルギーは豪州上流の油価上昇などで+161億円、ライフ&ビジネスソリューションは+30億円の見通しです。国内では電力も、市場取引の利益縮小と姫路天然ガス発電所1・2号機(2026年1月・5月営業運転開始)の固定費増で減益です。タイムラグの影響を除くと、経常利益は2,260億円と前期比+306億円の増益を見込んでいます(会社は、今期の見通しに中東情勢を受けたエネルギー市況などによる一過性の利益が含まれると注記)。

2027年3月期 上期(4〜9月累計)の実績

2026年10月29日に開示された上期(2026年4〜9月の累計)は、電力販売量の増加で売上高1兆253億円(前年同期比+6.9%)と増収の一方、営業利益603億円(−32.8%)、純利益666億円(−29.8%)の減益でした。会社は、中東情勢に伴う原油価格の上昇で、原料価格の変動が販売単価に反映されるまでのタイムラグによる差損(一時的な増減益要因)が国内エネルギー事業で出たことを主因に挙げています。純利益は、前年同期にあった関係会社株式売却益など特別利益189億円が今期は無いぶんも減っています。

項目

2026/3 上期

2027/3 上期

前年同期比

売上高

9,592億円

1兆253億円

+6.9%

営業利益

897億円

603億円

−32.8%

経常利益

1,055億円

827億円

−21.6%

純利益

949億円

666億円

−29.8%

セグメント利益:国内エネルギー

401億円

−23億円

赤字転落

セグメント利益:海外エネルギー

452億円

606億円

+34.1%

セグメント利益:ライフ&ビジネス

166億円

203億円

+22.0%

出典:大阪ガス 2027年3月期 第2四半期(中間期)決算短信(サマリー・p.6・p.8)よりKabuGraph作成。いずれも上期(4〜9月の累計)。純利益は親会社株主に帰属する中間純利益。セグメント利益=営業利益+持分法投資利益。セグメント利益の前年同期比はKabuGraph算出

国内エネルギーはタイムラグ差損でセグメント損失(−23億円)に転じた一方、海外エネルギーは米国・豪州の上流事業の増益や前年同期の米国再エネの評価損の反動で606億円(+34.1%)に伸び、「海外が稼ぐ」構図がより鮮明になりました。会社によると、タイムラグの影響を除いた経常利益は1,085億円と前年同期比+222億円の増益です(Daigasグループ 2027年3月期 第2四半期決算 プレゼンテーション資料 p.16〜18)。

通期予想は10月29日に、原料費調整制度でガス販売単価が高く推移する見込みから売上高を2兆1,700億円から2兆2,540億円へ上方修正し、営業利益1,500億円・経常利益1,900億円・純利益1,450億円は据え置きました。下期(2026年10月〜2027年3月)の前提は原油100ドル/バレル・155円/ドル(7月公表時は80ドル・160円)で、タイムラグ差損の拡大(−290億円)を長期契約LNGの価格競争力の向上やフリーポート液化基地・豪州上流の増益で埋める見通しです(同 プレゼンテーション資料 p.20〜22)。

純利益と配当推移

純利益・1株配当の推移

出典:決算短信・有価証券報告書・IR資料よりKabuGraph作成。2027/3は会社予想。配当は年間合計

配当は着実に増配が続いており、2026年3月期は120円、2027年3月期は中間配当を65円(前年同期60円)とし、年間130円の予想を据え置いています。大阪ガスはDOE(株主資本配当率)3.5%(2026年3月期に3.0%から引き上げ)と累進配当を基本に据えた配当方針を掲げており、自己資本の積み上がりに応じて配当額が自然に増加する仕組みです。

主要財務指標(2026年3月期)

指標

数値

売上高

2兆303億円

営業利益

1,748億円(利益率8.6%)

当期純利益

1,528億円

EPS

391.15円

ROE

8.7%

BPS

4,705円

配当利回り

約2.2%(2027年3月期予想配当130円、2026年10月30日終値ベース。実績120円では2.0%)

出典:大阪ガス 2026年3月期決算短信よりKabuGraph作成。ROEは短信の自己資本当期純利益率。配当利回りは東証株価・決算短信よりKabuGraph算出(2026年10月30日終値時点)

同じ電力・ガスセクターの関西電力(9503)と比較すると、PERは15.1倍(関西電力7.7倍)と高めです。PBRは1.25倍で、関西電力(0.84倍)や東京電力HD(0.31倍)が1倍を下回るのに対し解散価値以上で評価されており、市場は海外事業の成長性を織り込んでいるといえます(いずれも2026年10月30日終値で、3社とも10月29日の上期決算発表後の値。直近通期実績ベース)。

投資家が注目すべきポイント

強み・成長ドライバー

1. 海外LNG事業が「第二の本業」に成長

Freeport LNGと米国シェールガス上流事業を軸とする海外エネルギーのセグメント利益は883億円と、国内エネルギー(719億円)を上回る規模に成長しました。売上比率6%で利益の4割超を稼ぐ高収益事業であり、国内ガス需要の縮小を補って余りある成長エンジンです。上流から下流まで一気通貫のバリューチェーンを持つ点が、他の都市ガス会社にない強みです。

2. DOE3.5%+自社株買いの厚い株主還元

DOE3.5%を基準とした配当方針は、自己資本の成長に応じて配当が自然に増加する仕組みです。50円→82.5円→95円→120円→130円(予想)と増配が加速しており、800億円の自社株買いと合わせた総還元は約1,300億円(時価総額比約5.7%)と電力・ガスセクターでも高い水準です。経営がPBR1倍以上の維持を意識していることも、投資家にとって安心材料です。

3. 活性炭事業のニッチ成長

ライフ&ビジネスソリューション内の活性炭事業(大阪ガスケミカル)は、排ガス脱臭・水処理・医薬精製から半導体製造のドーピングガス除去まで用途が広く、会社は活性炭市場の拡大に合わせて製造設備の増強を進めています。2027年3月期は海外の活性炭事業の増益で材料部門が+32億円の増益見通しと、ガス事業で培った石炭化学技術を応用したニッチ分野が利益面でも寄与し始めています。

注意すべきリスク

1. 資源価格・市況下落時の海外利益縮小リスク

海外エネルギーの利益は、米国シェールガス(Sabine)がヘンリーハブ価格、豪州上流が原油価格、米国電力事業が電力市況に左右されます。Sabineは販売量の7〜8割をヘッジしているものの、ガス価格や原油価格の下落局面では海外利益が縮小するリスクがあります。会社の感応度では原油1ドル/バレルの変動で海外エネルギーが増減益となり、逆に国内エネルギーはタイムラグで反対方向に動きます。なお2027年3月期の減益予想は原油高による国内のタイムラグ差損が主因で、海外エネルギーは豪州上流の油価上昇などで+161億円の増益見通しです(10月29日時点)。

2. 国内都市ガス需要の構造的縮小

関西圏の人口減少と住宅の省エネ化(高効率給湯器・ヒートポンプ)、オール電化の普及により、家庭用ガス販売量は長期的に減少トレンドにあります。関西電力のガス小売参入も競争圧力を高めており、国内エネルギーの売上成長は見込みにくい状況です。

3. PER15.1倍は電力・ガスセクターでは割高圏

関西電力(PER7.7倍)や東京電力HD(2026年3月期が最終赤字でPER算出不能、PBR0.31倍)と比較すると、大阪ガスのPER15.1倍(2026年10月30日終値)は成長プレミアムが乗った水準です。市場は海外事業の成長を織り込んでいますが、資源価格や米国電力市況が悪化した場合にはバリュエーションの修正(PER低下=株価下落)が起こりうる点には注意が必要です。

まとめ

大阪ガスは、国内都市ガスの安定基盤と米国LNG事業の高成長を組み合わせた、電力・ガスセクターの中でもユニークなポジションの企業です。

  • 海外エネルギー利益883億円が国内の719億円を上回る、売上比6%で利益の4割超を稼ぐ高効率事業

  • DOE3.5%の累進配当+800億円自社株買いで総還元は時価総額比約5.7%とセクターでも高水準

  • 2027/3は営業利益1,500億円(−14%)の減益予想(主因は原油高による国内のタイムラグ差損)だが過去水準比では高位。上期(4〜9月累計)は営業利益603億円(−32.8%)で、国内エネルギーがタイムラグ差損で赤字となる一方、海外エネルギーは606億円(+34.1%)

  • PER15.1倍は成長プレミアムが乗った水準、資源価格・米国電力市況の悪化時のバリュエーション修正リスクに注意

「ガス会社」から「グローバルエネルギー企業」への変貌を遂げつつある大阪ガスは、安定配当を求めつつ海外エネルギーの成長にもベットしたい投資家にとって、検討に値する銘柄です。投資判断の鍵は、米国ガス・原油などの資源価格と、姫路発電所の稼働で規模が増した国内電力事業の収益性にあります。


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大
9532電気・ガス

大阪瓦斯

関西地域のガス大手企業。都市ガス供給、LPガス・液化天然ガス(LNG)事業、電力小売事業、ガス機器販売を展開。「ダイガス」ブランドで関西圏のガス・エネルギー供給を担当。低炭素社会実現に貢献。

コラム著者・編集者

K

KabuGraph編集部

KabuGraph編集部は、投資情報の発信と株式分析ツールの開発に携わるチームです。日本株・米国株の事業分析から、投資に役立つ情報をわかりやすくお届けします。

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