関西電力(9503)の企業分析|原発7基体制と情報通信オプテージ、電力業界屈指の利益水準を読み解く

関西電力(9503)は、国内の電力会社で最も多い7基の原子力発電所を稼働させ、電力業界トップクラスの営業利益を叩き出している総合エネルギー企業です。子会社オプテージの通信事業や不動産・生活サービスなど非電力事業も拡大しており、安定配当と成長性を兼ね備えた銘柄として注目されています。
2026年3月期は売上高4兆566億円、営業利益4,375億円と高水準の業績を維持。一方、2027年3月期は原子力利用率の低下や燃料市況の上昇、インフレに伴う諸経費・修繕費の増加により営業利益2,500億円(前期比−43%)の減益予想となっています。
この記事では、関西電力の4つの事業セグメント、原子力発電の収益構造、配当政策、投資判断のポイントを個人投資家の視点から解説します。
この記事の内容(目次)
会社概要 — 原子力比率で群を抜く関西の電力大手
関西電力は1951年の設立以来、関西2府4県を中心に電力供給を担う旧一般電気事業者です。2020年4月に送配電部門を分社化し、関西電力送配電(株)を設立(法的分離)しました。関西電力(株)本体は引き続き発電・小売を担う事業会社であり、電力事業に加え、通信、不動産、ガス、介護など多角的な事業を展開しています。
項目 | 内容 |
|---|---|
会社名 | 関西電力株式会社 |
証券コード | 9503(東証プライム) |
代表執行役社長 | 森 望 |
従業員数(連結) | 約3.2万名(グループ全体、2026年3月末) |
本社 | 大阪市北区中之島三丁目6番16号 |
時価総額 | 約3.3兆円(2026年9月1日時点) |
PER / PBR | 約8.7倍 / 約0.95倍(2026年9月1日時点) |
出典:関西電力 会社概要、関西電力 2026年3月期 決算短信
4つのセグメントの売上構成(2026年3月期)
セグメント別売上構成比(2026年3月期)
4つの事業を理解する
関西電力は「エネルギー」「送配電」「情報通信」「生活・ビジネスソリューション」の4つのセグメントで構成されています。電力事業が収益の柱ですが、非電力事業も着実に拡大しています。
エネルギー — 原発7基体制で業界屈指の利益率

エネルギーセグメントは、発電(原子力・火力・水力)と電力・ガスの小売を手がけるグループの中核事業です。2026年3月期の売上高は約3兆2,600億円、セグメント利益は3,774億円で、グループ利益の約7割を稼ぎ出しています。
関西電力のエネルギー事業の競争力は、原子力比率の高さに尽きます。2025年度(2026年3月期)の原子力利用率は84.1%と高水準でした。2023年3月期に電力各社が軒並み赤字を計上する中、関西電力は営業損益△521億円・経常損益△66億円と営業・経常段階では赤字だったものの、最終損益は176億円の黒字を確保しました。これは、再稼働した原発の稼働率が高く、燃料費の増加を抑制できたためです。
送配電 — 規制事業の安定収益
関西電力送配電は、関西2府4県の送電・配電網を保有・運営する法的分離された子会社です。2026年3月期の売上高は3,862億円、セグメント利益は631億円。託送料収入が中心のため景気変動の影響を受けにくく、安定した利益を計上しています。
情報通信 — eo光・mineoを展開するオプテージ

子会社オプテージ(旧ケイ・オプティコム)は、関西圏を中心にFTTH「eo光」と格安SIM「mineo」を展開する総合通信事業者です。2026年3月期の売上高は2,222億円、セグメント利益は471億円(外部顧客向け売上高に対する経常利益率21.2%)と高い収益性を誇ります。
eo光は関西圏のFTTH市場でNTT西日本に次ぐシェアを持ち、電力会社系通信の中では最大規模。法人向けデータセンター事業やクラウドサービスも拡大しており、電力に依存しない安定収益源として関西電力の利益を底上げしています。
生活・ビジネスソリューション — 不動産・介護・エンジニアリング
不動産開発(関電不動産開発)、介護・生活サービス(かんでんライフサポート)、エンジニアリングなどを手がける多角化セグメントです。2026年3月期の売上高は1,868億円、セグメント利益は390億円。中之島再開発やオフィスビル事業を通じて、関西圏のインフラ企業としての存在感を高めています。
セグメント別利益構成(2026年3月期)
業績推移と財務分析
通期業績推移(売上高・営業利益)
通期業績推移(売上高・営業利益・営業利益率)
2023年3月期はロシア・ウクライナ紛争による燃料価格高騰の影響で売上高は約4兆円に急増する一方、営業赤字521億円を計上しました。しかし2024年3月期は原発の再稼働進展による高稼働と燃料費調整の「期ずれ好転」により、営業利益は7,289億円と過去最高を記録。その後も高水準を維持していますが、2027年3月期は原子力利用率の低下(2025年度実績84.1%→2026年度予想70%程度)、燃料市況の上昇、インフレに伴う諸経費・修繕費の増加、送配電事業のエリア需要の減少により減益予想となっています。
純利益と配当推移
純利益・1株配当の推移
配当は長らく年50円で据え置かれていましたが、2025年3月期に60円、2026年3月期に75円と増配トレンドに転換。2027年3月期は80円を予想しています。関西電力は連結配当性向25〜35%を目安に、配当の維持または増配に努める方針を2026年度から掲げています(純資産配当率DOEは2026年3月期実績で2.6%)。なお会社は「累進配当」という表現は用いていません。
主要財務指標(2026年3月期)
指標 | 数値 |
|---|---|
売上高 | 4兆566億円 |
営業利益 | 4,375億円(利益率10.8%) |
当期純利益 | 3,801億円 |
EPS | 341.14円 |
ROE | 11.7% |
BPS | 3,101円 |
配当利回り | 約2.7%(2027年3月期予想80円ベース、2026年9月1日時点) |
同じ電力セクターの東京電力HD(9501)と比較すると、関西電力は無配の東京電力に対して配当利回り約2.7%、PER約8.7倍と相対的に割安な水準にあります。原発再稼働の進展度合いという点でも、関西電力は7基稼働で先行しています。
投資家が注目すべきポイント
強み・成長ドライバー
1. 原子力7基稼働がもたらすコスト競争力
関西電力は国内で最も多くの原発を稼働させています。LNG価格が高止まりする局面でも、原子力の低い燃料費がバッファとなり、他の電力会社に比べて利益の下振れリスクが小さいのが特徴です。2023年3月期に業界各社が大幅赤字を計上する中、関西電力も営業損益△521億円・経常損益△66億円と赤字でしたが、最終損益では176億円の黒字を確保できました。これはこの構造的優位性によるものです。
2. 非電力事業の多角化(オプテージ・不動産)
情報通信(オプテージ)と生活・ビジネスソリューションの合計でセグメント利益861億円を稼ぎ、グループ利益の約16%を占めます。特にオプテージはeo光・mineoという知名度の高い消費者向けブランドを持ち、安定的なストック収入が見込めます。電力市場の変動に左右されにくい収益の柱として、投資家にとっての安心材料です。
3. 連結配当性向25〜35%方針と株主還元の強化
連結配当性向25〜35%を目安に配当の維持または増配に努める方針のもと、50円→60円→75円→80円(予想)と着実に増配してきました。利益水準の回復に伴い配当も切り上がっています。ただし会社は累進配当やDOEを採用しておらず、業績次第では配当が据え置かれる可能性がある点には留意が必要です。2027年3月期予想80円ベースの配当利回りは約2.7%(2026年9月1日時点)です。
注意すべきリスク
1. 2027年3月期の大幅減益(営業利益−43%)
2024年3月期の営業利益7,289億円は「期ずれ好転」による一時的な要因が大きく、恒常的な利益水準ではありません。会社は2027年3月期の営業利益予想2,500億円について、①原子力利用率の低下(2025年度実績84.1%→2026年度予想70%程度)、②燃料市況の上昇(全日本原油CIF価格71.4→80ドル/バレル程度を想定)、③インフレに伴う諸経費・修繕費の増加、④送配電事業のエリア需要の減少を減益要因として挙げています。
2. 老朽原発の長期運転リスク
高浜1号機(1974年運転開始)は2024年に運転開始から50年を超え、高浜2号機(1975年)や美浜3号機(1976年12月営業運転開始)も40年超の長期運転に入っています。追加安全対策の投資負担や計画外停止のリスクは年々高まっており、仮に複数基が同時停止した場合には業績への影響が大きくなります。
3. 電力自由化と新電力の競争激化
関西圏では大阪ガスグループの大阪ガス(9532)や楽天でんきなど新電力の参入が進み、家庭向け小売のシェア争いが激化しています。規制料金の段階的撤廃が進めば、価格競争による利益圧迫リスクがあります。
まとめ
関西電力は、原子力7基体制による構造的なコスト優位性と、オプテージを中心とする非電力事業の成長を両輪に、電力業界の中でも高い収益力を持つ企業です。
国内最多の原発7基稼働で燃料価格変動への耐性が高い
連結配当性向25〜35%を目安とした配当方針のもと2027/3は80円を予想、配当利回りは約2.7%
2027/3は営業利益2,500億円(−43%)の減益予想。会社は原子力利用率の低下(84.1%→70%程度)・燃料市況の上昇・インフレに伴う諸経費増を主因に挙げる
PER約8.7倍・PBR約0.95倍(2026年9月1日時点)と市場平均を下回る水準。PBRは1倍近辺まで回復しており、1倍超の定着に向けた資本効率の改善が課題
配当と割安感を重視するバリュー投資家にとって関西電力は魅力的な候補ですが、2027年3月期の減益幅が市場予想を超える場合には株価の下押し圧力もあり得ます。原発の稼働状況と配当の推移をフォローしながら、中長期の目線で判断したい銘柄です。
関西電力
関西圏を地盤とする大手電力会社で、連結子会社109社を含むグループ216社で構成される。原子力・火力・水力・再エネによる発電と電力・ガスの小売を中核に、子会社の関西電力送配電が送配電網を運営する。子会社オプテージによる光回線「eo光」やデー…










