デンソー(6902)の企業分析|トヨタ系最大の部品メーカー、売上7.5兆円の電動化シフト

デンソー(6902)は、トヨタグループの中核自動車部品メーカーとして世界第2位の売上規模を誇ります。サーマルシステム(空調・熱管理)、パワトレインシステム、モビリティエレクトロニクス(ADAS・コックピット)、セミコンダクタなど、自動車に不可欠な幅広い製品群を世界の主要カーメーカーに供給しています。
2026年3月期は売上収益7兆5,400億円(前期比+5.3%)、営業利益5,525億円(同+6.5%)と増収増益を達成。電動化・半導体・ADASの3軸で成長投資を進めています。一方、2027年3月期第1四半期(4〜6月の3ヶ月)は部材費高騰と成長投資の負担で営業利益842億円(前年同期比-21.5%)と減益スタートになりました(デンソーIR)。
この記事の内容(目次)
会社概要 — 世界第2位の自動車部品メーカー
項目 | 内容 |
|---|---|
会社名 | 株式会社デンソー(DENSO Corporation) |
証券コード | 6902(東証プライム・名証プレミア) |
設立 | 1949年12月(トヨタ自動車から分離独立) |
代表 | 林 新之助 取締役社長(2026年9月時点) |
従業員数 | 約15.5万名(連結、2026年3月31日現在) |
本社 | 愛知県刈谷市 |
通期業績推移(売上収益・営業利益)
主要製品群を理解する

デンソーの事業は地域別(日本・北米・欧州・アジア・その他)にセグメント報告されていますが、有価証券報告書「事業の内容」では製品分野をサーマルシステム/パワトレインシステム/モビリティエレクトロニクス/システムコンポ/セミコンダクタ/非車載事業の6区分に整理しています。ここでは主要な4区分を中心に見ていきます。
製品分野(2026年3月期) | 売上収益 | 構成比 |
|---|---|---|
モビリティエレクトロニクス | 2兆1,987億円 | 29.2% |
サーマルシステム | 1兆7,804億円 | 23.6% |
パワトレインシステム | 1兆4,797億円 | 19.6% |
エレクトリフィケーションシステム | 1兆4,335億円 | 19.0% |
先進デバイス | 3,903億円 | 5.2% |
その他(自動車分野)・非車載事業 | 2,575億円 | 3.4% |
合計 | 7兆5,400億円 | 100% |
① サーマルシステム
自動車用エアコン、ヒートポンプ、ラジエーター、冷却ファンなどのサーマル(熱管理)システムはデンソーの主力事業の一つで、製品別売上ではモビリティエレクトロニクスに次ぐ2番目の規模(2026年3月期1兆7,804億円、23.6%)です。EV時代でもバッテリーの温度管理(冷却・加温)が不可欠なため、むしろ需要が拡大する成長分野です。デンソーのヒートポンプ技術はEVの航続距離延長に貢献しています。
② パワトレインシステム
燃料噴射装置、点火・排気系部品、スタータ・オルタネータに加え、EV向けのインバーター、モーター、DC-DCコンバーターなどの電動化部品も手がけています。2026年1月1日付の組織変更により、パワーエレクトロニクスコンポーネント(PCU・インバータ・パワーモジュール)とパワーサプライコントロール(電池ECU・充電ECUなど)がパワトレインシステムに統合され、内燃機関と電動化を一体で開発する体制に移行しました(出典:デンソー 第103期有価証券報告書「事業の内容」)。
③ モビリティエレクトロニクス
ミリ波レーダー、カメラセンサー、LiDARなどのADAS(先進運転支援システム)向けセンシング技術と、メーターなどのコックピット製品を展開しています。自動運転の進化に伴い、センシング技術の需要は拡大が期待されます。
なお、コックピット製品のうちヘッドアップディスプレイ(HUD)事業は、2026年8月28日に日本精機(7287)へ譲渡する事業譲渡契約を締結しました。対象は国内・中国・スペイン・米国・メキシコの生産設備と知的財産で、譲渡実行は2027年2月26日の予定。対象事業の資産は11.6億円(2026年3月末)と、デンソー全体から見れば小規模な事業整理です(出典:日本精機「株式会社デンソーのヘッドアップディスプレイ事業の譲受に関するお知らせ」2026年8月28日)。
④ セミコンダクタ
デンソーは有価証券報告書の事業区分に「セミコンダクタ」を独立区分として掲げ、特定用途向けICやパワー半導体の設計・開発を強化しています(出典:デンソー 第103期有価証券報告書「事業の内容」)。車載半導体は自動運転・電動化の進展で搭載量が急増しており、自社設計による差別化と安定供給を図る戦略です。
半導体戦略の直近の動きとして、2026年3月に公表したローム(6963)に対する株式取得の提案を、ロームの取締役会・特別委員会の賛同を得られなかったとして2026年4月28日に取り下げました。2025年5月に結んだ戦略的パートナーシップに基づくアナログICなどの協業は継続し、ローム株1,922万株(簿価587億円、2026年3月末)も保有したままです(出典:デンソー「ローム株式会社に対する株式取得に関する提案の取下げについて」2026年4月28日、第103期有価証券報告書)。
地域別業績(2026年3月期)
地域別売上収益(2026年3月期)
財務分析と投資ポイント
指標 | 2025/3期 | 2026/3期 | 2027/3予 |
|---|---|---|---|
売上収益 | 7兆1,618億円 | 7兆5,400億円 | 7兆7,500億円 |
営業利益 | 5,190億円 | 5,525億円 | 5,000億円 |
EPS | 145.02円 | 162.96円 | 150.08円(会社予想) |
1株配当 | 64円 | 67円 | 74円(会社予想) |
PER / PBR | — | 11.7倍 / 0.94倍(2026年9月15日時点) | — |
デンソーは5期連続の増収と直近2期の増益を達成し、営業利益率7.3%と安定した収益性を維持しています。配当も64円→67円へ増配し、分割調整後では5期連続増配(2027年3月期は74円予想)。配当利回り3.5%(2026年9月15日終値1,910.5円、2026年3月期実績67円ベース。2027年3月期予想74円ベースでは3.9%)はインカム投資家にも魅力的です。
2027年3月期の会社予想は売上収益7兆7,500億円・営業利益5,000億円(前期比-9.5%)で、営業利益は減益予想です。会社は減益の理由を「将来成長に向けた投資の強化に加え、足元の中東情勢の影響等、不確実性の高まりを織り込んだ」と説明しており(2026年3月期決算短信)、為替前提は1USD=153円・1EUR=180円と円安側に置いています。関税や為替を保守的に見た数字ではなく、投資とコスト構造による減益である点は押さえておきたいところです。
2027年3月期 第1四半期は増収減益(2026年7月31日開示)
指標 | 2027/3期 Q1(3ヶ月) | 前年同期比 | 通期予想への進捗 |
|---|---|---|---|
売上収益 | 1兆9,139億円 | +9.1% | 24.7% |
営業利益 | 842億円 | -21.5% | 16.8% |
営業利益率 | 4.4% | 前年同期6.1% | 通期予想6.5% |
親会社帰属利益 | 679億円 | -14.4% | 17.8% |
売上収益は車両販売の増加と電動化・知能化製品の拡販、円安で2桁近く伸びた一方、営業利益は部材費等の高騰と将来成長に向けた投入の強化が円安の増益効果を打ち消し、2割強の減益となりました。地域別(3ヶ月)の内訳は次のとおりです。
日本:売上収益1兆1,100億円(+9.5%)、営業利益76億円(-43.3%)。円安と操業度差益があっても部材費高騰と成長投資で大幅減益
北米:売上収益5,381億円(+13.7%)、営業利益253億円(+12.1%)。合理化努力で唯一の主要地域増益
欧州:売上収益1,988億円(+6.3%)、営業損失86億円(前年同期は52億円の黒字)。品質費用の発生が響いた
アジア:売上収益4,892億円(+6.6%)、営業利益418億円(-12.2%)。車両販売の不振で操業度差損と部材費高騰
投資家が注目すべきポイント
強み・成長ドライバー
① 自動車部品世界2位の圧倒的スケール — 売上収益7兆5,400億円は独ボッシュに次ぐ世界第2位。トヨタグループ向けが約55%(2026年3月期は4兆1,346億円/連結売上収益の54.8%)を占めるが、ホンダ・スバル・GM・フォードなど世界の主要メーカーに幅広く供給しており、「トヨタ系」という枠を超えた顧客基盤を構築しています。
② 電動化・半導体・ADASの3軸で成長領域に注力 — EV向けインバーター・モーターの開発に加え、2026年1月にセミコンダクタ事業グループを新設して車載チップの自社開発体制を強化。ローム株の取得提案は2026年4月に取り下げたものの、アナログICを軸にした協業は続けています。ADAS向けセンシング技術でも業界をリードしており、CASEの全領域で不可欠なポジションを確立しつつあります。
③ 配当利回り3.5%と自社株買いを含む厚い株主還元 — 株式分割(2023年10月1日、1株→4株)調整後で5期連続増配(2022年3月期41.25円→2026年3月期67円)となり、2027年3月期は74円(+10.4%)と6期連続増配を予想しています。配当利回りは3.5%(2026年9月15日時点、2026年3月期実績ベース)で、インカム投資家にも魅力的な水準です。自社株買いも2025年3月期1,966億円、2026年3月期2,534億円と大きく、2026年4〜6月には豊田自動織機の保有分を引き取る約3,136億円の自己株TOBを実施しました(下記トピック参照)。
リスク要因
① トヨタグループへの売上依存 — 売上の約55%がトヨタグループ向け(トヨタ自動車単体では26.4%、2026年3月期)で、トヨタの戦略変更(BEV比率の変動など)がデンソーの投資方針に直結します。トヨタ自動車はデンソー株の22.24%を持つ筆頭株主(2026年3月末)でもあり、顧客分散は進んでいるものの、依然として最大の集中リスクです。
② 内燃機関部品の構造的縮小 — EV化の進展により、燃料噴射装置・排気系部品の需要は中長期で減少。サーマルシステムやセンシング技術でEV時代にも成長可能ですが、移行期の売上減をどこまで新事業で補えるかが課題です。
③ 2027/3期は営業減益予想、第1四半期は-21.5% — 会社予想は営業利益5,000億円(前期比-9.5%)。会社は成長投資の強化と中東情勢などの不確実性、第1四半期以降は銅・アルミ等の部材費高騰を減益の理由に挙げており、為替前提は1USD=153円と円安側です。第1四半期(4〜6月の3ヶ月)の営業利益は842億円(-21.5%)と通期予想の減益幅より深く、進捗率は16.8%。下期の合理化でどこまで取り戻せるかが焦点で、市場期待を下回る可能性に注意が必要です。
2026年の主な資本・事業トピック
日付 | 内容 | 投資家への含意 |
|---|---|---|
2026年3月6日→4月28日 | ローム(6963)への株式取得提案を公表→取り下げ | ローム側の賛同を得られず。戦略的パートナーシップは継続し、ローム株1,922万株(簿価587億円)は保有したまま |
2026年4月28日(買付期間4月30日〜6月1日) | 自己株式の公開買付け(自己株TOB)。1株1,696円で1億8,490万株・3,136億円を取得 | 豊田自動織機の非公開化に伴い、同社保有分(5.86%)と退職給付信託分(1.01%)を引き取るもの。買付価格は4月27日終値1,884円の10%ディスカウント。自己株式は6月末で4億394万株(発行済の13.9%)に増え、EPSを押し上げる |
2026年7月31日 | 第1四半期決算。通期売上収益予想を7兆7,500億円へ上方修正、利益・配当は据え置き | 営業利益は3ヶ月で-21.5%。EPS予想は株数減で146.95円→150.08円 |
2026年8月28日 | HUD事業を日本精機(7287)へ譲渡する契約を締結 | 2027年2月26日移管予定。対象資産11.6億円と小規模で、業績への影響は限定的 |
まとめ
自動車部品世界2位で、トヨタグループ中核のポジションは盤石
電動化・半導体・ADASの3軸で成長領域に積極投資、EV時代の需要変化に対応
5期連続増収・直近2期増益・配当利回り3.5%(2026年9月15日時点)に約3,136億円の自己株TOBが加わり、株主還元は厚い
2027年3月期は営業減益予想(成長投資・部材費高騰・中東情勢)で、第1四半期(3ヶ月)は-21.5%と減益幅が予想より深い
トヨタ依存リスクと自動車産業構造変化への対応が中長期の課題
デンソーは自動車部品業界の中で最も電動化対応が進んだ企業の一つです。サーマルシステムやセンシング技術はEV時代でも不可欠であり、半導体事業の立ち上げも差別化要因です。PBR 0.94倍(2026年9月15日時点)は東証の1倍目標に近く、自己株TOBを含む資本効率改善の取り組みにも注目が集まります。
デンソー
トヨタグループの中核を担う世界最大級の自動車部品メーカー。カーエアコン・ラジエータ等のサーマルシステム、燃料噴射装置等のパワトレイン部品、ECU・メータ等の車載電子機器、先進安全システム、電動化コンポーネントまで幅広い自動車部品を開発・製造…










