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ボードルア(4413)の企業分析|ベインのTOB 2,970円が成立、上場廃止へ

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ボードルア(4413)は、ネットワーク・クラウド・セキュリティなどのITインフラストラクチャに特化した独立系IT企業です。2007年の創業以来、「ネットワークインフラ技術分野のフロントランナー」を掲げ、マルチベンダーでの設計構築からマネージドサービスまでをワンストップで提供しています。

2026年2月期は売上高174億円(前期比+49.6%)、営業利益33.9億円(同+37.8%)と大幅増収増益を達成。中期経営計画「Beyond 100」の目標を大幅に上回り、2025年3月には東証プライム市場へ移行しました。2027年2月期の上期(2026年3〜8月の累計)も売上収益が前年同期比+45.2%と伸びています(営業利益は+16.5%)。積極的なM&A戦略と独自の人材育成モデルが高成長を支える原動力です。

この記事では、ボードルアの事業構造、M&A戦略、業績推移(2027年2月期上期を含む)、中期経営計画、そしてMBO(TOB)の結果と上場廃止までに株主が知っておきたい点を、個人投資家の視点からわかりやすく解説します。

会社概要 — ITインフラに特化した急成長企業

ボードルアは、代表取締役社長の冨永重寛氏が2007年に設立したITインフラストラクチャ専業の企業です。社名の「ボードルア(baudroie)」はフランス語で「アンコウ」を意味し、深海で自ら光を放つ提灯アンコウのように、ITインフラの深い技術で顧客を照らす存在になりたいという想いが込められています。

項目

内容

会社名

株式会社ボードルア(baudroie inc.)

証券コード

4413(東証プライム。2026年10月にTOBが成立し、スクイーズアウトの手続きの中で上場廃止の予定)

設立

2007年4月

上場

2021年11月(東証マザーズ)→ 2022年4月 東証グロース → 2025年3月 プライム市場へ移行

代表取締役社長

冨永 重寛

従業員数

1,315名(単体、2026年2月時点)

本社

東京都港区麻布台1-3-1 麻布台ヒルズ 森JPタワー17F

資本金

6億530万円(2026年2月時点)

会計基準

IFRS

出典:ボードルア 会社概要

創業からプライム市場までの軌跡

ボードルアの成長は、大きく3つのフェーズに分けられます。

  • 2007〜2020年(創業・基盤構築期) — iPhone発表と同じ2007年に創業。ネットワーク・サーバーの設計構築に特化し、独自の人材育成モデルを確立。地道に技術力と顧客基盤を積み上げました

  • 2021〜2024年(IPO・急成長期) — 2021年11月に東証マザーズに上場。上場後にM&Aを本格化させ、ZOSTEC(2022年)、ALJOY(2023年)、FunClock(2024年)、アクティアス(2024年)を次々と子会社化。売上高は上場時の39億円から2025年2月期に116億円と3倍に

  • 2025年〜(プライム・第2成長期) — 2025年3月にプライム市場へ移行。SPIN TECHNOLOGY・悟空テクノロジーズ・ONE-TECH・リクソルの4社を連結し、売上高174億円を達成。中期計画を更新し、2029年2月期に売上高397億円を目指す計画を掲げました。2026年8月にベインキャピタルによるMBO(非公開化)を発表し、10月にTOBが成立しました

ボードルア公式サイト — 「Specializing in IT infrastructure」のメインビジュアル
出典:ボードルア公式サイト

事業構造を理解する — 4つの技術領域とビジネスモデル

ボードルアはITインフラストラクチャ事業の単一セグメントで構成されています。システム開発(アプリケーション層)やネットワーク配線工事(物理層)は手がけず、ネットワーク・サーバー・セキュリティの「設計・構築・運用」に特化しているのが特徴です。マルチベンダー対応で、特定メーカーに依存しない中立的な立場から最適なソリューションを提案します。

4つの重点技術領域

ボードルアのサービスページは、以下の4つの領域を掲げています。会社はこれにロードバランサー(通信を複数のサーバーに振り分ける装置)とサーバー仮想化を加えた6領域を「先端技術分野」と呼び、2026年2月期の単体売上の63.3%を占めています。

ボードルアのサービスページ — ネットワーク仮想化、クラウドソリューション、ITセキュリティ、ワイヤレスの4領域
出典:ボードルア公式サイト サービスページ
  1. ネットワーク仮想化 — SDN(Software Defined Networking)やNFV技術を活用し、物理的なネットワーク機器に依存しない柔軟なインフラを構築します。ユーザーの要件に合わせてフレキシブルにネットワークを設計・変更できることが強みです

  2. クラウドソリューション — AWS・Azure・GCPなどのパブリッククラウドやプライベートクラウドの設計・構築・移行を支援。オンプレミスからのクラウドリフト&シフトに加え、マルチクラウド・ハイブリッドクラウド環境の構築を手がけます。クラウドは同社の先端技術分野で最大の売上を占めます

  3. ITセキュリティ — ゼロトラストセキュリティの導入支援を中心に、ファイアウォール・IDS/IPS・WAFなどの設計構築から、SOC(セキュリティ運用センター)による監視まで対応。サイバー攻撃の増加を背景に需要が拡大している分野です

  4. ワイヤレス — Wi-Fi 6/6Eや5Gプライベートネットワークなど、無線LAN環境の設計構築を提供。オフィスだけでなく工場・倉庫・商業施設など、ロケーションフリーなICT環境の実現を支援します

ビジネスモデル — フロー型+ストック型の二層構造

ボードルアの収益構造は、設計・構築プロジェクト(フロー型)とマネージドサービス(ストック型)の二層構造になっています。ストック型売上の比率は50.7%(2026年2月期、単体)に達しており、安定的な収益基盤を持ちながらプロジェクト型で成長を加速させるモデルです。

独自の人材育成モデル — 「エントリー→専門→高度専門」の3階層

ITインフラ業界では慢性的な人材不足が課題ですが、ボードルアは未経験者を新卒中心に大量採用し、独自カリキュラムで育成するモデルで人材供給を実現しています。

  • エントリー(専門人材になる前の若手) — 未経験で入社し、独自カリキュラムで基礎技術を習得。会社によると、未経験から専門人材になるまで約3年かかる

  • 専門人材(目安は入社3〜6年目) — 508名(2026年2月期)。社内評価が一定以上で、CCNP(シスコのネットワーク技術者資格)の保有者か社内認定試験の合格者

  • 高度専門人材(目安は入社7年目以降) — 297名(2026年2月期)。リーダー級以上の評価を受け、ITコンサルタント・システムアーキテクト、クラウドやセキュリティの先端技術者、プロジェクト管理者などを担う

年次は会社が決算説明会で示した目安で、実際の区分は人事評価と資格で決まります。この人材パイプラインにより、高い成長率を維持しながらエンジニアの質と量の両立を図っています。中期計画では2029年2月期に高度専門人材570名、専門人材1,485名体制を目指しています。

出典:ボードルア 2026年2月期 決算補足説明資料・決算説明会よりKabuGraph作成

M&A戦略 — 7社を傘下に収めた急速拡大

ボードルアの高成長を支えるもう一つの柱が、積極的なM&A戦略です。2023年以降だけで7社を買収し、事業規模を急速に拡大しています。

時期

買収先

事業内容

手法

2023年3月

ALJOY

ネットワーク・サーバー構築

株式取得

2024年3月

FunClock

テスト・検証・品質管理

株式取得+株式交換(自己株式)

2024年6月

アクティアス

ネットワークインテグレーション

株式追加取得+株式交換

2025年6月

SPIN TECHNOLOGY

ITサポート

株式取得+株式交換(自己株式)

2025年6月

悟空テクノロジーズ

ITサポート

株式取得+株式交換(自己株式)

2025年6月

ONE-TECH

ITサポート

株式取得+株式交換(自己株式)

2026年1月

リクソル

ITサポート

株式取得(現金8億円)

出典:ボードルア 適時開示情報・2026年2月期 決算補足説明資料よりKabuGraph作成

特筆すべきはPMI(買収後統合)のスピードです。2026年1月に連結したリクソルは、買収時点では赤字・債務超過でしたが、わずか2ヶ月で黒字化を達成。また、2025年に連結したSPIN TECHNOLOGY・悟空テクノロジーズ・ONE-TECHの3社も、第2四半期から第3四半期にかけて営業利益が70%増加するなど、統合効果が早期に表れています。

買収の手法にも特徴があります。最近の買収では、現金での株式取得と、自社株買いで取得した自己株式を対価とする株式交換を組み合わせています。買収先の経営者に当社株を持ってもらい、グループの企業価値向上に関わり続ける動機(オーナーシップ)を残す狙いだと会社は説明しています。リクソルは全額現金で取得し、業績に応じて追加の対価を払う取り決めがあります。

業績推移と財務分析

ボードルアの業績推移を確認しましょう。売上高は5期連続で大幅増収を記録し、2027年2月期(会社予想)を含めると6期連続の成長となる見込みです。

通期業績推移(売上高・営業利益・営業利益率)

出典:決算短信よりKabuGraph作成。2024/2以前は日本基準(2022/2は単体)、2025/2以降はIFRS。2027/2は会社予想(2026年4月14日公表、2026年10月15日の上期決算短信で据え置き)

2026年2月期の実績を詳しく見ると、売上高174.2億円(前期比+49.6%)、営業利益33.9億円(同+37.8%)、当期利益24.6億円(同+36.6%)と、いずれも大幅な増収増益を達成しました。M&Aで連結した子会社の寄与も大きくなっています。

単体では、エンタープライズ(大企業)顧客が31社から38社に増え、その売上も52.0億円から60.0億円に伸びました。一方、子会社に回す中小企業向けの案件を意図的に取ったため、単体売上に占める比率は72.1%から70.0%に下がっています。会社は2027年2月期から、この比率の引き上げに再び注力するとしています。

売上成長率の推移

売上高前期比成長率の推移

出典:決算短信よりKabuGraph算出。2024/2以前は日本基準(2022/2は単体)、2025/2以降はIFRS。2027/2は会社予想(2026年4月14日公表、10月15日時点で据え置き)

中期経営計画で掲げる「毎年30%成長」を4期連続で上回っています。2027年2月期も前期比+34.9%の235億円を計画しており、上期(3〜8月の累計)の売上収益は前年同期比+45.2%、通期予想に対する進捗率は47.6%でした(詳しくは下の上期決算の項)。

営業利益率の推移と課題

営業利益率は2024年2月期の21.4%をピークにやや低下傾向にあります。2026年2月期の19.5%への低下について、会社はM&Aで連結した子会社の利益率がボードルア本体より低いためと説明しています。買収直後は利益率が下がり、PMI(買収後の統合)で子会社の利益率を引き上げていく方針です。

2027年2月期の予想は18.8%で、さらに0.7ポイント下がる計画です。会社は理由として、グループの採用を事業規模の伸びを上回るペースで増やすこと(子会社の営業・採用も親会社が担う体制へ移行中)と、AI関連の新会社の立ち上げ費用を挙げています。買収が続く間は、売上成長率と利益率のバランスに注意が必要です。

2027年2月期 上期決算(2026年10月15日発表)

2027年2月期の上期(2026年3〜8月の累計)は、売上収益111.8億円(前年同期比+45.2%)、営業利益16.4億円(同+16.5%)、親会社の所有者に帰属する中間利益11.6億円(同+14.3%)でした(ボードルア 2027年2月期 第2四半期(中間期)決算短信 p.1)。通期予想(2026年4月14日公表)は据え置きです。今回は決算補足説明資料と決算説明会が無く、短信も増減の理由を個別には説明していません。

  • 売上の伸び:第1四半期(3〜5月の3ヶ月)の前年同期比+60.8%に対し、6〜8月の3ヶ月は+33.1%でした。第1四半期の高い伸びについて、会社は前期の第2四半期以降に連結したSPIN TECHNOLOGYなど3社とリクソルが前年同期に入っていないためと説明していました

  • 利益:上期の営業利益率は14.7%(前年同期18.3%)。6〜8月の3ヶ月の営業利益は7.9億円で、前年同期(8.0億円)並みにとどまりました。損益計算書の「その他の費用」が上期で2.0億円(前年同期0.25億円)に増え、ほぼ全額が6〜8月に計上されています(第1四半期は12万円)。短信・半期報告書とも中身を説明していません

  • 通期予想に対する進捗:売上収益47.6%、営業利益37.2%、親会社の所有者に帰属する利益37.0%。前期の上期は通期実績に対して44.2%・41.5%・41.3%で、売上は前期を上回り、利益は下回るペースです。会社は第1四半期の決算補足説明資料(p.14・p.21)で、上期の営業利益は前年同期比+30%強の成長を見込み、通期予想を上回る余地があるとすれば下期としていました。実績は+16.5%で、今回の短信はこの差に触れていません

  • 配当:中間配当は無く、期末配当の予想も0円のままです(TOB成立を条件とした無配への修正)

出典:ボードルア 2027年2月期 第2四半期(中間期)決算短信・半期報告書、第1四半期決算短信・決算補足説明資料よりKabuGraph作成。3ヶ月の値と進捗率はKabuGraph算出(上期累計から第1四半期を差し引いて計算)

株価とTOB価格(2026年10月15日終値時点)

指標

値

株価

3,030円

TOB価格

2,970円

時価総額

975億円

PER(2026年2月期実績)

38.3倍

PER(2027年2月期会社予想)

30.2倍

PBR(株価純資産倍率)

12.25倍

ROE(2026年2月期)

40.0%

1株配当(2027年2月期予想)

0円

出典:東証株価・決算短信よりKabuGraph算出(2026年10月15日終値時点。上期決算の発表前の終値)。実績PERは2026年2月期のEPS 79.09円、予想PERは2027年2月期の会社予想EPS 100.46円、PBRは2026年2月期末の1株当たり親会社所有者帰属持分247.44円で計算。ROEは2026年2月期決算短信の値(期首と期末の平均の自己資本で計算)

TOB成立の公表後の株価は2,966〜3,030円(10月7日〜15日の終値)とTOB価格2,970円の近辺で動いており、これらの指標は事業に対する市場の評価というより、スクイーズアウトの対価を映した数字です。10月15日の終値は上期決算の発表(16:00)より前のもので、決算の内容は織り込んでいません。なお、銘柄ページのROE(31.8%)は期末の自己資本で割った値で、期中に自己資本が大きく増えたぶん決算短信の値より低く出ます。

中期経営計画 — 2029年2月期に売上高397億円

2026年2月期までの中期経営計画「Beyond 100」(売上高100億円超を目標)を大幅に前倒しで達成したボードルアは、計画を更新し2029年2月期までの新たな目標を策定しました。

中期経営計画の売上高・営業利益ロードマップ

出典:ボードルア 2026年2月期 決算補足説明資料よりKabuGraph作成

2029年2月期までの3年間で、売上高は174億円→397億円と2.3倍に拡大する計画です。年平均成長率で約30%を維持する想定であり、M&Aによる非連続成長と、オーガニック成長(採用拡大・単価向上・先端技術比率の引き上げ)の両輪で達成を目指します。この計画は、MBOの株式価値の算定(DCF法)に使われた事業計画と同じ数字です。

MBO — ベインキャピタルとの非公開化

2026年8月19日、ボードルアは米投資ファンドのベインキャピタル(運用資産約2,250億ドル)が投資助言を行うファンドの買収会社によるMBOに賛同し、株主に応募を推奨すると発表しました。TOBは10月5日に終わって成立し、ボードルアは現在、残りの株式を買い取って上場を廃止する手続きを待つ段階にあります。冨永重寛社長ら創業者は引き続き経営に関わり、ベインキャピタルの支援のもとで非公開企業として成長を加速させる方針です。

TOBの概要

項目

内容

公開買付者

BCPE Neon Cayman, L.P.(ベインキャピタル傘下)

TOB価格

1株2,970円

プレミアム

発表前日終値比+3.8%、直近6ヶ月平均比+26.5%

買付期間

2026年8月19日〜10月5日(31営業日)

決済開始日

2026年10月13日

取締役会の見解

賛同・応募推奨

成立の条件

応募が3,135,200株(所有割合9.55%)以上

創業者3人の株式

TOBとは別に1株2,350円で売却(8月19日時点の所有割合54.65%)

出典:ボードルア「MBOの実施及び応募の推奨に関するお知らせ」(2026年8月19日)よりKabuGraph作成

TOBの結果と今後の日程(2026年10月15日時点)

  • 2026年10月5日:買付期間が終了(延長・条件変更なし)

  • 10月6日:TOBの成立を公表。応募は10,365,448株(所有割合31.58%)で、成立の条件(3,135,200株以上)を上回り、全株が買い付けられました

  • 10月13日:決済の開始。同じ日に創業者3人の持株(計17,758,400株)も1株2,350円で買付者に渡り、買付者(BCPE Neon Cayman, L.P.)は議決権所有割合85.68%の親会社・筆頭株主になりました。冨永社長は筆頭株主ではなくなりました

  • 10月16日:臨時株主総会の基準日。株式併合で手続きを進める場合に備えて設定(10月1日発表)

  • 12月中旬(目途):臨時株主総会で株式併合を付議(株式併合による場合のみ。開催日と議案の詳細は未公表)

  • 2027年1月中旬:スクイーズアウトの完了予定(8月19日のMBO開示時点の予定)。この手続きの中で上場廃止になります

残りの株式は、買付者の議決権が総株主の議決権の90%以上なら株式売渡請求(株主総会は開かない)、90%未満なら臨時株主総会で決める株式併合で取得されます。上の85.68%は、新株予約権(まだ行使できないものを含む)の目的となる株式を分母に加えて計算した割合で、90%の判定に使う総株主の議決権とは分母が違います。

会社は10月6日に、具体的な手続きと実施時期は買付者と協議して決まり次第公表するとしており、10月15日時点で、どちらの方法になるかと上場廃止日はまだ公表されていません。どちらの方法でも、応募しなかった株主に払われる金銭は、TOB価格に持株数を掛けた額と同じになるよう算定される予定です。金額に納得できない株主は、裁判所に価格の決定を申し立てることができます(最終的な価格は裁判所が判断します)。

TOBの成立を条件としていた2027年2月期の期末配当の無配も、条件を満たしました。10月15日の上期決算短信でも、期末配当の予想は0円です。

出典:ボードルア「MBOの実施及び応募の推奨に関するお知らせ」(2026年8月19日、p.8・p.28-29)、「2027年2月期期末配当予想の修正(無配)のお知らせ」(同)、「臨時株主総会招集のための基準日設定に関するお知らせ」(2026年10月1日)、「公開買付けの結果並びに親会社、主要株主及び主要株主である筆頭株主の異動に関するお知らせ」(2026年10月6日、添付の公開買付者による結果のお知らせを含む)、「2027年2月期 第2四半期(中間期)決算短信」(2026年10月15日、p.11-12 重要な後発事象。10月13日の決済と並行買付けの実行)よりKabuGraph作成

非公開化の背景

会社は、成長を続けるための施策として、ベインキャピタルの支援を受けたM&Aの継続、ベインキャピタルの投資先・顧客網との連携、営業やM&A後の統合を担う人材の確保を挙げています。AI技術の急速な進展で事業環境の不確実性が高まるなか、人材と組織基盤の強化が重要な課題だとしています。

ただし、これらの施策には多額の先行投資が必要で、短期的には利益の低下やキャッシュ・フローの悪化を招くおそれがあります。会社は、上場を続けたまま実行すると資本市場から十分な評価が得られず、株価の下落で株主が不利益を被る可能性があるため、非公開化して短期的な株式市場の評価にとらわれずに意思決定する道を選んだと説明しています。上場を維持するコストが年々増えていることも理由に挙げています。

創業者の役割とベインキャピタルの支援

冨永重寛社長は、MBO前に所有割合(自己株式を除き、新株予約権の分を含めた株数に対する割合)で37.09%を持つ筆頭株主でした。冨永氏・藤井和也氏・程島義明氏の創業者3人(MBO発表時の所有割合は合計54.65%)は、TOBの決済と同じ2026年10月13日に、当時の持株すべて(17,758,400株、所有割合54.10%)を買付者に売りました。スクイーズアウトの後にベインキャピタルの新会社へ出資し直す予定です(2027年5月予定)。出資し直した後の議決権は、ベインキャピタル68%・創業者32%になる予定です。

創業者はMBO後も経営全般に関わり、現在の経営体制は原則として維持される方針です。取締役は創業者が3名、ベインキャピタルが4名を指名する権利を持ちます。ベインキャピタルは(1)コンサルティング・アプローチによる営業力向上、(2)M&Aの戦略立案からPMIまでの一気通貫支援、(3)投資先ネットワークを通じた顧客基盤拡充、(4)グローバル・ネットワークからの経営人材紹介、を提供するとしています。

株式価値の算定

特別委員会(独立社外取締役3名で構成、12回・約14時間の協議を実施)は複数回の価格交渉を主導し、当初の2,550円から2,970円への引き上げを実現しました。SMBC日興証券によるDCF法の算定レンジは1,694〜3,037円、独立算定機関プルータスのDCF法は2,091〜3,425円であり、TOB価格2,970円はいずれのレンジ内に収まっています。特別委員会は「一般株主にとって公正」と答申しています。

プレミアムの低さと創業者の売却価格

本TOBで注目すべきは、プレミアムの低さです。発表前日終値に対する上乗せはわずか3.8%で、会社が比較に示した過去のMBO 115件の平均(公表前日比45.4%、中央値41.8%)を大きく下回ります。直近6ヶ月平均比でも+26.5%(115件の平均は51.7%)にとどまります。

会社と特別委員会は、直近3ヶ月に株価が上がっていたことと、PBRが10倍を超え、すでに株式市場で高く評価されていたことを挙げ、プレミアムの水準だけで価格の妥当性を否定するのは適切でないと説明しています。

MBOでは、経営陣が株主として売る側と、買収後も出資する買い手側の両方に立つため、一般株主との間に構造的な利益相反が生じやすくなります。

この点について特別委員会は、創業者と一般株主で売却の条件に差をつけるよう求めました。これを受けて、冨永社長ら創業者3人は、持株をTOBとは別に1株2,350円(TOB価格より620円安い)で買付者に売ることを受け入れ、10月13日に売却しました。

創業者の売却価格を低くした分、一般株主により高い価格で売る機会を出す仕組みで、特別委員会の答申書は「少数株主にとって有利となるスキーム変更」と評価しています。創業者はTOB価格の交渉には加わっていません。

特別委員会の交渉で当初提示から約16%の引き上げを実現し、価格が2つのDCF法の算定レンジの範囲内に収まっている点は、手続き面で一定の公正性が担保されていると評価できます。

一方で、特別委員会が求めた「マジョリティ・オブ・マイノリティ」(一般株主の過半数の応募をTOB成立の条件にすること)は、成立を不安定にするとしてベインキャピタルが採りませんでした。創業者の54.65%をTOBの外で買うため、成立に必要な応募は所有割合9.55%にとどまり、8月28日には第4位株主の小林剛士氏(3.93%)とも応募契約を結んでいました。実際の応募は10,365,448株(所有割合31.58%)で、成立に必要な株数の3倍を超えました。

プルータスのDCF上限3,425円と比べるとなお15%の開きがあり、企業の成長ポテンシャルを考慮すれば割安だったとの見方も成り立ちます。TOBが成立したいま、この価格に納得できない株主に残る手段は、スクイーズアウトの際に裁判所へ価格の決定を申し立てることです。

出典:ボードルア「MBOの実施及び応募の推奨に関するお知らせ」(2026年8月19日、9月1日・4日訂正)、公開買付者「公開買付けの開始に関するお知らせ」の訂正(2026年9月3日)、ボードルア「公開買付けの結果並びに親会社、主要株主及び主要株主である筆頭株主の異動に関するお知らせ」(2026年10月6日)よりKabuGraph作成

投資家が注目すべきポイント

いまの株主にとっての論点 — 上場廃止までに売るか、スクイーズアウトを待つか

TOBが成立した後も、株価はTOB価格2,970円の近辺で動いています(10月7日〜15日の終値は2,966〜3,030円)。10月15日の終値3,030円は、スクイーズアウトで受け取る予定の金額(1株2,970円)を2.0%上回っていますが、上回っている理由について会社や買付者の説明はありません。残った株式はスクイーズアウトでTOB価格と同じ金額の金銭に換えられる予定で、いまの株価を決めているのは業績や成長性ではなく、この対価です。

  • 市場で売る:上場廃止までは市場で売れます。売値はその時の株価で、TOB価格と同じとは限りません

  • 持ち続ける:スクイーズアウトで、TOB価格に持株数を掛けた額と同じ金額の金銭を受け取る予定です。完了は2027年1月中旬の予定ですが、方法と日程は10月15日時点で公表されていません

  • 配当:2027年2月期の期末配当は、TOB成立を条件とした無配への修正どおり、出ない予定です

  • 価格に納得できない場合:スクイーズアウトの際に、裁判所へ価格の決定を申し立てることができます。最終的な価格は裁判所が判断します

TOBが成立したため、以下の成長ドライバーとリスクは、MBO発表前の事業評価として残しています。これらが上場廃止までの株価に反映されることはありません。

成長ドライバー

  1. 国内ITインフラ市場の構造的成長 — 国内パブリッククラウド市場は年率2桁成長が続き、セキュリティ市場もサイバー攻撃の増加を背景に拡大中です。DX推進やAI活用の基盤となるITインフラへの投資需要は構造的に拡大しており、ボードルアの事業領域は追い風の中にあります

  2. エンタープライズ顧客への深耕 — 単体売上の70.0%(2026年2月期)を占めるエンタープライズ(大企業)顧客は、一社あたりの案件規模が大きく、複数年にわたるマネージドサービス契約につながりやすい特徴があります。大企業のITインフラ更改サイクルに乗ることで、安定的な受注が期待できます

  3. M&Aパイプラインの継続 — 中期計画では引き続きM&Aを成長戦略の柱に位置付けています。ただし会社は2026年2月期の決算説明会で、これまで加速してきたペースを「少し減速させながら」、技術や特徴のある会社があれば積極的に買収したいと述べています。MBO後は、ベインキャピタルのM&A・PMI支援を受けて進める方針です

リスク要因

  1. バリュエーションの高さ — PER 38.3倍(2026年10月15日終値3,030円、2026年2月期実績)は成長プレミアムを相当織り込んだ水準で、2027年2月期予想の純利益31.3億円ベースでも30.2倍です。もっともTOBの成立で、いまの株価はスクイーズアウトの対価(TOB価格)で決まっています

  2. のれん減損と統合リスク — 短期間で7社を買収しており、のれんは2026年2月期末で49.4億円に膨らんでいます(IFRSでは定期償却しない)。PMIの成功実績はありますが、買収ペースが速いため、組織統合の遅延や人材流出リスクには注意が必要です

  3. 人材供給のボトルネック — 中期計画では2029年2月期に専門人材1,485名体制を目指していますが、ITインフラ人材の獲得競争は激化しています。未経験者育成モデルは強みですが、育成にかかる時間(未経験から専門人材まで約3年、会社説明)が急成長の制約になる可能性もあります

まとめ

ボードルア(4413)は、ITインフラストラクチャに特化した独自の人材育成モデルとM&A戦略で、4期連続で30%超の売上成長を実現してきた企業です。2026年8月に発表したベインキャピタルによるMBOは10月にTOBが成立し、スクイーズアウトの手続きの中で上場廃止になる予定です。

  • TOB価格2,970円の公開買付けは成立し(応募10,365,448株)、10月13日の決済で買付者が議決権所有割合85.68%の親会社になりました。10月15日の終値は3,030円で、TOB価格を2.0%上回っています

  • 応募しなかった株式は、スクイーズアウトでTOB価格と同じ金額の金銭に換えられる予定で、その手続きの中で上場廃止になります(完了は2027年1月中旬の予定。方法・日程と上場廃止日は10月15日時点で未公表)

  • 2027年2月期の上期は売上収益+45.2%、営業利益+16.5%。通期予想は据え置き、期末配当はTOB成立を条件とした修正どおり無配の予定

  • 冨永社長ら創業者3人は10月13日に持株を1株2,350円で売り、スクイーズアウトの後に新会社へ約3割を出資し直して、ベインキャピタルの経営支援・M&A支援のもとで経営を続ける方針

(本記事の情報は2026年10月15日時点のものです。投資判断はご自身の責任で行ってください。)

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ボードルア

ITインフラストラクチャ分野に特化した技術者集団。サーバー・ネットワーク・セキュリティの設計構築(マルチベンダー構築支援)、運用保守(マネージドサービス)、クラウド基盤導入支援、ITコンサルティングを提供する。SDN・セキュリティ・ワイヤレ…

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KabuGraph編集部

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