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レーザーテック(6920)の企業分析|EUVマスク検査装置で世界シェア100%、営業利益率46%の独占企業

2027年6月期 第1四半期決算まで反映

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レーザーテック(6920)は、EUV(極端紫外線)マスクブランクス検査装置で世界シェア100%を握る、文字通り「世界で唯一」の半導体検査装置メーカーです。TSMC・サムスン・インテルなど最先端半導体を製造する世界中のファブが、レーザーテックの検査装置なしにはEUVリソグラフィを使った半導体を製造できません。

2025年6月期は売上高2,515億円、営業利益1,228億円(営業利益率48.8%)と11期連続の最高益を更新。一方で、2026年6月期は受注サイクルの谷間に入り、売上高2,305億円(前期比-8.3%)、営業利益1,053億円(同-14.3%)と減収減益に転じました。

この記事では、レーザーテックの唯一無二のEUV検査装置の仕組み、受注サイクルの現在地、High-NA EUVの成長機会、投資判断のポイントを個人投資家向けに解説します。

会社概要 — EUV半導体の「門番」

レーザーテックは1960年設立の検査・計測装置メーカーです。半導体向けマスク検査装置を中心に、FPD(フラットパネルディスプレイ)検査装置やレーザー顕微鏡も手がけていますが、半導体関連装置(売上の72.9%)とそのサービス(同25.4%)で売上の約98%を占めています(2026年6月期)。FPD検査装置やレーザー顕微鏡を含む「その他の製品」は1.6%にすぎません。

項目

内容

会社名

レーザーテック株式会社(Lasertec Corporation)

証券コード

6920(東証プライム)

本社

神奈川県横浜市港北区新横浜二丁目10番1号

従業員数

1,335名(グループ全体、2026年6月期末)

業種

電気機器(半導体検査・計測装置)

決算期

6月

時価総額

約3.6兆円(2026年10月30日終値時点)

品目別売上構成比(2026年6月期)

出典:レーザーテック 2026年6月期決算短信(品目別販売実績)よりKabuGraph作成。売上高2,304.85億円のうち半導体関連装置1,680.90億円・サービス586.46億円・その他の製品37.47億円。サービスは販売した装置の保守契約・都度契約に基づく役務収入

製品別売上高推移

出典:レーザーテック 2024〜2026年6月期決算短信(品目別販売実績)よりKabuGraph作成。2026/6は実績(半導体関連装置△17.2%、サービス+36.5%)。2027年6月期の会社予想は売上高2,900億円(+25.8%)

レーザーテックは会計上は単一セグメント報告ですが、製品カテゴリとしては半導体関連(EUVマスクブランクス検査装置「ABICS」シリーズ、アクティニックEUVパターンマスク検査装置「ACTIS」シリーズ、DUVマスク検査装置等)、FPD関連(フォトマスク検査装置)、レーザー顕微鏡で構成されます。売上・利益のほぼ全てを半導体関連が占めています。

EUVマスク検査装置の仕組みと独占的地位

レーザーテックの中核製品はEUVマスクブランクス検査装置「ABICS」シリーズとEUVパターンマスク検査装置「ACTIS」シリーズです。なぜこれらの装置が「世界で唯一」なのか、半導体製造の仕組みから解説します。

出典:レーザーテック 公式サイト 製品ページ

フォトマスクとマスクブランクス

半導体製造では、回路パターンが刻まれた「フォトマスク」に光を当て、ウェハ上にパターンを転写します。フォトマスクの元となる基板が「マスクブランクス」です。EUVリソグラフィでは13.5nmという極めて短い波長の光を使うため、マスクブランクスの表面にナノメートル単位の微小な欠陥があるだけでパターン不良の原因になります。

EUVマスク検査装置 — 世界シェア100%

EUVマスクブランクスの欠陥検査を担うのは「ABICS」シリーズ(E120/E320)です。パターン形成後のEUVマスク検査にはアクティニックEUVパターンマスク欠陥検査装置「ACTIS」シリーズが使われ、両者は検査対象が異なります。いずれもEUVマスクの欠陥を量産レベルで検出できる世界で唯一の装置です。装置1台あたりの価格は数十億円規模とみられ、TSMC・サムスン電子・インテルなどEUVリソグラフィを使用する世界中のファブに納入されています。

High-NA EUV — 次世代の成長機会

ASMLが開発した次世代EUV露光装置「High-NA EUV」は、開口数(NA)を0.33から0.55に引き上げ、2nm以下のさらなる微細化を可能にします。High-NA世代ではマスクの許容欠陥がさらに厳しくなるため、レーザーテックの検査装置の必要性がさらに高まり、新型装置の需要が発生します。インテルは2024年に業界初の商用High-NA EUV露光装置を米オレゴン州の開発拠点に導入し、2026年7月にはIntel 18Aプロセスの一部レイヤーでHigh-NA EUVを用いた量産出荷を開始しました(出典:ASML プレスリリース(2026年7月15日))。

受注サイクルの特殊性

EUVマスク検査装置は1台数十億円の高額装置であり、顧客の新ファブ建設や技術世代の切り替えタイミングに集中して受注が発生します。そのため受注高は年度によって大きく変動します。受注高は2025年6月期の1,052億円を底に、2026年6月期は2,375億円へ回復しました(半導体関連装置は1,722億円、+208.5%)。一方、期末の受注残高は3,230億円(うち半導体関連装置3,013億円)と前期末比+2.2%の横ばいにとどまり、ピークだった2024年6月期末の4,622億円からは3割減の水準です。

回復した受注高がほぼ同額の売上高(2,305億円)に置き換わった形で、会社は2027年6月期に売上高2,900億円(+25.8%)・営業利益1,250億円(+18.8%)の増収増益を計画しています。受注はさらに伸びる見通しで、会社は2026年10月30日、2027年6月期の受注高の見通しを期初想定の3,000〜4,000億円から4,000〜5,000億円に引き上げました。マスク欠陥検査装置のACTIS(EUV光で検査)・MATRICS(EUV・DUVマスク向け)を中心に需要が拡大しているためで、実現すれば2022年6月期の3,237億円を上回り過去最高になります(出典:レーザーテック 2027年6月期 第1四半期 決算説明会資料 p.11)。

業績推移と財務分析

レーザーテックは2015年6月期から2025年6月期まで11期連続で最高益を更新する驚異的な成長を遂げてきました。2026年6月期は受注サイクルの谷間で減収減益となり、この連続最高益が途切れましたが、基本的な事業構造は変わっていません。

通期業績推移(売上高・営業利益・営業利益率)

出典:決算短信・有価証券報告書・IR資料よりKabuGraph作成。2026/6は受注サイクルの谷間で減収減益となり、11期連続最高益が途切れた

2026年6月期の売上高は2,305億円(前期比-8.3%)、営業利益は1,053億円(同-14.3%)と減収減益となりました。ただし、営業利益率は45.7%と依然として高水準を維持しており、収益基盤の底堅さが確認できます。減収の主因は受注高の急減であり、コスト構造が悪化したわけではありません。

会社は2027年6月期に売上高2,900億円・営業利益1,250億円・経常利益1,250億円・純利益900億円(前期比+16.2%、EPS1,003.27円)を予想しています。純利益900億円は2025年6月期の846.5億円を上回る水準で、達成すれば1期で最高益に復帰する計算です。

2027年6月期第1四半期(2026年7〜9月の3か月)は、売上高404億円(前年同期比-25.5%)、営業利益158億円(同-41.0%)、純利益107億円(同-43.7%)の減収減益で、営業利益率は39.1%(前年同期49.3%)でした。会社は売上が概ね当初の想定どおりに進んでいるとして、8月6日に公表した通期予想(営業利益率43.1%)を据え置いています。なお今期はMATRICSの性能改善に伴って採算の低い装置を複数台計上する予定で、売上総利益率に響くものの、通期予想は変えず来期の業績にも影響しないと会社は説明しています(出典:レーザーテック 2027年6月期 第1四半期決算短信、決算説明会資料 p.3〜4)。

EPS・配当金の推移

EPS・1株配当金の推移

出典:決算短信・有価証券報告書・IR資料よりKabuGraph作成。配当性向は概ね35%で安定。2026/6は減益でも配当据え置き。2020/6の配当は期中の株式分割(2020年1月、1:2)後の株数基準に換算(中間31円→15.5円+期末27円)

配当方針は配当性向35%を基準としています。2026年6月期はEPSが863円に減少したにもかかわらず、配当は前期と同額の329円を維持(配当性向38.1%)しており、減配を回避する姿勢が見られます。2027年6月期は年間351円(+22円)への増配を計画しており、配当性向35.0%の基準に復帰する見込みです。

配当に加えて、2026年6月期には取締役会決議に基づく自己株式の取得を120億3百万円(560,600株)実施しました。配当の据え置きと合わせ、減益期でも株主還元を維持した形です。

バランスシートの健全性

2026年6月期の自己資本比率は73.3%、ROE(自己資本当期純利益率)は33.9%と高水準です。従業員数は1,335名(グループ全体、2026年6月期末)で、この少数精鋭で2,305億円の売上を生み出しており、一人あたり売上高は約1.7億円と極めて高い生産性を誇ります(2026年6月期の売上高を同期末の人員で割った概算)。有利子負債はゼロの無借金経営であり、財務体質は盤石です(出典:レーザーテック 2026年6月期決算短信、レーザーテック ESGデータ(人的資本))。

投資家が注目すべきポイント

強み① EUVマスク検査の絶対的独占

EUVマスクブランクス検査装置で世界シェア100%は、半導体装置業界でも他に類を見ない独占的地位です。EUVリソグラフィはTSMC・サムスン・インテルの最先端プロセス(3nm以下)に不可欠であり、EUV半導体が製造される限り、レーザーテックの装置は代替不可能です。検査感度、スループット、信頼性のすべてで競合(KLA)に対する優位性を維持しています。

強み② 半導体装置業界トップクラスの利益率

2025年6月期の営業利益率48.8%は半導体装置業界でトップクラスです。独占的なポジションが価格交渉力を支え、高い付加価値を維持しています。減益の2026年6月期でも45.7%を維持しており、構造的な高収益体質が確認できます。ROE33.9%(2026年6月期。2025年6月期は46.9%)も日本の装置メーカーの中でトップクラスの水準です。

強み③ High-NA EUVが中長期の成長を支える

ASMLのHigh-NA EUV露光装置の導入が始まっており、マスクの欠陥管理がさらに厳しくなることでレーザーテックの新型検査装置への需要が発生します。High-NA世代では露光回数の増加やマスク面積の変更が見込まれ、マスク検査装置の市場自体が拡大する可能性があります。


リスク① 受注サイクルの大きな変動

2025年6月期の受注高は前期比61.4%減の1,052億円に急減し、その影響で2026年6月期は減収減益となりました。受注高は2026年6月期に2,375億円へ回復し、会社は2027年6月期に4,000〜5,000億円を見込んでいますが、EUVマスク検査装置は1台数十億円の高額装置であり、顧客の設備投資タイミングに業績が大きく左右されます。今回の回復が一過性にとどまれば、2028年6月期以降に業績が再び落ち込むリスクがあります。

リスク② KLAの競合参入リスク

米KLA Corporationは半導体のプロセス制御(検査・計測)装置の大手サプライヤーです。EUVマスク検査分野では現時点でレーザーテックの独占が続いていますが、KLAがe-beam方式やアクティニック検査方式で量産対応レベルの装置を開発した場合、シェア100%の独占が崩れるリスクがあります。

リスク③ PER44倍の高バリュエーション

2026年10月30日終値(同日15時45分の決算発表前)の株価37,700円はPER43.7倍・PBR13.7倍(時価総額約3.6兆円)と、成長期待が大きく織り込まれた水準です。会社予想EPS1,003.27円に対しても37.6倍です。10月は9日に48,560円(PER56倍)まで上がった後、15日に1日で13.6%下げ、30日も8.8%安と、株価の振れ幅も大きくなっています。PER40倍台は今後の受注回復と利益成長を前提とした評価であり、回復が遅れた場合の株価調整リスクは大きいと言えます(PERは2026年6月期実績EPS862.99円、PBRは同BPS2,753.84円で算出)。

まとめ

レーザーテックは、EUVマスクブランクス検査装置で世界シェア100%を握る「世界で唯一の企業」です。EUVリソグラフィを使う最先端半導体の製造に不可欠な存在であり、その独占的地位は当面揺るがないと見られます。

2026年6月期は受注サイクルの谷間で11期連続最高益が途切れましたが、営業利益率45.7%、ROE33.9%という収益力は健在です。中長期的にはHigh-NA EUVの本格導入が新たな成長ドライバーとなる可能性があります。

投資判断のポイントは、①受注回復の持続性、②KLAの競合参入リスク、③PER44倍の高バリュエーションの妥当性の3点です。受注サイクルはすでに底を打ち、会社は2027年6月期の受注を4,000〜5,000億円と見込んでいます。第1四半期(7〜9月)は減収減益でしたが、据え置いた通期の増収増益(売上高2,900億円)を達成できるか、そしてHigh-NA EUV向けの大型受注につながるかが、投資検討の判断材料となるでしょう。

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レ
6920電機・精密

レーザーテック

光応用技術を核とする半導体検査・計測装置の専業メーカー。EUVリソグラフィ用マスクブランクス欠陥検査装置で世界シェアほぼ100%を握り、最先端半導体の微細化を支える不可欠な検査ソリューションを提供する。フォトマスク欠陥検査装置やウエハ外観検…

コラム著者・編集者

K

KabuGraph編集部

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