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ディスコ(6146)の企業分析|ダイシングソー世界シェア80%、営業利益率42%の精密加工装置メーカー

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ディスコ(6146)は、半導体ウェハの「切る・削る・磨く」精密加工装置で世界シェア70〜80%を握る日本の半導体装置メーカーです。1937年に砥石メーカーとして創業し、現在では半導体製造の後工程に不可欠なダイシングソー(世界シェア約80%)とグラインダ(同約70%)で圧倒的な独占的地位を確立しています。

2026年3月期は売上高4,369億円、営業利益1,850億円で6期連続の過去最高益を更新。AI半導体向けHBM(High Bandwidth Memory)の製造急増が追い風となり、2027年3月期Q1(4-6月)も売上高+27%、営業利益+42%と成長が加速しています。

この記事では、ディスコの独占的ポジションと製品構成、独自の「Will」経営システム、業績推移、投資判断のポイントを個人投資家の視点から解説します。

会社概要 — 「切る・削る・磨く」で世界を独占

ディスコ(DISCO Corporation)は1937年に砥石の製造会社として広島で創業しました。その後、砥石技術を応用した精密加工装置へと事業を拡大し、現在では半導体ウェハの切断(ダイシング)、研削(グラインディング)、研磨(ポリッシング)に用いる装置と消耗品の両方を自社で開発・製造し、一体で提供する垂直統合型の専業メーカーです。

項目

内容

会社名

株式会社ディスコ(DISCO Corporation)

証券コード

6146(東証プライム)

本社

東京都大田区大森北二丁目13番11号

代表執行役社長

関家 一馬

従業員数

5,547名(連結、2026年3月末。臨時従業員1,846名を除く)

業種

機械(精密加工装置)

決算期

3月

時価総額

約6.14兆円(2026年9月1日時点)

ディスコの事業は会計上は単一セグメント(精密加工装置・精密加工ツールの製造販売)ですが、製品カテゴリとしては精密加工装置と精密加工ツール(消耗品)の2つに大別されます。2026年3月期の出荷額ベースの構成比は、精密加工装置62%、精密加工ツール21%、その他(部品・修理等)16%です(四捨五入のため合計は100%になりません)。

製品別構成比(2026年3月期・出荷額ベース)

出典:ディスコ 2025年度決算説明会資料(2026年4月22日)「連結 製品別 QoQ YoY」。出荷額ベースの通期構成比。四捨五入のため合計は100%にならない

精密加工装置は、ダイシングソー(ウェハ切断)、グラインダ(ウェハ薄化)、ポリッシャ(研磨)、レーザーソーなどで構成されます。精密加工ツールは、装置に取り付けるブレード(切断砥石)やホイール(研削砥石)などの消耗品です。装置の設置台数が増えるほどツールの需要も比例して増加するストック型収益構造が、高収益の源泉となっています。

通期売上高推移

出典:決算短信・有価証券報告書・IR資料よりKabuGraph作成。2026/3まで6期連続で過去最高を更新

製品と競争力を理解する

半導体製造は大きく「前工程」(回路形成)と「後工程」(切断・パッケージング・テスト)に分かれます。ディスコは後工程の最初のステップである「ウェハの薄化→切断→研磨」を担う装置メーカーとして、世界的な独占的ポジションを確立しています。

出典:ディスコ 公式サイト 製品情報

ダイシングソー — 世界シェア約80%

ダイシングソーは、回路が形成されたウェハを個々の半導体チップ(ダイ)に切り分ける装置です。高速回転するダイヤモンドブレード(厚さ数十μm)でウェハを切断します。ディスコはこの分野で世界シェア約80%を占めており、TSMC・サムスン・インテルをはじめ世界中の半導体工場がディスコの装置を使用しています。なおディスコ自身は製品別の市場シェアを開示しておらず、第87期有価証券報告書に「高シェアを背景に数多くのテストカットを受託する」と記載があるにとどまります。本記事のシェアは業界推計値です。

グラインダ — 世界シェア約70%

グラインダは、ウェハの裏面を研削して薄くする装置です。スマートフォン向けの薄型パッケージや、HBMのように複数のダイを積層するアドバンストパッケージングでは、チップを極限まで薄くする必要があります。ディスコのグラインダは世界シェア約70%を占め、特にHBM向けでは1枚のDRAMダイを50μm以下まで薄化する高精度加工が求められます。

精密加工ツール — ストック型収益の源泉

ディスコの強みは装置だけでなく、ブレード(切断砥石)やホイール(研削砥石)などの消耗品も自社開発・製造している点です。装置が稼働する限りブレードやホイールは消耗するため、世界中に設置されたディスコ装置の台数が増えるほどツール売上が積み上がるストック型の収益構造です。ツール事業の利益率は装置事業よりも高く、全体の高収益を支えています。

独自の「Will」経営システム

ディスコの経営上の最大の特徴は、社内通貨「Will」を用いた独自の管理会計・自律分散型経営です。同社は2003年に部門単位の「部門Will会計」を、2011年には従業員一人ひとりに落とし込んだ「個人Will会計」を導入しました。

社内業務による収入や人件費・設備費といった業務に関わるあらゆる事項にWill建ての金額が設定され、仕事は上司の指示・命令で配分されるのではなく、Willで値付けされた案件を社員が自分の意志で選んで取り組む形になっています。同社はこの仕組みが働きがいやパフォーマンスの向上、意思決定のスピードアップを促し、生産性の向上につながっていると説明しています(出典:ディスコ Corporate Report 2020)。連結約5,500名の少数精鋭で営業利益率42%を実現する高い生産性の背景にある仕組みです。

競合比較

分野

ディスコ

主要競合

ダイシングソー

シェア約80%

東京精密(約10%)、ADT(イスラエル)

グラインダ

シェア約70%

東京精密、CETC(中国)

ブレード・砥石

シェア約70%

K&S(米国)、ADT(イスラエル)、旭ダイヤモンド工業

シェアは業界推計値。ディスコは製品別の市場シェアを開示しておらず、第87期有価証券報告書に「高シェア」と記載があるにとどまります。

業績推移と財務分析

ディスコは2021年3月期以降、6期連続で売上高・営業利益の過去最高を更新しています。AI半導体向けの旺盛な需要に加え、消耗品ビジネスの安定的な成長が業績を下支えしています。

通期業績推移(売上高・営業利益・営業利益率)

出典:決算短信・有価証券報告書・IR資料よりKabuGraph作成。ディスコは通期業績予想を開示していないため、2027年3月期は図示していない(同社が公表しているのは第2四半期累計予想の売上高2,428億円・営業利益1,049億円のみ)

注目すべきは営業利益率の持続的な改善です。2020年3月期の25.8%から2026年3月期には42.3%まで上昇しました。これは高付加価値製品(AI・HBM向け装置)へのシフトと、消耗品売上の増加が主因です。2027年3月期Q1の営業利益率は42.9%とさらに上昇しています。なおディスコは通期業績予想を開示しておらず、2027年3月期については第2四半期累計予想(売上高2,428億円、営業利益1,049億円)のみが公表されています。

EPS・配当金の推移

EPS・1株配当金の推移

出典:決算短信・有価証券報告書・IR資料よりKabuGraph作成。EPS・配当金は株式分割(2023年4月、1:3)調整済み

なおディスコの配当方針は業績連動色が強く、次の3本立てです(出典:2025年度決算説明会資料)。

  • 業績連動配当:中間・期末の年2回、連結半期純利益の25%を配当

  • 安定配当:半期10円(年間20円)を維持

  • 追加配当:配当・法人税支払い後の現預金残高が予定必要資金額を超えた場合、超過額の3分の1を目処に上乗せ

2026年3月期の期末配当376円のうち192円がこの追加配当で、上のグラフの配当性向が25%ではなく2023年3月期以降36〜40%程度で推移しているのはこのためです。半期ごとに決める方式のため通期の配当予想は開示しておらず、2026年3月期決算短信でも2027年3月期の配当は「現時点において配当予想額は未定です」とされ、公表されているのは第1四半期決算時点の中間配当予想171円のみです(出典:2026年3月期決算短信2026年度第1四半期決算説明会資料)。

ROEと資本効率

2026年3月期のROEは25.1%(決算短信ベース、前期比2.5ポイント低下)と高水準です。自己資本比率は78.9%と極めて健全で、有利子負債はほぼゼロの実質無借金経営です。高い利益率を自己資本の蓄積に充てながらも、ROE20%以上を維持できるのは、事業の収益性の高さを証明しています。

投資家が注目すべきポイント

強み① ダイシング・グラインディングの独占的シェア

ダイシングソーで世界シェア約80%、グラインダで約70%という独占的地位は、1937年の創業以来80年以上にわたる砥石・加工技術の蓄積によるものです。装置と消耗品(ブレード・砥石)を一体で提供する垂直統合モデルは、顧客にとってのスイッチングコストを極めて高くしています。半導体の微細化・高集積化が進むほど要求精度が上がり、ディスコの技術優位性が拡大する構造です。

強み② AI・HBMがダイシング需要を倍増させる構造

AIデータセンター向けのHBMは、DRAMダイを極薄(50μm以下)に研削し、8〜16層に積層する構造です。通常のDRAMと比較してグラインディング・ダイシングの処理量が数倍に増加するため、ディスコは「半導体1個あたりの加工工程数の増加」という構造的な需要増の恩恵を受けています。2027年3月期Q1の営業利益は前年同期比+42%と、AIスーパーサイクルの恩恵が明確に現れています。

強み③ 装置+消耗品モデルが生む42%の営業利益率

営業利益率42%は半導体製造装置メーカーの中でもトップクラスです。装置販売(フロー型)と消耗品販売(ストック型)の組み合わせにより、景気後退期でも消耗品収益が業績の下支えとなります。さらに、連結約5,500名という少数精鋭の組織と「Will」経営システムが、高い生産性を維持しています(従業員1人当たり売上高は約7.9億円、2026年3月期・KabuGraph算出)。


リスク① 半導体設備投資サイクルの反転

消耗品がバッファになるとはいえ、装置事業は半導体設備投資サイクルに連動します。実際に2018/3→2020/3の2期で売上高が約16%減少(2019/3は前期比−11.9%、2020/3は−4.4%)した実績があります。現在のAI投資ブームが一巡した場合、装置の新規受注が急減するリスクは無視できません。

リスク② PER45.3倍の高バリュエーション

2026年9月1日の終値56,590円ベースでPER45.3倍・PBR10.5倍(いずれも2026年3月期実績のEPS・BPSで算出)と、成長期待が大きく織り込まれた水準です。高いROEと利益率で正当化される面はあるものの、成長率の鈍化やサイクルのピークアウトが意識された場合、株価の大幅調整リスクがあります。

リスク③ 新しい切断技術の台頭

レーザーダイシングやプラズマダイシングなど、従来のブレードダイシングに代わる新技術が開発されています。ディスコ自身もレーザーソーを製品化しており、2026年3月期の出荷額構成比ではブレードダイサ16%に対しレーザソー15%と、すでに同程度の規模です(2025年度決算説明会資料)。一方で、仮に非ブレード方式が主流になれば、消耗品(ブレード)ビジネスの収益基盤が脅かされる可能性があります。ただし、現時点ではブレードダイシングのコスト優位性と信頼性が圧倒的であり、置き換えは限定的と見られています。

まとめ

ディスコは、半導体ウェハの「切る・削る・磨く」精密加工装置で世界シェア70-80%を握る、後工程の隠れた王者です。

装置と消耗品を一体で提供する垂直統合モデルと、連結約5,500名の少数精鋭で営業利益率42%を実現する「Will」経営システムは、他の装置メーカーには真似できない独自の競争力です。AIデータセンター向けHBMの急増は、ダイシング・グラインディング工程の処理量を構造的に押し上げており、2027年3月期以降もさらなる成長が期待できます。

一方、PER45.3倍(2026年9月1日時点)の高バリュエーション、半導体投資サイクルへの感応度、新技術の台頭リスクは投資判断に際して考慮すべき要素です。AI半導体向けのHBM・アドバンストパッケージング需要がいつまで加速を続けるかが、今後の株価を左右する最大のポイントとなるでしょう。

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6146機械

ディスコ

ディスコは半導体・電子機器製造向けの精密加工機械メーカー。ダイシング・グラインド・研磨機で半導体ウェハー・電子部品の微細加工を実現。超精密・高速化・自動化で競争力を保有。

コラム著者・編集者

K

KabuGraph編集部

KabuGraph編集部は、投資情報の発信と株式分析ツールの開発に携わるチームです。日本株・米国株の事業分析から、投資に役立つ情報をわかりやすくお届けします。

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