NTT(9432)の企業分析|IOWN×データセンター×15期連続増配、売上14.4兆円の通信インフラ巨人が狙うAI時代の成長
2027年3月期 第2四半期決算まで反映

NTT(9432)は、売上高14.4兆円・従業員約34万人を擁する日本最大の通信インフラ企業グループです。NTTドコモの携帯通信事業を基盤に、NTTデータのグローバルIT事業、そして次世代通信基盤「IOWN(アイオン)」構想で成長を図っています。
AI時代の到来に伴い、データセンターの総受電容量を2030年度までに3,000MW(3GW)へ拡張する方針を示すなど、AI需要の取り込みを加速しています。また15期連続増配を達成し、配当利回り3.2%(2026年11月4日終値164円、2025年度実績配当5.3円ベース)の高配当銘柄としても個人投資家に人気です。2026年度上期(2026年4〜9月の累計)は前年のデータセンター譲渡益の反動で営業減益でしたが、通期予想は11月4日に上方修正しました。
この記事では、NTTの事業構造、IOWN構想とデータセンター戦略、業績推移と投資判断のポイントを解説します。
この記事の内容(目次)
会社概要 — 日本最大の通信インフラグループ
NTT株式会社(2025年7月に日本電信電話株式会社から商号変更)は1985年に民営化された旧国営通信企業を起源とする日本最大の通信グループです。NTTドコモ(携帯通信)、NTT東日本・西日本(固定通信)、NTTデータ(グローバルIT)を主要子会社に持ち、通信インフラからITサービスまで幅広く事業を展開しています。
項目 | 内容 |
|---|---|
会社名 | NTT株式会社(NTT, Inc.。2025年7月1日に日本電信電話株式会社から商号変更) |
証券コード | 9432(東証プライム) |
本社 | 東京都千代田区大手町一丁目5番1号 |
代表取締役社長 | 島田 明 |
従業員数 | 344,196名(連結、2026年3月31日時点) |
決算期 | 3月 |
時価総額 | 約14.9兆円(2026年11月4日終値164円×発行済株式総数905.5億株、自己株式を含む。自己株式96.6億株(2026年9月末)を除くと約13.3兆円。KabuGraph算出) |
セグメント別営業収益(2026年3月期実績)
セグメント別営業収益の推移
2025年度のセグメント利益は、総合ICT事業(ドコモ含む)が9,421億円(前期比△7.7%)とグループ最大ながら、2024年度(△10.8%)に続く2期連続の減益となりました。一方、グローバル・ソリューション事業(NTTデータ含む)は4,882億円(同+50.7%)と大きく伸びましたが、これにはデータセンター資産の譲渡益1,295億円が含まれ、除くと約3,588億円(同+10.8%、KabuGraph算出)です(出典:NTT 2025年度決算短信 p.24)。
IOWN構想とデータセンター戦略
IOWN構想 — 光電融合で通信の革命を目指す
IOWN(Innovative Optical and Wireless Network)は、NTTが推進する光電融合技術を核とした次世代通信基盤構想です。目標は消費電力100分の1、伝送容量125倍、遅延200分の1の実現であり、AI時代の膨大なデータ処理需要に対応する技術として世界的に注目されています。
データセンター戦略 — 受電容量3,000MWへ
NTTグループのデータセンター総受電容量は約2,000MW(NTT 2025年度決算短信 p.5)で国内No.1・世界No.3の規模です。すでに2,700MW超の拡大を計画済みで、2030年度までに3,000MW(3GW)へ拡張する方針です。AI処理需要の爆発的な増大に対応するため、国内外でデータセンターの新設・拡張を加速しています。NTTデータを中心としたグローバルソリューション事業の成長ドライバーとして位置づけられています。
グローバルIT事業 — NTTデータの成長
NTTデータを中核とするグローバル・ソリューション事業は、2025年度の営業収益5兆46億円(前期比+7.9%、セグメント小計ベース。外部顧客ベースでは4兆7,547億円)でNTTグループの成長を牽引する存在で、2026年度上期(4〜9月累計)も2兆6,168億円(前年同期比+10.9%)と増収でした。2022年のNTT Ltd.との統合により、NTTデータグループは世界70カ国以上でITサービスを提供するグローバル企業に進化しました。DXコンサルティング、クラウドサービス、AIソリューションなどを提供しています(出典:NTT 2025年度決算短信、NTTデータグループ プロフィール、NTTデータグループ 2026年度第2四半期決算説明資料 p.6)。
NTTドコモ — 安定した利益基盤
総合ICT事業(NTTドコモ含む)はセグメント利益9,421億円でグループ最大の利益源泉ですが、2024年度の前期比10.8%減に続き、2025年度も同7.7%減と2期連続の減益です。国内携帯市場は飽和しつつありますが、法人向けDX・金融・スマートライフ事業など非通信収入の拡大に注力しています。2026年度上期(4〜9月累計)は金融を中心とするスマートライフの伸びで4,821億円(前年同期比+1.5%)と増益でした(出典:NTTドコモ 2026年度第2四半期決算について p.4・5)。
業績推移と財務分析
NTTの業績は通信事業の安定した基盤収益により、売上高は緩やかな増収トレンドが続いています。2026年3月期は売上高14.4兆円と過去最高を更新し、営業利益も1兆7,062億円(前期比+3.4%。データセンター譲渡益1,295億円を含む)と増益に転じましたが、2024年3月期のピーク(1兆9,229億円)にはまだ届いていません。
2026年度上期(2026年4〜9月の累計)は営業収益7兆3,622億円(前年同期比+8.7%)、営業利益8,301億円(同△12.2%)と増収減益で、当社帰属中間利益は5,002億円(同△16.0%)、EPSは6.15円でした。増収は総合ICT事業(+2,494億円。ドコモSMTBネット銀行(旧住信SBIネット銀行)の連結を含む)とグローバル・ソリューション事業(+2,563億円)が中心です。
減益の主因は、前年同期に計上したデータセンター譲渡益1,295億円の反動で、営業利益の減少額1,150億円を上回ります。グローバル・ソリューション事業は1,248億円減り、NTTデータグループは「DC譲渡益1,295億円を除くと増益」と説明しています。譲渡益を除いた連結の営業利益は約8,156億円から8,301億円へ+1.8%です(KabuGraph算出。当期の関係会社株式売却益126億円は除いていません。出典:NTT 2026年度第2四半期決算について p.6、NTTデータグループ 2026年度第2四半期決算説明資料 p.4・7)。
通期の会社予想は11月4日に上方修正しました。営業収益15兆600億円→15兆800億円、営業利益1兆7,100億円→1兆7,300億円、当社帰属当期利益9,800億円→9,940億円、EPS 12.1円→12.2円で(修正前は5月8日公表)、理由は「総合ICT事業セグメントにおける、足元の販売好調に伴う収入の増」です。年間配当5.4円は据え置きで、修正後も当社帰属当期利益は前期比△4.1%の計画です。モバイルネットワークの品質改善のため、設備投資も2兆4,300億円→2兆4,730億円に増やします(出典:NTT 2026年度第2四半期決算短信 p.2、NTT 2026年度第2四半期決算について p.8)。
2026年度上期(4〜9月累計) | 実績 | 前年同期比 |
|---|---|---|
営業収益 | 7兆3,622億円 | +8.7% |
営業利益 | 8,301億円 | △12.2% |
当社帰属中間利益 | 5,002億円 | △16.0% |
セグメント利益:総合ICT | 4,821億円 | +1.5% |
セグメント利益:グローバル・ソリューション | 1,442億円 | △46.4% |
セグメント利益:地域通信 | 1,882億円 | +0.4% |
通期業績推移(営業収益・営業利益・営業利益率)
EPS・配当金の推移(分割後基準)
EPS・1株配当金の推移(分割後基準)
NTTは15期連続増配を達成しており、2026年度(2027年3月期)は中間配当2.7円を決め、年間5.4円(前期比+0.1円、予想は据え置き)で16期連続増配の予定です。配当利回りは2026年11月4日終値164円(13時30分の決算発表後の株価で、前日比△6.0%)に対して実績配当5.3円ベースで3.23%、2026年度予想配当5.4円ベースで3.29%です。配当性向は2024年3月期までの30%台半ばから直近は40%台前半へ切り上がっています。
配当に加えて自己株式取得も続けており、2026年5月8日には上限2,000億円・14億株(自己株式を除く発行済株式数の1.72%)の取得枠(期間2026年5月11日〜2027年3月31日、市場買付)を決議しました。2026年10月末までに累計6億4,911万株・約1,049億円を取得しています。会社は「配当政策、自己株式取得ともに従来の方針を継続」としており、継続的な増配と機動的な自己株式取得の組み合わせが株主還元の基本です(出典:NTT ニュースリリース(2026年5月8日)、NTT「自己株式の取得状況に関するお知らせ」(2026年11月2日)、NTT 2025年度決算説明会資料 p.27)。
投資家が注目すべきポイント
強み① 15期連続増配と安定した配当利回り
NTTの最大の魅力は15期連続増配と3.2%の配当利回りです(2026年11月4日終値164円、実績配当5.3円ベース。2026年度予想5.4円ベースでは3.29%)。通信事業を中心とする連結EBITDA 3兆4,233億円(2025年度)の安定した稼ぐ力が増配の原資であり、業績が多少悪化しても増配を維持する実績があります。ただしFCF(営業CF+投資CF)は2024年度3,644億円・2025年度4,618億円で、2025年度は銀行の連結影響を含みます。銀行の連結影響を除く会社集計では2025年度△4,039億円(出資等を含む)、2026年度上期(4〜9月累計)△4,316億円(前年同期△2,489億円)で、配当と自己株式取得はFCFの範囲に収まっていません(出典:NTT 2025年度決算説明会資料 p.34、NTT 2026年度第2四半期決算について p.18)。
2023年の1:25株式分割により少額投資も可能になり、個人投資家の裾野が広がっています。
強み② データセンター拡大でAI需要を取り込む
2030年度までにデータセンター受電容量を3,000MW(3GW)へ拡張する投資計画は、AI時代の通信インフラ企業としての成長シナリオを示しています。NTTデータのグローバルIT事業と組み合わせることで、データセンター+ITサービスのワンストップソリューションを提供できる強みがあります。
強み③ IOWN構想の技術的ポテンシャル
IOWN構想が実現すれば、通信・コンピューティングの消費電力を劇的に削減しつつ処理能力を大幅に向上させるブレークスルーとなります。約800億円規模を見込むIOWN AIファンドの組成により技術エコシステムの構築を加速しており、長期的な企業価値向上のカタリストとして注目されています。
リスク① 国内通信事業の成長鈍化
NTTグループ最大の利益源泉であるドコモの携帯通信事業は、国内市場の飽和と楽天モバイル参入による競争激化で構造的な成長余地が限られます。非通信収入の拡大が必要ですが、まだ通信料収入の代替には至っていません。実際にNTTは2026年5月、既存分野の事業環境変化により連結EBITDA4兆円の達成時期を2027年度から2030年度へ3年先送りしました(2025年度実績3兆4,233億円)(出典:NTT 2025年度決算説明会資料)。ドコモは2026年度上期決算で、個人名義のモバイル通信サービス収入の減収幅が46億円に縮み、今年度は増収へ転じる見通しを示しましたが、上期は販促強化で費用も276億円増えています(出典:NTTドコモ 2026年度第2四半期決算について p.5・11)。
リスク② IOWN構想の商業化タイムライン
IOWNは革新的な構想ですが、光電融合デバイスの実用化・コスト低減・エコシステム構築には長い時間軸が必要です。短期的な業績へのインパクトは限定的であり、投資家は長期的な視点での評価が求められます。
リスク③ 完全子会社化と銀行の連結で膨らんだ有利子負債
2026年3月期は総資産が46.7兆円(前期30.1兆円)、有利子負債残高が15.7兆円(同10.0兆円)へ拡大し、株主資本比率は34.0%から20.8%へ低下しました。有利子負債が5.7兆円増えた最大の要因は2025年度に実施したNTTデータグループの完全子会社化(株式取得対価約2.4兆円、借入で調達)で、次いで住信SBIネット銀行(2026年8月にドコモSMTBネット銀行へ商号変更)の連結(同行の有利子負債約1.6兆円)です。ここにデータセンター受電容量を約2,000MWから3,000MWへ拡張する計画などの設備投資(資産取得支出は2025年度2兆2,472億円、前年比+1,149億円)が重なります(出典:NTT 2025年度決算短信、NTT 2025年度決算説明会資料)。
2026年9月末には有利子負債が17.5兆円(金融事業を除くと14.9兆円)、株主資本比率が20.3%となりました。上期の増加約1.8兆円のうち約0.9兆円は金融事業で、データセンター事業は約0.1兆円です(内訳は会社の非監査の参考値)。上期(4〜9月累計)の金融費用も1,513億円(前年同期1,100億円)に増えています。会社は有利子負債/EBITDA倍率(金融事業除き)を2025年度の4.2倍から2030年度に3.5倍程度へ下げる方針ですが、投資回収までの期間中は利益率と財務健全性への圧迫が続くと予想されます(出典:NTT 2026年度第2四半期決算短信、NTT 2026年度第2四半期決算について p.17、NTT 2026年度第2四半期決算補足資料 PDF p.3・5)。
まとめ
NTTは、通信事業の安定した基盤収益を原資とする15期連続増配と3.2%の配当利回り(2026年11月4日終値、実績配当ベース)に加え、上限2,000億円の自己株式取得を組み合わせた株主還元が最大の投資魅力です。
IOWN構想とデータセンター拡大はAI時代における成長の種ですが、短期的な業績への寄与は限定的です。国内通信事業の成長鈍化という構造的な課題も抱えており、NTTデータのグローバルIT事業の拡大が成長のカギを握ります。2026年度上期(4〜9月累計)の営業利益は前年のデータセンター譲渡益の反動で12.2%減りましたが、譲渡益を除けば小幅増益(KabuGraph算出)で、通期予想はドコモの好調を受けて11月4日に上方修正されました。
安定配当+成長の種(IOWN・DC)を持つディフェンシブ銘柄として、長期保有に適したプロフィールです。PER13.0倍・PBR1.37倍(2026年11月4日終値164円、決算発表後。2026年3月期実績ベース)で、修正後の予想EPS 12.2円ではPER13.4倍です。同じ基準(2026年11月4日終値、2026年3月期実績。KabuGraph算出)のKDDI(15.3倍・2.11倍)、ソフトバンク(20.6倍・4.23倍)を下回る水準で、IOWN構想の商業化進捗がバリュエーション見直しのカタリストになるかが今後の注目ポイントです。
NTT
日本最大の通信グループ。NTTドコモによる携帯電話・5G・ブロードバンドの「総合ICT事業」、NTTデータグループによるシステムインテグレーション・データセンターの「グローバル・ソリューション事業」、NTT東日本・西日本による固定電話・「フ…










