網屋(4258)の企業分析|国産SIEM No.1「ALog」とSASE「Verona」で拡大するサイバーセキュリティ専業企業

網屋(4258)は、国産SIEMメーカーNo.1の「ALog」とフルマネージドSASE「Verona」を二本柱とするサイバーセキュリティ専業企業です。
2025年12月期は売上高59.4億円(前期比+24.5%)、営業利益10.5億円(同+99.8%)と5期連続増収増益かつ営業利益がほぼ倍増。営業利益率は前期11.0%から17.7%へ大幅改善しました。2026年12月期も売上高70.0億円(同+18.0%)、営業利益12.0億円(同+14.2%)と増収増益が続く会社予想です。
この記事では、網屋の2つの事業セグメントの仕組み、業績推移、SASE戦略、投資判断のポイントを、個人投資家の視点からわかりやすく解説します。
この記事の内容(目次)
会社概要 — サイバーセキュリティ専業の「国産メーカー」
網屋は1996年に設立されたサイバーセキュリティ専業企業です。ログ管理から始まりネットワークインフラまで領域を広げ、「セキュリティの製品やサービスを開発・製造・販売する総合セキュリティプロバイダ」を目指しています。2021年7月に東証マザーズ(現グロース)に上場しました。
項目 | 内容 |
|---|---|
会社名 | 株式会社網屋(AMIYA Corporation) |
証券コード | 4258(東証グロース) |
設立 | 1996年12月 |
上場 | 2021年7月(東証マザーズ)→ 2022年4月 東証グロース |
代表取締役社長 | 石田 晃太 |
本社 | 東京都中央区日本橋浜町 |
セクター | 情報・通信業 |
資本金 | 6,247万円(2025年9月末時点) |
「データ」と「ネットワーク」の二刀流セキュリティ
網屋のビジネスは大きくデータセキュリティ事業(ログ管理SaaS「ALog」を中心とする内部脅威対策)とネットワークセキュリティ事業(フルマネージドSASE「Verona」を中心とするネットワークインフラ)に分かれます。2025年12月期の売上構成はデータセキュリティが42%、ネットワークセキュリティが58%でした。
セグメント別売上構成比(2025年12月期)
通期業績推移(売上高・営業利益・営業利益率)
2つの事業を理解する
データセキュリティ事業 — 国産SIEM「ALog」

「ALog」は、網屋が自社開発する国産SIEMプラットフォームです。SIEM(Security Information and Event Management)とは、企業のIT環境全体からログを収集・分析し、サイバー攻撃や内部不正を検知するセキュリティ基盤のこと。デロイト トーマツ ミック経済研究所の調査で国産SIEMメーカーNo.1(「内部脅威対策ソリューション市場の現状と将来展望 2025年度」2026年3月発刊)の評価を受けています。
ALogの主な特徴は以下の3点です。
特許取得の翻訳技術 — 複雑なログデータを「誰が・いつ・何をしたか」のわかりやすい形式に自動変換。専門知識がなくてもセキュリティ監視が可能
AIによる異常検知 — 機械学習で通常の行動パターンを学習し、逸脱した振る舞いを自動検知。2026年7月にリリースされた新バージョン「ALog V2」でAI分析機能がさらに強化
圧縮課金によるコスト優位 — ログの保存容量ではなく圧縮後のデータ量で課金するため、海外の大手SIEMに比べてランニングコストを大幅に抑えられる
2024年4月に完全サブスクリプション型へ移行し、約18ヶ月で売上回復を達成。データセキュリティ事業のARRは前期比43.8%増と加速しています。契約数は6,500超、導入業界は20以上、継続率は99%(2026年1月末時点、網屋調べ)と堅調です。
指標 | 実績 |
|---|---|
国産SIEMシェア | No.1(デロイト トーマツ ミック経済研究所、2026年3月発刊) |
契約数 | 6,500超 |
導入業界 | 20以上 |
継続率 | 99%(2026年1月末時点) |
ネットワークセキュリティ事業 — Network All Cloud / Verona

Network All Cloudは、ネットワークの構築・運用・セキュリティをワンパッケージで提供するフルマネージドサービスです。日本企業が直面する「IT人材不足」「サイバー脅威の増加」「ネットワークの安定稼働」という3つの課題を、クラウドからエンジニアが一括対応する仕組みで解決します。シリーズ累計の契約数は5,900以上(2025年10月時点)に達しています。
Network All Cloudシリーズの中核となるのが、フルマネージドSASE「Verona」です。

SASE(Secure Access Service Edge)とは、ネットワークとセキュリティの機能をクラウド上で統合的に提供するアーキテクチャです。リモートワークの普及や多拠点展開に対応するため、従来のVPN・ファイアウォールに代わる新しいネットワーク基盤として注目されています。
また、クラウド型無線LAN/スイッチ/カメラの「Hypersonix」もNetwork All Cloudシリーズの一角を成し、店舗や拠点のネットワークインフラをクラウドから一元管理するサービスとして展開しています。
セグメント別売上高推移
業績推移と財務分析
5期連続増収増益、営業利益率は急改善
網屋は2021年12月期から2025年12月期まで5期連続の増収増益を達成しています。特に2025年12月期は売上高59.4億円(前期比+24.5%)に対し、営業利益は10.5億円(同+99.8%)と営業利益がほぼ倍増しました。ALogのサブスク転換期(2024年4月〜)を乗り越え、ストック収益が積み上がったことで利益率が大幅に改善しています。
決算期 | 売上高 | 営業利益 | 純利益 | EPS | 1株配当 |
|---|---|---|---|---|---|
2021/12 | 27.6億円 | 2.6億円 | 1.8億円 | 51.29円 | 0円 |
2022/12 | 29.9億円 | 2.6億円 | 2.3億円 | 57.14円 | 0円 |
2023/12 | 35.6億円 | 3.6億円 | 3.3億円 | 80.34円 | 0円 |
2024/12 | 47.7億円 | 5.3億円 | 3.8億円 | 93.38円 | 0円 |
2025/12 | 59.4億円 | 10.5億円 | 7.5億円 | 90.84円 | 15.73円 |
2026/12(予) | 70.0億円 | 12.0億円 | 8.5億円 | 101.75円 | 20円 |
2026年12月期2Q — 上半期は計画を上回るペース
2026年12月期の第2四半期累計(2026年1〜6月)は、売上高34.0億円(前年同期比+23.7%)、営業利益6.4億円(同+31.3%)と好調に推移しています。通期予想の営業利益12.0億円に対する進捗率は53.2%と上半期時点で半分を超えており、順調なペースです。
ROE30%超の高い資本効率
2025年12月期のROE(自己資本利益率)は30.3%(前期比+10.7ポイント上昇)と、グロース市場の中でもトップクラスの資本効率です。自己資本比率は低めですが、これはサブスク型ビジネスの前受金(契約負債)が約20億円に達しており流動負債の半分近くを占めるためで、有利子負債の水準自体は限定的です。

トレンドマイクロ(4704)の企業分析|10期連続増収でも一転減益、AI投資が直撃した2026年12月期の実態
トレンドマイクロ(4704)のサイバーセキュリティ事業の構造、10期連続増収の実績、AI投資コスト増による減益の背景を解説します。
投資家が注目すべきポイント
成長ドライバー
1. サイバーセキュリティ市場の構造的成長
日本のサイバーセキュリティ市場は、ランサムウェア攻撃の急増、経済安全保障推進法の施行、政府のセキュリティ格付け制度の本格始動など、構造的な追い風が続いています。特にSIEMの導入義務化が進む重要インフラ・防衛分野は、純国産であることが強みになります。
2. ARR成長と解約率1%の安定基盤
全社ARRは前期比29.3%増で成長を続けており、解約率はALog・Network All Cloudともに1%台を維持。サブスク比率の上昇に伴い、売上のストック化と営業利益率の改善が同時に進行しています。中期経営計画では3年間でARR 72億円を目標としています。
3. M&Aと資本業務提携による事業拡大
2023年8月のグローブテックジャパン100%買収に加え、NTTドコモビジネス、NTT PCコミュニケーションズ、キヤノンマーケティングジャパン、グローバルセキュリティエキスパートなど大手企業との資本業務提携を積極的に推進しています。販売チャネルの拡大と技術補完が期待できます。
リスク要因
1. グローバルベンダーとの競合
SIEM市場にはSplunk(Cisco傘下)、Microsoft Sentinel、CrowdStrikeなど、圧倒的な開発資源を持つグローバル企業が参入しています。SASE市場もPalo Alto Networks、Zscalerなどが先行しており、「国産・フルマネージド」という差別化がどこまで持続するかは注視が必要です。
2. 高バリュエーション
PER 49.5倍・PBR 13.54倍(2026年9月時点)と、高い成長期待が株価に織り込まれています。今期の会社予想ベースでも予想PER約44倍と割安感はありません。業績の伸びが市場予想を下回った場合や、成長鈍化の兆候が見えた場合は、バリュエーションの切り下げリスクがあります。
3. M&Aの統合リスク
中期経営計画でM&Aの加速を明言しており、転換社債やワラントでの資金調達も実施しています。買収した企業の技術・人材の統合が想定通りに進まない場合や、のれんの減損が発生した場合、収益が圧迫されるリスクがあります。
まとめ
網屋は、国産SIEM No.1の「ALog」とフルマネージドSASE「Verona」を軸に、日本のサイバーセキュリティ市場で独自のポジションを築いている企業です。
5期連続増収増益を達成し、営業利益率は9.4%→17.7%と急速に改善中
ALogのサブスク転換が完了し、ARR成長率は43.8%(データセキュリティ事業)に加速
大手との資本業務提携やM&Aで成長を加速し、総合セキュリティプロバイダへ変貌を図る
PER 49.5倍と高バリュエーションであり、成長持続が前提。グローバルベンダーとの競合やM&A統合リスクに留意
サイバー攻撃の増加と政府のセキュリティ規制強化という構造的な追い風に加え、ストック型収益の積み上げが利益率改善を後押ししています。2026年12月期2Qの進捗率は53.2%と計画を上回るペースであり、今後の四半期決算でARR成長率と営業利益率のトレンドを確認していくことが重要です。
網屋
サイバーセキュリティ製品・サービスを自社開発・提供するセキュリティ専業企業。主力製品「ALog」シリーズは特許取得のログ自動変換技術により、あらゆるIT機器のログを統一フォーマットに変換・AI解析し、内部不正防止やサイバー攻撃の自動検知を実…










