セック(3741)の企業分析|「はやぶさ2」「SORA-Q」のJAXA技術と9期連続増収増益の実力

セック(3741)は、防災・宇宙・ロボットなどのリアルタイムソフトウェア開発に特化した独立系ソフトウェア企業です。JAXA「はやぶさ2」や月面探査ロボット「SORA-Q」の搭載ソフトウェアを開発した実績を持ち、東証プライム市場に上場しています。
2026年3月期は売上高112.2億円(前期比+9.0%)、営業利益18.8億円(同+4.8%)で9期連続の増収増益を達成しました。社会基盤システムBFが売上の約半分を占めるまでに成長し、防災・減災分野の需要拡大を追い風にしています。
この記事では、セックの4つのビジネスフィールドの事業内容、10年間の業績推移、BF別売上構成の構造変化、投資判断のポイントを、個人投資家の視点からわかりやすく解説します。
この記事の内容(目次)
会社概要 — 1970年創業のリアルタイムソフトウェア専業企業
セック(Systems Engineering Consultants Co., LTD.)は、1970年に設立されたソフトウェア企業です。「リアルタイムソフトウェア技術」を核に、防災・宇宙・ロボットなど社会インフラを支えるソフトウェアの受託開発を手がけています。
項目 | 内容 |
|---|---|
会社名 | 株式会社セック(Systems Engineering Consultants Co., LTD.) |
証券コード | 3741(東証プライム) |
設立 | 1970年 |
代表取締役社長 | 櫻井 伸太郎 |
従業員数 | 318名 |
本社 | 東京都世田谷区用賀 |
業種 | 情報・通信業 |
時価総額 | 約352億円(2026年9月5日時点) |
社名の「SEC」は「Systems Engineering Consultants」の頭文字で、創業以来50年以上にわたりリアルタイム制御技術に特化し続けてきた点が最大の特徴です。人工衛星の姿勢制御、Jアラートの配信基盤、自律移動ロボットのソフトウェアなど、「遅延が許されない」分野で独自のポジションを築いています。
4つのビジネスフィールドを理解する
セックは事業を「ビジネスフィールド(BF)」と呼ぶ4つの領域に分けて運営しています。それぞれの特徴と成長性を見ていきます。
社会基盤システムBF — 売上の約半分を占める成長エンジン
防災・減災システム、電力・エネルギーモニタリング、官公庁向け情報システムなど、社会インフラを支えるソフトウェアを開発するBFです。2026年3月期の売上高は55.4億円で、全社の49.4%を占めるまでに成長しました。

防災・減災 — Jアラート(全国瞬時警報システム)の配信基盤、災害時の安否情報収集・提供システム、自治体向け防災支援システム
電力・エネルギー — 電力系統の監視制御、炭素排出量モニタリングシステム
医薬品・医療 — 医薬品医療機器関連情報システム、診療報酬情報提供サービス
官公庁 — 省エネ法・温対法・フロン法関連の報告システム
近年の自然災害の頻発や国土強靱化政策を背景に、2024年3月期の33.3億円から2026年3月期の55.4億円へ、わずか2年で66%の急成長を遂げています。セック全体の成長を最もけん引しているBFです。
宇宙先端システムBF — JAXAプロジェクトで培った技術力
科学衛星や惑星探査機の搭載エンベデッドシステム、天体望遠鏡の制御、車両自動走行の研究開発など、宇宙関連システムとロボット技術を手がけるBFです。2026年3月期の売上高は31.6億円(全社の28.1%)。

代表的な開発実績として以下のプロジェクトがあります。
はやぶさ2 — 小惑星リュウグウからサンプルリターンに成功したJAXA探査機の搭載ソフトウェア
SORA-Q(LEV-2) — JAXA月面探査ミッション「SLIM」に搭載された超小型変形ロボットの制御ソフトウェア
ISS(国際宇宙ステーション) — 宇宙実験システムの運用支援ソフトウェア
自律移動ロボット「Rtino」 — 屋内自律移動ロボット向けソフトウェアプラットフォーム
インターネットBF — モバイルアプリ・Webサービスで急成長
スマートフォンアプリやWebサービスの受託開発を行うBFです。2026年3月期の売上高は17.8億円(全社の15.9%)で、2024年3月期の11.6億円から2年で54%成長と、社会基盤BFに次ぐ成長率を記録しています。DX需要の拡大を取り込み、モバイルネットワークBFの縮小を補って余りある伸びを見せています。
モバイルネットワークBF — 構造的な縮小が続く
携帯電話基地局の制御ソフトウェアやネットワーク管理システムの開発を行うBFです。2026年3月期の売上高は7.4億円(全社の6.6%)にとどまり、2024年3月期の12.5億円から4割減少しました。携帯キャリアの5G投資が一巡し設備投資が抑制されていることが主因で、構造的な縮小傾向にあります。
ただし、全社に占める比率が1割を切る水準まで縮小しているため、全社業績への影響は限定的です。
業績推移 — 9期連続増収増益の安定成長
セックの通期業績を10年間の推移で見ると、売上高は2017年3月期の44.2億円から2026年3月期の112.2億円へ2.5倍に成長しています。営業利益は同期間に4.3億円から18.8億円へ4.4倍となり、営業利益率も9.8%から16.7%へ改善しました。
通期業績推移(売上高・営業利益・営業利益率)
特筆すべきは、コロナ禍の2021年3月期・2022年3月期でも増収増益を維持した点です。多くのIT企業が案件の延伸や凍結に苦しむ中、防災・宇宙といった社会インフラ系の案件は景気の影響を受けにくく、ディフェンシブな事業特性が際立ちました。
2026年3月期は営業利益率が前期の17.4%から16.7%へやや低下しましたが、これは社会基盤BFの大型案件で外注比率が上がったことが主因とみられます。利益の絶対額は増加しており、成長基調に変わりはありません。
EPS・1株配当の推移
1株当たり利益(EPS)と1株当たり配当金も着実に成長しています。2025年10月1日付の1:2の株式分割を反映し、以下は分割後の株数ベースに統一して表示しています。
1株当たり利益(EPS)・1株配当の推移
配当性向はおおむね40%前後で安定しており、利益成長に連動して増配が続いています。2026年3月期は1株当たり60円(分割調整後)で配当利回りは1.7%。2027年3月期は62円への増配を予想しています。2020年3月期は配当性向が54.3%に上昇していますが、これは創業50周年にあたる年度です。
BF別売上構成 — 社会基盤がけん引する構造変化
4つのBFの売上構成は、直近3年で大きく変化しました。社会基盤システムBFが39%から49%へ拡大し、逆にモバイルネットワークBFは15%から7%へ縮小しています。
BF別売上構成比(2026年3月期)
BF別売上高の推移(積み上げ)
構造変化のポイントは3つです。
社会基盤が急拡大 — 防災・減災のシステム需要増が最大の成長ドライバー。Jアラートの運用拡大や電力モニタリング需要が売上を押し上げた
インターネットBFが台頭 — DX関連の受託開発需要を取り込み、構成比が14%→16%に上昇。モバイルネットワークBFの縮小を相殺する役割を担う
宇宙先端は安定推移 — 金額ベースでは微増だが、構成比は33%→28%に相対的に低下。大型プロジェクトの谷間に当たる可能性がある
2027年3月期の見通し
第1四半期は大幅増益でスタート
2027年3月期の第1四半期(2026年4〜6月)は、売上高27.7億円(前年同期比+20.5%)、営業利益4.4億円(同+51.7%)と好調な滑り出しです。通期計画に対する進捗率は売上高23.5%、営業利益22.2%で、前年同期の進捗率(売上高22.4%、営業利益16.2%)を上回っています。
Q1 2026/3 | Q1 2027/3 | 前年比 | |
|---|---|---|---|
売上高 | 23.0億円 | 27.7億円 | +20.5% |
営業利益 | 2.9億円 | 4.4億円 | +51.7% |
純利益 | 2.2億円 | 3.5億円 | +59.0% |
通期予想と注目ポイント
会社は2027年3月期の通期予想として売上高118.0億円(+5.2%)、営業利益19.8億円(+5.4%)、1株配当62円を見込んでいます。Q1の進捗を踏まえるとやや保守的な印象で、上方修正の余地が意識されます。
注目すべきは、Q1の営業利益率が15.9%と通期予想の16.8%に近い水準を第1四半期から確保している点です。セックは第4四半期(1〜3月)に売上が集中する季節性があり、下期にかけて利益率が改善する傾向があります。達成すれば10期連続の増収増益となります。
投資判断のポイント
強み・成長ドライバー
9期連続増収増益の実績が示す事業の安定性と成長力は、セックの最大の強みです。コロナ禍やIT業界の調整局面でも増収増益を維持できた背景には、景気感応度の低い防災・宇宙案件が売上の7〜8割を占める事業構成があります。
技術面では、リアルタイムソフトウェアというニッチかつ高い参入障壁を持つ領域に50年以上特化してきた蓄積があります。JAXA主要ミッションの開発実績は他社が容易に模倣できるものではなく、新規プロジェクトの受注に繋がるレファレンスとして機能しています。
成長余地としては、宇宙産業の市場拡大が中長期的な追い風です。日本政府の宇宙戦略基金や防衛費増額に伴う衛星・センサー関連の需要拡大は、セックが得意とする分野と合致しています。
リスク・課題
社会基盤BFへの一極集中は最大のリスクです。売上の49%を1つのBFに依存しており、防災関連の予算方針が変われば成長シナリオが崩れます。過去3年の急成長がJアラート拡張などの一過性要因を含んでいないか、中計等で確認する必要があります。
モバイルネットワークBFの縮小も続いており、キャリアの投資サイクル次第では売上がさらに減る可能性があります。インターネットBFが代替の成長ドライバーとして育っていますが、競争の激しい受託開発市場で利益率を維持できるかは注視が必要です。
従業員318人の小規模体制は、専門性の高さと引き換えに成長のスケーラビリティに制約があります。受注が増えても人員が追いつかなければ機会損失になり、IT人材の獲得競争が激化する中で採用力が成長のボトルネックになりえます。
バリュエーション
2026年9月5日時点の株価3,440円に対し、PER 23.3倍、PBR 3.41倍、配当利回り1.74%です。情報・通信業の中では割高に見えますが、9期連続増収増益の実績と防災・宇宙という成長テーマを踏まえると、成長プレミアムが乗った水準と解釈できます。ROEは14.6%と資本効率も良好です。
まとめ
セック(3741)は、防災・宇宙・ロボットといった社会インフラを支えるリアルタイムソフトウェアの専門企業です。
9期連続増収増益(2018/3〜2026/3)の安定した成長トラック。売上高は10年で2.5倍、営業利益は4.4倍に拡大
社会基盤BFが成長の主役。防災・減災需要の拡大で売上構成比が49%に。一方でモバイルネットワークBFは縮小が続く
JAXA「はやぶさ2」「SORA-Q」の開発実績が示す高い技術力。宇宙産業の成長で中長期的な受注拡大が期待できる
Q1 2027/3は売上+20.5%、営業利益+51.7%と好調な滑り出し。通期予想(売上+5.2%、営業利益+5.4%)は保守的で上方修正余地あり
ニッチトップの技術力と安定成長の実績を持つ一方、社会基盤BFへの依存度の高さと小規模体制に起因するスケーラビリティの制約には注意が必要です。宇宙・防災テーマに中長期で投資したい個人投資家にとって、セックは検討に値する銘柄と言えるでしょう。










