PR TIMES(3922)の企業分析|国内シェアNo.1プレスリリース配信、19期連続増収の裏側と中期目標「営業利益70億円」への道筋

PR TIMES(3922)は、国内シェアNo.1のプレスリリース配信プラットフォーム「PR TIMES」を中核に、19期連続増収を続けるPR/コミュニケーション領域のプラットフォーム企業です。
2026年2月期は売上高95.5億円(前期比+19.3%)、営業利益36.2億円(同+93.0%)と売上・営業利益ともに過去最高を更新。中期経営目標「Milestone2025」を営業利益35億円超で完遂し、新たに「Milestone2030」として営業利益70億円を掲げています。
この記事では、PR TIMESの事業構造、業績推移、中期経営計画、投資判断のポイントを、個人投資家の視点からわかりやすく解説します。
会社概要 — プレスリリース配信のインフラを作った企業
PR TIMESは、PR会社大手ベクトル(6058)の100%子会社として2005年12月に設立されました。2007年にプレスリリース配信サービス「PR TIMES」を開始し、「行動者発の情報が、人の心を揺さぶる時代へ」をミッションに掲げています。
項目 | 内容 |
|---|---|
会社名 | 株式会社PR TIMES(PR TIMES, Inc.) |
証券コード | 3922(東証プライム・名証プレミア) |
設立 | 2005年12月(サービス開始 2007年4月) |
上場 | 2016年3月 東証マザーズ → 2022年4月 東証グロース → 2023年10月 プライム |
代表取締役社長 | 山口拓己 |
従業員数 | 128名(単体、2026年2月時点) |
本社 | 東京都港区虎ノ門(虎ノ門ヒルズビジネスタワー28F) |
筆頭株主 | 株式会社ベクトル(6058)52.5%(2026年5月時点) |
セクター | 情報・通信業 |
プレスリリース配信市場を変えた「当たり前」
PR TIMESが登場する以前、プレスリリースは企業の広報部門がメディア各社にFAXや郵送で個別に送るのが一般的でした。PR TIMESは「プレスリリースをWebで誰でも無料で読める状態にする」という発想で市場を変えました。企業がプレスリリースを配信すると、提携する268媒体を通じて自動的にメディアに届くだけでなく、PR TIMES上で一般ユーザーも直接読めるようになります。
月間ページビューは9,000万を超え、プレスリリースの月間配信件数は46,000件以上。企業にとっては「メディアに取り上げてもらう」だけでなく、「PR TIMESに掲載されること自体が情報到達」という位置づけになっています。
事業を理解する — PR配信プラットフォームを軸とした3つの柱
PR TIMESの事業は「プレスリリース配信事業」の単一セグメントとして報告されていますが、実質的には「PRプラットフォーム」「プロダクト(Tayori)」「PRパートナーサービス」の3つの柱で構成されています。売上の大部分はPRプラットフォーム事業が占めています。
① PR TIMES — 国内No.1プレスリリース配信

中核事業であるプレスリリース配信プラットフォーム「PR TIMES」は、累計利用企業数12万9,233社(2026年5月時点)を誇り、国内上場企業の65.8%が利用しています。
収益モデルは、従量課金(1配信3万円)と定額課金(月額制プラン)の2本立てです。定額課金の期間契約企業は3,547社(2026年5月時点、前年同期比+14.2%)と堅調に増加しており、ストック型の安定収益を積み上げています。1社あたりの年間配信件数が増えるほど定額プランが有利になるため、利用が定着した企業が定額プランに移行する好循環が生まれています。
② PR TIMES STORY — ストーリー形式の広報メディア

2020年に開始した「PR TIMES STORY」は、プレスリリースでは伝えきれない開発秘話や社員インタビューなどのストーリー型コンテンツを企業が直接発信できるプラットフォームです。「成果の裏側にあるストーリーをメディアに届ける」をコンセプトに、企業のブランディングをサポートしています。PR TIMESの利用企業にとっては追加の情報発信チャネルとなり、プラットフォーム内のエンゲージメントを高める役割を果たしています。
③ Tayori — カスタマーサポートツール

「Tayori(タヨリ)」は、フォーム・FAQ・アンケート・AIチャットの4機能を備えたカスタマーサポートツールです。有料アカウント1,618件、平均単価10,169円(2026年5月時点、前年同期比+20.1%)と着実に成長しています。無料プランを入口に7万以上のアカウントが導入されており、中小企業の問い合わせ対応のデジタル化需要を取り込んでいます。
Milestone2030ではTayoriの成長に積極投資する方針を示しており、PR TIMESに次ぐ収益の柱への育成が期待されています。BOXIL SaaS AWARD 2024やGood Designなど複数の受賞歴があり、UI・UXの評価も高いサービスです。
④ PRパートナーサービス
PR戦略の立案から実行支援までを担うコンサルティングサービスです。リテナー契約15件(2026年5月時点)と規模はまだ小さいですが、PR TIMESの利用企業に対してより深い広報支援を提供するアップセルの位置づけです。
業績推移と財務分析
PR TIMESはサービス開始以来19期連続増収を達成しており、プレスリリース配信というストック型ビジネスの安定性を示しています。以下では直近の業績推移を詳しく見ていきます。
通期業績推移(売上高・営業利益・営業利益率)
通期業績推移(売上高・営業利益・営業利益率・売上高成長率)
注目すべきは、2023年2月期に一時的に営業利益率が20.8%まで低下した後、2026年2月期に37.9%まで急回復した点です。2023年2月期は「Milestone2025」の達成に向けた積極的な広告宣伝投資やエンジニア採用を行った投資期でした。投資が一巡した2024年2月期以降、売上成長に伴って営業レバレッジが効き始め、利益率が急速に改善しました。
2027年2月期も「投資期」と位置づけられ、営業利益は32.5億円(-10.3%)と減益を予想しています。ただし、投資の中身は前回と違います。
前回(2023年2月期)は広告宣伝費が年3.4億円から10.9億円へ膨らんだことが主因で、広告を絞れば利益はすぐ戻る性質のものでした。実際、2026年2月期は広告宣伝費を4.6億円まで抑えたことが営業利益の急回復を後押ししています。今回は「人を増やす」投資が中心です。会社は「少数による高効率な事業運営」から「積極的な採用と組織拡充」への転換を掲げ、PR戦略の立案・実行支援を担うPRパートナー事業の人員拡大、ロサンゼルス・ドジャースとのパートナーシップなどの広告宣伝、本社移転に費用を投じます(出典:PR TIMES 2025年度通期決算発表・決算説明資料、2026年度第1四半期決算発表)。
会社は減価償却費や株式報酬費用を足し戻したEBITDAも目標指標に加えましたが、2027年2月期はEBITDAも36.9億円(-7.3%)と減る計画です(EBITDA=営業利益+減価償却費+のれん償却費+株式報酬費用、出典:同資料)。減益の大半は人件費・広告宣伝費という現金で出ていく費用の増加であり、人件費は回収期に入っても残ります。前回の投資期(2023/2)→回収期(2026/2)で営業利益が3倍に成長した実績は心強い材料ですが、今回は広告費を絞って利益率が一気に戻る形にはなりにくく、増えた人員がどれだけ売上を生むかを見る必要があります。
純利益とEPSの推移
純利益とEPS推移(株式分割調整後)
2026年2月期のEPSは177.7円で、現在の株価2,165円(2026年9月9日時点)に対してPERは約12.2倍。グロース株としてはかなり割安な水準ですが、2027年2月期の減益予想を織り込んでいることに注意が必要です。会社予想の2027/2純利益22.0億円ベースでは予想PERは約13.4倍です。
2027年2月期Q1 — 投資期に入っても売上は堅調
2027年2月期Q1(2026年3〜5月)は、売上高25.3億円(前年同期比+9.7%)、営業利益8.8億円(同-0.4%)と、増収はほぼ横ばいの利益という結果でした。Milestone2030に向けた投資が始まっていますが、Q1時点では大きな利益圧迫には至っていません。
主要KPIは引き続き堅調です。
利用企業数 12万9,233社(前年同期比+16,424社増)
プレスリリース配信件数 12万7,358件(前年同期比+12.8%)
定額課金期間契約社数 3,547社(前年同期比+14.2%)
国内上場企業カバー率 65.8%
初配当を開始 — 株主還元の転換点
PR TIMESは上場以来無配を続けてきましたが、2025年2月期に初の配当(1株10.3円)を実施し、2026年2月期には13.8円、2027年2月期は16.8円への増配を予想しています。配当性向は約8%とまだ低水準ですが、「成長投資を優先しつつも株主還元を始める」という姿勢の変化は、企業のフェーズが成長期から安定成長期へ移行しつつあることを示唆しています。
株価指標
指標 | 値 |
|---|---|
株価 | 2,165円 |
時価総額 | 294億円 |
PER(実績) | 12.2倍 |
PBR | 3.2倍 |
配当利回り | 0.64%(2026/2実績ベース) |
ROE | 25.8% |
投資家が注目すべきポイント
Milestone2030 — 営業利益70億円の達成確度
PR TIMESは前中期「Milestone2025」(営業利益35億円)を1年前倒しで達成した実績があります。新たな「Milestone2030」では営業利益70億円(EBITDA 77億円)を目標に掲げています。現在の36.2億円から約2倍にする計画で、PR TIMESの単価向上・利用企業拡大と、Tayoriの収益化が両輪です。
2026年度からの2〜3期を「投資期」と位置づけ、PRパートナー事業を中心とした人員拡大と、海外展開・AI活用に先行投資する方針です。前回のMilestone2025でも投資期(2023/2)を経て利益率が急回復した実績がありますが、今回は広告費ではなく人件費が中心で、絞ってもすぐには戻りません。増えた人員が売上を生み、投資→回収のサイクルが再現されるかが投資判断の焦点になります。
プラットフォームの強さ — なぜ他社が追いつけないのか
プレスリリース配信市場にはAtPress(ソーシャルワイヤー)やNewscast、共同通信PRワイヤーなどの競合が存在しますが、PR TIMESのシェアは圧倒的です。その理由はネットワーク効果にあります。
企業が集まるからメディアが読む → 268の提携メディアが転載し月間9,000万PVが生まれる
メディアが読むから企業が配信する → メディア露出効果が高いので新規企業が選ぶ
上場企業の65.8%が利用 → 新規上場企業の8割が「先輩企業が使っているから」で導入
この自己強化サイクルは後発が容易には崩せないものであり、プレスリリース配信における「事実上のインフラ」としての地位を確立しています。
ベクトルグループとの関係
筆頭株主のベクトル(6058)が議決権の約52.5%を保有しており、PR TIMESはベクトルの連結子会社です。ベクトルはPR会社大手で、PR TIMESにとっては営業面でのシナジー(ベクトルの顧客にPR TIMESを提案)がある一方、親子上場に対するガバナンス上の懸念は市場から指摘されることがあります。ベクトルの経営方針変更やベクトル株の大量売出しが株価に影響するリスクは認識しておく必要があります。
PER 12倍台の評価をどう見るか
19期連続増収・ROE 25.8%の企業がPER 12倍台というのは、グロース株としては低い水準です。市場は2027年2月期の投資期による減益を警戒していると考えられます。しかし、Milestone2030で営業利益70億円を達成した場合、現在の時価総額294億円はPER 6〜7倍程度の計算になり、長期投資の観点からは注目に値する水準といえるでしょう。
まとめ
PR TIMESは、国内プレスリリース配信市場で圧倒的なNo.1ポジションを確立し、19期連続増収という安定した成長を続けています。
強み — ネットワーク効果による圧倒的シェア、上場企業の6割超が利用する情報インフラ
成長 — 19期連続増収、2026/2は売上高95.5億円・営業利益36.2億円で過去最高
中期戦略 — Milestone2030で営業利益70億円を目指し、2026〜2028年度を投資期に設定
リスク — 親子上場(ベクトル52.5%保有)、投資期の一時的減益、Jooto撤退
バリュエーション — PER 12.2倍・ROE 25.8%(2026年9月9日時点)。投資期の減益を織り込んだ水準
投資期に入ることで短期的には利益が抑えられますが、前回のMilestone2025では投資期を経て営業利益が3倍に成長した実績があります。プレスリリース配信市場における圧倒的な競争優位性と、Tayoriという第2の柱の成長可能性を、現在のバリュエーションでどう評価するかが投資判断の分かれ目です。
PR TIMES
プレスリリース配信『PR TIMES』を中核に「行動者発の情報」をニュースの中心にするプラットフォーム展開。タスク管理『Jooto』、カスタマーサポート『Tayori』、PR企画支援『PRパートナーサービス』で、情報発信から効果検証まで一気…
ベクトル
アジア最大規模のPR会社。企業・自治体向けにメディアリレーション・SNS戦略・ブランディングを一気通貫で提供する総合PR事業を中核とする。上場子会社が運営するプレスリリース配信プラットフォーム「PR TIMES」は導入企業数で業界最大級。自…










