クラシル(299A)の企業分析|レシピ動画3700万MAUから購買DXとAI Agentへ踏み出す成長戦略

クラシル(299A)は、レシピ動画プラットフォーム「クラシル」を起点に、お買い物アプリ「レシチャレ」(旧クラシルリワード)、ライフスタイルメディア「TRILL」などを展開する、LINEヤフーグループのテックカンパニーです。
2026年3月期は売上高170億円(前期比+29.8%)、Non-GAAP営業利益36.2億円(同+28.5%)と高成長を継続。購買事業の売上高が前期比+85.7%と急拡大し、全社の成長ドライバーとなっています。さらに、消費財サプライチェーン向けのバーティカルAI Agent事業への参入を表明し、メディア企業からプラットフォーム企業への進化を加速させています。
この記事では、クラシルの3つの事業セグメントの仕組み、レシチャレの成長戦略、業績推移と財務分析、AI戦略、投資判断のポイントを個人投資家向けに解説します。
クラシル
国内最大級のレシピ動画サービス「クラシル」を運営するデジタルプラットフォーム企業。「クラシル」は調理工程をわかりやすい短尺動画で紹介するレシピサービスで、累計アプリダウンロード数4,500万超、レシピ動画25万件以上を提供する。SNSフォロ…
会社概要:レシピ動画からフードテックプラットフォームへ
クラシル株式会社は2014年4月、堀江裕介氏(1992年生まれ、慶應義塾大学在学中に起業)が設立しました。2016年にレシピ動画サービス「クラシル」を開始し、短尺の料理動画という当時としては新しいフォーマットが支持を集め、日本最大のレシピ動画プラットフォームへと成長しています。
主要株主はLINEヤフー株式会社およびYJ2号投資事業組合で、LINEヤフーグループの一員として事業を展開しています。従業員数は204名(2025年3月時点)、本社は東京都港区芝浦に所在します。
事業ポートフォリオの変遷
創業当初はアドネットワーク広告中心の収益モデルでしたが、段階的に事業領域を拡大してきました。2020年前後にはライフスタイルメディア「TRILL」やショートドラマ制作会社「mogoo」をM&Aで取得。2022年にはお買い物アプリ「クラシルリワード」(旧クラシルチラシ)を自社開発で立ち上げ、成果報酬型・ストック型の収益モデルへと転換を進めています。このアプリは2025年11月に「レシチャレ」へ改称され、現在はこの名前で展開しています。
直近では「レシチャレ」を核とした購買事業が急成長し、さらに消費財サプライチェーン向けのバーティカルAI Agent事業への参入を表明。レシピ動画メディア企業から、食の領域全体をカバーするプラットフォーム企業への転換が進んでいます。
3つの事業セグメントを理解する
クラシルの事業は「メディア」「購買」「その他」の3セグメントで構成されています。FY26/3の売上高構成比はメディア47%・購買35%・その他17%ですが、購買事業が急拡大しており、売上構成は急速に変化しています。
メディア事業(売上高80.3億円・構成比47%)
レシピ動画プラットフォーム「クラシル」を中心とした事業です。収益モデルは2つあり、BtoBの広告収益(食品・飲料メーカー向けのタイアップ広告やレシピを使った販促企画)と、BtoCの有料課金(月額課金による人気レシピランキングや絞り込み機能の開放)で構成されます。


クラシルの強みは、食品・飲料ナショナルブランドの93%と取引実績がある営業基盤です。メーカーは新商品のプロモーションにレシピ動画を活用し、ユーザーに対して「このレシピにはこの商品を」という文脈での認知を獲得できます。FY26/3のメディア事業売上は80.3億円(前期比+6.3%)で、安定的なベース収益として機能しています。
購買事業(売上高60.3億円・構成比35%)
お買い物アプリ「レシチャレ」を核とした事業です。レシチャレは2025年11月に「クラシルリワード」から改称したもので、チラシを見る・歩く・買い物のレシートを撮って送る、といった行動でコインが貯まり、Amazonギフト券やdポイントなどに交換できます。
仕組みを一言でいうと、「メーカーや小売店が出したポイントの原資を、クラシルがレシートで購入を確かめてユーザーに配る」というものです。値引きの代わりにポイントで還元するので、店頭の売価は崩れません。
メーカーや小売店が「この商品を買った人にポイントを付けたい」とクラシルに依頼し、運用費とポイントの原資を払う
レシチャレのアプリに「対象商品を買うとコイン」というオファーが載る
ユーザーがスーパーやドラッグストアで対象商品を買う
ユーザーがレシートを撮影して送る
クラシルがレシートを読み取って購入を確認し、コインを還元する
誰が・どの店で・何と一緒に買ったか、という購買データがメーカーと小売店に戻る
三者それぞれにメリットがあり、これが高い受注率とリピート率につながっています。
メーカー:買われた分だけ払う成果報酬。企画から開始まで翌日〜1ヶ月(TVCMは半年、店頭プロモーションは3〜4ヶ月)。どの店でどう売れたかまで分かる
小売店:対象商品を目当てにした来店とついで買いで客単価が上がる(ウエルシアは、レシチャレ経由の客単価が全体平均を大きく上回ると公表)
ユーザー:普段の買い物でポイントが貯まりお得になる
リテールパートナー(小売店との提携)。レシチャレを大きく伸ばしている仕掛けが、小売店を「リテールパートナー」として巻き込むモデルです。小売店が自店の棚に並ぶメーカー商品を「レシチャレで販促しましょう」と持ちかけ、自店を舞台にキャンペーンを行います。クラシルが1社ずつ営業するより案件が速く増え、小売店にはメーカー負担の販促が自店で行われるメリットがあります。
2024年4月にウエルシアが最初に導入(2025年10月時点で70件超の案件を掲載)
2025年12月にライフが参画、メーカー13社・22商品のプロモーションを全店で開始
契約済みパートナーは2026年7月時点で9社(ウエルシア、ライフ、サツドラ、ツルハドラッグ、サンドラッグなど)
パートナーとの取引はトライアル期間から始まり、クラシルがポイント原資の一部を負担。FY27/3の利益率低下はこの持ち出しを意図的に増やすため
クラシルリテールネットワーク(他社アプリへの外部提供)。レシチャレの仕組みを他社アプリにも提供し、レベニューシェアを受け取ります。レシチャレを入れていない人にも案件が届くので、メーカーから見ると1つの案件でリーチが広がります。
Yahoo! JAPAN(2025年8月〜)
SmartNews(2025年9月〜)
LINE WALK(2026年2月〜)、LINEマンガ(同6月〜)
ゆうちょ通帳アプリ(2026年秋予定・登録口座数1,662万)
レシチャレ オフライン購買売上高の四半期推移
その他事業(売上高29.4億円・構成比17%)
ライフスタイルメディア「TRILL」、クリエイターマネジメント事務所「LIVEwith」を中心とした事業です。FY26/3の売上は29.4億円(前期比+27.8%)で、高収益ライバーの増加を主因に堅調な成長を見せています。FY27/3はVirtualライバーの獲得・育成やグループインしたVTuber事業の拡大にも注力する方針です。
セグメント別売上構成比(2026年3月期)
業績推移と財務分析
通期業績の推移
クラシルはFY24/3(2024年3月期)からFY26/3にかけて、売上高が98.9億円→131億円→170億円と年率30%前後の成長を続けています。FY27/3の会社計画は売上高213.6億円(前期比+25.7%)、Non-GAAP営業利益37.1億円(同+2.6%)です。
通期業績推移(Non-GAAP営業利益ベース・売上高成長率)
注目すべきは、FY27/3のNon-GAAP営業利益率が21.3%→17.4%に低下する計画である点です。これはレシチャレ事業の拡大に向けた意図的な先行投資(小売パートナーのトライアルコスト負担、ユーザー獲得費)によるもので、会社はFY28/3以降の投資回収フェーズで利益率が回復すると説明しています。
セグメント別売上の推移
セグメント構成の変化はクラシルの戦略転換を端的に表しています。FY24/3には全体の6%に過ぎなかった購買事業が、FY26/3には35%にまで拡大。メディア事業は依然として最大セグメントですが、購買事業との比率は急速に接近しています。
セグメント別売上推移
会社はFY30/3(2030年3月期)を見据え、ToB売上比率をFY24/3の25%からFY26/3の47%に引き上げ、将来的にはToB主体の収益構造を目指しています。メディア事業の広告もBtoB色が強いですが、レシチャレ等を通じた成果課金型のBtoBビジネスをさらに拡大させる方針です。
売上総利益率の推移
売上総利益率はFY25/3の49.6%からFY26/3は47.4%へ2.2pt低下しました。これは粗利率の低い購買事業のウエイト増加(セールスミックスの変化)によるものです。ただし4Qの売上総利益率は48.6%と改善傾向にあり、会社はFY27/3も原価率は現状レベル維持を想定しています。
各セグメントの粗利率イメージは、メディア60〜65%、購買40〜45%、その他17.5〜22.5%とされており、購買事業は規模の拡大とともに粗利率のコントロールも進んでいます。
投資家が注目すべきポイント
レシチャレはどこまで伸びるか
クラシルの今後1〜2年の業績を左右するのは、レシチャレの拡大スピードです。会社計画では、FY27/3の購買事業売上高は94.0億円(前期比+56%)と、メディア事業(84.2億円)を抜いて最大セグメントになります。伸びしろを考えるうえで、上限を示す数字と、進み具合を示す数字を分けて見ておきます。
上限:会社が示す市場は2兆円。会社は販促市場の規模を約2兆円と置いています(消費財メーカーの国内売上約50兆円 × 販促費率約8% × デジタル置換率50%、いずれも会社推計)。
購買事業60億円は市場の0.3%、オフライン売上17億円は0.1%に過ぎず、市場の大きさは制約にならない
ただし「50%がデジタルに置き換わる」は仮定。実際の上限は、レシートを撮る手間を受け入れて店頭で買う人がどこまで増えるかで決まる
進み具合①:小売店の数より、1社あたりの案件数。対象は年商1,000億円以上の小売で、国内でこの規模のスーパー・ドラッグストアは数十社しかありません。パートナー数だけで何倍にもなるわけではなく、伸びしろは1社あたりの案件数にあります。
契約済み9社(2026年7月時点、同5月の7社から2社増)、トライアル実施済み・予定6社、検討中12社
ウエルシアは導入から1年半で70件超の案件を掲載、ライフは初回からメーカー13社・22商品で開始
本契約に移行すると取扱商材数の増加とともに売上が伸び続けるモデル。FY27/3までに獲得したパートナーからの収益をFY28/3に刈り取る計画
進み具合②:実際に店頭で買った人の数。会社は「本質的なKPIは実際に店頭で購買を行うユーザー数」として、2026年7月から「オフライン購買UU」の開示を始めました。
オフライン購買UU(過去1年間にレシチャレの店頭販促で買い物をした人数):FY25/3 1Qの12.6万人 → FY27/3 1Qは52.3万人へ4倍
レシチャレ関連MAU 347万(FY27/3 1Q末)はクラシル全体(約3,700万)の1割。うち店頭購買は15%程度で、既存ユーザーの中にまだ余地がある
アプリを入れていない人には、Yahoo! JAPANやゆうちょ通帳アプリなどクラシルリテールネットワーク経由で届く
競合:レシートアプリだけが相手ではない
レシートを撮って還元を受けるアプリ自体は、クラシルの発明ではありません。ポイ活ユーザーは複数を併用するのが普通で、ユーザーは還元率で動くためアプリ単体での囲い込みは難しい領域です。
ONE(WED、2018年開始):累計650万ユーザー・買取レシート18億枚。2025年11月に「Performance Media Network」を始め、外部メディア14社に販促案件を配信
CODE(リサーチ・アンド・イノベーション):商品バーコードとレシートを読み取る方式。「小売に依存せずメーカー主導で全チャネル横断」が売り
楽天パシャ(2019年開始):楽天ポイントで還元。ただし「きょうのレシートキャンペーン」は2026年6月末で終了しており、楽天はレシート撮影型から決済データ(楽天ペイ・楽天カード)を使ったO2O施策へ軸足を移している
レシーカ:Vポイントで還元。CASHbのように終了したサービスもある
クラシルの違いは小売店を主役に据えた点。ONEやCODEが「どの店で買っても対象」と店舗を問わないのに対し、レシチャレは小売店の店舗を舞台にし、小売店自身がメーカーに販促を持ちかけます。
小売店との共同営業:小売店には客単価向上という得があるので営業に協力し、メーカーには「あの小売チェーンで確実に売れる」施策になる
レシピとの連動:レシピを見て材料を買ってレシートを送る「たべチャレ」。JA中野市のえのきたけの事例では、施策終了後も購入率が実施前より30%高い水準で推移
既存の営業基盤:食品・飲料ナショナルブランドの93%との取引実績、3万店舗超のチラシ提携、LINEヤフーグループのアプリ群への配信——他社が短期には揃えにくい
ただし、成果報酬型の販促はメーカーにとって乗り換えが容易で、効果が出なければ翌シーズンには他社へ予算が移ります。会社はレシチャレの受注率・リピート率が高いと説明していますが数字は開示されていないので、リテールパートナー数とオフライン購買売上高の伸びで間接的に確かめるしかありません。
決済プラットフォーム——レシートを撮らずに同じことができる
レシートアプリ同士の比較より本質的な脅威は、決済データを持つプラットフォームです。PayPayは2024年11月に「商品特定クーポン」を本格始動しました。メーカーが特定商品単位でPayPayアプリにクーポンを発行し、ユーザーがPayPay決済するとPOS連携で購買を自動検証し、即時ポイントが還元されます。レシート撮影は不要です。
第一弾はスギ薬局グループで56社・85商品。2025年9月にはウエルシアでメーカー27社の集合施策を実施——レシチャレと同じ小売で展開している
PayPay登録ユーザーは7,500万人(2026年8月)、QR決済で独走(3ヶ月内利用率50%超、2位に20pt以上の差)
LINE・Yahoo! JAPAN・PayPayの3社は「LYPマイレージ」も展開中(ECでも店頭でも対象商品を買うほどマイルが貯まる)。2026年夏にLINE(月間1億ユーザー)とPayPayのアカウント連携が開始
楽天パシャがレシート撮影型を2026年6月に縮小撤退し、決済データを使ったO2O施策に軸足を移したことも、レシート撮影というモデル自体が過渡期にある可能性を示唆しています。
大手小売のリテールメディア内製
大手小売が自社の購買データ・アプリ・店頭サイネージを使って、メーカーから直接広告費を取る「リテールメディア」の動きが急拡大しています。レシチャレの「小売を通じてメーカーに販促を持ちかける」モデルは、小売が自前で同じことをやれば中間に立つ必然性が薄れます。
セブン&アイ:2026年7月にPayPayとのID統合を発表(7iD + PayPayで1億ID超)。電通・サイバーエージェントとリテールメディア新会社「セブン―イレブン・アドコネクト」を設立。リテールメディア出稿は3年で20倍超
イオン:「イオンメディアネットワーク」でグループ横断の統一広告配信。WAONポイント会員7,500万人超のデータ基盤
ウエルシア:2026年に「ウエルシアリテールメディア」を広告主向け正式サービスとして開始。アプリMAUは8ヶ月で192%成長。ツルハHDと顧客データ統合基盤「TIDE-CDP」を構築中——レシチャレのリテールパートナーでありながら、自社で同じことをやる能力を急速に獲得している
レシチャレに残る独自ポジション
決済プラットフォームと大手小売の攻勢を踏まえても、レシチャレが完全に代替されるとは限りません。代替が難しい部分と、代替可能な部分を分けて見ておく必要があります。
代替が難しいもの:
レシピ起点の需要創出:PayPayや小売アプリは「買った後」の確認だが、クラシルは「何を作るか→何を買うか」という購買の上流に位置する。たべチャレのJA中野市えのきたけの事例で施策終了後も購入率30%増という実績は、レシピ連動ならではの効果
食品メーカー93%との広告営業チャネル:PayPayの決済加盟店開拓チームや小売のバイヤーとは異なる人脈で、短期には揃えにくい
現金客のカバー:PayPay商品特定クーポンはPayPay決済限定だが、レシチャレはレシートさえあれば決済手段を問わない。スーパーの客の過半はまだ現金・クレジットカード
代替可能なもの:
レシート撮影によるポイント還元の仕組み自体(PayPayはPOS連携で自動化済み、楽天は撤退方向)
「小売がメーカーに販促を持ちかける」仲介モデル(ウエルシア・セブンが自社で内製を開始)
外部アプリへの販促配信ネットワーク(PayPay+LINEの統合基盤ができれば配信先の規模で勝てない)
バーティカルAI Agent事業の展望
クラシルは2026年5月の決算説明会でバーティカルAI Agent事業への本格参入を表明しました。「Kurashiru AI Supply Chain OS」を中央に据え、セールス&販促Agent、受発注Agent、サプライチェーンAgent、経営管理Agentの各領域で、個別最適ではなく一気通貫のAIネイティブな業務遂行を実現する構想です。
クラシルがこの領域で勝てる根拠として、(1)全国横断の購買データ・レシピデータ・ユーザー移動データという独自の資産、(2)小売・卸・メーカー・販促領域の商習慣やワークフローに関する業界コンテキスト、を挙げています。既存のSaaS的なソフトウェア予算(約2.5兆円)だけでなく、消費財サプライチェーン企業の人件費・外部委託予算(約11.5兆円)という、はるかに大きな市場にアクセスできるとの見立てです。
ただし現時点で売上実績はなく、中長期ビジョン(2030年以降の寄与を想定)の段階です。足元では社内でのAI活用が先行しています。
AIツール利用率100%(非エンジニアを含むClaude Code利用率99%)
エンジニアの開発生産性6倍(GitHub PR数ベース)
セールスレポーティング業務 月590時間削減
クリエイティブ制作費98%削減
インフレ環境は追い風
外食価格の高騰と生活費全般の増加は、クラシルの2つの主力サービスにとって追い風です。「クラシル」は自炊ニーズの上昇で利用が増え、「レシチャレ」はお得な買い物ニーズの高まりからユーザーのエンゲージメントが向上します。消費者の節約志向が強まるほどサービスの利用価値が増す構造は、景気サイクルに対するディフェンシブな特性にもなります。
リスク要因
短期的な利益率低下。FY27/3はレシチャレへの先行投資により、Non-GAAP営業利益率が21.3%→17.4%に低下する計画です。上半期はとくにトライアルコストとユーザー獲得費が嵩む見込みで、前年同期比で減益となります。投資回収はFY28/3以降を想定しているため、短期の四半期決算で失望売りが出る可能性はあります。
決済プラットフォーム・大手小売との競合。PayPayの「商品特定クーポン」はレシチャレと同じ小売(ウエルシア等)でレシート不要の自動還元を実現しており、ユーザー基盤も桁違い。大手小売がリテールメディアを内製する動きも加速しています。クラシルのレシピ連動やメーカーとの営業基盤は独自の価値だが、レシート撮影モデル自体の将来性は不透明です。
広告市場の構造変化。メディア事業の基盤であるアドネットワーク広告は、Cookieレス対応やプライバシー規制の影響を受けます。会社自身も3rd Partyディスプレイ広告への市場影響を保守的に見ています。ただし、クラシルのタイアップ広告やレシチャレの成果課金は、こうした構造変化の影響を受けにくいファーストパーティデータを活用するモデルです。
無配当。現在配当は実施しておらず、株主還元のあり方は検討中とされています。キャッシュフローは成長投資とM&Aに優先配分する方針で、配当を重視する投資家には向きません。
購買事業の季節性。販促需要は4〜6月、10〜12月に集中しやすく、四半期ごとの売上にはばらつきがあります。FY26/3の4Qが3Q比で購買売上が6.8%減少したのは、この季節性による反動です。通期ベースでの成長トレンドを確認することが重要です。
まとめ
クラシル(299A)は、国内最大級のレシピ動画プラットフォームという強固なメディア基盤の上に、購買事業(レシチャレ)という高成長の第2エンジンを構築しつつある企業です。
メディア事業:MAU3,700万・ブランドカバー率93%の安定基盤。成長率は一桁台だが、購買事業やAI事業への顧客送客装置として重要
購買事業:FY26/3に前期比+85.7%と急成長。レシチャレのリテールパートナー拡大がFlywheel効果を生み、今後2〜3年の成長ドライバー
AI Agent事業:消費財サプライチェーン向けバーティカルAI構想。実績はこれからだが、独自データと業界知見が差別化要因
FY27/3:売上高213.6億円(+25.7%)の増収計画だが、レシチャレへの先行投資でNon-GAAP営業利益率は17.4%に一時低下。投資回収はFY28/3以降
レシピ動画で築いた食品メーカー・小売との関係性を、購買DXプラットフォーム、さらにはAIエージェントによる業務自動化へと展開していく戦略は野心的です。短期的には先行投資による利益率低下を許容する局面にあり、レシチャレのリテールパートナー拡大と投資回収のタイムラインが、今後の株価を左右する鍵となるでしょう。










