note(5243)の企業分析|営業利益11億円へ上方修正、KADOKAWA提携が導く「AI時代のコンテンツ流通インフラ」戦略

文章・マンガ・音声の創作プラットフォーム「note」を運営。2024年11月期に黒字転換後、Google・NAVER・KADOKAWAとの資本業務提携やGENIAC採択を経て、AI時代のコンテンツ流通インフラを目指しています。
会社概要 — 編集者が起業した「創作を続けられる」ためのプラットフォーム
note株式会社の創業者である加藤貞顕氏(代表取締役CEO)は、もともと出版社の編集者でした。1973年新潟県生まれ、大阪大学大学院経済学研究科博士前期課程を修了後、2000年にアスキー社へ入社して雑誌編集に従事し、2005年にダイヤモンド社へ移籍。単行本編集と電子書籍事業を担当し、『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの「マネジメント」を読んだら』(通称もしドラ、累計280万部)や『英語耳』『ゼロ』といったベストセラーの編集を手がけました(出典:note株式会社 経営チーム、有価証券報告書(第14期)役員の状況)。「良いコンテンツを、それにふさわしい形で届け、作り手に対価を還元する」という編集者としての原体験が、後のnoteの事業の根底にあると言えます。
2011年12月8日、加藤氏は株式会社ピースオブケイクを設立。2012年9月にコンテンツ配信サイト「cakes」を開始した後、2014年4月7日にクリエイター向けメディアプラットフォーム「note」のサービスを開始しました。noteの急成長を受けて2020年4月7日にnote株式会社へ商号変更し、2022年12月21日に東証グロース市場へ新規上場しています(公開価格340円に対し初値521円、初値騰落率+53.2%。主幹事は大和証券)(出典:日本取引所グループ「新規上場日の初値決定前の気配運用について:note(株)」、有価証券報告書(第14期)沿革)。
項目 | 内容 |
|---|---|
会社名 | note株式会社(note, Inc.) |
証券コード | 5243(東証グロース) |
設立 | 2011年12月8日(株式会社ピースオブケイクとして設立) |
商号変更 | 2020年4月7日、note株式会社に変更 |
上場 | 2022年12月21日 東証グロース市場へ新規上場(公開価格340円/初値521円) |
代表取締役CEO | 加藤貞顕 |
取締役CFO | 鹿島幸裕 |
CSO(最高戦略責任者) | 深津貴之(2026年7月7日、CXOから役職名を変更して就任) |
資本金 | 8,487万円(2025年11月期末) |
従業員数 | 連結158名(2025年11月30日時点、有価証券報告書) |
本社所在地 | 東京都千代田区 |
決算期 | 11月期 |
事業内容 | メディアプラットフォーム事業(note・note pro等)、IP・コンテンツクリエーション事業、AI関連事業(2026年11月期から独立セグメント) |
連結子会社 | Tales & Co.株式会社、note AI creative株式会社 |

株主構成 — 創業者の高い保有比率と、Google・NAVER・KADOKAWAという戦略株主
note株式会社は創業者である加藤貞顕氏の保有比率が高いことが特徴です。有価証券報告書によれば、加藤氏は2025年11月30日時点で発行済株式の33.66%を保有する筆頭株主であり、上位3株主(加藤氏・Google・ゴールドマン・サックス)の合計保有比率は45.33%に達していました。その後の第三者割当増資で比率は下がり、2026年5月末時点では26.26%ですが、依然として筆頭株主です(出典:有価証券報告書(第14期)大株主の状況、2026年11月期第2四半期決算説明資料)。創業者自身が長期の安定株主として経営に関与し続けている点は、機関投資家・個人投資家の双方にとって経営の一貫性を測るうえでの参考材料になります。
この株主構成は2025年以降、Google(2025年1月)→NAVER(2025年12月)→KADOKAWA(2026年4月)と3社連続の資本業務提携で大きく変わりました。いずれも第三者割当増資を伴い、2026年5月末時点ではNAVERが第2位、KADOKAWAが第3位、Googleが第4位の大株主です。事業会社が単なる取引先ではなく資本を伴うパートナーとして加わったことは、note経営陣がAI時代の事業展開において「独力でのプラットフォーム運営」から「AI・コンテンツ保有企業との連携」へと戦略の重心を移していることの表れでもあります。
株主名 | 所有株式数 | 持株比率 | 備考 |
|---|---|---|---|
加藤貞顕 | 508.7万株 | 26.26% | 創業者・代表取締役CEO |
NAVER Corporation | 142.95万株 | 7.38% | 2025年12月1日払込の第三者割当(約20.0億円) |
KADOKAWA | 100.0万株 | 5.16% | 2026年4月9日払込の第三者割当(約22.1億円) |
Google International LLC | 98.42万株 | 5.08% | 2025年1月29日払込の第三者割当(約5.0億円) |
Goldman Sachs International | 97.0万株 | 5.01% | ― |
日本経済新聞社 | 66.1万株 | 3.41% | 2018年7月に資本業務提携 |
経営体制 — CXOからCSOへ、深津貴之氏の役割変化
2026年7月7日、それまでCXO(Chief Experience Officer)を務めていた深津貴之氏がCSO(Chief Strategy Officer・最高戦略責任者)に就任しました(出典:note株式会社 プレスリリース(2026年7月7日))。深津氏はUXデザインの分野で知られる人物で、これまでCXOとしてnoteのAI戦略やエコシステム設計を主導してきました。本人は「現在の役割の実態に合わせてタイトルをCXOからCSOへ変更した」と説明しており、昇格というより、AI時代のコンテンツ流通インフラという中長期戦略の実行を経営レベルで統括する役割を肩書きに反映したものと位置づけられます。
4つの事業を理解する
note株式会社の事業は、2025年11月期までは「メディアプラットフォーム事業」と「IP・コンテンツクリエーション事業」の2つのセグメントで構成されていました。2026年11月期第1四半期からは、GENIAC採択事業を中心とする「AI関連事業」が独立した報告セグメントとして加わり、3セグメント体制になっています。2025年11月期の売上高構成では、note・note pro等を含むメディアプラットフォーム事業が全体の98%超を占め、2024年5月に立ち上げたばかりのIP・コンテンツクリエーション事業はまだ売上高の2%に満たない規模です。まずは主力のメディアプラットフォーム事業から、4つの柱に分けて見ていきます。
① note — 個人の創作を支えるCtoCコンテンツプラットフォーム
「note」は、個人を中心としたクリエイターがテキスト・画像・つぶやき・音声・動画の5種類のコンテンツを自由に投稿・販売できるCtoC(個人間取引)型のメディアプラットフォームです。読者はそれらのコンテンツを無料で楽しんだり、有料コンテンツを購入・購読したりする形で「応援」します。他の多くのブログサービスやSNSと異なり、ランキング機能や広告表示を持たないことが特徴で、バズを狙った刺激的なコンテンツよりも、書き手が届けたい相手に静かに届く設計を志向しています(出典:有価証券報告書(第14期)事業の内容)。

プラットフォームの規模は着実に拡大しています。2026年5月末時点の累計会員登録者数は1,248万人(前年同期比+25.4%)、公開コンテンツ数は8,209万件(同+39.2%)、累計クリエイター数は241万人(同+38.7%)に達しました(出典:note IR「2026年11月期第2四半期決算」)。月間アクティブユーザー数(MAU)は2025年6月〜11月の平均で8,660万に達し、2026年11月期上半期(2025年12月〜2026年5月)の平均では9,123万へ拡大しています。
KPI | 2025年11月期末(2025年11月) | 2026年11月期2Q末(2026年5月) | 前年同期比 |
|---|---|---|---|
累計会員登録者数 | 1,114万人 | 1,248万人 | +25.4% |
公開コンテンツ数 | 6,956万件 | 8,209万件 | +39.2% |
累計クリエイター数 | ― | 241万人 | +38.7% |
MAU(月間アクティブユーザー) | 8,660万(2025年6〜11月平均) | 9,123万(2025年12〜2026年5月平均) | ― |
noteの収益源は、クリエイターが有料コンテンツやメンバーシップ(月額課金の会員制コミュニティ)を販売した際に運営が受け取る手数料が中心です。クリエイターがnote上で得た売上・支援額の総額(年間流通総額)は2025年11月期に213.1億円(前期比+24.9%)に達しました。四半期単独では2025年11月期第4四半期(2025年9〜11月)が56.1億円(前年同期比+29.1%)、2026年11月期第2四半期(2026年3〜5月)が64.8億円(同+24.6%)と、20%台半ばの伸びが続いています。読者が有料課金を通じてクリエイターを支援する「サブスクリプション比率」も2026年11月期第1四半期時点で27.9%まで高まっています(出典:有価証券報告書(第14期)、2026年11月期第2四半期決算短信、note IR「2026年11月期第1四半期決算」)。
② note pro — 法人のオウンドメディア構築を支えるSaaS
「note pro」は、企業や自治体が自社の情報発信メディア(オウンドメディア)をnoteの仕組みを使って手軽に構築・運営できる法人向けメディアSaaSです。月額8万円(税別)からの料金で、初期費用をかけずに独自ドメインでのメディア開設が可能なほか、AIによる執筆支援・AIレビュー(ベータ版)・予約投稿などの機能を備えます。noteユーザーへの送客機能を持つ点が、単なるブログASPサービスとの違いです(出典:note pro公式サイト)。

note proは2025年9月末に導入社数1,000社を突破し(同年10月1日発表)、有料契約数は2025年11月期末の991社から、2026年11月期第2四半期末(2026年5月)には1,133社へ増加しました。ARR(年間経常収益)は2025年11月期末の7億5,700万円(前期比+34.4%)から、2026年11月期第2四半期末には7億7,300万円まで積み上がっています(出典:note IR「投資家Q&A(2026年11月期第2四半期決算)」)。なお、直近は販促キャンペーンによる無料期間提供の影響で契約社数の伸びに比べARRの伸びが緩やかになっていますが、会社側はこの効果が2026年11月期第3四半期以降にARRへ反映される見通しを示しています。
時点 | ARR(年間経常収益) | 有料導入社数 |
|---|---|---|
2025年11月期末(2025年11月) | 7.57億円 | 991社 |
2026年11月期1Q末(2026年2月) | ― | 993社 |
2026年11月期2Q末(2026年5月) | 7.73億円 | 1,133社 |
事業別売上高構成比(2025年11月期)
この内訳からもわかる通り、2025年11月期時点の売上高の8割弱をnote単体が占め、note proが16%、残りの約4%を法人向けサービス・その他・IP事業が分け合う構造です。noteの成長ドライバーはあくまで主力のコンテンツプラットフォーム事業であり、note proとIP事業は「次の柱」を育てている段階だと理解しておくとよいでしょう。
③ IP・コンテンツクリエーション事業 — Tales & Co.が担う「編集者機能」
noteは2024年5月24日、完全子会社「Tales & Co.株式会社」を設立し、プラットフォーム運営に加えて「編集者機能」を持つIP(知的財産)ビジネスに参入しました。クリエイターの発掘・エージェント、作品企画のサポート、コンテンツの制作・販売、外部企業からのコンテンツ制作受託などを手がけ、書籍化・漫画化・映像化といったメディアミックス展開までを見据えた事業です。noteが2025年4月に開設した物語投稿サイト「TALES(テイルズ)」では、Tales & Co.が原作の企画・展開を担い、開設時点で25媒体が創作大賞に参加するなど、ヒット作の発掘から多面展開までを担う体制を敷いています(出典:Tales & Co.株式会社 会社概要)。

この事業は、note全体の売上高から見ればごく小さな規模にとどまっています。2025年11月期のIP・コンテンツクリエーション事業の売上高は6,914万円(前期比+406.8%)と急拡大した一方、セグメント損失は1,394万円(前期は1,030万円の損失)と赤字が続いています(出典:note株式会社 2025年11月期 決算短信)。note株式会社は単体決算でもTales & Co.株式について約3,100万円(31百万円)の評価損を計上しており、投資回収にはまだ時間がかかる段階です。
④ note AI creative — AI活用を支えるエンジニアリング子会社
2023年12月8日設立の完全子会社「note AI creative株式会社」(資本金3,000万円、東京都千代田区)は、大規模言語モデル(LLM)を活用したコンテンツ分類・モデレーション・レコメンデーションなどメディア運営基盤の開発や、クリエイターの創作を支援するツール群の開発を担っています。「AIによる創作のバリューチェーンの革新」をコンセプトに掲げ、まずはnote本体の開発速度を上げることを主眼としつつ、将来的な外部提供の可能性も視野に入れています(出典:note AI creative株式会社 会社概要)。
後述する「AIコンテクストネットワーク」機能のレコメンドエンジン刷新など、2026年に入って加速しているnoteのAI関連の取り組みは、この子会社が開発してきた技術基盤の上に構築されています。子会社としてのnote AI creative自体は独立したセグメントではなく、2025年11月期の有価証券報告書ではメディアプラットフォーム事業の一部として位置づけられています。
業績推移と財務分析
noteの業績は、上場直後の赤字期から一転して急速な増収増益局面に入っています。2022年11月期に7.32億円の営業赤字だった収益構造は、2024年11月期に黒字転換し、2025年11月期の営業利益は2.56億円(前期比+384.7%)、2026年11月期は上方修正後で11.0億円(前期比+329.4%)が見込まれています。まずは通期の業績推移を確認します。
通期業績推移(売上高・営業利益・営業利益率)
特筆すべきは営業利益率の改善ペースです。2022年11月期はマイナス31.6%だった営業利益率が、2026年11月期には19.5%(会社予想)まで改善する計算になります。売上高が5期で約2.4倍に伸びる一方、販管費の伸びがそれを下回るペースで推移しており、プラットフォーム型ビジネスに特有の「増収が増益に直結する」段階に入りつつあることがうかがえます。実際、2026年11月期第2四半期の決算説明では「プラットフォーム事業の損益分岐点を超え、増収がそのまま増益に直結する構造に転換した」と説明されています(出典:note IR「2026年11月期第2四半期決算」)。
四半期売上成長率 — 2026年11月期2Qは+36.8%で過去最高
四半期ベースで見ると、noteの売上成長率は2025年11月期に4四半期連続で前年同期比の伸び率が加速し、第1四半期の+19.0%から第4四半期には+28.7%まで拡大しました。2026年11月期は第1四半期に+27.3%へいったん鈍化したものの、第2四半期は+36.8%(単独)と過去最高の伸び率を記録しています。
四半期売上高成長率の推移(前年同期比)
2026年11月期第2四半期単独の売上高は13.85億円(前年同期比+36.8%)で四半期として過去最高を更新し、営業利益は前年同期比で約17倍に拡大しました。上半期(2025年12月〜2026年5月)累計では売上高26.04億円(同+32.2%)、営業利益5.38億円(同+2,176.1%)となっています(出典:note株式会社 2026年11月期第2四半期決算短信)。
財務健全性 — 相次ぐ増資でバランスシートは大幅に拡大
2025年11月期末の総資産は61.45億円(前期末37.69億円から+63.0%)、純資産は28.79億円(同17.22億円から+67.2%)に拡大しました。自己資本比率は45.9%(前期末45.2%)とほぼ横ばいで、財務レバレッジを抑えたまま規模を拡大しています。現金及び現金同等物は30.56億円(前期末21.66億円)に積み上がっており、直近では営業活動によるキャッシュ・フローも3.93億円のプラス(前期は2.26億円のプラス)と、本業でのキャッシュ創出力も高まっています(出典:note株式会社 2025年11月期 決算短信)。
項目 | 2024年11月期末 | 2025年11月期末 | 2026年11月期2Q末(2026年5月) |
|---|---|---|---|
総資産 | 37.69億円 | 61.45億円 | 109.34億円 |
純資産 | 17.22億円 | 28.79億円 | 77.24億円 |
自己資本比率 | 45.2% | 45.9% | 70.1% |
現金及び現金同等物 | 21.66億円 | 30.56億円 | 73.71億円 |
発行済株式数(期末) | 1,539.05万株 | 1,674.87万株 | 1,936.88万株 |
1株当たり純資産(BPS) | 110.63円 | 168.47円 | 395.5円(KabuGraph算出) |
営業活動によるキャッシュ・フロー | 2.26億円 | 3.93億円 | 7.16億円(上半期) |
2025年11月期の総資産・純資産の拡大は、当期純利益4.4億円の積み増しに加え、2025年1月のGoogle向け第三者割当増資(約5.0億円、98.42万株)、新株予約権の行使(約1.4億円)、2025年6月の長期借入(7億円)によるものです。期末後には2025年12月1日払込のNAVER向け増資(約20.0億円、142.95万株)と2026年4月9日払込のKADOKAWA向け増資(約22.1億円、100万株)が加わり、2026年5月末の純資産は77.24億円、自己資本比率は70.1%まで高まりました。2025年6月に借り入れた長期借入金も上半期中に返済し、固定負債はゼロになっています。財務基盤の強化という点ではプラスですが、短期間に発行済株式数が積み増されている点は、1株当たり指標への影響として意識しておく必要があります(詳しくは次章で解説します)。
2026年11月期の見通し — 期初予想からの大幅な上方修正
2026年11月期の会社予想は、2026年1月13日の期初公表時点から、7月7日の第2四半期決算発表にあわせて大きく上方修正されました。営業利益は期初予想の7.0億円から11.0億円へ、実に57.1%の上方修正です。
項目 | 期初予想(2026年1月13日公表) | 上方修正後(2026年7月7日公表) | 修正幅(期初予想比) |
|---|---|---|---|
売上高 | 56.0億円(前期比+35.2%) | 56.5億円 | +0.8% |
調整後EBITDA | 8.1億円(前期比+157.3%) | 12.2億円 | +50.6% |
営業利益 | 7.0億円(前期比+173.3%) | 11.0億円 | +57.1% |
経常利益 | 7.0億円(前期比+166.5%) | 11.3億円 | +61.4% |
親会社株主に帰属する当期純利益 | 8.5億円(前期比+92.9%) | 12.0億円 | +41.2% |
上方修正の主因は、主力の「note」「note pro」・法人向けサービスの好調による増収と、全社的なAI活用による生産性向上でのコスト抑制です。会社側は、採用・人員配置の最適化で人件費の増加を抑え、施策の効率改善で広告宣伝費を抑制的に運用した結果、営業費用全体が期初計画を約3.5億円下回る見込みだと説明しています。一方、GENIAC採択事業(AI関連事業)は委託費用とほぼ同額を売上に計上する仕組みのため利益への貢献はなく、売上高も当初計画の5億円をやや下回る見通しです。つまり今回の上方修正は「本業の底上げ」によるもので、AI関連の新規事業からの上乗せではありません。
なお、note株式会社は中長期の財務目標として「連結売上高と調整後EBITDA(Rule of 40と似た発想で、成長率と収益性のバランスを測る考え方)を重視する」と説明しており、2028年11月期〜2030年11月期頃を目途に連結売上高100億円、EBITDAマージン30〜40%を目指すことを2026年1月に初めて公表しました。この目標はM&Aを前提とせず、既存事業の成長のみで達成することを想定しています(出典:note IR「2025年11月期決算・2026年11月期業績予想」)。
投資家が注目すべきポイント
ここまで見てきた通り、noteは赤字体質からの脱却に成功し、AI時代を見据えた新しい成長ストーリーを打ち出しています。ただし、こうした期待はすでに株価に相当程度織り込まれています。まず主要な株価指標を確認したうえで、強みとリスクの両面を整理します。
強み① 圧倒的な規模とネットワーク効果を持つCtoCプラットフォーム
noteの最大の強みは、累計会員登録者数1,248万人、公開コンテンツ数8,209万件、累計クリエイター数241万人(いずれも2026年5月末時点)という規模と、そこから生まれるネットワーク効果です。書き手が増えるほど読者にとっての価値が高まり、読者が増えるほど書き手の収益機会が広がるという好循環は、後発サービスが短期間で追いつくことが難しい参入障壁になります。加えて、ランキングや広告に依存しないUXが「静かに書き続けられる場」としてのブランドを確立しており、単純なPV至上主義のメディアとは異なる差別化軸を持っています。
プラットフォーム | 収益モデル | noteとの主な違い |
|---|---|---|
はてなブログ | AdSense・アフィリエイト広告(SEO集客力が強み) | 有料販売は外部サービス(codoc)連携で対応。noteのようなプラットフォーム内蔵の課金・送客の仕組みではない |
Medium | 月額課金読者モデル(閲覧時間に応じた間接分配) | 英語圏中心。クリエイター自身が価格設定できない |
YouTube・X・Instagram等 | 広告分配・サブスクリプション | アルゴリズムによる表示順操作とPV依存が基盤 |
これらに対し、noteの差別化ポイントは、広告モデルに依存しない「コンテンツ課金」中心の設計にあります。noteはランキング機能や広告を一切持たず、クリエイターが自ら定めた価格で読者に直接販売する仕組み(有料記事・メンバーシップ)を核としています。加えて、法人向けSaaS「note pro」という競合にない第二の収益軸を持ち、企業のオウンドメディアコンテンツがプラットフォーム全体の信頼性を高めるという好循環も独自の強みです。この「バズに振り回されない」設計が書き手の安心感につながり、8,000万件超の良質なコンテンツが蓄積される参入障壁を形成しています。
強み② KADOKAWA提携とGENIAC採択が開く「AI時代のコンテンツ流通インフラ」という新市場
2025年12月、noteは経済産業省・NEDOが推進する生成AI国家プロジェクト「GENIAC」に採択されました。事業内容は、出版社や学術団体が持つ高品質なコンテンツを集約し、生成AIが参照するRAG(検索拡張生成)向けデータベースを構築するというもので、KADOKAWA、ダイヤモンド社、学術著作権協会などが連携主体に名を連ねています。事業期間は原則1年(延長が認められれば2027年12月まで)、予算規模は最大15億円(延長時は20億円)です。ただし、この金額はプロジェクト全体の上限であり、全額がnote社の売上・利益に直結するわけではない点に注意が必要です。noteはこの事業を通じて、「生成AIにコンテンツを使われて終わり」ではなく、コンテンツホルダーやクリエイターに対価が還元されるエコシステムの構築を目指すとしています(出典:note株式会社「GENIAC採択」プレスリリース)。2026年11月期第2四半期のGENIAC関連売上高は8,500万円(上半期累計では1.0億円)でしたが、委託費用とほぼ同額を売上に計上する仕組みのため、セグメント利益は96万円と利益貢献はほぼありません。
この構想をさらに具体化したのが、2026年3月24日に締結したKADOKAWAとの資本業務提携です。KADOKAWAは第三者割当増資によりnote株式100万株(約22億円、議決権比率5.22%)を取得し、両社は以下の4領域で連携します(出典:KADOKAWAグループ ニュースリリース)。
IP創出・開発:noteからの書籍化推進
出版DX:KADOKAWAのウェブサイト運営へのnote pro活用
AIデータ流通:GENIACを通じたコンテンツデータ流通基盤の構築
ファンコミュニティ:作品を軸としたファンエンゲージメント施策
この提携を受けて実装が進んでいるのが「AIコンテクストネットワーク」です。読者の感想やレビューをAIが自動的に集約し、作品ごとのページを生成する機能で、KADOKAWAの約7,000作品を対象に開始され、2026年6月末時点で63万件超のページが生成されました。レコメンドエンジンをLLMベースに刷新した効果もあり、2026年3月時点でカテゴリページの記事表示回数は前年同月比4.8倍、PVは3.2倍に伸びています(出典:note IR「2026年11月期第1四半期決算」)。
中長期の売上高目標(2028〜2030年11月期頃)
中長期目標である連結売上高100億円は、2025年11月期実績(41.41億円)の約2.4倍に相当します。GENIAC・KADOKAWA提携によるAI関連の新規収益がどこまでこの目標に上乗せされるかは、まだ実績が積み上がっていない段階であり、今後数四半期の開示を注視する必要があります。
強み③ 黒字化から増益加速フェーズへの移行
前章で見た通り、noteの営業利益は2022年11月期の-7.32億円から2026年11月期予想の11.0億円まで、5期でV字回復を遂げつつあります。会社側が「プラットフォーム事業の損益分岐点を超えた」とコメントしている通り、今後は売上成長がそのまま利益成長に転化しやすい構造に入りつつあります。直近四半期で過去最高を更新した売上成長率とあわせて考えると、業績のモメンタムそのものは強いと評価できます。
リスク① 高PER・高PBRがすでに織り込む「将来の成功」
PER104.1倍、PBR16.6倍という水準は、東証グロース市場の中でも際立って高い部類に入ります。これは裏を返せば、GENIAC・KADOKAWA提携によるAI関連事業の成功や、中長期目標である売上高100億円の達成が、すでに株価にかなりの部分織り込まれていることを意味します。仮にAI関連事業の収益化が計画より遅れたり、note pro・IP事業の成長が鈍化したりした場合、期待先行で買われてきた株価が大きく調整するリスクは相応に意識しておく必要があります。
高PERを成長率で補正して評価するPEGレシオの考え方を使うと、直近の営業利益成長率(2026年11月期予想で前期比+329.4%)を踏まえれば数値上は必ずしも「割高」と言い切れない面もあります。ただしこの高成長率は、赤字から黒字に転換した直後の低い利益水準を分母にした特殊な状況によるところも大きく、成長率が今後も同水準で続く保証はありません。
リスク② IP事業の赤字継続と、AI関連収益化の不確実性
IP・コンテンツクリエーション事業についても、2025年11月期のセグメント損失は1,394万円と前期からさらに拡大しました。ダイヤモンド・オンラインの分析が指摘する通り、ヒット作の再現性という構造的な課題は一朝一夕には解決しにくく、KADOKAWA・講談社・集英社といった編集資産を長年蓄積してきた大手出版社との競争は簡単ではありません。IP事業がいつ黒字化するか、あるいはKADOKAWAとの提携がここにどう波及するかは、決算ごとに確認すべきポイントです。
リスク③ 相次ぐ増資による希薄化と、無配という株主還元方針
2025年1月(Google)・2025年12月(NAVER)・2026年4月(KADOKAWA)の3度の第三者割当増資により、noteの発行済株式数は2024年11月期末の1,539.05万株から2026年5月末には1,936.88万株へ約25.8%増加しています。成長投資の原資を確保する観点では合理的な選択ですが、既存株主から見れば1株当たり利益・純資産の希薄化要因であることに変わりはありません。また、noteは2024年11月期・2025年11月期とも無配であり、2026年11月期も無配予想です。株主還元よりも成長投資を優先する方針であるため、配当を目的とした投資対象ではなく、値上がり益(キャピタルゲイン)を狙う投資家向けの銘柄である点は理解しておく必要があります。
まとめ
note株式会社は、CtoCコンテンツプラットフォーム「note」を軸に、2024年11月期の黒字転換を経て、2026年11月期には営業利益11.0億円(会社予想)まで急拡大する局面にあります。累計会員登録者数1,248万人という規模とネットワーク効果に加え、GENIAC採択とGoogle・NAVER・KADOKAWAとの資本業務提携により、「AI時代のコンテンツ流通インフラ」という新しい成長ストーリーを描き始めた点は、他の国内メディア企業にはない独自のポジショニングです。
投資を検討するうえでのポイントを整理すると、次の通りです。
業績モメンタム:売上高成長率は2026年11月期2Qに+36.8%と過去最高を更新し、プラットフォーム事業は損益分岐点を超えて増収がそのまま増益に直結する構造に入りつつあります。
AI戦略の実質性:GENIAC採択・KADOKAWA提携は事業機会として大きい一方、収益貢献の時期・規模は会社自身が「未定」としており、今後の開示で実態を継続的に確認する必要があります。
バリュエーション:PER104.1倍・PBR16.6倍は、将来の成功をかなりの程度織り込んだ水準であり、成長シナリオが崩れた場合の株価調整リスクは相応に大きいと考えられます。
周辺事業の課題:IP・コンテンツクリエーション事業(Tales & Co.)は赤字が続いており、黒字化の道筋は現時点で明確ではありません。
株主還元:無配方針であり、配当ではなく成長を通じた株価上昇を期待する投資対象です。相次ぐ増資による希薄化も念頭に置く必要があります。
まとめると、noteは「赤字の創作プラットフォーム」から「AI時代のコンテンツ流通インフラを目指す成長企業」へと物語を書き換えつつある局面にあります。決算のたびに上方修正が続く業績モメンタムは魅力的である一方、その多くがまだ実現していない将来の成功を織り込んだ高いバリュエーションに支えられていることも事実です。次回以降の決算では、GENIAC・KADOKAWA提携がどこまで実際の売上・利益に転化するか、そしてIP事業の収益化がいつ見えてくるかを継続的にチェックしていくことが重要になります。
note
CtoCメディアプラットフォーム「note」(2025年11月末で8,660万MAU、11,147千人会員)。クリエイターが無料/有料コンテンツ販売、累計320作品以上が書籍化。企業向けSaaS「note pro」(991社)で自社メディア…
本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。投資の最終判断はご自身の責任でお願いいたします。記事中の株価・株価指標は2026年8月27日終値、その他の数値は2026年8月28日時点の開示情報に基づいています。










