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ELEMENTS(5246)の企業分析|eKYC市場7年連続シェアNo.1「LIQUID」の成長性と黒字転換

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ELEMENTS(5246)は、オンライン本人確認サービス「LIQUID eKYC」を中心に、eKYC市場で7年連続国内シェアNo.1を誇る個人認証テクノロジー企業です。

2025年3月にeKYC市場2位のポラリファイを子会社化し、グループ累計で約700社・約1.5億件の本人確認実績を持つ国内最大級のeKYCプラットフォームとなりました。2026年11月期第2四半期累計(2025年12月〜2026年5月)では売上高28.0億円(前年同期比+65.3%)、営業利益3.3億円と四半期黒字化を達成し、長期の赤字フェーズから脱却する兆しを見せています。

この記事では、ELEMENTSの事業構造、eKYC市場での競争優位、業績推移と黒字転換の見通し、投資判断のポイントを個人投資家の視点から解説します。

会社概要 — eKYC市場を創った生体認証テクノロジー企業

ELEMENTSは、久田康弘氏(現・代表取締役会長)が2013年に設立した生体認証テクノロジー企業です。「BEYOND SCIENCE FICTION」をグループミッションに掲げ、個人認証・個人最適化・基盤セキュリティの3領域でソリューションを展開しています。

項目

内容

会社名

株式会社ELEMENTS(ELEMENTS, Inc.)

証券コード

5246(東証グロース)

設立

2013年12月

上場

2022年12月(東証グロース)

代表者

代表取締役会長 久田康弘 / 代表取締役社長 長谷川敬起

従業員数

103名(連結、2025年11月末時点)

本社

東京都中央区日本橋本町

決算期

11月

時価総額

約224億円(2026年9月10日時点)

出典:ELEMENTS コーポレートサイト・IR資料よりKabuGraph作成

M&Aで市場を統合するeKYCプラットフォーマー

ELEMENTSの成長は、有機成長とM&Aの組み合わせで進んできました。

  • 2013年 — Liquid(現・子会社)設立。生体認証技術の研究開発を開始

  • 2019年 — 「LIQUID eKYC」を提供開始。犯罪収益移転防止法の改正でeKYCの法的基盤が整備されたタイミング

  • 2022年12月 — 東証グロース市場にIPO(公開価格160円、初値312円)

  • 2025年3月SMBCグループ傘下のポラリファイを約15.4億円で子会社化。eKYC市場の上位2社が統合し、グループ契約数は約700社に拡大(ELEMENTS プレスリリース

ELEMENTSの売上は99%超が個人認証ソリューション事業で占められています。eKYC(LIQUID eKYC + ポラリファイeKYC)を中核に、当人認証「LIQUID Auth」、不正検知「LIQUID Shield」など認証サービスのラインナップを広げています。

通期業績推移(売上高・営業利益・営業利益率・売上高成長率)

出典:決算短信よりKabuGraph作成。2026/11期は2026年7月14日時点の会社予想(上方修正後、営業利益は予想レンジ上限の4億円を採用)

3つの事業を理解する

ELEMENTSグループの事業は大きく「個人認証ソリューション」「個人最適化ソリューション」「Next Seeds(新規事業)」の3つに分かれますが、売上の99%超を個人認証が占めています。ここでは各事業の仕組みを解説します。

① LIQUID eKYC — eKYC市場7年連続シェアNo.1

LIQUID eKYCは、AI審査でオンライン本人確認業務を自動化するSaaSサービスです。ユーザーが本人確認書類の撮影と自撮りの顔写真を提出すると、AIが照合して本人確認を完了します。ICチップ読み取り方式やマイナンバーカードを活用した公的個人認証(JPKI)にも対応しています。

ITR「ITR Market View:アイデンティティ・アクセス管理/個人認証型セキュリティ市場2026」によると、LIQUID eKYCはeKYC市場のベンダー別売上金額シェアで2019年度から7年連続No.1を獲得しています(ELEMENTS プレスリリース 2026年5月)。

導入実績は幅広く、eKYC導入済み銀行の66%、国内大手携帯キャリア4社中3社(契約数ベースでシェア率96%)に採用されています。金融機関のほか、DMM.com、KDDI、タイミー、bitbank、Coincheck、LUUPなど多業種で利用されています。

LIQUID eKYCの公式サービスページ。eKYC国内シェアNo.1、累計約1.5億件の本人確認実績
出典:Liquid公式サイト

② ポラリファイ eKYC — 統合で市場の上位2社を手中に

2025年3月に子会社化したポラリファイは、SMBCグループ・NTTデータ・米Daon社が2017年に設立したeKYC企業です。「Polarify eKYC」を2018年から提供し、LIQUID eKYCに次ぐ国内2位のシェアを持っていました。

この統合により、グループの累計契約企業数は約700社、累計本人確認件数は約1.5億件に達しました。SMBCグループは引き続きポラリファイ株を4.99%保有しており、金融機関との連携も維持されています(ELEMENTS プレスリリース 2025年1月)。

PMI(統合後の経営)では、通信費を買収前比で50%超削減し、顔認証エンジンの切り替えによるさらなるコスト削減が進んでいます。2026年9月のライセンス契約切替で粗利率の大幅改善も見込まれています。

③ LIQUID Auth — パスキー技術で「継続認証」市場を開拓

LIQUID Authは、eKYCで本人確認した結果を「継続的な当人認証」に活用するサービスです。パスキー(FIDO2)技術を用いた生体認証で、IDとパスワードに依存しないセキュアなログインを実現します。

2025年8月には大手オンライン証券会社への不正対策でパスキーの提供を開始。ログイン時の生体認証に加え、注文や出金といった取引時にもパスキーによる再認証を行い、ウイルス感染や遠隔操作による不正利用を防止します(ELEMENTS プレスリリース 2025年8月)。月間認証回数は前年比約20倍に急成長しています。

LIQUID Auth Faceの公式サービスページ。クラウドで広がる顔認証の活用
出典:Liquid公式サイト

④ 新規事業 — AiQ Permission・ELEMENTS CLOUD

新規事業(Next Seeds)では、AI自動給油許可監視システム「AiQ Permission」が注目されます。2026年2月の消防法改正により、ガソリンスタンドでAIによる給油監視が認められるようになり、人手不足が深刻な業界への導入が期待されています(AiQ Permission公式)。

AiQ PERMISSIONの公式サービスページ。AI自動給油許可監視システム
出典:ELEMENTS公式サイト

また、「ELEMENTS CLOUD」ではGPUクラウドサービスを展開しており、四国のデータセンター子会社を通じてNVIDIA依存の軽減を目指す産総研との5年間の共同プロジェクトも進行中です。

業績推移と財務分析

ELEMENTSは売上高は年率30%超の高成長を続けている一方、上場以来通期黒字を達成できていないのが現状です。ここでは業績の推移と、黒字転換に向けた進捗を見ていきます。

通期業績推移 — 赤字のなかでも急拡大する売上

決算期

売上高

営業利益

純利益

EPS

2022/11

16.5億円

-5.8億円

-5.6億円

-39.47円

2023/11

19.4億円

-3.0億円

-3.4億円

-16.07円

2024/11

25.5億円

0.6億円

-1.3億円

-5.66円

2025/11

39.0億円

-2.2億円

-7.0億円

-28.14円

2026/11(予)

51〜53億円

2〜4億円

出典:決算短信よりKabuGraph作成。2026/11期予想は2026年7月14日時点の上方修正後

注目すべきは2025年11月期の純損失7.0億円の大半がポラリファイ買収関連の一時費用である点です。のれん償却費用を除くベースでは、同期のEBITDAは黒字化を達成しています。

Q2進捗 — 通期黒字化への手応え

2026年11月期第2四半期累計(2025年12月〜2026年5月)の実績は、売上高28.0億円(前年同期比+65.3%)、営業利益3.3億円(前年同期は0.9億円の赤字)と大幅な増収・黒字転換を達成しました。この結果を受けて、会社は通期の経常利益予想を「1億円の赤字〜1億円の黒字」から「2〜3億円の黒字」に上方修正しています。

四半期売上高推移(四半期ごと)

出典:決算短信よりKabuGraph作成。売上高成長率は前年同四半期比。2024/11期はポラリファイ連結前のため比較参考値

中期経営計画 — FY27に営業利益率15%を目標

ELEMENTSは中期経営計画で2027年11月期に売上高60〜65億円、営業利益率15%、EBITDAマージン25%を目標としています。上場後5年間で年平均成長率(CAGR)30%以上を維持する想定です(ログミーFinance 決算説明書き起こし)。

この計画の実現には、ポラリファイPMIによるコスト削減と、LIQUID AuthなどeKYC以外の認証サービスの売上拡大がカギとなります。

eKYC市場の成長性と競合環境

ELEMENTSの成長を評価するには、eKYC市場の構造と成長の持続性を理解する必要があります。

市場規模と成長ドライバー

ITR調査によると、日本のeKYC市場は2021年度から2026年度にかけてCAGR28.0%で成長し、2026年度には152億円に達すると予測されています(ITRプレスリリース)。成長を支える3つの構造的要因があります。

  1. 犯罪収益移転防止法の改正 — 2027年に予定される法改正により、対面での本人確認からオンライン完結への移行がさらに加速する見通し

  2. マイナンバーカード活用の推進 — ELEMENTSは2026年2月に「プラットフォーム事業者」として主務大臣認定を取得しており、JPKI(公的個人認証)対応で先行

  3. 不正取引の増加 — SNS型投資詐欺、ロマンス詐欺、ディープフェイクによるなりすましなど、サイバー犯罪の高度化がeKYC需要を構造的に押し上げ

競合環境 — 上位2社統合で寡占構造へ

eKYC市場はLIQUID eKYC(旧1位)とポラリファイeKYC(旧2位)がELEMENTSグループに統合されたことで、圧倒的な寡占構造が形成されています。一方で、TRUSTDOCKやネクスウェイといった競合も存在し、マイナンバーカードの公的個人認証(JPKI)が普及すれば、写真照合型eKYCの需要が縮小するリスクもあります。

投資家が注目すべきポイント

強み(Bull Case)

  1. 累計1.5億件の認証データが参入障壁 — 本人確認は金融犯罪対策の社会インフラであり、導入先の銀行・通信キャリアは簡単にベンダーを切り替えられない。データの蓄積が精度向上とリスクスコアリングに直結するため、後発の参入ハードルが高い

  2. ポラリファイPMIのコストシナジー — 通信費50%超削減、人件費40%超削減の見通し。2026年9月のライセンス切替で粗利率がさらに改善し、中期目標の営業利益率15%が射程に入る

  3. 法規制の追い風が構造的に続く — 犯収法改正、マイナンバーカード活用促進、不正送金対策の強化など、eKYC需要を押し上げる政策が次々と打ち出されている。2026年9月時点でeKYC導入済み銀行は全体の60%超であり、未導入の地銀・ノンバンクへの浸透余地は大きい

リスク(Bear Case)

  1. 通期黒字の持続性が未証明 — 2026年11月期は上方修正で経常利益2〜3億円の黒字を見込むが、のれん償却やPMI費用を考慮すると利益率は薄い。経常黒字が1期だけでは成長株としての評価は定まらない

  2. JPKI普及によるeKYC陳腐化リスク — マイナンバーカードのICチップ読み取り(JPKI)が普及すれば、写真照合型eKYCの需要が縮小する可能性がある。ELEMENTSはJPKI対応も進めているが、JPKI単体では差別化しにくい

  3. 時価総額224億円に対して純損失の企業 — PBR約7倍、PER算出不能(赤字)、無配。黒字化の遅れや成長鈍化があれば、グロース銘柄特有の急落リスクがある

バリュエーション

指標

ELEMENTS

備考

株価

824円

2026年9月10日終値

時価総額

約224億円

PER

算出不能

直近通期が赤字のため

PBR

6.98倍

PSR(時価総額÷売上高)

約4.4倍

会社予想売上51億円ベース

配当

無配

出典:東証株価・決算短信よりKabuGraph算出(2026年9月10日時点)

まとめ

ELEMENTSは、eKYC市場で7年連続シェアNo.1を維持しながら、ポラリファイ統合により圧倒的な市場ポジションを築いた個人認証テクノロジー企業です。

売上成長率は年率30%超と高水準で、犯収法改正やマイナンバーカード活用推進といった規制の追い風も構造的に続いています。2026年11月期Q2では四半期黒字化を達成し、通期の経常利益も上方修正されました。

一方で、通期での安定黒字はまだ実現しておらず、PBR 7倍・無配というバリュエーションを正当化するには、中期経営計画で掲げた営業利益率15%の達成が不可欠です。黒字定着を確認してからエントリーするか、eKYC市場の構造的成長を先取りするかは、投資家のリスク許容度によって判断が分かれるでしょう。

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コラム著者・編集者

K

KabuGraph編集部

KabuGraph編集部は、投資情報の発信と株式分析ツールの開発に携わるチームです。日本株・米国株の事業分析から、投資に役立つ情報をわかりやすくお届けします。

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