VRAIN Solution(135A)の企業分析|AI外観検査「Phoenix」で製造業の品質革新をリードする急成長企業

VRAIN Solution(135A)は、製造業の検査工程をAIで自動化するAI外観検査システム「Phoenix」シリーズと、DXコンサルティングの2本柱で急成長するテクノロジー企業です。
2026年2月期は売上高32.78億円(前期比+52.9%)、営業利益9.14億円(同+53.8%)といずれも過去最高を更新。中期経営方針では売上高CAGR +50%・営業利益率30〜40%を掲げ、2027年2月期は営業利益率30.1%への改善を計画しています。
この記事では、VRAIN SolutionのAIプロダクトの仕組み、業績推移と財務分析、成長戦略、投資判断のポイントを、個人投資家の視点からわかりやすく解説します。
この記事の内容(目次)
会社概要 — キーエンス出身CEOが創業4年で上場
VRAIN Solutionは、キーエンス出身の南塲勇佑氏が2020年3月に設立した製造業特化のAIソリューション企業です。「モノづくりのあり方を変え、世界を変えていく」をミッションに掲げ、創業からわずか4年で東証グロース市場に上場(2024年2月22日)を果たしました。
項目 | 内容 |
|---|---|
会社名 | 株式会社VRAIN Solution(ヴレイン ソリューション) |
証券コード | 135A(東証グロース) |
設立 | 2020年3月 |
上場 | 2024年2月(東証グロース) |
代表取締役社長 | 南塲 勇佑(キーエンス出身) |
従業員数 | 138名(2026年2月末時点) |
本社 | 東京都中央区(晴海アイランドトリトンスクエア) |
セクター | 情報・通信業 |
キーエンスの営業力とAI技術を掛け合わせた経営
南塲社長はキーエンスで法人営業を経験した後、エムスリーを経て2020年にVRAIN Solutionを設立しました。キーエンス流の「現場に入り込む営業スタイル」をAIソリューションに持ち込み、製造現場の課題を深く理解した上でプロダクトを開発するのが同社の特徴です。
社外取締役の北田眞治氏はトヨタ自動車の常務役員やトヨタバッテリーの代表取締役社長を歴任し、顧問にはトヨタ自動車取締役副社長を務めた伊原保守氏や小松製作所副社長を務めた高橋良定氏が名を連ねるなど、製造業のトップ人材が経営に参画しています。2026年2月には「JPXスタートアップ急成長100指数」の構成銘柄にも選定されました。経常利益CAGRは約184%(2022年2月期〜2026年2月期)で、指数構成銘柄中No.1の成長率です(VRAIN Solution IR)。
2つの事業を理解する
VRAIN Solutionの事業は「製造業DX事業」の単一セグメントですが、サービスの性質からAIシステム(売上高の94%)とDXコンサルティング(同6%)の2つに分けて理解できます(2026年2月期実績)。

AI外観検査システム「Phoenix」シリーズ
主力プロダクトは、製造ラインの検査工程で検査員の目視判定をAIで自動化する「Phoenix」シリーズです。3つのソフトウェアで構成されています。
Phoenix Vision(学習用ソフトウェア) — 複数の最新AIアルゴリズムを搭載し、専門知識がなくても簡単にAI学習・検証ができるソフトウェア。分類・物体検出・欠陥検知・正常データ学習の4つのアルゴリズムを検査対象に応じて使い分けられます
Phoenix Eye(検査用ソフトウェア) — カメラやPLCなどの設備と直接接続し、独自開発のAIアルゴリズムとルールベースを併用した検査が可能。製造ラインに組み込んでリアルタイムの良否判定を行います
Phoenix Analyzer(異音振動検査ソフトウェア) — マイクや振動センサから得られる波形データを画像化し、AIで良否判定を行うソフトウェア。外観では検知できない内部の異常を音や振動から検出します
これらのソフトウェアに、カメラ・排出機構などの撮像機器をセットにした一体型ソリューションとして提供するのが基本モデルです。AIシステムの平均販売単価は1,800万円(2026年2月期、年度内累計平均)で、ソフトウェア単体の販売が増えたことで前期比で微減傾向にあります。
新製品:AI X線検査機「PX-1000N」
2026年2月期にリリースされた新製品「PX-1000N」は、AI技術とX線検査技術を融合した内部欠陥検査機です。従来のPhoenixシリーズが外観(表面)の検査を得意とするのに対し、PX-1000Nは製品内部の異物検出・欠陥検知・数量カウントに対応します。

高精度なX線×AI検査 — 最新のX線センサで高感度・高解像度の撮像が可能。外観検査で培ったAI画像解析技術をX線画像に最適化
防塵・防水設計で長寿命 — クーラーレス設計により工場の過酷な環境でも安定稼働。低負荷・省電力運用が可能
外観+内部の一括検査 — Phoenixカメラとの接続で外観と内部を1台で検査可能。最大90m/分の高速コンベアに対応
食品業界を主なターゲットとしており、2027年2月期から本格的な販売を計画しています。外観検査と内部検査の両方をカバーすることで、1顧客あたりの受注単価引き上げが期待されます。
DXコンサルティング
もう一つの柱が製造業顧客のDX推進を伴走・実装型で支援するDXコンサルティングです。製造業向けAI講座による人材育成、アルゴリズム開発支援、プロダクト組み込み支援、AIソリューション提供、MLOps支援など、顧客が自社でDXを内製化できるまでを包括的にサポートします。
売上構成比は6%と小さいものの、DXコンサルティングで工場の課題を深く知ることで、新たなAIプロダクトの種を見つけるという戦略的な位置づけです。2027年2月期はDXコンサルティングで4億円の売上を計画しています。
業績推移と財務分析
VRAIN Solutionは上場以来、売上高・営業利益ともに毎期50%前後の成長を続けています。2027年2月期の会社予想も含めた通期業績推移を見てみましょう。
通期業績推移(売上高・営業利益・営業利益率・売上高成長率)
売上高の成長ドライバー
成長の原動力は明確です。累計取引社数の拡大(337社、前期末比+104社)と、継続顧客からのリピート受注(14.76億円、売上高の45%)の両輪が回っています。業種別では食品が中心ですが、自動車・機械・化学・金属・医薬品・鉄鋼・製紙と裾野が広がっています。
受注残高も前期末の3.89億円から12.69億円(+225.5%)へ急増。サントリープロダクツの大型案件(約2.5億円、国内7工場・複数ライン)や、大手半導体セラミックスメーカーのAI外観・3D形状測定検査システムなど、大型案件の獲得が進んでいます。
営業利益率の変動と成長投資
営業利益率は2024年2月期の36.0%から2025年2月期に27.7%へ低下しましたが、これは積極的な成長投資によるものです。2026年2月期は販管費が前期比+53.6%増加しましたが、内訳は人件費6.65億円(+62.9%)、採用費2.57億円(+45.1%)、研究開発費2.69億円(+16.1%)と、将来の成長基盤づくりに投じています。本社移転の一過性コスト(約0.76億円)も含まれており、これを除けば実質的な利益率はより高い水準です。
2027年2月期は営業利益率30.1%への回復を計画しています。従業員数は138名から210名への増員を見込みつつも、売上高の伸び(+47.1%)が販管費の伸びを上回り、規模拡大に伴う利益率改善フェーズに入ります。
事業別売上高と最新Q1の状況

直近の2027年2月期Q1(2026年3月〜5月、2026年7月14日開示)は、売上高6.48億円(前年同期比+231.5%)と大幅な増収を達成しました。営業損失は-0.31億円(前年同期は-2.28億円の赤字)と赤字幅が大きく縮小し、損益改善が進んでいます。累計取引社数は358社に拡大し、受注残高は13.86億円と引き続き高水準です。
株価指標
指標 | 値 |
|---|---|
株価 | 4,520円 |
時価総額 | 464億円 |
PER(実績) | 70.7倍 |
PBR | 22.22倍 |
ROE(2026年2月期) | 37.2% |
配当利回り | 0%(無配) |
投資家が注目すべきポイント
成長ドライバー
1. 製造業のDX投資は構造的な追い風
少子高齢化と人口減少により、日本の製造業は労働力不足が深刻化しています。政府もDX推進を後押しする中、検査工程のAI化はまだ始まったばかりです。同社の累計取引社数は358社ですが、日本には数万の製造拠点があり、市場の浸透率はまだ極めて低い段階です。
2. 大手顧客の「全工場展開」モデル
サントリープロダクツの事例に見られるように、「まず1工場で検証→成功すれば全工場・全ラインに展開」という導入パターンが確立しつつあります。大手1社あたりの生涯受注額が大きくなる構造であり、継続顧客売上高の比率(45%)が今後さらに高まる可能性があります。
3. 拠点拡大と海外展開
2027年2月期は宇都宮・長野・金沢・広島・福岡の5営業所を新設する計画です。特に地方の製造業は「人手不足」と「技能承継」の課題がより深刻であり、地方拠点の整備は需要の取り込みに直結します。また、2026年2月期にバンコクの展示会(METALEX 2025)でテストマーケティングを実施しており、海外展開も視野に入っています。
4. PX-1000Nによる「外観+内部」のワンストップ化
AI X線検査機「PX-1000N」の投入により、これまでカバーできなかった内部欠陥検査領域にも進出します。既存のPhoenixシリーズ顧客に対する追加提案が可能となり、1社あたりの受注単価を引き上げるクロスセル戦略が期待されます。
リスク要因
1. 高いバリュエーション
2026年9月5日時点のPERは70.7倍で、東証グロース市場の中でも高い水準です。会社予想の2027年2月期EPS 94.85円ベースでもPERは約47倍。高い成長期待を織り込んだ株価であり、業績の未達や成長鈍化があれば株価調整リスクは大きくなります。
2. 営業キャッシュ・フローのマイナス
2026年2月期の営業CFは-3.75億円(前期も-1.61億円)です。売上高が急伸する一方、売掛金及び契約資産が19.57億円(+133.4%)まで膨らんでおり、資金回収が売上計上に追いついていません。期末に売上が集中するビジネス特性上、一時的な現象ではありますが、運転資金の管理には注意が必要です。実際に短期借入金4億円を新規に調達しています。
3. 大手企業との競合
AI外観検査の導入には従来、撮像機器メーカー・AI開発会社・装置メーカーの3社が必要で、製造現場がそれらを自力でつなぐ負担がありました。VRAINはこの3領域を自社で内製し一体納品する「ワンストップ」を差別化として打ち出しています。ただし、キーエンス(6861)のCV-X/XG-Xシリーズも撮像からAI検査までをカバーしトータル提案をうたっており、コグネックスやハカルスを含め有力な競合が複数います。キーエンスは圧倒的な営業網・顧客基盤・資本力を持ち、サービスの統合度を高めてくればVRAINのワンストップ優位は縮まるリスクがあります。
4. 経営体制の若さ
設立から6年の若い企業であり、従業員138名(2026年2月末)の組織が急速に210名規模へ拡大する計画です。急成長期の組織づくりは容易ではなく、人材の定着や組織文化の維持が今後の課題となりえます。トヨタ・コマツ出身の重鎮を経営陣に迎えている点はポジティブですが、まだ経営チームとしての実績の蓄積は浅い段階です。
まとめ
VRAIN Solutionは、製造業の検査工程をAIで変革するという明確なポジションを持ち、売上高CAGR +50%という高い目標を掲げて急成長を続ける企業です。
強み:粗利率79%のソフトウェア型ビジネス、撮像機器からAI・装置までの一体内製によるワンストップ提供、サントリーなど大手への導入実績、累計337社の顧客基盤
課題:PER 70倍超の高バリュエーション、Q4偏重の季節性、営業CFマイナス、大手企業との競合
注目点:PX-1000Nによる外観+内部の検査ワンストップ化、5拠点新設による地方開拓、海外展開の本格始動
2027年2月期の会社予想(売上高48.23億円、営業利益14.49億円)が実現すれば、売上高で初の40億円超え、営業利益率は30%台に乗せることになります。日本の製造業が直面する人手不足と品質管理の課題は構造的であり、AI外観検査の市場拡大は長期的に続くと見込まれます。ただし、現在の株価は相当程度の成長を織り込んでいるため、四半期ごとの業績進捗と受注残高の動向を丁寧に追いながら投資判断を行うことが重要です。










