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ソラコム(147A)の企業分析|IoT通信プラットフォームで世界1,000万回線を突破した成長戦略

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ソラコム(147A)は、IoTプラットフォーム「SORACOM」を提供するKDDI傘下のテクノロジー企業です。世界206の国と地域をカバーするIoT通信基盤を構築し、契約回線数は2026年7月に1,000万回線を突破しました。

2026年3月期は売上高124億円(前期比+38.1%)、営業利益8.7億円(同+32.7%)と大幅な増収増益を達成。ARR(年間経常収益)は110億円に到達し、グローバルリカーリング収益比率は50%を超え、海外事業が国内を上回る転換点を迎えています。

この記事では、ソラコムのIoTプラットフォームの仕組み、業績推移、AI×IoT戦略、投資判断のポイントを個人投資家の視点から解説します。

会社概要 — 元AWS出身CEOが創業したIoTインフラ企業

ソラコムは、Amazon Web Services(AWS)でエバンジェリストを務めた玉川憲氏が2014年に創業したIoTプラットフォーム企業です。従来は通信キャリアが独占していたモバイルコアネットワークをクラウド上にソフトウェアで構築するという革新的なアプローチで、IoT通信のコストと導入ハードルを劇的に下げました

項目

内容

会社名

株式会社ソラコム(SORACOM, INC.)

証券コード

147A(東証グロース)

設立

2014年11月

上場

2024年3月(東証グロース)

代表取締役社長 CEO

玉川 憲(元AWS エバンジェリスト)

資本金

28億51百万円(2026年3月末時点)

本社

東京都港区元赤坂

親会社

KDDI株式会社(議決権比率約53%)

セクター

情報・通信業

出典:ソラコム 会社概要

創業から上場まで — 10年の軌跡

  • 2014年 — 元AWSの玉川憲氏が設立。「クラウドの力で通信を民主化する」をビジョンに掲げる

  • 2015年 — IoTプラットフォーム「SORACOM」を提供開始。クラウド上にモバイルコアを構築する世界初のアプローチ

  • 2017年 — KDDIグループに参画。通信インフラの信用力と大企業への販路を獲得

  • 2024年 — 東証グロース市場に上場(3月)。上場後も高成長を維持

  • 2026年 — 契約回線数1,000万突破、ARR 110億円達成。Gartner MQで3年連続リーダー評価

通期業績推移と会社予想(売上高・営業利益・営業利益率・売上成長率)

出典:決算短信よりKabuGraph作成。2027/3期は会社予想(2026年8月12日開示)

IoTプラットフォーム「SORACOM」を理解する

ソラコムの事業は単一セグメントですが、提供するサービスは「コネクティビティ(通信)」「アプリケーション」「ソリューション」の3レイヤーで構成されています。IoTデバイスの通信から、データ収集・分析・AI活用までをワンストップで提供するプラットフォームです。

SORACOM IoTプラットフォームの全体像 — コネクティビティからアプリケーションまでの7レイヤー構成
出典:ソラコム公式サイト

コネクティビティ — SORACOM Air(IoT SIM)

ソラコムの基盤サービスがSORACOM Airです。IoTデバイスに挿すSIMカードを提供し、2G/3G/LTE/LTE-M/5Gのセルラー通信、LPWA(Sigfox、LoRaWAN)、さらには衛星通信までをカバーします。

特筆すべきは、従来の通信キャリアがハードウェアで構築していたモバイルコアネットワークをクラウド(AWS)上にソフトウェアで実装した点です。これにより、1枚のSIMから申し込み可能で、Web/APIでリアルタイムに通信の監視・制御ができます。従来のMVNOが年単位の契約・大量発注を前提としていたのに対し、ソラコムはPoCから製品化までシームレスにスケールできる仕組みを実現しました。

SORACOM Air — IoT向けデータ通信SIMサービスの紹介ページ
出典:ソラコム公式サイト

なぜ簡単に真似できないのか — 技術的な参入障壁

「クラウドで通信を処理する」と聞くと簡単そうですが、ソラコムは既存ソフトをクラウドに移したのではありません。そもそもクラウドで動く通信ソフトが存在しなかったので、ゼロから作ったのがポイントです。

携帯電話のコアネットワーク(PGW・HSSと呼ばれる中核装置)は、EricssonやNokiaが専用ハードウェアごと売る世界で、汎用のクラウドサーバーで動くソフトウェア版は市場にありませんでした。ソラコムはこれをGo言語で一から自社開発し、独自のコアインターフェース「Polaris」とマイクロサービス群「Dipper」として実装しています。

実装のハードルは大きく3つあります。

  • テレコムの通信プロトコル(GTP・Diameter等)は仕様書だけで数千ページあり、さらにキャリアごとに仕様書にない独自の挙動がある

  • 携帯通信はデバイスごとにセッション状態を持つ「ステートフル」な処理で、「ステートレスにスケール」するクラウドの設計思想と根本的に相性が悪い

  • テレコムの知識とクラウドの設計力を両方持つエンジニアがほとんどいない。通信のプロはキャリアに、クラウドのプロはWeb系にいて、両者が交わる場面は少ない

ただし、この先行優位が永続する保証はありません。大手キャリア自身が5G時代にクラウドコアへ移行しつつあり、技術差は時間とともに縮まります。ソラコムにとっては、先行期間のうちに顧客基盤(1,000万回線・NRR 121%)とプラットフォームの粘着性をどこまで積み上げられるかが勝負です。

アプリケーション — SORACOM Flux(ローコードIoTアプリビルダー)

2024年に提供を開始したSORACOM Fluxは、センサーデータやカメラ画像を生成AIで分析し、IoTデバイスの自動制御まで行えるローコードアプリケーションビルダーです。プログラミングの専門知識がなくても、コンソール上でドラッグ&ドロップ操作でIoTアプリケーションを構築できます。

Fluxの戦略的な意義は、ソラコムが「通信屋」から「IoTアプリケーションプラットフォーム」へと進化する点にあります。通信SIMだけでは大手クラウドプロバイダーとの差別化が難しくなりますが、アプリケーション層まで囲い込むことで顧客のスイッチングコストを高め、ARPAの向上に繋がります。

SORACOM Flux — ローコードIoTアプリケーションビルダーの概念図
出典:ソラコム公式サイト

新サービス — SORACOM Agent(AIエージェント)

2026年7月に発表されたSORACOM Agentは、IoTプロジェクトのライフサイクル全体(要件定義・設計・開発・運用)をAIが支援するエージェントサービスです。IoTシステム構築の専門知識がなくても、自然言語での対話を通じてデバイス選定やネットワーク設計、トラブルシューティングまで行えます。

IoT導入の最大のボトルネックは技術人材の不足です。SORACOM Agentにより、IoTの専門家がいない企業でもIoTプロジェクトを立ち上げられるようになり、ソラコムの潜在市場を大幅に拡大する可能性があります。

業績推移と財務分析

売上高は4期で57%成長 — リカーリング比率75%超

ソラコムは2024年3月に上場したばかりのため、開示されている通期業績は4期分です。2024/3期の売上高79.3億円から2026/3期には124.2億円へ、2期で57%の売上成長を達成しています。

指標

2024/3

2025/3

2026/3

2027/3(予)

売上高

79.3億円

89.9億円

124.2億円

151.2億円

営業利益

7.3億円

6.6億円

8.7億円

11.2億円

純利益

4.9億円

3.5億円

6.3億円

7.1億円

営業利益率

9.2%

7.3%

7.0%

7.4%

EPS

12.59円

7.84円

13.94円

15.49円

出典:決算短信よりKabuGraph作成。2027/3期は会社予想(2026年8月12日開示)

注目すべきはリカーリング(経常)収益の高さです。2026/3期のリカーリング収益は93.0億円で売上高の74.8%を占め、前期比+41.7%の成長を遂げています。IoT SIMは一度デバイスに組み込まれると継続的に通信料が発生するため、回線数の積み上がりが安定収益に直結します。

グローバル売上比率50%超 — 米国CAGR71%の急成長

ソラコムの大きな成長ドライバーが海外事業です。2027/3期Q1でグローバルリカーリング収益比率が初めて50%を超えました。特に米国事業のCAGR(年平均成長率)は71%に達しており、北米でのIoT導入加速が追い風となっています。

リカーリング収益の推移(国内・グローバル)

出典:決算説明資料よりKabuGraph作成。2027/3期はKabuGraph推計

2027/3期Q1 — 売上52%増・営業利益69%増で好発進

直近の2027/3期第1四半期(2026年4〜6月)は、売上高33.8億円(前年同期比+52.1%増)、営業利益2.1億円(同+69.3%増)と大幅な増収増益でした。ただし、この52%成長の約半分は2025年8月に子会社化したミソラコネクト(Misora Connect)の連結効果です。経営陣はM&Aを除いたオーガニック成長率を「20%台後半」としており、前期通期の38.1%と比べると純粋な成長は加速していません(2027/3期Q1決算説明)。

通期の会社予想が売上高151.2億円(前期比+21.7%)にとどまるのもこれで説明がつきます。Q1はミソラコネクトが前年同期に未連結だったため差が大きく出ましたが、Q2以降は前年も連結済みで比較条件が揃うため、成長率はオーガニックの20%台後半に近づきます。

なお、ミソラコネクトの連結は売上を押し上げた一方で粗利率を8pt引き下げています(47.0%、前年同期比−8.0pt)。ソラコム本体より利益率が低い事業のため、クラウドネイティブ技術への置き換えによる粗利改善が今後の課題です。販管費率は40.6%(同−8.7pt改善)と、スケールメリットによる効率化は進んでいます。

投資家が注目すべきポイント

成長ドライバー

1. IoT市場の構造的成長

世界のIoT接続数は年率20%超で増加しており、ソラコムの成長の土台となっています。スマートファクトリー、コネクテッドカー、スマートシティなど、IoTの適用領域は拡大を続けています。ソラコムはCounterpoint Researchの2026年IoTコネクティビティ管理プラットフォームランキングで「リーダー」に選出されており(BusinessWire 2026年4月21日)、市場成長の恩恵を直接享受できるポジションにあります。

2. NRR121%が示す「自然増収」の力

NRR(Net Revenue Retention = 売上継続率)121%は、既存顧客だけで毎年21%の売上増が見込めることを意味します。IoTは「少数のSIMでPoC → 成功したら大量展開」というパターンが多く、1社あたりの回線数が時間とともに自然増加します。年間解約率0.4%の低さと合わせ、強固なリカーリング基盤が形成されています。

3. 中期目標 — 2031年3月期に売上高500億円

ソラコムは2031年3月期の売上高500億円・CAGR30%という意欲的な中期目標を掲げています。2026/3期の124億円から5年で4倍という水準で、M&Aを含む非オーガニック成長も視野に入れています(2026/3期通期決算説明)。

リスク要因

1. 高いバリュエーション

2026年9月時点の株価1,006円に対し、PERは72.2倍、PBRは4.16倍です。PSR(株価売上高倍率)は約3.7倍で、グロース市場のIoT関連銘柄としては妥当な水準ですが、成長鈍化時のバリュエーション調整リスクは常に意識する必要があります。

2. KDDI親会社への依存

KDDIはソラコムの議決権の約53%を保有する親会社です。グループのシナジーは大きいものの、KDDIの経営戦略変更やTOB(株式公開買付け)による非公開化のリスクも投資家は考慮すべきです。一方で、KDDIは「ソラコムの独立性を尊重する」姿勢を示しており、上場を維持したまま成長投資を続ける方針です。

3. 通信原価の構造的な重さ

MVNO方式で通信回線を調達するため、売上原価率は約50%と高めです。回線数の増加によりキャリアとの交渉力は増しますが、通信コストの劇的な低減は見込みにくい構造です。利益率の改善はアプリケーション層(SORACOM FluxやAgentなど付加価値サービス)の拡大に依存します。

まとめ

ソラコムは、「クラウドの力で通信を民主化する」というビジョンのもと、IoT通信のグローバルプラットフォームを構築してきた企業です。

  • 事業モデル — IoT SIM(SORACOM Air)を基盤に、データ収集・AI分析・アプリケーション構築までをワンストップで提供するプラットフォーム。リカーリング収益比率75%超、年間解約率0.4%の堅固な基盤

  • 成長性 — 2026/3期は売上高124億円(+38.1%増)、ARR 110億円、回線数1,000万突破。グローバルリカーリング比率50%超と海外成長が加速。中期目標は2031/3期に売上高500億円(CAGR30%)

  • リスク — PER72倍の高バリュエーション、KDDI親会社依存、MVNO方式による利益率の制約。成長投資フェーズのため配当はゼロ

IoT市場の構造的成長を背景に、SORACOM Flux・SORACOM AgentなどAI×IoTの融合で次の成長ステージに入りつつあるソラコム。通信プラットフォームの強固な堀と、グローバル展開の加速が、中長期的な投資テーマとして注目に値します。


本記事のデータは2026年9月8日時点の情報に基づいています。株価指標は2026年9月5日終値ベース。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。

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コラム著者・編集者

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