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フジクラ(5803)の企業分析|AIデータセンター需要で急成長、光ファイバー老舗の変革期

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フジクラ(5803)は、光ファイバ・通信部品を核とする電線メーカーです。AIデータセンター向け光配線ソリューションの爆発的な需要を受け、2026年3月期は売上高1兆1,824億円(前期比+20.7%)、営業利益1,887億円(同+39.2%)と過去最高を大幅に更新しました。

独自技術の細径高密度型光ファイバケーブル「SWR®/WTC®」と世界トップシェアの光ファイバ融着接続機を武器に、AIブームを追い風にこの2年で時価総額は9兆円を超える水準まで成長しました。2026年度からの新中期経営計画では3年間で5,300億円の成長投資を掲げ、2028年度に営業利益3,150億円を目指しています。しかし、2026年8月の業績上方修正により2027年3月期(中計1年目)の営業利益予想は4,320億円と、早くも最終目標を大幅に上回る異例の展開となっています。

この記事では、フジクラの5つの事業セグメントの構造、業績推移、AIデータセンター需要の影響、投資判断のポイントを個人投資家の視点からわかりやすく解説します。

会社概要 — 141年の歴史を持つ「つなぐ」技術のパイオニア

フジクラは1885年(明治18年)に藤倉善八が電線の製造を始めたことに起源を持つ、創業141年の老舗電線メーカーです。光ファイバ・通信部品から電力ケーブル、自動車用ワイヤハーネス、電子部品まで「つなぐ」技術を軸に幅広い事業を展開しています。

項目

内容

会社名

株式会社フジクラ(Fujikura Ltd.)

証券コード

5803(東証プライム)

創業

1885年(明治18年)2月

設立

1910年3月

代表取締役社長CEO

岡田直樹

従業員数

約51,262名(連結、2025年3月時点)

本社

東京都江東区木場1-5-1

セクター

非鉄金属

出典: フジクラ コーポレートサイト

AIデータセンター需要で一変した業績ステージ

フジクラは長年、堅実だが目立たない電線メーカーでした。しかし2023年以降の生成AIブームに伴うデータセンター建設ラッシュが、同社の業績を一変させました。データセンター内の光配線に使われる独自技術「SWR®/WTC®」への需要が急拡大し、情報通信事業の売上はわずか3年で2倍以上に成長しています。

2026年3月期の売上構成比は、情報通信事業が56%と過半を占め、利益では全体の約80%を稼ぐ圧倒的な主力事業になっています(出典: フジクラ 2026年3月期 決算短信)。

セグメント別売上構成比(2026年3月期)

出典: フジクラ 2026年3月期 決算短信

セグメント別売上推移

出典: フジクラ IR 業績ハイライト

情報通信事業の売上は4年間で2.2倍に急成長しました。一方、エレクトロニクス事業は2026年3月期に前期比−7.3%と減収に転じており、事業ポートフォリオの「情報通信への集中」が加速している構造です。

5つの事業を理解する

情報通信事業 — AI時代のインフラを支える光配線ソリューション

フジクラ公式サイト
フジクラ公式サイト

フジクラの成長を牽引する最大の事業です。2026年3月期の売上高は6,530億円(前期比+44.7%)、セグメント利益は1,527億円(同+65.7%)と驚異的な成長を記録しました(出典: フジクラ 2026年3月期決算短信)。

成長の中核は、独自技術の光ファイバケーブル「SWR®(Spider Web Ribbon)/WTC®(Wrapping Tube Cable)」です。従来の光ファイバケーブルと比較して大幅に細径・高密度化を実現した製品で、データセンター内の限られたスペースに大量の光ファイバを敷設するニーズに最適な技術として世界中から注目を集めています。

SWR®は光ファイバを蜘蛛の巣状に配列した独自のリボン構造で、世界初の13,824心を外径40mm以下で実現しました。2026年3月には国内データセンター向け最多心数となる4,000心SWR®/WTC®も製品化しています(出典: フジクラ SWR®/WTC®公式ページ)。

さらに、フジクラは光ファイバ融着接続機で世界トップシェアを持っています。ケーブル(SWR®/WTC®)・コネクタ・融着接続機を一体で提供できる「光配線ソリューション」の総合力が、競合他社にはない大きな差別化要因です。

情報通信事業の業績推移

出典: フジクラ IR 業績ハイライト

特筆すべきは利益率の急改善です。セグメント利益率は2023年3月期の13.9%から2026年3月期には23.4%へと10ポイント近く上昇しています。光ファイバケーブルは受注が増えるほど生産効率が上がる構造のため、需要拡大が利益率の改善にも直結しています。

エネルギー事業 — 電力インフラと次世代技術

2026年3月期の売上高は1,570億円(前期比+8.1%)、セグメント利益189億円(同+58.6%)と好調でした(出典: フジクラ 2026年3月期 決算短信)。電力ケーブル・産業用ケーブルの製造販売を主力とし、国内外の送電インフラ整備需要を取り込んでいます。

新中期経営計画では高温超電導(HTS)線材とファイバーレーザー技術を次世代の成長領域に位置づけています。核融合エネルギー向けの超電導線材は長期的な成長ポテンシャルを秘めた事業です(出典: フジクラ 新中期経営計画 2026年5月19日)。

自動車事業 — ワイヤハーネスとEV化対応

2026年3月期の売上高は1,794億円(前期比+1.3%)、セグメント利益68億円(同+17.0%)(決算短信)。自動車用ワイヤハーネス(車内の配線システム)を中心に、EV化の進展で高電圧ハーネスやアルミハーネスの需要が拡大しています。ただし利益率は3.8%と低水準で、コスト構造の改善が課題です。

エレクトロニクス事業 — FPC・コネクタ

2026年3月期の売上高は1,723億円(前期比−7.3%)、セグメント利益77億円(同−66.5%)と減収減益でした(決算短信)。フレキシブルプリント配線板(FPC)やコネクタなどの電子部品を製造しており、スマートフォンや電子機器向けに供給しています。市況の低迷が響いた形ですが、中長期的にはウェアラブルデバイスや車載向けの需要拡大が期待されます。

業績推移と財務分析

通期業績推移 — 4年間で売上は約1.8倍に

フジクラの業績は、AIデータセンター需要を背景に2025年3月期以降に急加速しています。直近5年間の連結業績推移は以下の通りです。

決算期

売上高

営業利益

純利益

営業利益率

2022年3月期

6,704億円

383億円

391億円

5.7%

2023年3月期

8,065億円

694億円

403億円

8.6%

2024年3月期

7,998億円

695億円

510億円

8.7%

2025年3月期

9,794億円

1,355億円

911億円

13.8%

2026年3月期

11,824億円

1,887億円

1,572億円

16.0%

2027年3月期(修正予想)

17,550億円

4,320億円

3,260億円

24.6%

出典: フジクラIR 業績ハイライト / 2027年3月期予想は2026年8月7日修正後 / KabuGraph(J-Quantsデータ)

通期業績推移(売上高・営業利益・営業利益率)

注目すべきは営業利益率の急激な改善です。FY2022の5.7%からFY2026では16.0%へと3倍近くに拡大しており、FY2027は修正予想で24.6%とさらなる飛躍を見込みます。これは情報通信事業の売上拡大に伴いスケールメリットが顕在化しているためです。

特に純利益の伸びが顕著で、FY2025の911億円からFY2026は1,572億円(前期比+72.5%)と大幅増益を達成。売上・利益ともに過去最高を更新しました。自己資本比率もFY2022の36.1%からFY2026は57.8%へ大幅に改善しており、財務基盤も強化されています(出典: フジクラ 決算短信)。

新中期経営計画(2026〜2028年度)

2026年5月に発表された新中計では、2028年度に売上高1兆6,000億円、営業利益3,150億円を目標に掲げています。

指標

2026年3月期(実績)

2029年3月期(目標)

売上高

1兆1,824億円

1兆6,000億円

営業利益

1,887億円

3,150億円

ROE

26.5%

28.5%

ROIC

21.6%以上

戦略投資

3年間で5,300億円

出典: フジクラ 新中期経営計画(2026年5月19日発表)

岡田社長は「データセンター市場は10年は堅調に伸びる」と述べており(出典: ITmedia ビジネスオンライン 2026年5月22日)、さらに2035年度には売上高2兆8,000億円、営業利益5,800億円という長期ビジョンも掲げています(出典: フジクラ 新中期経営計画)。前中期経営計画は1年前倒しで達成した実績があり、計画の信頼性は高いと評価されています。なお、2027年3月期の修正予想(売上1兆7,550億円、営業利益4,320億円)は中計最終年度の目標をすでに大幅に超過しています。これは中計策定時(2026年5月)以降、北米を中心としたハイパースケーラーからの光コンポーネント受注が想定を大きく上回り、需要逼迫に伴う売価アップも寄与したためです。2026年6月に続き8月にも通期予想が引き上げられ、純利益は当初予想の1,560億円から3,260億円へと2倍以上に上方修正されるという異例の展開となっています。中計目標の早期見直し(上方改定)が市場で意識されています。

株価指標(2026年8月21日時点)

なお、フジクラは2026年4月1日に1株→6株の株式分割を実施しています。以下の指標は分割後の株価ベースです(出典: 日本経済新聞)。

指標

株価

5,280円

時価総額

約9兆3,730億円

PER(株価収益率)

約26.8倍(最新予想ベース)

PBR(株価純資産倍率)

15.74倍

ROE(自己資本利益率)

26.5%

配当利回り

約0.7%(分割後年間約37.5円)

配当性向

39.5%

出典: KabuGraph(J-Quantsデータ)

投資家が注目すべきポイント

3つの強み

1. AIデータセンター需要という巨大な追い風

生成AIの普及に伴い、世界中でデータセンターの建設ラッシュが続いています。データセンター内の光配線は「建物1棟あたり数千〜数万芯」の光ファイバを必要とし、この需要はAIの計算量が増え続ける限り拡大します。岡田社長は「データセンター市場は10年は堅調に伸びる」と発言しており(出典: ITmedia)、中長期的な需要の持続性に自信を示しています。

2. 「ケーブル+コネクタ+融着接続機」の統合ソリューション力

フジクラの競争優位は、SWR®/WTC®光ファイバケーブル、多心光コネクタ、世界トップシェアの融着接続機を一社で提供できる「光配線ソリューション」の総合力にあります。データセンター事業者にとっては、一括調達による効率化・品質担保が大きなメリットであり、この統合力は他社が簡単に再現できるものではありません。

3. 前中計1年前倒し達成の実行力

フジクラは2025年度に終了する前中期経営計画を1年前倒しで達成しています。新中計でも、中計1年目(2027年3月期)の修正予想が最終年度目標を上回るという「再び前倒し」の兆候が見られます。ROE 26.5%、自己資本比率57.8%と、財務面の安定感もあります。

注意すべきリスク

1. 情報通信事業への利益集中リスク

2026年3月期のセグメント利益の約80%が情報通信事業から生まれており(決算短信)、この一事業への依存度が極めて高い状態です。データセンター投資が予想を下回った場合や、光ファイバケーブルの需給が緩んだ場合、業績への影響は大きくなります。

2. 急激な業績拡大に伴うバリュエーションの変動

2026年8月の業績上方修正により、最新予想ベースのPERは約26.8倍まで低下しており、修正前に55倍台だった頃と比べるとバリュエーションの過熱感は薄れています。ただし、非鉄金属セクターの平均PERは10〜15倍程度であり、依然として同セクター平均を大きく上回る水準です。データセンター需要の成長鈍化や業績未達があれば、バリュエーション修正(株価下落)のリスクは大きくなります。

3. 大規模設備投資のリスク

新中計で3年間5,300億円の戦略投資を計画していますが、これは2026年3月期の売上高の約45%に相当する巨額の投資です。データセンター需要が期待ほど伸びなかった場合、過剰設備を抱えるリスクがあります。ただし、市場全体の見通しは好調であり、前中計の実績からも慎重な投資判断がなされていると見られます。

4. 新中計発表時の株価下落

2026年5月19日の新中計発表後、株価は一時17%下落しました。市場の期待がすでに高かったため、新中計の目標が「期待を超えられなかった」と受け止められた格好です(出典: Bloomberg 2026年5月19日)。これは高バリュエーション銘柄に共通するリスクで、「良い決算でも期待以下なら売られる」状態が続いています。

まとめ

フジクラ(5803)は、141年の歴史を持つ電線メーカーが、AIデータセンター需要を追い風に「テクノロジー企業」へと変貌を遂げつつある銘柄です。

投資の観点からのポイントを整理すると、以下の通りです。

  • 事業の強さ: SWR®/WTC®光ファイバケーブルと世界トップシェアの融着接続機を組み合わせた「光配線ソリューション」の統合力が、他社にない差別化要因

  • 成長性: 情報通信事業が3年で2倍以上に成長。新中計では3年間5,300億円投資、2028年度に営業利益3,150億円を目標としたが、中計1年目の修正予想(営業利益4,320億円)で既に超過。長期目標は2035年度に売上2.8兆円

  • 収益構造: 営業利益率は5.7%から16.0%へ急改善。情報通信事業のスケールメリットが効き、ROE 26.5%と資本効率も高い

  • 注意点: 業績の急拡大でPERは約27倍まで低下したものの、利益の約80%が情報通信事業に集中。データセンター需要の変動リスクは無視できない

「電線メーカー」から「AIインフラ企業」への転換という物語は魅力的ですが、株価は大きく上昇しましたが、それ以上にEPSの急拡大が追いついており、最新予想ベースのPERは約27倍とバリュエーションの過熱感は薄れています。ただし、この水準は2度の大幅上方修正を前提としたものであり、データセンター需要の持続性と、5,300億円投資の回収が計画通り進むかが、中長期の投資判断を左右するでしょう。


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光ファイバ・通信部品を中核とする電線メーカー。独自技術の細径高密度光ファイバケーブル「SWR®/WTC®」と世界トップシェアの光ファイバ融着接続機を武器に、AIデータセンター向け光配線ソリューションで急成長中。2026年3月期は売上高1兆1…

本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。投資の最終判断はご自身の責任でお願いいたします。記事中の数値は2026年8月21日時点の情報に基づいています。

コラム著者・編集者

K

KabuGraph編集部

KabuGraph編集部は、投資情報の発信と株式分析ツールの開発に携わるチームです。日本株・米国株の事業分析から、投資に役立つ情報をわかりやすくお届けします。

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